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淫行の刑罰・捜査の流れ・裁判例

淫行で適用される刑罰

いわゆる淫行とは「18歳未満と性行やみだらな行為、その類似行為等を行う」犯罪で、態様により適用される法律が異なります。
また、淫行は、双方同意の上での行為だったとしても、罪に問われる可能性があります。

青少年保護育成条例

2年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金

第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

※東京都の場合

淫行条例は、各都道府県が独自に定めている条例で、刑罰の内容などに差異があり、東京都では「みだらな」性交等を禁じています。
警視庁によると、婚約関係やそれに準じる真摯な関係にあるものは処罰の対象外とされていますが、それが証明されない限り、検挙・起訴される可能性もあります。

児童福祉法34条1項6号

10年以下の拘禁刑
もしくは300万円以下の罰金
または併科

第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫(いん)行をさせる行為
第六十条 第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

「自分以外の誰かと児童を淫行させる行為」が、処罰の対象となります。
また、「児童と淫行をした」という態様についても、「事実上の影響力を児童に及ぼした(教師の立場を利用した等)」「児童が淫行することを助長し、促進した」という事実が認められた場合には、この条文によって処罰され得ます。

刑法177条 不同意性交等

5年以上の有期拘禁刑

第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

13歳未満の者に対して性交等をした場合には、相手方の同意の有無を問わず、不同意性交等罪に問われ得ます。
仮に有罪となった場合、通常は執行猶予もつきません。
なお、被害者が13歳未満であることを認識していなかった場合には、この罪は成立しません。

淫行の捜査の流れ

淫行は、被害者側の同意の有無に関わらず、罪に問われ得ます。
以下に紹介する捜査の流れのほかにも、昨今は警察官がSNSや出会い系サイトなどを巡回する「サイバーパトロール」によって事件が露見するケースも増えてきています。

被害者が被害を申告した場合

1 被害者が被害を告白
2 警察に通報
3 捜査

淫行の事案では、被害者が被害について周囲に打ち明け、事件が露見するという態様が多いです。
たとえ被害者自身に事件を明るみにする意思がなかったとしても、不審に思った両親が追及したり、友人や周囲の人が事実を広めるなどして警察が事件を認知するケースは多くあります。

被害者が補導された場合

1 被害者補導
2 警察が事件を認知
3 刑事事件化

被害者が警察に補導され、それをきっかけに警察が事件を認知し、捜査が開始されるというケースもあります。
警察が被害者を補導するきっかけとしては、パトロール中に被害者が夜間に出歩いているところを見かけたり、別事件の被害者として保護された、といったものが挙げられます。

警察官に見つかった場合

1 警察官に見つかる
2 事情聴取
3 刑事事件化

警察官は、日頃から、ホテル街や夜間の繁華街などを重点的にパトロールしています。
そのため、被害児童を連れて歩いた際に、巡回中の警察官に目撃されることもあります。
その後の事情聴取などで、淫行の事実が明るみに出れば、刑事事件として捜査を受けることになるでしょう。

淫行の有名裁判例

13歳~18歳の児童に対する淫行は、児童福祉法34条1項6号か、各都道府県が定める淫行条例によって処罰されます。
ここでは、児童福祉法34条1項6号における「淫行をさせる行為」の定義、淫行条例における「淫行」の意義や合憲性などについて判示された裁判例をご紹介します。

児童福祉法34条1項6号における「淫行させる行為」の定義について判示された裁判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 平成26年(あ)第1546号 判決年月日: 平成28年6月21日

判決文抜粋

「(淫行とは)児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当」
「(させる行為)とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいう」

弁護士の解説

児童福祉法における「淫行させる行為」というのは、「児童に対して事実上の影響力を及ぼして」「児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」を言います。
適用に当たっては、「行為者と児童の関係、年齢、更衣の内容等を総合考慮」するとされています。
実務上も、たとえば教職者の生徒に対する淫行事案は、淫行条例ではなく児童福祉法で処罰されるケースが多いようです。

淫行条例における「淫行」の意義と合憲性が判示された裁判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和57年(あ)第621号 判決年月日: 昭和60年10月23日

判決文抜粋

「(淫行とは)広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく(略:青少年の未成熟に乗じるような性交のほか)青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似制為をいう」
「(上記のような解釈の上では)処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえない」

弁護士の解説

淫行条例における「淫行」の定義について判示され、さらに処罰の範囲が広すぎることも不明確であることもないため、淫行条例は憲法に違反しないとも判示された裁判例です。
この裁判では、被告人と当時16歳の被害児童との間に相当期間にわたって付き合いと見られるような関係があったものの、年齢や経緯等に照らし「被害児童を自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性行為に該当する」とされ、有罪となりました。

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