2024年6月、一部事業者に対して、こどもと接する職業に就く人の性犯罪歴を確認することを義務付ける法律である「日本版DBS(こども性暴力防止法)」が成立しました。
日本版DBSはこどもたちを性犯罪から守るための重要な仕組みですが、同時に「自分の過去の過ちはどう扱われるのか」「仕事は続けられるのか」という不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、日本版DBSについて、制度の基本から、刑の消滅と期間の違い、不起訴や執行猶予の扱い、現職への影響など、法的なポイントを分かりやすく解説します。
※本記事は2026年3月時点における、日本版DBS(こども性暴力防止法)ガイドライン・法律内容に基づき作成しています。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
日本版DBSとは?

日本版DBSとは、こどもと接する職業に就く人の性犯罪歴を確認し、性犯罪リスクのある人がこどもに関わる業務に就くことを未然に防ぐ制度です。
この制度は、性犯罪からこどもたちを守り、誰もが安心して教育・保育を受けられる環境作りを目的としています。
正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」といい、「こども性暴力防止法」とも呼ばれています。
また、本制度はイギリスの「Disclosure and Barring Service(DBS)」と呼ばれる、こどもに関わる業務従事者の犯罪歴確認の仕組みを参考に設計されています。
いつから始まる?
日本版DBSの施行予定日は2026年12月25日です。本法は公布(2024年6月26日)から2年6ヶ月以内に施行されることが決まっており、政府は2026年度中の運用開始を目指しています。
日本版DBS運用スケジュール
| 時期 | 段階 |
|---|---|
| 〜2025年度末 | 詳細設計 |
| 2026年 春〜夏 | システム構築 |
| 2026年 秋頃 (施行の約3ヶ月前) | 事前登録開始 |
| 2026年 冬 (12月頃) | 法律施行・本稼働 |
施行後、新規採用者や異動者は「配置(採用)の直前」に必ず照会が実施されます。
現職の方は施行後すぐに照会が始まりますが、猶予期間が1~3年程度(後述する義務化されている事業者が3年、認定事業者が1年)あります。
また、定期確認のルールが設けられており、確認日の翌日から起算して5年を経過する日の属する年度の末日を超えて引き続き対象業務に従事させる場合は、改めて犯罪事実確認を行う義務があります。
なお、配置転換等により新たに対象業務(こどもと接する業務)に就く場合は、5年の定期確認とは別に、その都度犯罪事実確認が必要になります。
誰が対象?(事業者)

日本版DBSの対象事業者は、義務化されている事業者と任意事業者で分けられています。
日本版DBS対象事業者
- 義務化されている事業者
- 学校(幼稚園、小中学校、高校等)
- 専修学校(高等課程)
- 認定こども園
- 児童相談所
- 児童福祉施設
- 認可保育所
- 児童館指定障害児通所支援事業(児童発達支援、放課後等デイサービスなど)
- 乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度)
- 家庭的保育事業等(家庭的保育、小規模保育、居宅訪問型保育、事業所内保育)
- 高等専門学校 など
- 任意事業者
- 学習塾
- スポーツクラブ
- (指定を受けていない)放課後デイサービス
- ベビーシッター
- 放課後児童クラブ
- 認可外保育事業
- 一時預かり事業
- 病児保育事業
- 子育て短期支援事業
- 児童自立生活援助事業
- 各種学校
- 専修学校(一般課程)など
学校や認可保育所などは法令(学校教育法など)に基づき、国や自治体の認可を受けて運営する必要があります。
これらの施設はこどもが日常的に通う教育機関で、公的な役割が非常に大きいため、日本版DBSの実施が義務付けられています。
一方、学習塾やスポーツクラブなどは民間が自由に設置・運営できる事業で、学校や保育所のような統一的な法律上の枠組みや基準がありません。
事業者の数や形態も多様であるため、日本版DBSでは「任意参加」とし、希望する事業者が認定を受けられる仕組みになっています。
なお、任意の事業者は、認定を受けることで国から認定マークがもらえます。

※こども性暴力防止法 事業者マーク(出典:こども家庭庁より)
左の認定事業者マークは学習塾やスポーツクラブなどで、国の認定を受けた事業者が表示可能です。右は法定事業者マークで、学校、認可保育所などの義務対象事業者が表示可能となっています。
認定マークは「こども家庭庁から公表」「認定マークが広告に使用できる」などのメリットを得られるため、多くの事業者が参加すると見込まれています。
