
万引きの再犯で捕まった方は、刑務所に入れられるのかが知りたいところだと思います。実は、再犯事件の場合、再犯のタイミングによって執行猶予がつきにくいこともあるのです。
この記事では、窃盗の再犯事件ついて、刑罰の相場や執行猶予の条件に関して疑問に答えました。また、窃盗を繰り返してしまうクレプトマニアという病気や、窃盗の再発防止対策についても適宜、解説しています。弁護士のできることについても触れていますので、最後までぜひご覧ください。

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目次
万引きは何罪で逮捕される?不起訴の可能性はある?
万引きは刑法上の窃盗罪
万引きは刑法235条に規定される「窃盗罪」という犯罪です。万引きは日常的によく耳にする犯罪であることから、軽い犯罪と考えている人も少なくありません。しかし、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり、決して軽い犯罪とは言えないでしょう。
窃盗罪は「他人の財物」を「窃取」した場合に成立します。「窃取」とは、他人の占有している財物を、他人の意思に反して、自己または第三者の下へ移す行為です。たとえば、お店の商品をポケットに入れて万引きする場合を考えてみましょう。商品の占有はお店にあります。その商品を、お店の意思に反して自己のポケットに入れる行為が「窃取」にあたります。
法律上の「再犯」と一般用語としての再犯
窃盗の再犯を説明するにあたり、法律上の「再犯」と一般用語としての再犯についてどのような意味で使われているか見ていきましょう。
法律上の「再犯」は「累犯」ともいい、典型例は刑法56条1項に規定されています。刑法56条1項によると、法律上の「再犯」にあたる要件は以下のようになっています。
- 前に懲役に処せられた者であること
- 【前の刑の執行を終わった日】または【前の刑の執行を免除された日】から5年以内に今回の犯罪を行ったこと
- 今回の犯罪について懲役刑に処せられる場合であること
これらの要件にあてはまった場合、法律上の「再犯」となるのです。
一方、一般用語として使われる再犯は「再び犯罪をしてしまったこと」という意味で使われることが多いです。この記事でも、再犯を「再び犯罪をしてしまったこと」の意味で使っています。法律上の「再犯」については「累犯」と表記します。
万引き再犯は刑罰が重くなる?
万引き再犯が「累犯」にあたる場合、刑罰について累犯加重(刑法57条)がなされます。累犯加重がなされると、処断刑がその罪について規定された懲役刑の2倍以下になるのです。たとえば、万引き=窃盗罪についてみると、窃盗罪の法定刑が「10年以下の懲役」であることから、累犯加重によって「20年以下の懲役」が科せられる可能性があります。
万引き再犯が「累犯」にあたらない場合は、累犯加重はなされません。しかし、犯罪を繰り返しているということが、良くない情状として考慮されてしまうことは否定できません。このことから、「累犯」にあたらなくても、万引き再犯は刑罰が重くなると考えておいた方が良いでしょう。
万引き再犯で逮捕後の流れ
万引き再犯で逮捕された場合、通常の刑事事件と同様の流れが予定されています。まず、被疑者は警察の取り調べを経て48時間以内に検察へ身柄を送られます。被疑者の身柄を受け取った検察官は、24時間以内に被疑者を勾留する必要があるか判断しなければなりません。勾留が必要なら、検察官が勾留請求をし、裁判所がこれを認めれば被疑者は勾留されます。
勾留とは、逮捕に引き続いて行われる身体拘束です。勾留期間は原則10日間ですが、最大で10日間の延長ができます。すなわち、被疑者は最大で20日間も勾留される可能性があります。この勾留期間中に検察官が起訴・不起訴の判断を下すのです。検察官に起訴されたなら、被告人勾留に切り替わり、刑事裁判を受けることになります。

万引き再犯で不起訴になることはある?
一般に万引きは被害額が少ないことが多いです。そのため被害者に被害弁償をし、示談を成立させているのであれば、万引き再犯であっても不起訴処分となることも少なくありません。しかし、少額の万引きでも、再犯が繰り返されると次第に不起訴処分を獲得することは難しくなるといえます。
万引き再犯で起訴されたら懲役実刑?執行猶予はつく?
万引き再犯で執行猶予がつく条件は?
