10年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
万引きは、一般に店舗から商品を持ち出す行為を言いますが、これは、窃盗罪にあたります。
また、万引きをするつもりで店内に入った場合、建造物侵入罪にもあたります。
加えて、一定の場合に常習的に万引きしていた場合は、常習累犯窃盗罪としてより特別法により重く処罰される可能性があります。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
「他人の財物」とは、他人の占有する財物を言い、店の商品は店が占有する財産的価値ある物であるため、これにあたります。
「窃取」とは、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して自己または第三者の占有下に移転する行為をいいます。
店を出ずとも、商品を懐に入れたりバッグに入れた時点で犯罪成立となります。
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
「侵入」とは、建物の管理権者の意思に反する立ち入りをいいます。
窃盗目的で店に入ることは店の管理権者の意思に反する立ち入りですので、これにあたります。
第二条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上、強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期拘禁刑ニ処ス
第三条 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前十年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三回以上六月ノ拘禁刑以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル
過去10年間で、窃盗罪で6か月以上の拘禁刑を「3回以上」受けた(執行の免除を得た場合を含む)者が常習として窃盗を行った場合、この条文により処断されます。
通常の窃盗罪よりもさらに重い刑罰が規定されています。
万引き事案では、店員や警備員が事務室に連行して、警察に通報するケースが典型です。
現場で犯行が発覚しなかった場合でも、被害届が出されて捜査される場合もあります。
万引きは、店舗から出る際に店員や警備員に呼び止められて、事務室に連れて行かれる場合が多いです。
その後、警察へ通報され捜査が開始されます。
常習的な万引きが疑われる場合、店舗側がマークしているケースも多いです。
実務上、少数例ではありますが万引き被害に気付いた店舗が被害届を提出し検挙が行われるケースも考えられます。
警察は防犯カメラの映像の解析等によって被疑者特定に努めます。
被疑者が特定されると、逮捕や任意同行、出頭要請などにより警察署で取調べを受けることとなるでしょう。
万引き犯は、窃盗罪や事後強盗罪、建造物侵入罪として処罰されています。
ここでは、窃盗罪の罪数について判示した裁判例と、事後強盗致傷罪として起訴されるも窃盗罪と傷害罪にとどまった裁判例、万引きの未遂と既遂の分かれ目について判示された裁判例をご紹介します。
「窃盗罪の罪数を検討するに当たっては,被告人の主観面だけではなく,窃取行為の時間的場所的関係,行為の態様,被害者の同一性などを総合して,考慮するのが相当である」
商品を一つ盗んだ後に新たな犯意を生じて万引きした事案において、二つの窃盗行為は包括一罪の関係にあるとした裁判例です。
10分程度の短時間に行われていること、いずれも店舗内のレジを通じて購入すべき仕組みになっていること、いずれの犯行も食料品であること、被害者が同一であることから、新たな犯意が生じて行われたものであったとしても包括一罪となるとされました。
「強盗致傷罪が成立するためには,本件暴行が,普通なら万引き犯人の逮捕をあきらめるであろうといえる程度の暴行に当たらなければならない」
万引きして店外に出たところ、背後から肩に手を掛けてきた保安員を殴って加療約7日間を要する傷害を負わせた事案において、事後強盗致傷罪でなく窃盗罪と傷害罪が成立するとした裁判例です。
暴行が執拗で強度なものではなかったこと、夕方のまだ明るい時間帯に、国道に面したスーパーマーケットの駐車場において、なお壮年といえる男性の被害者に加えられたものであることから、普通なら万引き犯人の逮捕をあきらめるであろうといえる程度の暴行でなく事後強盗致傷罪の成立は認められないとされました。
「被告カ某年月ノ頃某村雜貨商某方ニ於テ某所有ノ茶色靴下一足ヲ竊取シタル事實ヲ認定」
「(商品を懐に入れる行為は)財物ヲ自己ノ事實上ノ支配内ニ移シタルモノナルヲ以テ即時ニ發見セラレテ取戻サレタリトスルモ其ノ行爲ハ竊盜ノ既遂罪ヲ構成スルモノトス」
店主が帳簿を取りに行くため席を外した隙に商品を懐に入れ、その後店主に見つかって商品を取り返されたという万引き事案について、窃盗の未遂罪ではなく既遂罪が成立するとされた裁判例です。
万引きは自身の懐やカバンの中に商品を入れた段階で自己の支配内に移したと認められ、窃盗の既遂罪として処断されます。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。