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強姦が非親告罪へ改正|強制性交等罪の構成要件と改正のポイント

強姦(強制性交)

2017年7月13日に施行された改正刑法によって、強姦罪は強制性交等罪に名称が変更されました。強制性交等罪は、強姦罪を厳罰化した犯罪で、起訴に際し告訴が不要な非親告罪です。

この改正は、性犯罪に関する処罰が実態に即したものになっていないという観点から行われました。刑法制定以来、実に110年ぶりとなる大幅な改正です。

この記事では、強姦罪が親告罪から非親告罪になった経緯や、強制性交等罪との構成要件の違いや改正のポイント、もし強制性交等の行為をした場合どうすれば良いのかを詳しく解説します。

※この記事の内容は、2017年の刑法改正に基づいています。

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強姦罪が親告罪から非親告罪の強制性交等罪へ改正

強姦罪が非親告罪となった経緯

親告罪とは、告訴がなければ刑事事件として起訴することができない犯罪をいいます。告訴とは、被害者が、捜査機関に対し被害の事実を申告し、かつ犯人の処罰を求める意思表示です。強姦罪は親告罪ですが、強制性交等罪は非親告罪です。

改正前は強姦罪や強制わいせつ罪などの性犯罪は親告罪とされていました。裁判で事実関係が明らかになることによって、被害者のプライバシーが害されるおそれがあるため、被害者の意思を尊重する必要があるとされていたからです。

しかし、親告罪とされていることで、本来処罰されるべき性犯罪が処罰されていないという批判がありました。また、告訴するかどうかという重大な選択を被害者に迫ることで、精神的・肉体的にさらなる負担をかけているという状況も認められました。こうした従前の状況を見直し、改正後は強制性交等罪について非親告罪化されたのです。

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強姦罪以外に非親告罪となった性犯罪

改正によって非親告罪となった性犯罪は強制性交等罪(旧強姦罪)の他、準強制性交等罪(旧準強姦罪)、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪です。改正法が施行される以前の事件であっても遡及的に非親告罪として扱われます。強姦罪等が親告罪であったころに示談を成立させ、告訴されていなくても、理論上は起訴される可能性があるのです。

強制性交等罪(旧強姦罪)とは| 非親告罪化以外の改正ポイントは?

強姦罪は、刑法改正で強制性交等罪に名称が変わり親告罪ではなくなりましたが、その他にも、「構成要件」や「法定刑」などいくつか改正のポイントがあります。

構成要件とは、条文上に規定されている犯罪が成立するための要件のことをいいます。法定刑とは、刑罰の範囲をした部分です。

以下では、非親告罪になったこと以外の重要な改正ポイントについて解説します。

強制性交等罪とは?構成要件を解説

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

刑法旧177条(旧強制性交等罪)

強制性交等罪は、以下の行為によって成立する犯罪です。

  • 13歳以上の者に対して、暴行又は脅迫を用いて強制的に性交等の行為をすること
  • 13歳未満の者に対して、性交等の行為をすること

強制性交等罪の「暴行又は脅迫」とは、相手方の反抗を著しく困難にする程度のものを意味します。同意の有無だけでは犯罪の線引きが難しいこともあり、強制性交等罪が成立するためにはこの暴行・脅迫要件が必要とされています。

「性交等」とは、性交、肛門性交または口腔性交を指します。「性交等」には、行為者が自己または第三者の陰茎を被害者の膣内、肛門内または口腔内に入れる行為に加え、自己または第三者の膣内、肛門内または口腔内に被害者の陰茎を入れる行為を含みます。陰茎以外の異物を挿入する行為は、強制わいせつ罪に当たる可能性があります。

既遂時期は、膣等内への「挿入」又は「没入」で足り、射精を要しないとするのが判例です(大判大正2年11月19日)。

構成要件の違いと改正ポイント①行為

改正前の強姦罪の条文は次の通りです。

暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

刑法旧177条(旧強姦罪)

強姦罪の構成要件では、実行行為は「姦淫」 (=男性性器を女性性器に挿入すること) とされていました。これに対し、強制性交等罪では「性交等」に改められ、改正前は強制わいせつでしか罰せられなかった肛門性交と口腔性交も強制性交等罪として重く処罰されることになりました。

構成要件の違いと改正ポイント②加害者・被害者

強姦罪では、加害者は男性、被害者は女性に限られていました。つまり、女性が加害者となる場合や男性が被害者となる場合は強姦罪の処罰対象とならず、強制わいせつ罪となるにすぎませんでした。

しかし、これでは性犯罪の実態にそぐわないという批判がありました。そこで、強制性交等罪では、主体も客体も「者」と規定されました。つまり、男女いずれも加害者・被害者になりうることになったのです。

なお、構成要件上、男性同士であっても強制性交等罪は成立しますが、加害者と被害者の両方が女性という場合は「性交等」が観念できないため強制性交等罪では処罰されません。

構成要件の違いと改正ポイント③法定刑

強姦罪の法定刑は3年以上の有期懲役でした。しかし、これでは処罰が軽すぎるということで、強制性交等罪では下限が引き上げられ5年以上の有期懲役となりました。有期懲役の上限は20年なので、強制性交等罪の法定刑は5年以上20年以下の懲役です。

厳罰化したことで、執行猶予の可能性も変化しました。法律上、執行猶予は言い渡される刑が懲役3年以下でなければ付されません(刑法25条)。

強制性交等罪で起訴された場合、執行猶予となるには、酌量減軽(刑法66条)等とされた上、言い渡される刑が懲役3年以下となる必要があります。したがって、強制性交等罪で執行猶予を得るのは相当難しいといえます。

