最近はメルカリやラクマなどのフリマアプリや、ヤフオクなどのネットオークションサイトによって個人間での取り引きが容易にできる時代になっています。
便利ではありますが、一方で万引きした商品などの盗品の処分方法として使われることも少なくありません。
では、万引きした商品を転売したとき、どのような罪になるのでしょうか。また、自分で盗んだわけではなかったとしても、盗品を売ってしまったら犯罪になるのでしょうか。
この記事では、盗品を売ってしまったらどうなるか、転売目的の窃盗・万引きで捕まってしまった場合の対処法をわかりやすく説明しています。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
盗品を売ったら何罪になる?
窃盗・万引きをして自分で売ったら窃盗罪が成立する
万引きをした場合、それは窃盗罪として刑罰の対象になります。窃盗罪の法定刑は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
万引き後に商品の転売をしたとしても、通常は窃盗罪のみで罰せられ、特別に何か別の重たい犯罪になるということはありません。
※ただし、転売の仕方によっては詐欺罪などが成立する可能性はあります。
窃盗罪が成立するためには、「不法領得の意思」を必要とするのが判例の立場です。「不法領得の意思」とは、簡単に言えば、他人の物を自分の物として利用・処分する意思のことをいいます。
つまり、転売行為などの盗んだ後の処分については、そもそも窃盗という犯罪自体の評価にすでに含まれているといえます。
万引きは軽い犯罪ではありません。犯罪になる万引き行為について詳しく知りたい方は『万引きは軽い犯罪ではない?懲役刑・罰金刑を避ける示談の方法とは』の記事をご覧ください。
盗品と知っている物を転売したら盗品等関与罪が成立する
盗んだ人以外の者が盗品であると知りながら、売却したり、購入した場合には「盗品等関与罪」(256条)が成立する場合があります。
盗品等関与罪で規制される行為は次の5つです。
盗品等関与罪(刑法256条|e-Gov)
- 無償譲受け:盗品をもらう
- 運搬:盗品の運搬をする
- 保管:盗品の管理をする
- 有償譲受け:盗品を購入する
- 有償処分のあっせん:盗品の売買などを仲介する
なお、一定の親族等の間で上記の行為をした場合には例外的に刑が免除されます(257条)。
無償譲受けの法定刑は「3年以下の懲役」(256条1項)、運搬・保管・有償譲受け・有償処分のあっせんについては「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」(256条2項)となっています。
盗品等関与罪には罰金刑のみが科されることはありません。しかも、無償譲受け以外については懲役と罰金の併科という窃盗罪よりも重たい法定刑が科されていることに注意が必要です。
これは盗品等関与罪が、①被害品の追及を困難にすること、②窃盗を助長することから、特に規制をする必要があると考えられているためです。
なお、盗品だとの認識がなければ罪に問われることはありません。商品を売った後・買った後に、盗品だと知った場合でも同様です。ただし、売買する際に「もしかしたら盗品かもしれない」との認識があるケースでは盗品等関与罪が成立する可能性があります。
盗む役と売る役で役割分担をしていた場合は両者窃盗の共犯になる
盗む前から犯行に関わっていたような場合には、たとえ実際には販売行為しかしていなかったとしても窃盗の共犯になり、窃盗罪で処罰されます。
たとえば、商品を盗む前から複数人で万引きの計画を立てて、盗む役と売る役で役割分担していたような場合です。
盗品等関与罪が成立するのはあくまで窃盗が終わった後から関与した場合に限られます。
万引き品・盗品の転売がバレたらどうなる?
万引き品・盗品を売ったらバレる?
