万引きをして逃走した場合、後日逮捕される可能性はあるのでしょうか。防犯カメラに店員ともめているところが映り、相手を突き飛ばしていることが明らかであれば、窃盗罪だけで済まない可能性がでてきます。
後日の逮捕を防ぐためには、被害店舗との示談を成立させることが非常に重要となるでしょう。適切な示談交渉のために、事件発生後はすみやかに弁護士に相談されることをおすすめします。
本記事では、万引きで逃走した場合に成立する可能性のある罪の内容や、逃走後の逮捕や起訴を防ぐために知っておくべきことについて紹介しています。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
万引きで逃走|窃盗罪・事後強盗罪・強盗致傷罪の可能性
ここでは、万引きで逃走した場合、何罪が成立するかについて解説していきます。
刑法第2編第6章(97条以降)には「逃走の罪」が規定されていまが、この規定は「法令により拘禁された者」の逃走を対象としているため、万引き直後の行動としての逃走は対象外です。
万引きをした直後、犯罪の発覚を恐れてその場を立ち去る、または、犯罪発覚後、捕まるのを避けるために逃げるとどうなるかについて考えていきます。
万引きの逃走事例①窃盗罪で警察に逮捕される
万引きをして逃走するとき、まずは窃盗罪の成立が考えられます。
窃盗罪は、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定されています。万引きをして逃走し、もし刑事裁判に発展すれば懲役刑もありえるということです。
書店やスーパーで万引きをして、それが店の人に見つかったことで逃走に失敗するケースもあります。その場で捕まってしまうと、現行犯逮捕となり警察に引き渡されることがあるでしょう。店の恩情で警察に通報せず厳重注意で済む場合もありますが、警察に引き渡されると窃盗事件として捜査が開始されることが考えられるのです。
また、逃走に成功したとしても、店舗に設置された防犯カメラから身元が割り当てられ、後日逮捕される可能性があるでしょう。
万引きの逃走事例②事後強盗罪で逮捕される
万引きをして店の人に見つかり、逮捕されることを回避しようと逃走する場合を考えてみます。このとき、追いかけてくる店員に対して暴行や脅迫を用いて逮捕を免れようとしたときは、事後強盗罪が成立する可能性があるのです。
刑法238条では、「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」と規定されています。
つまり、事後強盗罪は強盗の法定刑が適用されるのです。
強盗は刑法236条に定められており、刑罰は「五年以上の有期懲役」が予定されています。初犯でも刑事裁判になれば、懲役実刑となる可能性があるでしょう。
万引きといっても、逃走時の行為態様から事後強盗罪が成立すると、窃盗罪よりも重い刑罰を受けることが多くなります。窃盗罪では罰金刑もありえますが、事後強盗罪では懲役刑しか法定されていません。
また、事後強盗罪となった場合には、その罪の重さから、逃走後も警察からの厳しい捜査により逮捕される可能性が高まるといえるでしょう。
万引きの逃走事例③強盗致傷罪での後日逮捕
万引きをして逃走する際、店の人に発覚し、取っ組み合いになるなどしてもめたとします。必死で逃走しようとするあまり、相手を突き飛ばして怪我をさせてしまうと、強盗致傷罪の成立が疑われます。
強盗致傷罪は刑法240条に規定されている罪です。条文には、「強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。」とあり、極めて重い刑罰が法定されています。
そのため、逃走後も警察がしっかりと捜査を行い、逮捕される可能性が非常に高いといえるのです。
店から提出された防犯カメラの記録を警察が確認し、身元が判明すれば逮捕令状をとり、後日逮捕に踏み切られることが十分に起こり得ます。
万引きの逃走で後日逮捕される?|示談の重要性
逃走行為により逮捕や起訴の可能性が高まる?
