2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
過去に強制わいせつ事件で逮捕されたことがあるのに、再度犯行に及んでしまった場合、初犯のときよりも刑罰は重くなり、実刑となる可能性が高まります。
ただし、被害者との示談の状況によっては、実刑を回避できるケースもあります。
この記事では、強制わいせつ事件で再犯となってしまった場合の量刑や、執行猶予期間中の罪の取り扱い、処分を軽くする方法があるのかについて解説していきます。
なお、2023年の刑法改正により、暴行や脅迫を用いたわいせつ行為は正式には「不同意わいせつ罪」に変わっていますが、従来から使われていた「強制わいせつ」という表記で解説していきます。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
強制わいせつ罪の再犯とは?
強制わいせつ罪は「暴行や脅迫を用いて被害者にわいせつ行為をした場合」に成立し、法定刑は「6か月以上10年以下の懲役」です(刑法176条)。
被害者が13歳未満の場合には、暴行や脅迫がなくともわいせつ行為をしただけで強制わいせつ罪が成立します。
なお、痴漢は一般的には各都道府県の迷惑防止条例違反となりますが、悪質な痴漢行為の場合は強制わいせつ罪になることもあります。
強制わいせつ罪の解説については『不同意わいせつ・強制わいせつで逮捕されたら弁護士に相談!弁護士の選び方や費用も解説』のページで詳しく解説していますのでこちらもご覧ください。
強制わいせつの再犯率
令和5年版の「犯罪白書」によれば、強制わいせつ罪で検挙された人(逮捕や書類送検などをされた人)のうち、同種の前科を持っていた人の割合は6.3%となっています。
性犯罪は再犯が多いというイメージがありますが、実はそうとは言い切れません。
刑法全体で見たとき、検挙された有前科者の割合は14.0%ですので、強制わいせつ罪の有前科者の割合が突出して高い、とまではいえません。
なお、ここでの「前科」とは有罪の確定裁判を受けたことを指しており、これから説明する刑法上の「再犯」以外も含まれています。
強制わいせつの再犯は最大懲役20年?再犯には2種類ある
刑事手続きで再犯という言葉を使うとき、(1)一般的な意味での再犯と、(2)刑法上の再犯の違いに注意する必要があります。
(1)一般的な意味での再犯というのは、つまり「以前にも犯罪を犯したにもかかわらず、再度犯行に及んでしまった人」のことです。
刑法上の「再犯」に当たらない場合でも、捜査機関に記録された前科・前歴の情報は刑事処分の判断の参考資料になるので、前回よりも処分が重くなるのが一般的です。
もっとも、法定刑が変わるわけではありません。
これに対し、(2)刑法上の再犯にあたる場合、刑の上限そのものが変わります。
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする。
刑法57条(再犯加重)
強制わいせつ罪の場合、懲役刑の長期は10年です。よって、強制わいせつ罪の再犯となると「20年以下の懲役刑」が刑の上限となります。
また、三犯以上の者についても、再犯と同様に扱われます(刑法59条)。
刑法上の再犯にあたるケース
刑法56条では再犯について、以下のように規定されています。
刑法56条1項(再犯)
刑法56条1項
懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
わかりやすくいえば、以前に刑務所に入っていた人が、5年以内に犯罪を行うと、次は懲役刑の上限が2倍になってより長く刑務所へ収監されるおそれが高まる、ということです。
刑法56条の再犯となる3つの要件について詳しく解説します。
刑法上の再犯の要件(1)以前、実際に懲役刑になった
以前の刑が罰金刑や禁錮刑などの場合には再犯にはなりません。また、執行猶予期間が満了している場合も、実際に懲役刑になったわけではないので再犯となりません。
強制わいせつ罪の場合は、罰金刑や禁錮刑の規定がありませんので、前回の罪で執行猶予がついていなければ、この条件を満たすことになります。
刑法上の再犯の要件(2)執行の終了などの翌日から5年以内
刑の執行が終わってから5年以内に犯罪行為をした場合が再犯となります。よって刑務所を出てから10年後に犯罪をしてしまった場合は、刑法上の再犯にあたりません。
また、執行猶予期間中は、執行の終了・免除を得たとはいえないため、犯罪をしても再犯とはなりません。
執行猶予期間中に罪を犯した場合は、先の刑の執行猶予を取り消すかどうかという問題になります。
刑法上の再犯の要件(3)有期懲役に処するとき
再度の犯罪であっても、罰金刑や禁錮刑となった場合は再犯とはなりません。
強制わいせつ罪の執行猶予期間中に犯罪をしたらどうなる?
