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傷害事件を起こしたら解雇される?前科や降格、減給など不利益を最小限にとどめる方法を弁護士が解説!

傷害事件で解雇?

他人に暴力を振るって「傷害事件」を起こしてしまったら、会社を解雇されてしまうのでしょうか?

確かに多くの企業の就業規則において「有罪判決を受けた従業員は懲戒解雇する」という規定がもうけられています。

傷害罪で有罪になったら懲戒解雇される可能性はあるといえるでしょう。

しかし必ず解雇されるわけではありません。たとえば「不起訴」になれば、解雇理由はなくなります。

今回は傷害事件を起こしたら解雇されるのか、解雇されないためにどうすればよいのか弁護士が解説しますので、刑事事件になってお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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「傷害事件」の意味や罰則

会社員が傷害事件を起こすと「解雇」が心配です。まずは「傷害事件」とはどういったものでどの程度の罰則を受ける可能性があるのか、みてみましょう。

そもそも傷害事件とは?

「傷害事件」をわかりやすくいうと「他人にケガをさせてしまった刑事事件」です。

たとえば相手を殴ったり蹴ったり突き倒したりしてケガをさせたら刑法上の「傷害罪」が成立します。その傷害罪を追及される刑事事件が「傷害事件」です。

会社の同僚や後輩、あるいは家族に腹を立てて殴ってしまった場合でも、相手がケガをしたら傷害罪になると考えましょう。

傷害罪の刑罰は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金刑」となっており、決して軽くはありません(刑法204条)。

傷害罪と暴行罪の違い

傷害罪と暴行罪は混同されやすいのですが、異なる犯罪です。

暴行罪は「相手に有形力を行使したとき」に成立します。

つまり相手に暴行を振るったとき、ケガをしなければ暴行罪、ケガをしたら傷害罪になると考えましょう。

刑罰も当然傷害罪の方が重くなり、暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です(刑法208条)。

ただし暴行罪であっても有罪判決を受ければ「前科」となり、解雇される可能性はあるので軽視してはなりません。

傷害事件で解雇されやすい4つのパターン

傷害事件を起こしたとき、解雇されやすいのは以下の4つのケースです。

長期間無断欠勤した

傷害事件が発覚すると、警察に逮捕されてそのまま身柄拘束が続いてしまう可能性があります。逮捕後の勾留期間は最大20日なので、その間は会社へ出勤できません。

何の連絡もせずに20日も欠勤が続くと、就業規則の懲戒事由に該当し、解雇される可能性が高くなります。

傷害罪で逮捕されたときには、必ず会社へ連絡を入れて無断欠勤にならないようにしましょう。

有罪判決を受けた

傷害事件を起こして刑事責任を追及されると、最終的に有罪判決を受ける可能性があります。

略式起訴になったら公開法廷で裁かれることはありませんが、罰金でも前科は前科です。

多くの企業では、就業規則の懲戒事由として「有罪判決を受けたこと」を定めています。

傷害事件で有罪判決を受けたら、懲戒解雇される可能性があるといえるでしょう。

会社に多大な迷惑をかけた

傷害事件を起こすと、全国で大々的に報道されたり取引先や地域に情報が広まったりして、企業に対する信用が失われる可能性があります。

たとえば信用を重視する業種の企業の管理職が重大な傷害事件を起こして懲役刑を受けるなど。会社に多大な迷惑をかけてしまったら懲戒解雇されるリスクが高くなるでしょう。

企業の秩序を乱した

企業が運営を続けていくには、社内の秩序を維持する必要があります。

社員が傷害事件を起こして他の社員に被害が発生すると、会社内全体のモチベーションが下がって生産性が低下する可能性もあるでしょう。

たとえば職場の上司や同僚に対して暴力的な行為を続けており、注意されてもやめないなど企業秩序を乱し続けている従業員がいたら、「クビ」になりやすいといえます。

傷害事件を起こしても解雇されにくいパターン

従業員が傷害事件を起こしても、必ず解雇されるとは限りません。

会社が「解雇通知」を送っても無効と判断されるケースも多々あります。

以下のような場合には傷害事件で逮捕されても解雇されにくい、あるいは解雇が無効になりやすいでしょう。

在宅捜査になった

傷害事件を起こしても、必ず逮捕されるとは限りません。逮捕されても勾留されず、比較的早期に身柄を釈放してもらえるケースもあります。

このように被疑者在宅のまま捜査を進める方法が「在宅捜査」です。

在宅捜査になった場合、会社に傷害事件を知られないケースも多いですし、知られたとしてもあまり問題にならない可能性が高くなるでしょう。もちろん無断欠勤の問題も発生しません。

