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万引きの再犯は懲役実刑?執行猶予中の再犯で再度の執行猶予はつく?

万引きの再犯

万引きの再犯で捕まった方は、刑務所に入れられるのかが知りたいところだと思います。

実は、再犯事件の場合、前科の内容や、再犯のタイミングによって執行猶予がつきにくいこともあるのです。

本記事では万引きの再犯について、刑罰が重くなり懲役実刑となってしまうのかや、執行猶予が再びつく可能性があるのかなどについて解説していきます。また、窃盗を繰り返してしまうクレプトマニアという病気への対応についても解説していますので、最後までご覧ください。

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万引き再犯は刑罰が重くなる?懲役実刑とは限らない?

「法律上の再犯」にあたると刑罰が重くなる

「法律上の再犯」は「累犯」ともいいます。万引き再犯が累犯にあたる場合、刑罰は累犯加重(刑法57条)がなされ、規定された懲役刑の2倍以下となって刑罰が重くなります

たとえば、万引き(=窃盗罪)についてみると、窃盗罪の法定刑が「10年以下の懲役」であることから、法律上の再犯にあたる場合、累犯加重によって「20年以下の懲役」が科せられる可能性があるのです。

法律上の再犯は、刑法56条1項にて以下の通り要件が規定されています。

法律上の再犯(累犯)

  • 前に懲役に処せられた者であること
  • 「前の刑の執行を終わった日」または「前の刑の執行を免除された日」から5年以内に今回の犯罪を行ったこと
  • 今回の犯罪について懲役刑に処せられる場合であること

これらの要件にあてはまった場合、法律上の再犯となるのです。

万引き再犯が「法律上の再犯」にあたらない場合、累犯加重はなされませんが、犯罪を繰り返していることが良くない情状として考慮されてしまうこともあります。このことから、たとえ法律上の再犯にあたらなくても、万引き再犯は刑罰が重くなると考えておいた方が良いでしょう。

窃盗罪の再犯率

刑法犯における20歳以上の検挙人員のうち前科の有無を調査した令和4年の統計では、窃盗罪の71,731人のうち19.9%は窃盗罪の前科があります(「令和5年版 犯罪白書 第5編/第1章/2」より参照)。

刑法犯総数154,522人に対して、同一罪名で前科がある割合が14%であることからも、窃盗罪の再犯率が高いことがわかります。

万引き再犯でも不起訴は狙える?

一般的に万引きは被害額が少ないことが多いので、被害者に被害弁償をし、示談を成立させているのであれば、万引き再犯であっても不起訴処分となることも少なくありません。

しかし、少額の万引きでも再犯が繰り返されると、次第に不起訴処分を獲得することは難しくなります。不起訴処分とならず起訴されてしまえば、刑罰を受ける可能性が高くなるでしょう。

もっとも、万引き再犯で起訴されると刑罰をうける可能性が高くなるものの、場合によっては再度の執行猶予を獲得できる可能性も残されています。続いては、万引き再犯で執行猶予がつくケースについてみていきましょう。

万引き再犯で執行猶予がつくかは前科の内容・時期で変わる

【前提】万引き再犯で執行猶予がつく条件

万引きをはじめとした刑事事件で執行猶予がつくかは、前科の内容や前科がついた時期などで変わってきます。具体的には、以下の条件を満たす必要があります。

  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
  • 今回、言い渡される刑が「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」である
  • 執行を猶予する情状がある

万引き再犯でもこれらの条件を満たした場合、1年以上5年以下の期間の執行猶予がつき、刑の執行が猶予されます。執行猶予がつけば刑務所に行く必要がありません。

執行猶予の定義や条件といった基本的な内容についてより詳しく知りたい方は、『執行猶予にしてほしい|懲役実刑との違いは?』の記事もあわせてご確認ください。

執行猶予中の再犯で再度の執行猶予はつく?

再度の執行猶予とは、執行猶予期間中に再犯をしてしまった場合でも、再び執行猶予がつくことです。以下のように規定された条件を満たせば、再度の執行猶予がつく可能性があります。

再度の執行猶予がつく条件

  • 前の刑について執行猶予期間中の者で、保護観察に付せられていない者
  • 今回、言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」である
  • 情状に特に酌量することがある

ただし、再度の執行猶予の条件は非常に厳しいです。通常、再度の執行猶予はつかないと考えておきましょう。

再度の執行猶予がつかない場合、前回の刑についての執行猶予が取り消され、今回の刑と合わせた期間、刑務所に入ることになります。たとえば、前回の刑罰が懲役1年6月で、今回の刑罰が2年だった場合、合計で懲役3年6月の刑罰が一挙に科せられることになるのです。

執行猶予満了後の再犯で執行猶予はつく?