執行猶予期間中に犯罪を犯しても、刑法上の再犯にはあたらず、刑の上限が2倍になることはありません。しかし、前回より重い刑罰が科せられる傾向があります。
さらに執行猶予期間中に犯罪を犯すと、以前の執行猶予を取り消されてしまうことがあります。
強制わいせつ罪の執行猶予が必ず取り消されるケース
刑法26条より、以下のような場合には執行猶予が取り消されます。
執行猶予の取り消し
- 執行猶予期間中に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき
- 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき
- 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき
※2025年6月の刑法改正により、従来の「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一元化されました。旧法下の「懲役・禁錮」も「拘禁刑」と同等に扱われます。
執行猶予期間中に犯した罪が強制わいせつの場合、懲役刑のみしか規定がありませんので、執行猶予が取り消される可能性は非常に高いと言えます。
強制わいせつの執行猶予期間中の犯罪で刑罰はどうなる?
執行猶予期間中に犯罪を犯し、執行猶予が取り消された場合を考えてみましょう。その場合、執行猶予が取り消された罪に加えて、新たに犯した罪についても、あわせて服役しなければなりません。
たとえば、以前の強制わいせつ罪で懲役2年、執行猶予3年、その後の執行猶予期間中に再度強制わいせつで懲役2年となった場合は、合計して4年の懲役刑となります。
強制わいせつ罪を繰り返したとき、再度の執行猶予はつけてもらえる?
強制わいせつ罪で繰り返し有罪判決を受けた場合、再度の執行猶予をつけてもらうことは簡単ではありません。
しかし、2025年6月1日施行の法改正により、その要件は以前よりもやや緩和されました。
改正後、再度の執行猶予が認められるためには、主に以下の要件を満たす必要があります。
- 今回言い渡された刑期が2年以下(改正前は1年以下)
- 前回の保護観察の有無にかかわらず要件を満たすこと(改正前は保護観察付きだと一律不可でしたが、一定の条件下で認められるようになりました)
- 犯行の内容や程度、結果などにおいて特に酌量すべき情状があること
強制わいせつ罪の下限は懲役6か月ですが、実務では1年6か月以上の懲役となるのが一般的です。
今回の改正で「2年以下」という基準自体には該当しやすくなった面がありますが、執行猶予期間中に犯罪を犯したことで「反省がない、再犯可能性がある」と判断されやすく、刑罰そのものが重くなる傾向があることに変わりはありません。
いずれにせよ、再度の執行猶予を得るためのハードルは依然として高いといえます。
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・再度の執行猶予とは?認められる条件と今からできる対策を解説
強制わいせつの再犯などで刑罰を軽くする方法はある?
強制わいせつの刑の執行から5年以内に再犯をした場合、または強制わいせつの執行猶予期間中に再度強制わいせつをしてしまった場合、あるいは5年以上前の前科がある場合、いずれにせよ刑罰が初犯より重くなる可能性があります。
再び同じような犯罪を犯してしまったことを反省し、なるべく早く社会復帰を果たすためには、どうすればよいのでしょうか。
法律上の再犯にあたらなくても強制わいせつの前科があれば罪は重くなる?
2度目以降の強制わいせつ事件で逮捕された場合、法律上の再犯が成立しなくても刑罰が重くなる可能性があります。
以前に有罪判決を受けた場合、その記録は前科として本人が死亡するまで残り、新たに罪を犯したら、検察官によって前科が照会されます。
また、裁判所にも前科記録が提出され、悪い情状として評価されます。
たとえば、前に執行猶予をつけてもらえた場合でも、今回は実刑になる、などが考えられます。事件を起こしてしまったら、早急に刑罰を軽くするための活動を開始すべきです。
早急に強制わいせつの被害者と示談する
強制わいせつ罪などの性犯罪では、被害者と示談することが非常に重要です。
示談の際に示談金を支払うことで、被害者に謝意や反省を伝えることができます。
また示談の結果、もしも被害者から宥恕(加害者を厳罰に処することを望まないという意思)が得られれば、裁判で良い情状として評価され、刑罰が軽くなることもあります。
強制わいせつの示談は弁護士に任せる
強制わいせつの加害者が被害者と示談を進めるときには、刑事弁護人によるサポートが必要不可欠です。
そもそも加害者個人では、被害者側と連絡をとること自体まず不可能であるためです。刑事弁護人であれば検察官を通じて被害者の許可をとり、連絡先を確認できる可能性があります。
また弁護人からの連絡であれば、被害者の方も示談交渉に応じてくれることがあります。
強制わいせつの再犯で不安な方は弁護士に相談
アトム法律事務所では性犯罪の加害者の刑事弁護に積極的に取り組んでいます。
以前に強制わいせつで逮捕されたのに再度犯行に及んでしまった場合、実刑判決を受ける可能性はかなり高いものとなります。
強制わいせつの再犯で不安がある場合、早急に弁護士に相談することを強くおすすめします。
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