対象となる業務の判断基準(従業者向け)
日本版DBSでは、事業者単位だけでなく、従事者の業務内容が以下の3つの要件をすべて満たすかどうかで、犯罪事実確認の対象かを判断します。
支配性
支配性とは、業務上において児童等に対して指導やコミュニケーションを通じて優越的な立場に立つ機会があるかどうかです。
成人とこどもという関係上、業務の中で児童等と接する機会が継続的にある場合は、原則として支配性があると判断されます。
継続性
継続性とは、日常的・定期的、またはその他反復継続が見込まれる形で児童等と接する機会があるかどうかです。
年1回のイベント講師のように一時的な接触にとどまる場合は、継続性がないと判断され得ます。
閉鎖性
閉鎖性とは、他の職員や保護者等が同席しないなど、第三者の目に触れない状況で児童等と接する機会が生じ得るかどうかです。SNSやオンラインでの接触も含まれます(録画配信など、やりとりが生じないものは除く)。
たとえば、学習塾の講師やスポーツクラブの指導員は3要件すべてを満たしやすい一方、送迎バスの運転手や受付の事務職員は、業務内容によって対象になる場合とならない場合があります。
自社のどの職種が対象に該当するかは、この3要件に照らして個別に判断する必要があります。
事業者がやるべきこと
重要なのは、システム導入だけでなく、「もし該当者が出たときに、会社としてどう対応するか」を法的に固めておくことです。
事業者がやっておくべきこと
- 就業規則の見直し
社労士などと相談し、「配置転換」や「内定取り消し」の条項案を作成する。 - 採用スケジュールの見直し
犯罪事実確認は内定後にしか実施できないため、選考~採用までの工程が増えます。また、内定前にも書面での前科確認が求められるため(後述)、スケジュールの見直しを行いましょう。 - 職務内容の線引き
自社の中で「DBSチェックが必要な業務(こどもと接する)」と「不要な業務(バックオフィス)」を明確に線引きする(※配置転換の検討時に必要)。 - 情報管理体制の構築
「個人情報取扱規程」や「情報管理規程」など、取得・利用・保存・提供・削除・廃棄等の段階ごとに具体的な規律を定めること。
また、任意事業者は国の認定を受ける必要があるので、その準備をする必要があります。
例えば、「セクハラ・性暴力防止のための研修を行う」「相談窓口を作る」「面談体制を整える」などが挙げられます。
▼事業者がやるべきことの注意点
採用選考における二段階の確認手続
ガイドラインでは、犯罪事実確認(内定後)とは別に、採用選考の段階で以下の対応を行うことが求められています。
この「内定前の書面確認+内定後の犯罪事実確認」という二段階の手続を踏むことで、万が一犯歴が判明した場合に「経歴詐称」として内定取消しの法的根拠を確保できます。
逆に、採用選考過程で前科の有無を確認していなかった場合、内定後に犯罪事実確認で判明しても、即座の内定取消しは困難になる可能性があるため注意が必要です。
情報漏えい等に対する罰則
犯罪事実確認で得た情報は極めて機微性の高い個人情報であるため、厳格な罰則が設けられています。
- 情報の不正提供
犯罪事実確認書の情報を、不正な利益を図る目的で提供した場合は、2年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科(こども性暴力防止法43条)。 - 情報の漏えい
業務上知り得た犯罪事実確認書の情報をみだりに他人に知らせたり、不当な目的で利用した場合は、1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科(こども性暴力防止法45条2項)。 - 犯罪事実確認書の不正取得
偽りその他不正な手段で犯罪事実確認書の交付を受けた場合は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(こども性暴力防止法44条)。 - 記録の廃棄義務違反
法定の期限までに犯罪事実確認記録等を廃棄・消去しなかった場合は、50万円以下の罰金(こども性暴力防止法46条3号)。
事業者は「情報を取得して終わり」ではなく、取得から廃棄までの全工程において法的責任を負うことを認識しておく必要があります。
DBSの情報から何がわかるのか
DBSには、以下の情報が登録されます。
DBSに登録される情報
- 申請対象者情報(氏名、住所、生年月日、性別等)
- 特定性犯罪事実の確認日
- 特定性犯罪事実の該当性(犯歴あり/なし)
- 特定性犯罪事実該当者の区分(拘禁刑/執行猶予/罰金刑)
- 特定性犯罪の裁判確定日(犯歴ありの場合のみ)
一方で、事業者がすべての情報を閲覧できるわけではありません。
事業者が閲覧できるのは「申請番号(管理番号のみで氏名等は記載しない)」「確認日」「特定性犯罪事実該当者の該当性(該当する/しない)」「該当する場合:区分(拘禁刑/執行猶予/罰金刑)と裁判確定日」などの基本的事項のみです。
どこまでが対象犯罪?

