強制わいせつ罪は悪質な痴漢や、無理やりキス・ボディタッチをする行為、抱き着いて胸を揉む行為など、他者へのわいせつ行為に適用されうる犯罪です。
強制わいせつ罪で有罪になると「懲役6月~懲役10年」の範囲で判決が言い渡されます。
執行猶予がつく可能性はありますが、言い渡される刑が懲役3年以下でなければ執行猶予はつきません。
執行猶予の可能性を高めるためには、刑事事件を扱っている弁護士の中でも、被害者対応(示談)の経験が豊富な弁護士に依頼することがポイントです。
この記事では、強制わいせつ罪の判決の重さ・解決のポイント、余罪が量刑に与える影響などについて解説しています。
刑事事件はスピードが命です。お早目に強制わいせつ罪に強い弁護士に相談しましょう。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
強制わいせつ罪の判決は懲役6月~懲役10年
強制わいせつ罪の刑罰は罰金刑なし・懲役刑のみ
強制わいせつ罪は、旧刑法176条に規定されている犯罪です。
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
旧刑法176条
強制わいせつ罪の法定刑は懲役刑のみで、罰金刑はありません。強制わいせつ罪の刑罰は、「懲役6月~懲役10年」ですので、刑事裁判になり判決を言い渡されるときには、この範囲内で刑が言い渡されることになります。
2023年7月13日以降の事件は不同意わいせつ罪に問われる
強制わいせつ罪に問われるのは、2023年7月12日以前の事件です。刑法改正により、2023年7月13日以降の事件は不同意わいせつ罪に問われます。
不同意わいせつ罪とは、相手の同意がない状態でわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
同意のない状態でのわいせつな行為とは、具体的には「勝手に体を触る」「いきなりキスをする」「無理矢理、自分の性器を触らせる」などになります。
なお、相手が16歳未満(13歳以上16歳未満の場合は行為者が5歳以上年長)の場合、同意の有無に関わらず不同意わいせつ罪の処罰対象となります。
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強制わいせつが刑事事件化した場合の流れ
強制わいせつ事件をおこして、警察・検察などの捜査機関にその刑事事件が発覚した場合、まずは捜査機関の捜査を受けることになります。
刑事事件の捜査が終了すれば、刑事裁判を提起されるかどうか(起訴されるか不起訴になるか)が決まります。
起訴された場合は刑事裁判が開かれ、裁判官によって有罪判決か無罪判決が言い渡されます。
起訴をされてしまうと、99.9%の刑事事件は有罪となります。したがって、刑罰を回避するためには不起訴を目指す必要があります。
刑事事件の流れを詳しく知りたい方は『刑事事件の流れ【弁護士監修】逮捕後23日以内にすべき対応』の記事をご覧ください。
不起訴獲得を目指したい方は『不同意わいせつ(旧強制わいせつ)の不起訴獲得のポイントは?裁判を回避した実例は?』の記事をご覧ください。
強制わいせつ罪で逮捕されるとすぐ刑務所に送られる?
強制わいせつ罪で逮捕されると、すぐに刑務所行きになると思う人もいるでしょう。しかし、強制わいせつ罪に限らず、刑事事件で逮捕されたあと、すぐに刑務所に送られるということはありません。
逮捕後は捜査機関による取り調べや必要に応じて勾留などの手続きが取られます。刑務所へ収監されるのは、最終的に裁判で執行猶予のつかない実刑判決を受けたときです。
刑事裁判で判決が言い渡された日の翌日を1日目として、14日が経過すれば刑が確定します。
つまり、逮捕されてすぐに裁判になるわけでも、判決が言い渡されて刑務所行きになるわけでもありません。
逮捕後、すぐに弁護士に弁護活動を依頼することで、起訴されて裁判になることを回避したり執行猶予付き判決を獲得できたりする可能性を高めることができます。
刑事事件で逮捕後された後の基本的な流れについて知りたい方は、『逮捕されたら|逮捕の種類と手続の流れ、釈放のタイミングを解説』の記事を併せてお読みください。
強制わいせつ致傷罪の判決の重さは?
