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嫌疑不十分・証拠不十分とは?不起訴になるケースや前歴・再捜査のリスク

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刑事事件で逮捕や取り調べを受けている方、ご家族が捜査の対象になっている方にとって、「不起訴になるかどうか」は最も重要なポイントです。

不起訴処分にもいくつかの種類があり、そのひとつが「嫌疑不十分による不起訴」です。

この記事では、「嫌疑不十分」や「証拠不十分」の意味・違い、不起訴後の再捜査や前歴の影響、不起訴を目指すための具体的な弁護活動まで、法律の専門知識がない方にもわかりやすく解説します。

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嫌疑不十分・証拠不十分とは?不起訴との関係

嫌疑不十分とは?|不起訴処分のひとつ

「嫌疑不十分」とは、警察や検察が集めた証拠から、犯罪の疑いはあると認められるものの、裁判で有罪とするには証拠が足りないと判断された場合をいいます。検察官が不起訴処分をする際の理由の一つです。

たとえば、以下のようなケースでは、嫌疑不十分で不起訴になる可能性があります。

  • 被害者が加害者を特定できていない
  • 防犯カメラ映像が不鮮明で、顔が確認できない
  • 供述に食い違いが多く、客観的証拠が乏しい

不起訴になると、被疑者は刑事裁判を受けることなく、手続きから解放されます。

なお、不起訴には「嫌疑不十分」のほかにも、犯罪の疑いそのものが認められない「嫌疑なし」や、証拠や事情はそろっていても情状などを考慮して起訴しない「起訴猶予」といった種類があります。

主な不起訴の種類

不起訴の理由状況
嫌疑なし被疑者が犯罪を犯したという疑いすらない状態
嫌疑不十分疑いはあるが、起訴するに足りるだけの証拠が認められない
起訴猶予犯罪の事実はあるが、情状などを考慮して起訴を見送る

証拠不十分とは?|不起訴理由の根拠になるもの

「証拠不十分」とは、犯罪があったとされる場合でも、犯罪を証明するための証拠が足りない状態を指します。つまり、犯罪が本当にあったのか、また被疑者がそれを行ったのかを裏付ける証拠が不十分なため、裁判で有罪とすることができない状況です。

刑事裁判では、検察官が「合理的な疑いを超えるレベル」で犯罪事実を証明しなければ、有罪にはなりません。そのため、証拠が不十分であれば、裁判では無罪判決となり、起訴前であれば不起訴処分(主に「嫌疑不十分」など)となることがあります。

嫌疑不十分と証拠不十分の違い

嫌疑不十分と証拠不十分は、同じ意味として使われることもありますが、厳密には異なります。

嫌疑不十分は「嫌疑そのものが十分でない」ことを強調し、証拠不十分は「証拠が足りない」ことを強調する用語です。実務上は、嫌疑不十分という不起訴理由の根拠として、証拠不十分が挙げられることが多いです。

嫌疑不十分と証拠不十分の違い

嫌疑不十分証拠不十分
意味被疑者が犯人かどうか疑いが残る犯罪の証明に必要な証拠が足りない
法的な扱い不起訴理由として正式に用いられる不起訴・無罪の根拠として使われることが多い

「不起訴=無罪」ではないことに注意

よくある誤解ですが、「不起訴」=「無罪」ではありません。

無罪とは、起訴された上で裁判所が「犯罪を立証できなかった」と判断するものです。

これに対して「嫌疑不十分」は、起訴にいたるだけの証拠がそろっておらず、そもそも裁判にすら進まないケースです。つまり「白」とも「黒」とも断定されないグレーな処分と言えるのです。

嫌疑不十分による不起訴の割合は?

令和6年版犯罪白書によると、令和5年(2023年)における不起訴処分のうち、「嫌疑不十分」(および「嫌疑なし」)の割合は約22.6%でした(令和6年版 犯罪白書 第2編/第2章/第4節)。不起訴処分全体の中で2番目に多い理由となっています。

最も多かったのは「起訴猶予」で、全体の69.1%を占めています。「嫌疑不十分」による不起訴は、検察官が証拠の不足を理由に起訴を見送るケースとして、一定の割合を占めています。

令和5年不起訴人員(理由別)

不起訴の理由人員
起訴猶予107,272(69.1%)
嫌疑不十分(「嫌疑なし」も含む)35,042(22.6%)
告訴の取消し等6,093(3.9%)
心神喪失353(0.2%)
総数155,305

※令和6年版犯罪白書より作成

不起訴後の再捜査の可能性や前歴への影響

嫌疑不十分で不起訴になると前歴は残る?

多くの方が誤解している点ですが、「不起訴になれば完全に記録が残らない=無罪」というわけではありません

実際には、嫌疑不十分による不起訴でも「前歴」として警察や検察の内部記録に残ります。

前歴がついたとしても、何の法的な効果もなく生活に特に影響はありません。

ただし、前歴の有無や内容は、将来罪を犯した際に処分を判断する資料として利用されます。過去に前歴があれば、刑事処分が重くなる可能性があります。

前科・前歴・逮捕歴の違い(対象)

嫌疑不十分による不起訴後でも再捜査の可能性はある?