在宅捜査になったら身柄捜査(被疑者の身柄を拘束して捜査を進める方法)より大幅に解雇の危険性が低下します。

不起訴になった

傷害事件を起こしても、「不起訴」になるケースは多数あります。不起訴とは、検察官が「起訴しない」と判断することです。

不起訴になったら前科はつきません。有罪判決を受けることもないので、就業規則の懲戒事由に該当しないケースが多数となるでしょう。

このことと関連しますが、傷害事件で逮捕されてもそれだけでは解雇されません。仮に解雇通知を送られても「無効」にできる可能性があります。

会社にほとんど影響が及ばなかった

傷害事件で有罪判決を受けても解雇されないケースは意外とたくさんあります。

たとえば会社に知られなければ、解雇されるきっかけがありません。

職場に知られたとしても、実質的に会社に何の影響もなければ解雇事由があるとまでは判断されない可能性が高いでしょう。

懲戒事由に該当すると判断されても、降格や減給などのより軽い処分で済むケースも多々あります。

被害届を出されたら会社に知られる?

会社員が傷害事件を起こした事実を職場に知られたら、不利益が大きくなります。

解雇も心配ですし、解雇されなくても降格処分にされたり、将来の昇進が難しくなったりするでしょう。

もしも被害者が警察に被害届を出したら、会社に通知されてしまうのでしょうか?

実は被害届を出されたからといって会社に知られるわけではありません。

被害届が出ても、警察は勤務先に連絡するとは限らないためです。

特に会社と関係のないプライベートな傷害事件であれば、会社に通知される可能性は低いでしょう。

身柄拘束期間が長期化したら要注意

ただし逮捕・勾留されて身柄拘束期間が長くなると、いずれ弁解が難しくなります。家族が対応していると、会社から「なぜ出勤できないのか」と問い詰められて「傷害事件を起こした」と答えざるを得なくなるでしょう。

また職場の同僚や上司、部下などに暴行を振るったケースでは、社内に情報が広がるのは避けにくくなります。

傷害事件で有罪になっても解雇が有効とは限らない

傷害事件で有罪判決を受けたら、多くの企業では「懲戒解雇事由」に該当します。

そうなったらクビを受け入れるしかないのでしょうか?

実は有罪判決を受けたからといって、必ず懲戒解雇が有効になるとは限りません。

労働契約法上、使用者の被用者に対する「懲戒権の濫用」は禁止されています。

当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

労働契約法15条

問題行動に対して厳しすぎる処分を行うと、その懲戒処分は無効になるのです。

軽微な傷害事件を起こして罰金刑を受けたけれど、出勤もしていたし普通通りに仕事もしていて誰にも迷惑をかけていなければ、懲戒解雇までは認められない可能性が高いでしょう。

傷害事件で解雇を免れる方法

以下では傷害事件を起こしたときに解雇を免れるための効果的な対処方法をお知らせします。

逮捕されたら早めに会社に連絡を入れる

傷害事件で逮捕されたら、早めに会社に連絡を入れましょう。

無断欠勤が続くとそれだけで懲戒事由に該当してしまうためです。

ただ逮捕されている本人は会社に連絡できないので、家族が対応しなければなりません。

このとき、どのような理由を告げるかが問題となります。

正直に刑事事件について話すのか、あるいは体調が悪い、親族に不幸が発生したなどというのか、さまざまな対応が考えられるでしょう。

自分たちだけで判断すると後に不利益が及ぶ可能性もあるので、弁護士に相談してから決めるようお勧めします。

早期に被害者と示談する

傷害事件で解雇や前科を避けるには、被害者との示談が非常に重要です。

起訴前に示談が成立すると、不起訴処分にしてもらえる可能性が高くなります。

不起訴になれば懲戒事由には該当しないので、解雇される可能性はほとんどなくなるでしょう。

また逮捕前に示談ができれば、そもそも被害届を出されないので逮捕される可能性もほぼ0になります。

会社に知られることもなく、解雇をはじめとした不利益処分を受ける心配は不要となるでしょう。

傷害事件の示談の流れや示談金相場を知りたい方は、関連記事『傷害事件の示談金相場|示談の流れと不起訴を目指すメリット』を参考にしたうえで、弁護士への相談をおすすめします。

刑事弁護人に対応を依頼する

傷害事件を起こして解雇が心配なら、早期に弁護士に相談して刑事弁護を依頼するようお勧めします。

加害者本人やご家族だけでは、適切な対応が難しくなるためです。

たとえば会社に説明するときにも弁護士が対応したほうがスムーズですし、刑事弁護人がついていれば会社も拙速な解雇処分をしにくくなるでしょう。

被害者との示談交渉を進める際にも弁護人が対応すると話をまとめやすくなります。

刑事弁護人がいれば、示談書や嘆願書を作成して検察官へ提示し、早めに不起訴処分をするよう申し入れることも可能です。

当事務所では暴行・傷害事件の刑事弁護を数多く取り扱ってきました。職場やマスコミ対策も得意としておりますので、解雇が心配な方はお早めにご相談ください。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了