質屋やリサイクルショップなどの買い取り業者には、盗難の被害品のリスト(「品触書」といいます)が警察から送られてきます。盗品があれば、警察に通報され後日逮捕につながることは少なくありません。
特に個体識別番号やシリアルナンバーのあるブランド品や工業製品の場合は特定に至る可能性が高くなります。
一方、メルカリやヤフオクなどの個人間のインターネット取引の場合は、盗品の特定は容易ではありません。個人の所有物や高価で珍しいものであれば、出品から足がつくこともありますが、どこにでも売っている商品であれば「万引きして転売した商品」から逮捕につながるケースは多くはないかもしれません。
もっとも、転売目的の万引きは常習的に行われていることが多く、いずれ万引き自体がバレて捕まることになります。その結果、転売行為や盗品に関与した人物についても捜査で判明することになります。
窃盗・万引きや盗品の転売で逮捕されるケース
万引き・窃盗や転売行為で逮捕されるときには、現行犯逮捕と後日逮捕が考えられます。
- 現行犯逮捕
犯行が見つかりその場で逮捕されるケース - 後日逮捕
犯行から数日後に、警察がやってきて逮捕されるというケース
万引きや転売行為の後日逮捕では、防犯カメラの映像が証拠になることもあれば、転売した商品から足が付くということもあるでしょう。逮捕された窃盗犯が、転売に関与した人や転売のルートを供述して芋づる式に逮捕されることもあります。
警察から呼び出しを受けてまずは事情聴取を受ける場合と、いきなり逮捕状を持った警察官が自宅に訪問してくる場合があります。
関連記事『窃盗の犯人を認定する5つの証拠とは?証拠の種類や役割を解説』では、窃盗の犯人の認定における証拠の種類や役割を解説中です。被疑者として逮捕されたり、事情聴取を受ける場合には何らかの証拠が見つかっている可能性があります。
窃盗・万引きや盗品の転売で逮捕された後の流れ
万引きの現行犯で捕まったとしても、軽微な態様であれば微罪処分として警察の注意を受けて終わりということがしばしばあります。しかし、転売目的で万引きを繰り返していたような悪質な事案の場合そうとは限りません。
また、後日逮捕の場合には、勾留という段階に進む可能性は非常に高く、逮捕されるとすぐに勾留阻止の活動を弁護士にしてもらう必要があります。
事件が検察に送られ、刑事事件として捜査を受けることになった場合、途中で釈放されなければ、勾留されて10日~20日間の身体拘束を受けることになります。釈放されたとしても在宅事件として捜査が続くこともあります。
いずれにせよ、最終的には検察官によって起訴か不起訴か判断されます。
窃盗・万引きや盗品の転売で逮捕されると初犯でも起訴される?
窃盗事件が初犯であったとしても、事件の内容によっては起訴されることもあります。通常、初犯の窃盗であれば、被害者と示談ができていれば不起訴、示談できなければ10万円程度の罰金刑になる、というのがおおよその相場です。
もっとも、被害金額が高額であったり、転売目的で万引きを繰り返していたというような事実があれば、悪質な事案と評価され初犯でも実刑になることも考えられます。
盗品等関与罪の場合、罰金刑がないので起訴された場合は必ず公判で懲役刑が求刑されます。
起訴された場合には、公開の法廷において刑事裁判を受けることとなります。刑事裁判を受けるに当たっては、弁護士をつけて準備を進める必要がでてきます。
転売目的の万引きは示談で不起訴獲得を目指す
転売目的の万引きは示談が不起訴の最低条件
転売目的で万引きをした場合、事件を不起訴で終わらせるためには被害店舗との示談が不可欠です。万引きをした店舗に被害弁償を行い、許しを得ることができれば、不起訴処分の可能性は高まります。示談ではその内容を示談書という形で残し、それを検察官や裁判官に示すことで釈放を早めたり不起訴処分の可能性を高めます。
また、店舗から被害届が出ていることが想定されますので、示談のときには被害届の取り下げも、あわせて交渉します。被害店舗は、経済的損失が回復されれば示談に応じてくれるケースもありますが、一切示談に応じない方針をとっている場合もあります。示談は、自分で対応しようとするとトラブルが大きくなる可能性があるため、弁護士に依頼して進めるほうが望ましいといえます。
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窃盗罪の示談|示談金はどのようにして決まる?