日本版DBSの対象となるのは、「不同意性交」「不同意わいせつ」などの刑法犯だけではありません。都道府県の迷惑防止条例に基づく痴漢・のぞき行為や、「性的姿態撮影等処罰法」に違反する盗撮行為なども含まれます。
対象犯罪
| 法令の分類 | 主な対象行為 |
|---|---|
| 刑法 | ・不同意わいせつ、不同意性交等 ・監護者わいせつ・性交等 ・不同意わいせつ等致死傷 ・16歳未満への面会要求(わいせつ目的) ・強盗・不同意性交及び同致死 |
| 性的姿態撮影等処罰法 | ・性的姿態等撮影(盗撮) ・撮影した映像の提供、保管、送信、記録 |
| 児童ポルノ法・ 児童福祉法 | ・児童買春、その周旋・勧誘 ・児童ポルノの所持、提供、製造 ・淫行させる行為 |
| 都道府県条例 | ・痴漢 ・盗撮 ・卑わいな言動 ・淫行 |
上記の対象犯罪には、未遂罪の一部も含まれるとされています。
なお、日本版DBSでは該当の性犯罪以外で有罪判決を受けた方(暴行や窃盗など)はDBSに登録されません。
犯罪に至らない「不適切な行為」も対象に
日本版DBSは犯罪歴の確認だけの制度ではありません。ガイドラインでは、犯罪には該当しないものの、児童対象性暴力等につながり得る「不適切な行為」についても、事業者に防止措置を求めています。
不適切な行為の例としては、以下のようなものが挙げられています。
- 私物のスマートフォンでこどもを撮影する
- こどもにマッサージをしたり、させたりする
- 業務上必要のない身体接触を行う
- SNS等で個人的にやり取りをする
不適切な行為が確認された場合、初回かつ軽微であれば指導や研修受講命令等の段階的な対応が行われますが、重大な場合や繰り返す場合には、児童対象性暴力等に準じた厳格な対応(配置転換や懲戒処分等)が取られる可能性があります。
つまり、前科がなくても、日頃の言動によっては対象業務から外されるリスクがあるということです。
事業者側も、こうした行為の範囲をあらかじめ就業規則や服務規律に定め、従事者に周知しておく必要があります。
刑が消滅していても対象になる可能性がある

通常、前科がついても一定期間(拘禁刑なら10年、罰金なら5年)何事もなく過ごせば、法的に前科は消滅します(刑の消滅)。履歴書の賞罰欄に書く必要もなくなります。
日本版DBSでは、その期間よりも長く記録が参照されることになりました。「刑法上の前科が消えているから大丈夫」とはなりませんので注意が必要です。
照会可能な期間(DBSに登録される期間)
| 処分の内容 | 刑法上の「刑の消滅」までの期間 | 日本版DBSでの照会可能期間 |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 刑の終了から10年 | 刑の終了から20年 |
| 罰金刑 | 刑の終了から5年 | 刑の終了から10年 |
| 執行猶予 | 猶予期間の経過 | 裁判確定日から10年 |
法律上の「前科」としては扱われなくなっても、DBSのシステム上ではさらに長い期間(最長20年)、記録が残り続けることになります。
不起訴・執行猶予・前歴はどう扱われる?