嫌疑不十分による不起訴は、裁判所による「無罪判決」とは異なり、将来的に再び捜査・起訴される可能性を完全に排除するものではありません

つまり、不起訴になった後でも、再捜査される可能性はあります

特に以下のようなケースでは、再捜査・再起訴が行われる可能性があります。

再捜査・再起訴が行われるケース

  • 新たな証拠が見つかった場合
  • 事情が大きく変わった場合
  • 被害者や告訴人が検察審査会に不服を申し立て、再捜査が指示された場合

検察審査会は、検察官の不起訴判断を第三者の立場から見直す制度で、「不起訴不当」や「起訴相当」と議決された場合、検察は再度捜査し、起訴・不起訴の判断をやり直すことがあります。

ただし、実際には不起訴処分が確定した後に再捜査・再起訴に至るケースはまれです。

弁護士の弁護活動が嫌疑不十分につながったケース

嫌疑不十分を目指す弁護活動

刑事事件で被疑者(容疑をかけられている人)となった場合、「不起訴処分」を得ることがもっとも望ましい結果のひとつです。

不起訴を獲得するために不可欠なのが、弁護士による効果的な弁護活動です。

弁護活動の例

  1. 不利な供述を行わないよう助言する
  2. 証拠の不備や矛盾を指摘
  3. 目撃証言などの信用性を争う
  4. 必要に応じた示談交渉のサポート
  5. 被害届の取り下げ・告訴の取り消しを試みる

(1)不利な供述を行わないよう助言する

取調べの際、不用意な発言が誤解を生み、状況を不利にしてしまうことがあります。弁護士は、被疑者が黙秘権などの権利を正しく理解し、不利な供述を避けるようアドバイスします。

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(2)証拠の不備や矛盾を指摘

証拠の中に矛盾がある場合、弁護士はそれを検察に指摘し、「立証できない」と判断されるよう働きかけます。たとえば、防犯カメラの映像と証言内容が一致しない場合などが該当します。

(3)目撃証言などの信用性を争う

目撃証言は、時間の経過や記憶違いによって正確性が疑われることがあります。証人の証言が信頼できないと判断されれば、証拠としての価値は下がり、不起訴の可能性が高まります。

(4)必要に応じた示談交渉のサポート

被害者のいる事件では、被害者との示談が成立すると、不起訴となる可能性が高くなります。弁護士は適切なタイミングで被害者との示談交渉を行い、円満な解決を目指します。

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(5)被害届の取り下げ・告訴の取り消しを試みる

示談と並行して被害届の取り下げや告訴の取り消しを目指すことがあります。特に親告罪の場合、告訴が取り消されると、起訴そのものができなくなります。

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実際に、早期に弁護士が介入したことにより、嫌疑不十分での不起訴となることはあります。

上記のようなアクションは一人で対応するのは難しいため、迅速な専門家への相談が重要です。

嫌疑不十分で不起訴を獲得した事例

過去にアトム法律事務所が嫌疑不十分で不起訴を獲得した事例をご紹介します。

アトムの解決事例(嫌疑不十分で不起訴獲得)

イベントで知り合った相手から渡された袋に大麻や麻薬が入っており、警察から職務質問を受けた際に発見された。袋の中に薬物があると知らなかったが、大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕された事案。


弁護活動の成果

袋の外見から、薬物と判断することは困難であり、依頼者に大麻の認識はなかったと捜査機関に訴えた。取り調べに対するアドバイスも行い、嫌疑不十分で不起訴処分となった。

アトムの解決事例(嫌疑不十分で不起訴獲得)

自身が代表取締役を務める会社で、グループ会社から自身の会社に振り込まれる金銭の一部を横領。刑事事件化前に受任した。


弁護活動の成果

取り調べに対して黙秘するようアドバイスを行い、グループ会社の裏金作りについても捜査機関に提示。その結果、嫌疑不十分で不起訴処分となった。

嫌疑不十分による不起訴を目指すなら、早めの弁護士相談を

この記事では、「嫌疑不十分による不起訴」と「証拠不十分による不起訴」の違い、前歴や再捜査への影響、そして弁護活動の重要性について詳しく解説しました。

嫌疑不十分による不起訴を勝ち取るには、できるだけ早い段階で弁護士が介入することが極めて重要です。専門家による証拠分析や的確な法的主張が、嫌疑不十分の判断を引き出す可能性を大きく高めます。

ご本人やご家族が捜査機関から取り調べを受けている場合、不安を抱えたまま状況が悪化する前に、刑事事件に詳しい弁護士にご相談ください。相談が早ければ早いほど、弁護士の弁護活動の幅も広がります。

アトムご依頼者様からの感謝のお手紙

刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。

検察への働きかけや職場対応により職場での立場が回復しました。

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(抜粋)この度は、野尻先生には、本当にお世話になりました。勾留請求却下、嫌疑不十分以上での不起訴の獲得のため、色々な事をして頂きました。検察への働きかけはもちろんのこと、私が職場において不利益を被ることがないように意見書の作成もして頂きました。おかげさまで、逮捕され捜査対応となったことにより存在した偏見の目がなくなり、職場での立場も回復しました。今後も大変な案件はたくさんあると思いますが今後とも野尻先生の御活躍を祈念させて頂きます。本当にお世話になりました。ありがとうございました。

予想していたよりも良い結果で感謝しています。

ご依頼者様からの感謝のお手紙(予想していたよりも良い結果で感謝しています。)

当初は精神的に不安定でパニックな状態で全く眠れませんでした。次の日弁護士の先生のお話を聞いてすごく不安が解消しました。しかも今回自分が予想していた結果よりも良い結果でしたので感謝しかありません。大事なのは今後だと思っています。ずっと罪を背負っていかなければならないと思っています。何か変われるきっかけにしなければと思います。この度は本当にありがとうございました。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了