示談では、被害者(被害店舗)に示談金を支払いますが、その金額はいくらが妥当なのでしょうか。窃盗の場合、まずは被害物品の価格を弁償することが求められます。その上で、当該万引き事件が原因で店舗が新たに出費を強いられたものがある場合には、その補填も検討することになります。例えば、防犯カメラの設置代や警備にかかる人件費が考えられます。
そもそも、示談は当事者同士の話し合いにより事件を解決する方法です。示談金の金額やその他の内容は交渉の中で決まります。示談金の支払いの他にも、被害店舗への出入り禁止を約束することもあり、両者が合意すれば示談は成立します。
万引きで余罪が多いと刑は重くなる?
転売目的の万引きでは、反復継続して万引きをしている可能性があります。警察は万引きの目的が転売だとわかると、被疑者自宅のパソコンやスマホを押収して転売の痕跡を洗い出します。そして、複数回にわたり転売をしていることが証拠上明らかになると、それらの捜査も同時に進めていきます。
常習的に万引きと転売を繰り返していた場合には、起訴される危険は高まります。裁判では、1件の万引き事件の場合より複数の万引き事件のほうが罪は重くなります。余罪があればあるほど、急いで被害店舗との示談を成立させ事件解決を図っていく必要性が高まります。
転売目的の万引きで逮捕されたら弁護士に相談を
逮捕後は早期釈放に向けた動きが必要
転売目的の万引きで逮捕されたとき、まず考えなければならないことは早期釈放に向けた動きをとることです。具体的には、弁護士に弁護活動を開始してもらうことが重要です。逮捕後は、厳格な刑事手続きのルールにより数時間ごとに状況が変わっていきます。気が付けば勾留が始まっていた、起訴されていたということもありえますので、手遅れにならないよう、逮捕されるとすぐに弁護士に相談することが大切です。
逮捕されると被疑者自身は身動きがとれなくなります。そのため、家族や友人の助けを借りる必要がでてきます。家族や友人に弁護士を派遣してもらうことができれば、ひとまずの「応急処置」をすることができます。または、自分で当番弁護士を要請し、取調べへの対応策を相談してください。当番弁護士は、1回のみ無料で弁護士が来てくれる制度ですので、取り急ぎこの制度を活用することは有益でしょう。
被害者と捜査機関への対応は弁護士にまかせる
被害者への対応として示談を進めることと、警察や検察官への捜査対応は同時に行う必要があります。特に、検察官が刑事処分を決めるまでに示談を進めておく必要があるため、常に捜査の進捗をみながら被害者対応をすることが求められます。刑事事件の実践経験が豊富な弁護士は、刑事事件の時間感覚に敏感ですので、先手を打つことが期待できます。
「弁護士であれば誰でも同じ」と考える方も多いようですが、実際はそうではありません。転売目的の万引きで逮捕されたのであれば、刑事事件に詳しい弁護士にサポートしてもらうことが、早期釈放や不起訴獲得の可能性を高める鍵です。示談についても、万引き事件の特性に注意しつつ被害店舗との交渉を円滑に進めるには経験値が必要です。
弁護士相談が事件解決の第一歩
ネットで物品の販売が簡単にできるようになってきていますので、万引きした盗品をすぐ市場に流通させることができます。窃盗罪で逮捕されるだけではなく、盗品等関与罪(盗品の有償譲受、運搬、保管など)で検挙される事例もあります。自分が万引きした場合に限らず、万引きした商品を譲り受けたり運搬した場合にも逮捕される可能性がありますので注意が必要です。
自分の行為が刑事事件になるかもしれないと不安な方は、まず法律相談を受けていただくことをおすすめします。弁護士がサポートすることで、事件化を防ぐことができるケースもあり、早めの対応がよい結果につながります。自分の家族が逮捕されたという方は、すぐに弁護士に連絡していただき、正しい初動で大切な家族を守りましょう。
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