とはいえ、行為態様がそれほど悪質なものではない、示談が成立している、前科前歴がない等の事情があれば、執行猶予の可能性もゼロではありません。事案に合った対応をとるため、できる限り早く弁護士に相談することをおすすめします。

構成要件の違いと改正ポイント④集団強姦罪の廃止と監護者性交等罪

改正前は複数で強姦をする行為は集団強姦罪として「4年以上の有期懲役」とされていましたが、強制性交等罪の法定刑が「5年以上の有期懲役」となったことに伴い廃止されました。現在は複数名で強姦を共同して行った場合も強制性交等罪で処罰されます。

また、暴行・脅迫要件を必要としない類型として、新たに「監護者性交等罪」(刑法179条2項)が新設されました。監護者性交等罪とは、親などの「監護するものであることの影響力に乗じて」性交等を行う犯罪で、法定刑は強制性交等罪と同じく「5年以上の有期懲役で」です。

強姦罪から強制性交等罪への改正ポイントまとめ

  • 構成要件の変化①肛門性交・口腔性交も処罰対象になった
  • 構成要件の変化②加害者・被害者ともに男女を問わなくなった
  • 法定刑が引き上げられた(3年以上→5年以上)
  • 親告罪ではなくなった
  • 厳罰化に伴い集団強姦罪が廃止された
  • 監護者性交等罪が新設された

非親告罪になっても強制性交等罪の示談の重要性は変わらない

強制性交等罪でも示談が最重要な理由

強姦罪が非親告罪となったいま、被害者と示談をする意味はなくなったのでしょうか。答えは「ノー」です。示談が成立し、被害届の取り下げや、告訴の取り消しがなされると、検察官が被害者意思に配慮して、起訴を見送る可能性は十分あります

裁判になった場合の被害者の負担は非常に大きいものです。公開の裁判で詳細に事件が審理され、供述も幾度となく求められることになります。いくら非親告罪になったとはいえ、被害者が望んでいない起訴を検察官の判断でするということはそう多くありません。そのため、強姦罪が非親告罪となった今でも加害者にとって示談は最重要といえるのです。

非親告罪化しても示談は刑の減軽に繋がる

起訴されて刑事裁判が始まった場合、自分の人生がこれからどうなってしまうのか不安かと思います。大切なのはまずは事件にしっかり向き合うことです。

そのために、弁護士は被告人と接見を重ねます。犯罪被害の深刻さを痛感することから始まり、どうすれば二度と同じ間違いを犯さないか考えを深めていくことが重要です。弁護士は、被告人とともに事件に向き合い、場合によっては専門の医療機関について情報提供するなど被告人の立ち直りをサポートします。被告人が更生する環境が整っていると判断されれば、量刑上有利になります。

さらに、弁護士は、被告人が真摯に反省していることを被害者に伝え、示談交渉を進めます。示談の成立は刑の減軽にとっても非常に重要です。被害者が「許す」という意思を示していれば、刑を軽くする事情として重視されます。

強制性交等罪(旧強姦罪)の示談は弁護士に任せるべき

示談で大切なのは、何よりも被害者の身になることです。強制性交等罪のような重大な性犯罪ではこのことが特に大切です。刑事弁護のプロである弁護士に依頼し、まずは被害者の苦しみを理解するところから始めましょう。そして、被害者の心情に十二分に配慮しながら示談を進めましょう。

被害者に謝罪したいと思っても、被害者の連絡先を知らない場合もあるでしょう。その場合でも、弁護士に依頼すれば、示談を進められる可能性があります。弁護士であれば、検察官や警察に被害者の連絡先を問い合わせることができるからです。検察官等は、被害者の意向を確認し、被害者の了解が得られれば弁護士に連絡先を教えるという流れが一般的です。

被害者が、連絡先は教えたくないが、弁護士を通じて謝罪文等の受け取りには応じるという場合もありえます。その場合、被害者に渡した謝罪文を証拠として提出することも一つの方法でしょう。

強制性交等罪(旧強姦罪)は被害感情が相当厳しいため、被疑者・被告人やその家族が示談交渉をすることは避けるべきでしょう。被害者に直接接触することは、捜査機関に証拠隠滅が疑われる行為にもなります。弁護士であれば、捜査機関に証拠隠滅を疑われることなく、第三者的な立場で被害者感情に配慮した示談交渉ができます。

示談交渉が難航した場合でも、被告人や家族が実際に示談金を用意し、示談交渉を継続中であることを示す報告書を証拠として提出する方法があります。示談は難しくても、誠心誠意、謝罪の意思を示すことが大切です。

被告人が心から反省すれば、親族や雇用主など立ち直りを支援してくれる人も現れるでしょう。その場合、親族等に被告人と同居し監督していくと法廷で証言してもらうことで、刑の減軽につながる可能性が高まります。

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強制性交等罪(旧強姦罪)は弁護士に相談

強制性交等は逮捕され、実刑になる可能性も高い犯罪です。

強制性交等罪で逮捕された場合、刑事手続きは法律に基づき進められていきます。刑事訴訟法には時間的な制約が規定されており、捜査機関は厳格な時間制限の中で速やかに手続きを進めます。すぐに弁護士に相談し、弁護活動を開始してもらうことで、①早期釈放、②不起訴の獲得、③刑を軽くすることを目指すことができます。

特に、強制性交等罪では被害者対応が今後の刑事事件の流れに極めて重要です。適切に被害者対応を進めることで、不起訴を獲得することができれば、刑事裁判を回避することができます。不起訴になれば、前科がつくことはありません。ポイントは、性交でトラブルになった際には、すぐに弁護士に相談し対応してもらうことです。

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