6か月以上10年以下の懲役
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、(略:強制わいせつ罪)の例による。
準強制わいせつ罪は言葉の響きから強制わいせつ罪の刑罰の軽い版だと思われがちですが、これはまったくの誤解です。
準強制わいせつ罪の刑罰の内容は強制わいせつ罪とまったく変わりません。
強制わいせつ罪を適用できない犯行について、補充しカバーするための刑罰なのです。
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、(略:強制わいせつ罪)の例による。
条文の「心神喪失」「抗拒不能」とは、精神的な傷害により正常な判断力を失っている状態や心理的又は物理的に抵抗ができない状態(具体的には睡眠、酩酊等の状態や、錯誤などによって抵抗を期待できない状態等)を指します。
わいせつな行為とは具体的には接吻、陰部に手を触れる、乳房を弄ぶ、自己の陰部を押し当てるなどの行為を指します。
準強制わいせつの犯行態様の代表例としては、顔見知りの間柄で睡眠や泥酔状態に乗じてわいせつ行為をする、路上や電車で泥酔、睡眠している人にわいせつ行為をする、検診などと偽ってわいせつ行為をするといったものが挙げられます。
また準強制わいせつの事案では「合意があった(あると思い込んでいた)」として準強制わいせつの故意を否認するケースも多いです。
犯行後、被害者からの「被害届の提出」「告訴」などをきっかけに警察が事件を認知する可能性があります。
事件を認知した警察は、取調べや防犯カメラの解析などで犯行の全容把握に努めます。
在宅事件化する場合の他、通常逮捕(=後日逮捕)が行われる場合もあります。
被害者や目撃者などにより現場で拘束されて、警察官に引き渡されるというケースも考えられます。
例えば、電車における泥酔、睡眠に乗じた痴漢行為は準強制わいせつ罪に該当し得ます。
痴漢事案では被害者や目撃者により現場で拘束されたあと、駅員室に連れられて警察に引き渡されるという流れを経ることが多いです。
準強制わいせつ罪は、「心神喪失・抗拒不能」の定義についてしばしば問題になり、とくに被害者がわいせつ行為が行われることについて認識していたものの、それを医療行為等、必要な行為だと錯誤していたような場合が問題となります。
ここで上記態様の事件につき有罪となった裁判例を挙げて、くわしく解説していきます。
「「抗拒不能」とは(略:社会一般常識に照らし)具体的事情の下で身体的または心理的に反抗の不能または著しく困難と認められる状態」
「全裸になつて写真撮影されることもモデルになるため必要である旨の発言等は(略)抗拒不能に陥らせるに十分」
プロダクションの実質経営者が、モデル希望の女子学生に対しモデルになるには必要などと言って全裸にさせて写真撮影したりわいせつ行為等をしたという事案につき、準強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例です。
泥酔、睡眠状態に乗じたり、させたりして行われたわいせつ行為について、準強制わいせつ罪が成立するのは議論をまたないかと思います。
それに加えこの裁判例のように錯誤によっても抗拒不能になったとされ、有罪となるケースもあるのです。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。