執行猶予満了後の再犯で執行猶予がつくかは、執行猶予がつく条件を満たしているかどうかで決まります。再犯で執行猶予がつく具体的な条件については、本記事内「【前提】万引き再犯で執行猶予がつく条件」で解説した通りです。

なお、執行猶予が満了していれば、刑の言渡しは効力を失っているため、執行猶予満了後に再犯しても前回の刑が執行されることはありません。

万引き再犯で執行猶予を得るために必要なこと

(1)再犯でも被害者と示談する

万引きの再犯で執行猶予がつくには、被告人に有利な情状が必要になります。具体的には、被害者と示談が成立している、被害金額が少ない、被告人が反省している等が情状として欲しいところです。

万引きの再犯を繰り返していると良くない事情として考慮されてしまうこともあるので、被害者との示談に意味がないように感じるかもしれません。しかし、再犯でも被害者と示談することは重要です。弁護士なら被害者の連絡先を入手できる可能性が高いため、示談交渉を任せられます。

示談が成立し、被害者から許しを得られれば、検察官がこれを考慮し不起訴処分とする可能性もあります。たとえ、事件化してしまっても、示談によって被害弁償や謝罪を尽くすことができれば、裁判官が情状に特に酌量することがあるとして、再度の執行猶予や罰金といった判決も望めるかもしれません。

さらに万引き再犯でも、万引きが見つかった現場ですみやかに示談交渉を進めることで警察への通報を防ぎ、事件化を阻止できる可能性もあるでしょう。

関連記事

窃盗で示談をする方法とメリット|示談金相場のリアルデータ

(2)再犯防止が必須

万引きの再犯で執行猶予がつくには、被害者との示談が成立していることに加えて、再犯防止の対策がなされていることも重要です。

たとえば、生活が困窮していないにもかかわらず万引きを繰り返すような場合、窃盗症という病気である可能性が高いです。再犯を防止するには病気を治療していく必要があります。

もっとも、被害者との示談や再犯防止の対策は、個人で取り組むことが困難といえます。万引き再犯で執行猶予を獲得したいなら、刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することが大切です。弁護士に依頼すれば、執行猶予の条件を満たすような弁護活動が期待できるでしょう。

万引きはそもそも何罪?執行猶予中に逮捕されたら?

万引きは刑法上の窃盗罪

万引きは刑法235条に規定される「窃盗罪」という犯罪です。万引きは日常的によく耳にする犯罪であることから、軽い犯罪と考えている人も少なくありません。しかし、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり、決して軽い犯罪とは言えないでしょう。

窃盗罪は「他人の財物」を「窃取」した場合に成立します。「窃取」とは、他人の占有している財物を、他人の意思に反して、自己または第三者の下へ移す行為です。たとえば、お店の商品をポケットに入れて万引きする場合を考えてみましょう。商品の占有はお店にあります。その商品を、お店の意思に反して自己のポケットに入れる行為が「窃取」にあたります。

窃盗罪の刑罰やどのような場合に窃盗罪が成立するのかについて詳しくは『窃盗罪の法定刑・構成要件は?』の記事もあわせてご確認ください。

執行猶予中に万引き再犯で逮捕されたらどうなる?

執行猶予中に万引き再犯で逮捕されても、今回の事件が不起訴になるか、無罪になれば執行猶予が取り消されることはありません。逮捕されたからといって、すぐさま執行猶予が取り消されて刑務所に入れられることはないのです。

ただし、起訴されて刑事裁判で禁錮以上の刑罰が言い渡されれば必ず執行猶予は取り消されますし、罰金刑となれば裁判官の裁量次第で執行猶予が取り消される可能性があります。

なお、再度の執行猶予の条件を満たしていれば、執行猶予は取り消されず、さらに今回の事件でも執行猶予がつく可能性はあるでしょう。

万引き再犯で逮捕後の流れ

万引き再犯で逮捕された場合でも、通常の刑事事件と同様の流れが予定されています。

逮捕の流れ

まず、被疑者は警察の取り調べを経て48時間以内に検察へ身柄を送られます。被疑者の身柄を受け取った検察官は、24時間以内に被疑者を勾留する必要があるか判断しなければなりません。勾留が必要なら、検察官が勾留請求をし、裁判所がこれを認めれば被疑者は勾留されます。

