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過失傷害の刑罰・捜査の流れ・裁判例

過失傷害で適用される刑罰

こちらでは自動車運転上の過失を除く、業務上過失傷害、重過失傷害、それ以外の過失傷害について解説します。
なお、過失とは、「不注意な行為」を指します。

刑法211条前段 業務上過失致死傷

5年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金

第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。(以下略)

業務とは、「社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為」を言います。
大雑把に言うと、仕事中に注意義務違反を犯して人を死傷させてしまった場合は、この罪が成立し得ます。

刑法211条後段 重過失致死傷

5年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金

第二百十一条 (略)重大な過失により人を死傷させた者も、(略:業務上過失致死傷)と同様とする。

注意義務違反の程度が著しいものについては、重過失致死傷として処罰され得ます。
実務上は、自転車事故でこの罪が適用されるケースが多いです。

刑法209条 過失傷害

30万円以下の罰金または科料

第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

業務上の過失、重過失、自動車運転上の過失に当たらない注意義務違反によって人を怪我させるなどした場合には、過失傷害罪に問われ得ます。

過失傷害の捜査の流れ

過失傷害では、被害届の提出や告訴により警察が捜査を開始し、任意で取調べをしたり、逮捕したりするケースがあります。

被害届が提出された場合

1 被害届提出・告訴
2 捜査開始
3 取調べを受ける

被害届の提出や告訴を受けて警察が捜査を開始し、出頭要請や任意同行を受けて取調べに応じることとなります。
重傷であったり、過失に争いがある場合には、逮捕の可能性も高まります。
なお、過失傷害は親告罪のため、告訴されなければ起訴はされません。

通報された場合

1 通報
2 警察官が臨場
3 警察署へ連行

被害者や目撃者の通報で、警察官が駆けつけるケースもあります。
その後は、任意同行などにより警察署へ連行され、取調べを受けることになるでしょう。
態様が悪質な場合には、現行犯逮捕される可能性もあります。

過失傷害の有名裁判例

過失傷害罪の具体例としては、日常家事や動物の散歩の際の事故、スポーツでの事故、歩行者同士の事故が挙げられます。
ここでは、普段温厚な犬が散歩中に人に噛みついた事案で、過失傷害罪の成立を認めた裁判例をご紹介します。

温厚な秋田犬が人に怪我を負わせた場合に過失傷害罪の成立を認めた判例

裁判所名: 名古屋高等裁判所 事件番号: 昭和36年(う)第271号 判決年月日: 昭和36年7月20日

判決文抜粋

「被告人が街路上を連れあるいていたその飼犬マルは前記のように身長約八九糎、体重四五瓩もある巨大な体躯の犬であるのに、それがたとえ所論のように飼主たる被告人に馴れた平素温順な犬であつても、(略)被告人が前記の如くその綱の先端を片手にもつただけで漫然これに追随し、叙上のような犬の動作を十分制禦しうる態勢をとつていなかつたことは明であ(る)」

弁護士の解説

「過失」とは、傷害結果の予見可能性・回避可能性を前提とした結果予見義務・結果回避義務をいいます。
弁護人は、普段温厚な犬が人を襲うと予見することはできず、不可抗力であったと主張しました。
しかし、大型犬が不意に接近してきて驚いた被害者に、犬が危害を加えないとは、動物の性質上、必ずしも言えないとして、この主張は退けられました。

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