「過去にトラブルがあったが、DBSに載るのか心配」という方のために、法的なステータスごとの扱いを解説します。
執行猶予判決の場合
性犯罪歴が記載されます。執行猶予は刑罰の執行が猶予されるだけで「有罪判決」には変わりないため、DBSの登録対象となります。判決が確定した日から10年間は照会可能です。
不起訴処分の場合
性犯罪歴は記載されません。逮捕されたり捜査を受けたりしても、最終的に検察官が裁判所に訴えを起こさない「不起訴」とした場合、前科はつきません。
日本版DBSは「前科(有罪判決)」を対象とするため、不起訴であれば記録には載りません。
前歴(逮捕歴など)のみの場合
性犯罪歴は記載されません。前歴とは捜査機関に関わった記録のことですが、前科とは明確に区別されます。
示談成立などで事件化しなかった場合や、微罪処分などで終わった場合はたとえ逮捕されていても対象になりません。
現職の教員・保育士も対象

「すでに働いている人は関係ない」ということはありません。この制度は、現職の職員に対しても適用されます。
過去の犯罪も掘り起こされる
制度開始後、現職者に対しても過去の性犯罪歴の確認が行われます。
この点について、「不遡及の原則(新しい法律で過去の行為を罰しない原則)に反するのではないか」という議論がありました。
しかし、日本版DBSにおける犯罪事実確認は、過去の犯罪に対して新たな刑罰を科すものではなく、こどもの安全を確保するための行政上の措置として位置づけられています。
また、法律上の刑の消滅(刑法34条の2)により前科としての効力が失われた後も確認を可能にするため、法律では対象者を「刑を言い渡す裁判が確定した者」と規定しています(こども性暴力法2条8項)。
これにより、刑の消滅期間を超えた照会に法的根拠が与えられています。
そのため、刑法上は前科が消えていても、DBSの照会可能期間内(拘禁刑なら20年、罰金刑・執行猶予なら10年)であれば、犯罪事実確認の対象となります。
最悪の場合は解雇の可能性がある
日本版DBSにより性犯罪歴が明らかになっても即座に解雇されるわけではありません。法律では、以下のような段階的な措置を求めています。
解雇までの流れ
- 配置転換
こどもと接しない部署や業務へ異動させる。職種限定合意がある場合は本人の同意が必要で、出向・転籍も選択肢。 - 解雇・契約終了
配置転換がどうしても不可能な場合に限り、解雇等の措置が検討される。
しかし、教育現場などでは「こどもと接しない業務」を見つけるのが難しく、実質的に職を失うリスクがあるのが現状です。
なお、確定的な措置を講じるまでの間も、自宅待機命令等によりこどもとの接触を回避する必要があります。
新卒採用者(内定者)はどうなる?
特定性犯罪事実該当者であることを隠していたことがバレた場合、対応は採用選考過程で前科の有無を確認していたかどうかによって大きく異なります。
確認していた場合
募集要項や誓約書等で特定性犯罪前科がないことを明示的に確認していたにもかかわらず、虚偽申告や黙秘をした場合は、「重要な経歴の詐称」として内定取消しになる可能性があります。
確認していなかった場合
採用選考過程で前科の有無を確認していなかった場合、犯罪事実確認で判明したとしても、「採用内定当時知ることができず、知ることが期待できないような事実」とは言えず、その事実のみを理由とした即座の内定が取消される可能性は低いです。
この場合は、対象業務以外の職での採用の可能性も検討した上で、それでも採用が困難な場合に内定取消しを検討されることになります。
犯罪事実確認の中止要請ができる
日本版DBSには、特定性犯罪前科がある方に配慮した仕組みも設けられています。
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科がある場合、犯罪事実確認書が事業者に交付される前に、まず本人に対してその内容が事前通知されます。
つまり、本人が知らないうちに事業者へ前科情報が渡ることはありません。
事前通知を受けた本人は、通知から2週間以内に以下の対応を取ることができます。
中止要請
内定辞退や退職等を自ら選択し、こども家庭庁に対して犯罪事実確認の手続の中止を要請できます。中止要請が行われた場合、事業者への犯罪事実確認書の交付は保留されます。
その後、本人から事業者に対して内定辞退等の連絡を行い、事業者が交付申請を取り下げることで手続が終了します。
訂正請求
万が一、犯罪事実確認書の内容に誤りがあった場合に備え、こども性暴力防止法上「訂正請求」の仕組みが設けられています(こども性暴力防止法37条)。
特定性犯罪前科がある旨の事前通知を受けた本人は、その通知内容が事実でないと思料する場合、通知を受けた日から2週間以内にこども家庭庁に対して訂正を請求できます。
訂正請求が行われた場合、こども家庭庁は法務大臣に確認を求め、訂正の可否を判断します。訂正が認められた場合は正しい内容の犯罪事実確認書が事業者に交付され、訂正が認められなかった場合はその旨と理由が本人に通知されます。
なお、訂正が認められなかった場合でも、通知から1週間以内であれば中止要請を行うことが可能です。
このように、誤った情報が事業者に渡ることを防ぐための救済手段は法律上整備されていますが、実際に冤罪で有罪判決を受けてしまった場合、訂正請求では対応できません(確認書の記載自体は正確であるため)。
冤罪によるリスクを回避するには、やはり刑事手続の段階で適切な弁護活動を行い、不起訴や無罪を目指すことが重要です。