強制わいせつをした際に、性的暴行を加えて被害者に怪我をさせた場合には、強制わいせつ致傷罪というさらに重い犯罪となります。被害者を死亡させると、強制わいせつ致死罪が適用されます。
強制わいせつ致死傷罪の刑罰は「無期または3年以上の懲役」です(旧刑法181条1項)。最も重い判決は「無期懲役」となります。
強制わいせつ | 強制わいせつ致死傷 | |
---|---|---|
態様 | 暴行・脅迫を用いてわいせつ | わいせつ行為に伴い相手を死傷させる |
刑罰 | 6月~10年の懲役 | 無期懲役または3年以上の懲役 |
強制わいせつ罪の判決で執行猶予はつく?獲得する方法は?
強制わいせつ罪の判決で執行猶予がつく可能性はある
強制わいせつ罪の判決に、執行猶予がつくことはあります。
執行猶予とは、刑事事件の裁判で有罪判決が言い渡された場合でも、刑罰の執行までに一定期間の猶予が与えられるという制度です。
執行猶予がつくのは、懲役3年以下の判決を言い渡されるときに限られます。
強制わいせつ罪は「懲役6月~懲役10年」の中で判決が言い渡されますが、判決が3年を超えるようであれば、執行猶予の可能性はなくなります。
執行猶予つく | 執行猶予つかない | |
---|---|---|
量刑 | 3年以下の懲役刑 | 3年を超える懲役刑 |
服役 | 必要なし | 必要あり |
執行猶予が付与される期間は1年から5年です(刑法25条1項)。執行猶予がつけば「懲役1年/執行猶予3年」「懲役3年/執行猶予5年」などと判決が言い渡されることになります。
執行猶予がどのような制度か詳しく知りたい方は『執行猶予にしてほしい。懲役実刑との違いは?執行猶予中の逮捕で取り消し?』の記事をご覧ください。
強制わいせつで執行猶予を獲得する方法
強制わいせつで執行猶予を獲得するためには、裁判官に刑罰を軽くすべきだと思ってもらえるような事情を主張する必要があります。
執行猶予を獲得する方法として、以下の対応が挙げられます。
強制わいせつで逮捕されたらすぐに被害者対応を行う
強制わいせつ罪で逮捕された場合、すぐに被害者対応をはじめることが必要です。被害者対応をしなければ、起訴されることが見込まれます。
また、判決で厳しい判断が下される可能性もあるので、出来る限り早く被害者と示談をして、許しを得ることが大切です。
強制わいせつの示談では、示談金が300万円になることもあります。もちろん、被害者が受け入れてくれる場合には、数十万円で話が落ち着くこともありますが、強制わいせつでは示談金が100万円を超えるケースも珍しくありません。
アトム法律事務所が過去に取り扱った強制わいせつの示談金相場では50万円を目安に上下に金額の分布が見られます。
示談ではしっかりと被害者の心情に耳を傾け、実損害の部分と精神的苦痛に配慮した金額で示談をすることが大切です。
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弁護士を通じて示談を進める
強制わいせつ罪のような性犯罪は、加害者本人が示談をすることは控えるべきです。被害者の心情を考えたとき、直接加害者に接触されることは恐怖や不快感を与えます。
すぐに弁護士に対応を依頼して、弁護士を通じて示談の話を進めるようにしてください。
しかし、弁護士に依頼すれば加害者は何もしなくてよいというわけではありません。
謝罪の意思を書面にしたり、被害者の不安を少しでも取り除くために、被害者の生活圏内に足を踏み入れないようにするなど、加害者の努力も必要になります。
強制わいせつ罪は金銭の支払いで簡単に解決するものではありませんので、担当弁護士と十分な打合せをして示談を進めることが大切です。
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医療機関などの専門家に協力を仰ぐ
強制わいせつ事件は、「魔がさした」として単発の事件として起こることもあれば、同じ者が複数回行う場合もあります。
複数回、同じ被害者が狙われることもあれば、別々の被害者が狙われることもあります。このとき、原因として病的な性的嗜好が関係していることも否定できません。被害者対応と同時に、医療機関などの専門機関を受診して、根本的な解決を目指すことが大切です。
医師や心理カウンセラーの意見書を裁判所に提出し、少しでも執行猶予判決の可能性を上げるということも、重要な弁護活動になります。原因の究明と再発防止に真摯に向き合うことは、強制わいせつ事件の解決においては極めて重要です。
強制わいせつの再犯なら執行猶予は難しい?