万引きで逃走したとき、その逃走行為は後々何か不利益になることはあるのでしょうか。逃走は逮捕や起訴の可能性を高める要因になるものの、逃走したからといって、必ず逮捕や起訴につながるものではありません。
逃走といっても、万引きの現場から逃走しただけなのか、逮捕をおそれて行方をくらまそうとしているのか、いろんなケースがあります。
定職についており、家族もいる状況なのであれば、その環境をおいて行方不明になることは考えにくいとされます。その場合は、逮捕まで至らず在宅捜査となる可能性もあるのです。
ただし、万引きの内容として被害金額や行為態様がどうであったかも重要な事情として考慮されます。
逃走の際に店員に抵抗したために事後強盗罪や強盗致傷罪が成立している場合には、行為態様の悪質性や罪の重さから逮捕や起訴の可能性が高まるといえるでしょう。
起訴されるかどうかは、捜査で収集された証拠資料に基づき、検察官によって決められます。犯行時に逃走したという事情はマイナス評価にはなりますが、その後の被害者対応として真摯に示談に取り組んでいるなどの事情も考慮されます。
犯行当時に逃走をしたことをもって、ただちに起訴処分が濃厚になるというわけではありません。
逮捕された場合における手続きの流れについて知りたい方は『逮捕されたら|逮捕の種類と手続の流れ、釈放のタイミングを解説』の記事をご覧ください。
万引きによる逮捕や起訴を防ぐために示談が重要
万引きを原因とした逮捕や起訴を防ぐためには、被害店舗との示談を成立させることができるかどうかが重要となります。
示談をして、当事者間で解決した場合、警察に被害届が出されずに逮捕されることを防ぐことができます。
仮に、被害届が提出されてしまった後であっても、示談が成立している場合には、逮捕や起訴が不要と判断される可能性が高まるでしょう。
示談では被害弁償はもちろん、今後、当該店舗への立ち入りを自粛するなどの誓約をして、真摯に反省していることを伝えることが大切です。
また、示談金の支払いや被害店舗から許しを得ていることを正確に示す内容となっている示談書の作成が必要になります。
特に示談書は、とても重要な証拠になりますので、事前に弁護士に誤りがないか確認してもらうことをおすすめします。被害店舗との示談交渉がスムーズにいくよう、示談そのものを弁護士に任せることも検討しましょう。
店によっては、万引きの示談を受け付けないという方針を採用しているところもあります。そのため、示談を進めるにあたっては、先に弁護士に相談のうえ、示談の可否や流れを確認してから行動することが望ましいです。
万引き事件での逃走|弁護士による対応が重要
商品を万引きして逃走したら、すぐ弁護士に相談する
商品を万引きして逃走し、後日、逮捕されるのではないかと不安になって弁護士相談を受けに来られる方がいます。
万引き事件が発覚する前に相談が持ち込まれることもあれば、発覚して店との示談交渉の段階にあることもあります。すでに被害届が出され、警察から呼び出しを受けているというケースもあるでしょう。商品を万引きして逃走したとき、できる限り早く弁護士にご相談されることをおすすめします。
万引き事件は現行犯逮捕される場合、後日逮捕される場合、逮捕されない場合、様々なケースが考えられます。逮捕されないからといって、完全に安心することはできません。
在宅事件として捜査を受け、刑事処分を受けることもあります。弁護士に相談して、被害店舗への対応や警察対応についてアドバイスを受けておかれると良いでしょう。
弁護士による後日逮捕を回避する活動
万引き事件はその場で犯罪が発覚するものと、防犯カメラなどの証拠から後日発覚するものがあります。
その場合、後日、警察が動き出し、逮捕に至るという可能性があるのです。
犯行当時に店員に怪我を負わせているような場合には、強盗致傷罪として警察が捜査し、逮捕令状が取得されることが十分に考えられます。万引きをした場合には、急ぎ弁護士に相談し、今後の対応を検討するようにしましょう。
逮捕回避のためには、早い段階で被害店舗と示談をすることが大切です。事態の悪化をくい止めるためにも、弁護士に示談を依頼して、事件の完全な解決を目指しましょう。
示談が決裂すれば刑事事件化するリスクが高まります。後日逮捕を回避するという意味でも、示談はとても大きな意味を持ちます。慎重に取り組まなければいけません。
弁護士による起訴を回避する活動
万引きで起訴されることを回避するには、不起訴処分を得る必要があります。万引きは、被害金額が小さく初犯という事情であれば、不起訴処分の可能性が十分あります。
示談で被害者に謝罪をして被害弁償をしているのであれば、検察官は起訴猶予として不起訴を選択することが考えられるでしょう。
ただ、万引きは万引きでも事後強盗罪や強盗致傷罪での立件になれば、簡単に不起訴になるわけではありません。
また、クレプトマニア(窃盗癖)で複数回に渡り万引きを行っているケースでも起訴される可能性が高まります。少しでも起訴回避の可能性を高めるには、専門家の意見を仰ぎ、被害者対応や警察対応をしていくようにしましょう。
弁護士による被害者対応の流れ
万引き事件の解決を弁護士に依頼した場合における、被害者対応の流れをご紹介します。
万引きの場合は、通常、被害店舗が明らかですので、弁護士がその店舗に連絡をとります。店舗責任者の方に事情を説明し、示談交渉に直接赴くこととなるでしょう。
万引きに対する店舗運営の方針を確認しつつ、被疑者の反省状況を伝えたり、刑事処分の見込みを説明します。そして被害金額の支払いを申し出るのです。
示談をまとめたら、それを示談書という書面にして双方の署名を入れます。示談で事件が解決したこと、紛争を蒸し返さないことを確認する文言が含まれていることが重要です。
仮に、会社として万引きの示談に応じることが難しいという判断であっても、被害弁償の受け入れだけでも求めることは大切です。一言で示談といっても、その内容は様々ですので、やはり専門家の知識と経験に頼ることをおすすめします。
まとめ
万引きで逃走したあと、後日逮捕されるのではないか、被害届がすでに警察に提出されているのではないかと不安になることがあります。万引き当時の状況によっては、窃盗罪で済まないこともありますので、自分で判断せずに弁護士に相談を受けておくことが望ましいです。
また、被害者対応(被害店舗との示談)は、法律の専門知識、交渉能力、経験値が必要とされます。事前に法律相談をうけて正しい知識を身につけてから、どのような方法をとるか検討するのが賢明です。