早期に弁護士へ依頼して適正な処分を受ける

日本版DBSの導入により、性犯罪に関する処分は単なる刑罰だけでなく、その後の職業生活にも長期的な影響を及ぼすことになりました。
このような重大な結果を伴うからこそ、被疑者(犯罪の疑いを受けている人)は早急に対応しなければいけません。
冤罪や不当な判決は不起訴を目指す
刑事手続においては、事実に基づかない不当に重い処分や、冤罪を不起訴などの形で防ぐ必要があります。
- 冤罪の防止
身に覚えのない容疑については、捜査段階で客観的な証拠や主張を尽くし、誤った起訴を防ぐ必要があります。 - 過剰な処分の回避
事実であっても、行為の態様や反省の度合いに比して、不当に重い処分(裁判による有罪判決など)を受けることを避ける必要があります。
被疑者の段階で適切な弁護活動を行うことは、単に罪を逃れるためではなく、「法的に適正な判断を受ける」ために重要です。
弁護士による「被害回復」と事実の精査
捜査段階において、弁護士は主に以下のような活動を行います。これらは、検察官が最終的な処分を決定する上で、大きな判断材料となります。
被害者への謝罪と被害回復(示談)
被害者に対して真摯に謝罪し、生じた損害を賠償する示談は、法的に「被害の回復がなされた」と評価されます。これにより、起訴の必要性が低い(起訴猶予)と判断される可能性が高まります。
事実関係の正確な主張
捜査機関の見立てと事実が異なる場合(例:合意があった、故意ではなかった等)、法的な観点から正当な主張を行い、記録に残します。
早期の相談が結果を変える可能性があります
刑事事件の手続きは時間との戦いです。特に、逮捕されている場合や、捜査が進行している場合、検察官が処分を決めるまでの期間は限られています。

「まだ警察に呼ばれただけだから」と様子を見ている間に、起訴か不起訴かの判断が下されてしまうことも少なくありません。
ご自身のケースでどのような法的対応が可能か、見通しを知るだけでも不安は軽減されるはずです。適正な手続きと将来を守るために、専門家である弁護士への早期相談をご検討ください。
【簡易チェック】自分はDBSの対象になる?
ご自身の状況が日本版DBSの照会対象(登録対象)になる可能性があるかどうか、簡易チェックリストで整理しましょう。
DBSに登録される可能性が高いケース
以下の条件に当てはまる場合、DBSによる照会で過去の記録が開示される可能性があります。
- 執行猶予付きの判決を受けた
→判決確定日から10年間は対象 - 罰金刑を受けた(略式起訴含む)
→刑の終了(罰金納付等)から10年間は対象 - 実刑判決(拘禁刑)を受けた
→出所(刑の終了)から20年間は対象
なお、刑法犯だけでなく、性的な条例違反も対象犯罪に含まれます。
DBSの対象外となるケース
以下の場合は、原則として日本版DBSには登録されません。
- 不起訴処分で終わった
示談成立による起訴猶予や、嫌疑不十分など - 逮捕されたが、裁判にならなかった
警察での取り調べや微罪処分のみで終了したケース(前歴のみ) - 期間が十分に経過している
執行猶予・罰金なら10年以上、実刑なら20年以上経過している - 性犯罪以外の前科である
窃盗や交通事故、傷害など、性的な要素を含まない犯罪
※このリストは一般的な目安です。ご自身の正確な「期間の計算」や「処分の法的性質」については、個別の事情により判断が難しい場合があります。就業への影響が不安な方は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
日本版DBSの問題点と課題
この制度はこどもの安全のために不可欠ですが、法的な課題も議論されています。
日本版DBSの問題点
- 職業選択の自由とプライバシーへの懸念
- 冤罪で有罪判決になってしまった際のリスク
- 労働法上の問題
職業選択の自由とプライバシー
刑期を終えて更生した人の「社会復帰する権利」や「プライバシー」が、長期間制限されることへの懸念です。
日本国憲法の枠組みでは、公共の福祉の観点から双方の人権保障の調整が求められ、性犯罪歴を有する者に対する人権の制約が憲法違反とならないかという見解もあります。
犯罪歴の調査や情報開示は、個人情報保護法の規制下にあり、本人の同意なく取得・利用することは原則として認められていません。
冤罪(えんざい)リスク
痴漢冤罪などで有罪判決を受けてしまった場合、長期間にわたり教育職に就けなくなるリスクがあります。
懲戒解雇や普通解雇は、労働契約法上「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は権利濫用として無効」とされており、個別事案ごとに合理性・相当性の判断がなされます。
犯歴のみをもって直ちに解雇することは難しく、冤罪の場合には特に慎重な判断が求められます。
労働法上の問題(現職者の解雇の妥当性)
過去の行為を理由に、現職者を解雇することの妥当性について、今後裁判などで争われる可能性があります。
解雇以外の選択肢が取れない場合、普通解雇の有効性は「児童対象性暴力等の防止等の責務」や「配置転換等の検討状況」などを総合的に考慮し、最終的には司法の場で個別具体的に判断されます。
採用時に特定性犯罪歴の有無を確認していない場合、犯歴のみで直ちに解雇することは一般的に困難とされています。
日本版DBSに関するよくある質問
交通事故や窃盗などの前科もバレてしまいますか?