強制わいせつの再犯については、初犯よりも重い刑罰になる可能性は高いです。もっとも、事案によっては執行猶予を目指せるケースもあります。
性犯罪は被害者との示談が重要で、被害者にきちんと賠償し、許しを得られるかどうかが刑事処分の重さにかかわってきます。
しかし、性犯罪の被害者の方が加害者と直接会ってくれる可能性は低いので、弁護士を入れて、直接かかわらない・真摯に向き合いたいという意志を伝えることがポイントです。
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強制わいせつ罪で余罪がある場合の対応と余罪の影響
余罪があってもすぐに全てを話すのかは検討すべき
警察の取り調べで余罪について聞かれても、すぐに全てのことを話す必要があるとはいえません。なぜなら、警察による捜査の進捗や証拠の有無は不明だからです。
ご自身の記憶があいまいな場合や返答に迷いがある場合、黙秘することも対応策のひとつです。あるいは早急に余罪を認め、被害者に謝罪と賠償を尽くすほうが良いと判断できる事案もあります。
強制わいせつ事件における余罪の取調べ対応は、刑事事件にくわしい弁護士の見解を聞いておきましょう。
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余罪があると逮捕の可能性が高まる
被害者が多い場合や、同じように強制わいせつにあたる行為をおこなっていた場合など、余罪があると逮捕もしくは再逮捕の可能性が高まるといえます。
たとえば、在宅事件として逮捕されずに捜査が進んでいたとしましょう。ところが余罪が発覚し、被疑者の身近にいる人にまで被害が及んでいたと分かれば、被害者を保護するためにも逮捕という措置が取られることは十分あるのです。
そのため、余罪があるときには慎重な対応が必要とされます。
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余罪によって罪が重くなるケースもある
余罪に関しても追起訴された場合には、量刑に影響する可能性があります。もっとも、余罪が発覚しただけではなく、余罪について起訴されるかどうかが重要です。
余罪についても起訴(追起訴)されれば、併合審理として扱われることが多く、より重い刑罰が言い渡される可能性が高くなる可能性があります。
余罪の発覚と起訴は異なる
刑事事件における刑罰は、検察が起訴という手続きをとり、裁判が開かれ、審理を経て言い渡されます。余罪が不起訴となれば、もともとの強制わいせつに関する刑罰には原則影響しません。
例を挙げて説明します。
ある強制わいせつ事件で捜査を受けており、その際、スマホのカメラフォルダから余罪が発覚したとしましょう。
もともとの強制わいせつ事件で起訴された一方で、余罪について被害者との示談が成立し、許しを得たことで不起訴になったら、余罪については「裁判にかけられない」ということになります。そのため、もともとの強制わいせつ事件に関してのみ審理され、量刑が言い渡されるのです。
ただし「原則影響しない」と前述したとおり、余罪内容によっては「利己的な犯行である」「残忍である」などとして、起訴されたもともとの強制わいせつ事件の情状を判断する資料になることはあります。
強制わいせつ罪に関して余罪に不安がある方は、いち早く刑事事件に強い弁護士への相談を検討してください。取調べ対応の助言から被害者との示談方法まで、幅広く相談を受け付けています。弁護士のサポートが必要だと判断したら、正式な依頼も考えてみてください。
強制わいせつ罪の判決に被害感情は反映される?