勾留とは、逮捕に引き続いて行われる身体拘束です。勾留期間は原則10日間ですが、最大で10日間の延長ができます。すなわち、被疑者は最大で20日間も勾留される可能性があります。この勾留期間中に検察官が起訴・不起訴の判断を下すのです。検察官に起訴されたなら、被告人勾留に切り替わり、刑事裁判を受けることになります。

万引きで逮捕されるパターンや逮捕された後の流れについては『万引きで捕まったらどうなる?現行犯逮捕・後日逮捕の例や逮捕の流れを解説』の記事が参考になりますので、あわせてご覧ください。

万引き再犯を繰り返すクレプトマニアへの対応

万引き再犯を繰り返すのは病気の可能性

万引きを繰り返してしまう場合、窃盗症(クレプトマニア)と呼ばれる病気の可能性があります。クレプトマニアとは、衝動的に万引きなどの窃盗行為をしていまい、それを繰り返してしまう病気です。自分では窃盗が悪いことだと理解しつつも、衝動が抑えられないことから、クレプトマニアは精神疾患のひとつと考えられています。

クレプトマニアであるからといって、万引き(窃盗罪)が無罪になることは今のところありません。しかし、情状の1つとして考慮されることは少なくないといえます。ただし、情状として考慮されるためには、クレプトマニアを放置していてはいけません。専門家の診断を受け、きちんとした治療をしていることを主張する必要があります。

クレプトマニア(窃盗症)は治療が最優先

クレプトマニアが窃盗の再犯で逮捕・起訴され有罪となった場合、刑罰が科せられます。しかし、刑罰を科しても、クレプトマニアが治っていなければ根本的な解決になりません。万引き再犯で刑務所に入れられた者が、刑務所から出た途端、再び万引きをしてしまうことも少なくないのです。

したがって、クレプトマニアには刑罰よりも治療を優先すべきだといえます。まずは、専門の病院に通院し、窃盗行為の再犯防止に取り組むことが重要です。また、クレプトマニアの自助グループも存在するため、長期間に渡って窃盗衝動を抑えられている人を参考にすることもできるでしょう。このように再犯防止に取り組むことは、起訴・不起訴の判断や量刑の判断に好影響を与えることが期待できます。

クレプトマニアに理解のある弁護士を探す

万引きの再犯に詳しい弁護士ならクレプトマニアについて理解があるはずです。クレプトマニアが疑われる場合は、クレプトマニアに理解のある弁護士を探して弁護を依頼することで、より良い方向に導いてくれるでしょう。

たとえば、万引き事件では被害者に被害弁償して示談を締結することが重要なので、万引き再犯でも示談が成立できるように弁護士は尽力してくれます。

また、クレプトマニアに理解のある弁護士なら治療方法や専門病院についても把握していることが多いので、病院を紹介してもらい治療を進めることができるでしょう。

さらに、弁護士がついていれば、被疑者・被告人がクレプトマニアであり、現在治療中であることや、治療がうまくいっていることなどを情状として主張するといった弁護活動が期待できます。こういった弁護活動により、不起訴処分や執行猶予つき判決を目指せるでしょう。

クレプトマニアで悩む被疑者・被告人の場合にポイントとなる弁護活動については『クレプトマニアこそ相談先に弁護士を選ぶ!弁護士だからできる活動内容』の記事も参考になりますので、あわせてご確認ください。

万引き再犯は弁護士に相談しよう

万引きの再犯を繰り返し、刑事事件化している場合は、すみやかに弁護士に相談しましょう。弁護士がつけば、万引き再犯でも不起訴や再度の執行猶予を獲得できる可能性が高まります。

今後、どのような対応をとっていけばいいのか、どのような処分になる可能性があるのかについては、弁護士に相談して不安をクリアにしていきましょう。

万引き事件で弁護士に依頼するメリットや、どういった弁護士を選ぶべきなのかといった弁護士の見分け方については『万引きで逮捕されたら弁護士に相談を』の記事が参考になりますので、あわせてご確認ください。

アトム法律事務所では、警察が介入した事件について弁護士による無料相談を実施しています。無料相談を希望される場合は、下記バナーより相談の予約をお取りください。予約の受付は24時間年中無休です。お問い合わせお待ちしております。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了