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傷害の刑罰・捜査の流れ・裁判例

傷害で適用される刑罰

傷害は、刑法204条の傷害罪に問われます。
また、傷害によってその人が死に至った場合には傷害致死罪が、傷害を加えようと暴行したものの傷害に至らなかったときには暴行罪が成立し得ます。

刑法204条 傷害

15年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

相手にケガを負わせた場合には、傷害罪に問われ得ます。
基本的には、どれだけ軽微なケガであっても傷害罪は成立し得ると考えるべきでしょう。
判例上は、失神や打撲痕のない胸部の疼痛などについても傷害だと認められています。

刑法205条 傷害致死

3年以上の有期拘禁刑

第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期拘禁刑に処する。

暴行や傷害によって人を死に至らしめた場合には傷害致死罪が成立し得ます。
暴行や傷害と被害者の死の間に因果関係があれば本罪は成立し、たとえば、被害者が暴行を避けようとして転び岩に頭をぶつけて死亡した場合で傷害致死の成立が認められた判例があります。

刑法208条 暴行

2年以下の拘禁刑
もしくは30万円以下の罰金
または勾留もしくは科料

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

相手を殴る、蹴る、突く、押す、投げ飛ばすなどして、相手がケガを負わなかった場合は暴行罪が成立します。
判例上は、服をつかんで引っ張る、物を投げつけるといった行為も、暴行に該当し得るとされています。

傷害の捜査の流れ

傷害事件では、被害者や目撃者に現行犯逮捕され、警察署に連行されるケースがあります。
また、被害届の提出を受けて警察が捜査し、任意で取調べを受けたり、逮捕されるケースもあります。

被害届が提出された場合

1 被害届提出・告訴
2 捜査開始
3 取調べを受ける

被害者による被害届の提出や告訴によって、警察が事件を認知し捜査が開始される場合があります。
その後は、警察署への出頭を要請されるなどして取調べを受けることになるでしょう。
なお、態様が悪質な場合は、逮捕されたりする可能性もあります。

通報された場合

1 通報
2 警察官が臨場
3 警察署へ連行

被害者や目撃者の通報により、警察官が駆けつけるケースもあります。
その後は、任意同行などにより警察署へ連行され、取調べを受けることになるでしょう。
なお、態様が悪質な場合には、現行犯逮捕される可能性もあります。

暴行で検挙された場合

1 暴行事件として検挙
2 被害者が診断書を提出
3 傷害に罪名変更

事件発生後、被害者が病院に行き診断書を発行・提出するなどしてケガを負っていたという事実について後から発覚することがあります。
最初暴行として検挙されていた事案については、傷害に罪名変更されるでしょう。

傷害の有名裁判例

傷害罪の典型といえば、暴行により怪我を負わせた事案です。
ここでは、暴行によらない傷害罪の成立を認めた判例についてご紹介します。
また、被害者の承諾がある場合でも、傷害罪が成立するとした判例もご紹介します。

暴行によらない傷害罪の成立を認めた判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 平成16年(あ)第2145号 判決年月日: 平成17年3月29日

判決文抜粋

「約1年半の間にわたり,隣家の被害者らに向けて,精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら,連日朝から深夜ないし翌未明まで,上記ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして,同人に精神的ストレスを与え,よって,同人に全治不詳の慢性頭痛症,睡眠障害,耳鳴り症の傷害を負わせた」

弁護士の解説

本件は、ラジオの音声や目覚まし時計のアラーム音を、約1年半にわたって早朝から深夜・未明まで鳴らし続けるなどした事案で、被害者は精神的ストレスで慢性頭痛症や睡眠障害などを負いました。
傷害罪は、傷害結果を生じさせる方法について制限していないことから、本件では有罪判決が下されました。

被害者の承諾により傷害罪の違法性は阻却されないとした判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 昭和55年(し)第91号 判決年月日: 昭和55年11月13日

判決文抜粋

「被害者が身体傷害を承諾したばあいに傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべきものである」

弁護士の解説

保険金を騙取するために、被害者の承諾を得てわざと自動車事故を起こして傷害を負わせた事案で、被害者の承諾は、傷害罪の違法性を阻却するものでないとした判例です。
被害者の承諾がある場合の効果は、犯罪により異なりますが、傷害罪においては諸般の事情を総合考慮して、処罰に値する違法性が否定されるか否か判断されます。
本件では、保険金騙取という動機の違法性が強かったため、軽微な傷害でしたが違法とされました。

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