強制わいせつ罪の裁判では被害者参加もありえる
強制わいせつ罪で起訴されれば、公開の法廷で正式裁判が開かれることになります。裁判では被害者参加という手続がとられることがあります。
例えば、13歳未満の子供が被害者になった場合、その法定代理人である親は検察官に申し出て、法廷で事件に対する心情を陳述する手続が用意されているのです。被害者は、被告人に対して犯罪事実について質問したいときは、裁判所の許可を得て質問することもできます。
刑事裁判は、基本的に検察官が被告人を訴え、それを裁判所が判断するという場であり、被害者は裁判の当事者に含まれません。
しかし、被害者がこの制度を利用することで、刑事裁判に関与することができます。裁判所の許可を得て証人尋問もすることができます。被害者が積極的に刑事裁判の手続に参加することができる制度が被害者参加制度です。
被害感情、処罰感情は判決に影響する
強制わいせつ事件の判決には、被害者の被害感情や被告人に対する処罰感情が影響します。強制わいせつ事件は、犯罪の中でも被害感情や処罰感情が強い傾向にあるといえるでしょう。
詐欺事件や窃盗事件のように、被害弁償をすれば被害が回復するというものではありません。性的羞恥心が害されたとき、その精神的苦痛は簡単には癒されず、被害者は一生苦しむという場合もあります。
場合によっては、強制わいせつの被害者になったことで精神科に通わざるを得なくなったり、仕事ができなくなってしまうという深刻な被害が生じることもあります。
このような結果も含めて裁判では審理が行われるのです。被害者の感情がおさまらない以上、判決は厳しいものになると予想されます。
弁護士の弁護活動は「示談」がメインテーマになる
強制わいせつで被害感情や処罰感情が判決に影響するということは、逆に言えば、被害者が許していて処罰を望んでいないのであれば重たい刑罰を科す必要性も小さくなるということです。
つまり、執行猶予付き判決を得るには、弁護士の活動として示談は必須です。捜査段階で示談がうまくいかなくても、公判段階で示談が締結できれば、それを証拠として公判で提出することが可能です。被害者と示談ができ、被害者が許しているという事情は、判決にも影響します。
示談あり | 示談なし | |
---|---|---|
被害者の許し | もらえる | もらえない |
刑の軽減 | 可能性高い | 可能性低い |
強制わいせつ事件の弁護活動の目的は、被告人が少しでも軽い刑罰になるよう求めていくことです。強制わいせつ事件では、示談ができているかどうかが注目されますので、必然的に弁護士の活動のメインテーマは示談交渉になります。
強制わいせつ事件で弁護士を選ぶ際には、性犯罪事件の示談実績が豊富にあるかどうかを一つの基準にすることをおすすめします。
強制わいせつ罪の弁護士相談
弁護士の口コミ・アトムを選んだお客様の声
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のお客様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
今生活ができるのは先生の熱心な対応や周りの人々のおかげです。
(抜粋)事件に対して、熱心に対応して頂き本当にありがとうございました。今、こうして生活できているのも先生を含め、周りの人々の助けがあったからと心から感謝しております。
深夜でもすぐに接見に行ってくださり、不起訴になりました。
(抜粋)おかげ様で事件を起こしておきながら勝手な言い方だとは思いますが、不起訴処分となり、無事自宅に戻ってくる事ができました。心より感謝しております。
刑事事件はスピーディーな対応が非常に重要です。早期の段階でご相談いただければ、あらゆる対策に時間を費やすことができます。
また、強制わいせつの時効が成立するのを待つという考えもありますが、賢明な判断とはいえません。
強制わいせつ罪の公訴時効は12年です。12年もの間、逮捕や警察が自宅に来ることを不安な状態で過ごすことは精神的な負担が非常に大きくなります。
強制わいせつ罪の時効について詳しく知りたい方は『不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪の時効は何年?待つよりも弁護士に相談すべき?』の記事をご覧ください。
強制わいせつ罪の判決がご心配な方は、一度、アトム法律事務所の弁護士に相談してみませんか。
強制わいせつ事件の弁護はアトム法律事務所に相談ください
強制わいせつ罪は、懲役6月から懲役10年の範囲で判決が言い渡されます。もちろん、逮捕されてすぐに懲役刑が決まるわけではありません。刑事手続きの限られた時間の中で、いかにスピーディに適切な被害者対応をするかが、不起訴・執行猶予獲得の鍵になります。強制わいせつ事件で弁護士を選ぶ際には、示談の経験値に注目することをおすすめします。
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