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準強制わいせつの刑罰・捜査の流れ・裁判例

準強制わいせつで適用される刑罰

準強制わいせつ罪は言葉の響きから強制わいせつ罪の刑罰の軽い版だと思われがちですが、これはまったくの誤解です。
準強制わいせつ罪の刑罰の内容は強制わいせつ罪とまったく変わりません。
強制わいせつ罪を適用できない犯行について、補充しカバーするための刑罰なのです。

刑法178条1項 準強制わいせつ

6か月以上10年以下の懲役

人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、(略:強制わいせつ罪)の例による。

条文の「心神喪失」「抗拒不能」とは、精神的な傷害により正常な判断力を失っている状態や心理的又は物理的に抵抗ができない状態(具体的には睡眠、酩酊等の状態や、錯誤などによって抵抗を期待できない状態等)を指します。
わいせつな行為とは具体的には接吻、陰部に手を触れる、乳房を弄ぶ、自己の陰部を押し当てるなどの行為を指します。

準強制わいせつの捜査の流れ

準強制わいせつの犯行態様の代表例としては、顔見知りの間柄で睡眠や泥酔状態に乗じてわいせつ行為をする、路上や電車で泥酔、睡眠している人にわいせつ行為をする、検診などと偽ってわいせつ行為をするといったものが挙げられます。
また準強制わいせつの事案では「合意があった(あると思い込んでいた)」として準強制わいせつの故意を否認するケースも多いです。

被害届が提出された場合

1 被害届提出・告訴
2 警察が事件を認知
3 捜査

犯行後、被害者からの「被害届の提出」「告訴」などをきっかけに警察が事件を認知する可能性があります。
事件を認知した警察は、取調べや防犯カメラの解析などで犯行の全容把握に努めます。
在宅事件化する場合の他、通常逮捕(=後日逮捕)が行われる場合もあります。

現場で通報された場合

1 現場で通報・拘束
2 警察官が到着
3 警察署に連行

被害者や目撃者などにより現場で拘束されて、警察官に引き渡されるというケースも考えられます。
例えば、電車における泥酔、睡眠に乗じた痴漢行為は準強制わいせつ罪に該当し得ます。
痴漢事案では被害者や目撃者により現場で拘束されたあと、駅員室に連れられて警察に引き渡されるという流れを経ることが多いです。

準強制わいせつの有名裁判例

準強制わいせつ罪は、「心神喪失・抗拒不能」の定義についてしばしば問題になり、とくに被害者がわいせつ行為が行われることについて認識していたものの、それを医療行為等、必要な行為だと錯誤していたような場合が問題となります。
ここで上記態様の事件につき有罪となった裁判例を挙げて、くわしく解説していきます。

被害者が錯誤していた態様の準強制わいせつ事案につき、有罪となった裁判例

裁判所名: 東京高等裁判所 事件番号: 昭和55年(う)第300号 判決年月日: 昭和56年1月27日

判決文抜粋

「「抗拒不能」とは(略:社会一般常識に照らし)具体的事情の下で身体的または心理的に反抗の不能または著しく困難と認められる状態」
「全裸になつて写真撮影されることもモデルになるため必要である旨の発言等は(略)抗拒不能に陥らせるに十分」

弁護士の解説

プロダクションの実質経営者が、モデル希望の女子学生に対しモデルになるには必要などと言って全裸にさせて写真撮影したりわいせつ行為等をしたという事案につき、準強制わいせつ罪の成立を認めた裁判例です。
泥酔、睡眠状態に乗じたり、させたりして行われたわいせつ行為について、準強制わいせつ罪が成立するのは議論をまたないかと思います。
それに加えこの裁判例のように錯誤によっても抗拒不能になったとされ、有罪となるケースもあるのです。

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