まず、執行猶予をつけられる条件について確認しておきましょう。執行猶予は以下の条件を満たす場合につけることができます。
- 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 - 今回、言い渡される刑が「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」である
- 執行を猶予する情状がある
万引き再犯でもこれらの条件を満たした場合、1年以上5年以下の期間、刑の執行を猶予することができます。執行猶予がつけば刑務所に行く必要がありません。弁護士に依頼すれば、執行猶予の条件を満たすような弁護活動が期待できます。
アトムに寄せられたお手紙
万引き再犯で執行猶予は示談や再発防止が必須
万引きの再犯で執行猶予がつくには、被告人に有利な情状が必要です。具体的には、被害者と示談が成立している、被害金額が少ない、被告人が反省している、再発防止の対策がなされている等が情状として欲しいところです。
この中でも特に、被害者との示談が成立していることや、再発防止の対策がなされていることが重要です。もっとも、被害者との示談や再発防止対策は、個人で取り組むことが困難といえます。万引き再犯で執行猶予を獲得したいなら、刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することが大切です。
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万引き再犯で【再度の】執行猶予はつく?条件は?
再度の執行猶予とは、執行猶予期間中に再犯をしてしまった場合に、再び執行猶予をつけられるか、という問題です。再度の執行猶予の条件は以下のように規定されます。
- 前の刑について執行猶予期間中の者で、保護観察に付せられていない者
- 今回、言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」である
- 情状に特に酌量することがある
再度の執行猶予の条件は非常に厳しいものとなっています。通常は再度の執行猶予はつかないと考えておきましょう。再度の執行猶予がつかない場合、前回の刑についての執行猶予が取り消され、今回の刑と合わせた期間、刑務所に入ることになります。
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万引き再犯を繰り返すクレプトマニア
万引き再犯を繰り返すのは病気の可能性も
万引きを繰り返してしまう場合、窃盗症(クレプトマニア)と呼ばれる病気の可能性があります。クレプトマニアとは、衝動的に万引きなどの窃盗行為をしていまい、それを繰り返してしまう病気です。自分では窃盗が悪いことだと理解しつつも、衝動が抑えられないことから、クレプトマニアは精神疾患のひとつと考えられています。
クレプトマニアであるからといって、万引き(窃盗罪)が無罪になることは今のところありません。しかし、情状の1つとして考慮されることは少なくないといえます。ただし、情状として考慮されるためには、クレプトマニアを放置していてはいけません。専門家の診断を受け、きちんとした治療をしていることを主張する必要があります。
クレプトマニア(窃盗症)は治療が最優先
クレプトマニアが窃盗の再犯で逮捕・起訴され有罪となった場合、刑罰が科せられます。しかし、刑罰を科しても、クレプトマニアが治っていなければ根本的な解決になりません。万引き再犯で刑務所に入れられた者が、刑務所から出た途端、再び万引きをしてしまうことも少なくないのです。
したがって、クレプトマニアには刑罰よりも治療を優先すべきだといえます。まずは、専門の病院に通院し、窃盗行為の再発防止に取り組むことが重要です。また、クレプトマニアの自助グループも存在するため、長期間に渡って窃盗衝動を抑えられている人を参考にすることもできるでしょう。このように再発防止に取り組むことは、起訴・不起訴の判断や量刑の判断に好影響を与えることが期待できます。
万引き再犯は弁護士に相談しよう
万引き(窃盗)事件はまず、被害者に被害弁償し示談を締結することが重要です。示談が成立し、被害者から許しを得られれば、検察官がこれを考慮し不起訴処分とする可能性もあります。また、仮に起訴された場合でも、示談の成立は被告人に有利な情状として考慮され、執行猶予の可能性は高まるはずです。弁護士なら被害者の連絡先を入手できる可能性が高いため、示談交渉を任せられます。
また、万引きの再犯に詳しい弁護士ならクレプトマニアについて理解があるはずです。治療方法や専門病院を紹介してもらい、治療を進めることができるでしょう。被疑者・被告人がクレプトマニアであり、現在治療中であることや、治療がうまくいっていることなどを情状として主張できます。このような弁護活動により、不起訴処分や執行猶予つき判決を目指します。
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