交通事故や窃盗などの前科はバレません。 日本版DBSで照会されるのは性犯罪の前科です。
刑法の不同意わいせつ罪、不同意性交罪に加えて、児童ポルノ禁止法違反、各自治体の迷惑条例違反などが対象となります。
交通事故、窃盗、傷害、横領などの前科は、このシステムの照会対象には含まれません。
この情報は、保護者や一般の人も見ることができますか?
保護者や一般の人は見れません。 日本版DBSの情報照会ができるのは、認定を受けた事業者(学校や塾などの雇用主)に限られます。
保護者や一般の人が、特定の先生の犯罪歴をネットなどで検索・閲覧できるシステムではありません。
自分の記録がDBSに残っているか、自分で確認できますか?
犯罪事実確認の過程で、本人には必ず事前に通知されます。
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪前科がある場合、事業者に犯罪事実確認書が交付される前に、まず本人に対して記載内容の事前通知が行われます(こども性暴力防止法35条5項)。
この通知は、こども性暴力防止法関連システム上で本人が閲覧できる形で届きます。
つまり、本人が知らないうちに前科情報が事業者に渡ることはなく、通知を受けた後に訂正請求や中止要請(内定辞退等による手続の中止)を行うことも可能です。
なお、特定性犯罪前科がない場合は、事前通知なしに「該当なし」の犯罪事実確認書が事業者に交付されます。
また、就職活動前に自分の記録状況を確認できる本人開示請求の仕組みも整備される予定です。詳細な手続は施行に向けて今後発表されます。
過去に「下着泥棒」や「ストーカー」での前科がありますが、対象になりますか?
下着泥棒(窃盗罪や住居侵入罪)やストーカー行為は対象外とされています。 日本版DBSは、法律で定められた「性犯罪(特定性犯罪)」の罪名に基づいて照会されます。
下着泥棒は通常「窃盗罪」、ストーカー行為は「ストーカー規制法違反」として処罰されるため、DBSのリストには含まれません。
ただし、犯行時に盗撮を行っていた(性的姿態撮影等処罰法違反)など、性的な罪名も併せて有罪となっている場合は対象となります。
個人で活動するボランティアや、個人契約の家庭教師はどうなりますか?
「誰かの下で活動するか」によって異なります。 学校やスポーツ少年団など、DBSを導入している団体に所属するボランティアであれば、その団体から照会を受ける対象となります。
一方、どこにも所属せず個人で契約している家庭教師やシッターの場合、義務ではありません。
ただし、個人事業主として自ら国の認定を受け、身の潔白を証明することは可能です(その場合、自分の記録を国に確認してもらう形になります)。
不安な方は早期の弁護活動が重要です
日本版DBSの導入により、性犯罪(痴漢・盗撮・条例違反含む)による前科のリスクは、これまで以上に大きくなりました。
もし、ご自身やご家族の状況が不安な場合は、弁護士を通じて適正な処分を目指しましょう。
- 被害者との示談交渉
- 再犯防止への取り組み
- 事実関係の精査
これらを弁護士を通じて適正な処分を受ければ、DBSへの登録を回避できる可能性が高まります。不安を抱えたままにせず、早めに弁護士等の専門家へ相談することをお勧めします。


