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準強制性交(準強姦)の刑罰・捜査の流れ・裁判例

準強制性交(準強姦)で適用される刑罰

準強制性交罪(準強姦罪)は言葉の響きから強制性交等罪(強姦罪)の刑罰の軽い版だと思われがちですが、これはまったくの誤解です。
準強制性交等罪(準強姦罪)の刑罰の内容は強制性交等罪(強姦罪)とまったく変わりません。
強制性交等罪を適用できない犯行について、補充しカバーするための刑罰なのです。

刑法178条2項 準強制性交等

5年以上の有期懲役

人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、(略:強制性交等と同じように処す)る。

条文の「心神喪失」「抗拒不能」とは、精神的な傷害により正常な判断力を失っている状況や心理的又は物理的に抵抗ができない状況(具体例:酩酊、睡眠、錯誤している状況等)を指します。
この状況で性交、肛門性交、口腔性交をすると準強制性交等罪が成立します。

旧刑法178条2項 準強姦

3年以上の有期懲役

女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、(略:強姦罪)の例による。

平成29年7月13日以前に犯した罪は改正前の刑法により処罰されます。
現行法と比べ「被害者が女子限定=男子への性的暴行等は準強制わいせつ罪などに問われる」「姦淫=膣への性器の挿入のみが罰せられ肛門性交、口腔性交は準強制わいせつ罪などに問われる」「量刑の下限が3年」といった違いがあります。

準強制性交(準強姦)の捜査の流れ

準強制性交等罪では、「合意があった(あると思い込んでいた)」として被疑者が容疑を否認するケースも多いです。
客観的に「合意があった(あると思い込んでいた)」という事実が認定されれば、準強制性交等罪は成立しません。
いずれにせよ警察官、検察官あるいは弁護士は、慎重に捜査・証拠収集を行って、犯行の全容の把握に努めることになります。

被害届が提出された場合

1 被害届提出・告訴
2 警察が事件を認知
3 捜査

犯行後、被害者からの「被害届の提出」「告訴」などをきっかけに警察が事件を認知する可能性があります。
事件を認知した警察は、取調べやDNA鑑定、防犯カメラの解析などで犯行の全容把握に努めます。
在宅事件化する場合の他、通常逮捕(=後日逮捕)が行われる場合もあります。

準強制性交(準強姦)の有名裁判例

強制性交等罪は施行されてまだ間がありませんが、基本的には旧準強姦罪の裁判例が準用されるとみられます。
準強制性交等罪は「心神喪失・抗拒不能」の定義についてとくに問題となります。
「心神喪失・抗拒不能」について参考となる裁判例と、さらに着手の時期について参考となる裁判例も併せて解説します。

「心神喪失・抗拒不能」について参考となる裁判例

裁判所名: 東京高等裁判所 事件番号: 昭和31年(う)第1329号 判決年月日: 昭和31年9月17日

判決文抜粋

「有形力の行使による暴行や畏怖せしむる言辞を弄するの手段に出でた事実がないとしても、欺罔等の巧妙な手段によつて機会を作り、相手方の性的無知ないしは性的所作事に起因する驚愕による前後の辨(わきまえ)を失した抗拒不能に乗じて姦淫を遂げた事実あるにおいては、強姦の罪の成立あるを免がれない。」

弁護士の解説

被害者が性交等の行われることについて認識できない状況(睡眠、泥酔状態など)では、心神喪失・抗拒不能だったと認められるのが通常です。
また被害者が性交等が行われることについて認識していた場合でも、自由意思に従って行動する精神的余裕が失われており、抗拒を期待できないと客観的に認められれば、準強制性交等罪成立の余地はあります。
この裁判例では、被害者は性的無知ないし驚愕によって抗拒不能だったとされ、被告人は有罪となりました。

着手の時期について参考となる裁判例

裁判所名: 大阪高等裁判所 事件番号: 昭和33年(う)第1107号 判決年月日: 昭和33年12月9日

判決文抜粋

「抗拒不能の状態になつているのに乗じて(略:被害者)の上に乗り姦淫しようとしたが、同女がしくしく泣いていたので同情して姦淫することを断念しその目的を遂げなかつたものである。」
「(略:この行為は)同法第一七九条第一七八条第一七七条前段に各該当」

弁護士の解説

「心神喪失、抗拒不能に乗じた」という態様の準強制性交等罪に当たる行為について、犯罪に着手したとみなされる時期は「性交等に着手した時点」です。
より具体的には、「性交等に向けて通常行われる、性交等に接着した行為」を行った時点とされています。
この裁判例では「抗拒不能の女性に乗りかかった」という時点で旧準強姦罪の未遂罪が成立するとされました。
また「心神喪失、抗拒不能にさせた」という態様の場合、その時点で犯罪に着手したとみなされます。

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