2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
取締役が逮捕されたとしても、逮捕・勾留の段階で直ちに会社法上の欠格事由に該当し、当然に役職を失うわけではありません。
しかし、逮捕された後に有罪が確定してしまうと、役職を失う可能性があります。
取締役の役職を失う場合(会社法331条)
- 企業活動に関連する特定法令違反(会社法、金融商品取引法など)に処せられた場合
- その他の法令違反で拘禁刑以上の実刑判決を受けた場合
いずれの場合も、有罪が確定する前の逮捕・勾留の段階では、会社法上の欠格事由には該当しません。
問題は、勾留が長引いて逮捕の事実が社内外に露見すれば、実質的に役職を維持できなくなるリスクが高まることです。役職を守るためには、逮捕後できる限り早く弁護士に相談し、不起訴処分の獲得を目指すことが重要です。
この記事では、取締役が逮捕された後の流れ、役職を失う具体的な条件、そして弁護士に早期相談すべき理由を詳しく解説します。
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取締役が逮捕された後の流れ
取締役が逮捕されてしまった場合、その後の流れはどのようなものになるのでしょうか。
逮捕は大きく現行犯逮捕と後日逮捕の2種類
逮捕にはいくつかの種類があります。代表的な2つの逮捕形式と、その後の流れを確認しましょう。
現行犯逮捕は、犯行中や犯行直後の犯人を逮捕するもので、逮捕状なしに一般人でも行うことができる逮捕です(私人逮捕)。ただし、逮捕後はすぐに警察官などに犯人を引き渡す必要があります。
後日逮捕は、刑事訴訟法に基づき、一定階級以上の警察官や検察官などが逮捕状を請求し、裁判官が逮捕の理由と必要性を認めた場合のみ逮捕令状を発付して行われる逮捕です。
いずれにしても、逮捕後は警察署に連行され、取り調べが行われる流れとなります。

逮捕されると起訴が決まるまで最長23日間拘束される
逮捕されてから事件が起訴されるかどうか決まるまでは、最長で23日間の身体拘束が続く可能性があります。

逮捕後、警察が微罪処分として釈放するケースを除き、48時間以内に検察官送致(送検)が行われます。検察官の判断により24時間以内に勾留請求がなされ、勾留質問などの後に原則として10日間の身柄拘束となります。必要があれば、さらに最長10日間の勾留延長が行われます。
捜査の結果、検察官は起訴・不起訴を判断します。不起訴となれば釈放されますが、起訴されると、事件の内容に応じて略式手続または公判手続に進み、罰金刑や拘禁刑などが科される可能性があります。
逮捕後の流れについてはこちらの記事で詳細に解説しています。
逮捕されると取締役は役職を失う?
取締役が逮捕された場合に最も心配されるのが、役職を失うことです。
結論から言えば、取締役が逮捕されたとしても、逮捕・勾留の段階で直ちに会社法上の欠格事由に該当し、当然に役職を失うわけではありません。欠格事由は、有罪判決が確定した場合に生じるものであり、逮捕・勾留の段階では該当しないからです。
では、どのようなときに欠格事由に該当するのか、詳しく解説します。
取締役の欠格事由:犯罪の種類によって条件が異なる
取締役に関する規定は、主に会社法に定められています。会社法331条は、取締役になれない条件(欠格事由)として以下を挙げています。
取締役の役職を失う条件(会社法331条)
- 企業活動に関連する特定法令違反に処せられた場合(罰金刑・拘禁刑問わず)
例)会社法、金融商品取引法など
執行を終えた日または執行を受けることがなくなった日から2年を経過するまで就任不可 - その他の法令違反で拘禁刑以上の実刑判決を受けた場合
執行(=言い渡された拘禁刑の期間)が終わるまで就任不可
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(中略)又は金融商品取引法(中略)民事再生法(中略)外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(中略)会社更生法(中略)破産法(中略)の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
会社法331条
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
欠格事由には2つのパターンがあり、それぞれ条件が異なります。
【企業活動に関連する特定法令違反に処せられた場合:3号】
以下の企業活動に関連する特定法令に違反して刑に処せられた場合は、刑の種類(罰金刑・拘禁刑を問わず)にかかわらず、刑の執行終了後または執行を受けることがなくなった日から2年間は取締役に就くことができません。
企業活動に関連する特定の法令
- 会社法
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
- 金融商品取引法
- 民事再生法
- 外国倒産処理手続の承認援助に関する法律
- 会社更生法
- 破産法
これらはいずれも会社法秩序と密接に関わる法令として特に重く扱われており、罰金刑や執行猶予付き判決であっても欠格事由に該当します。取締役にとって身近な犯罪類型(粉飾決算・特別背任・インサイダー取引など)が多く含まれる点に注意が必要です。
【その他一般の法令違反の場合:4号】
上記3号以外の法令に違反した場合は、拘禁刑以上の実刑判決を受け、その執行が終わるまでの期間が欠格事由となります。
ただし、執行猶予中の者は例外とされているため、執行猶予付きの拘禁刑が科せられた場合では欠格事由には該当しません。
欠格事由に該当したら直ちに失職する?
欠格事由に該当した場合、その日をもって取締役としての資格を自動的に喪失し、退任となります。株主総会での解任決議や本人の辞任手続きを待つ必要はなく、有罪判決が確定した瞬間に当然退任の効果が生じます。
代表取締役が欠格事由に該当した場合は、取締役の地位だけでなく代表取締役の地位も同時に失います。また、退任後は「資格喪失」を原因とする退任登記の手続きが必要となります。
なお、欠格事由に該当する人物が取締役に選任されていた場合、その選任決議自体が無効となります。
就任後に欠格事由が判明した場合も同様に就任登記が無効扱いとなり、抹消登記の手続きが必要です。
刑事罰とは別に役員規程による社内処分もある
取締役が不祥事を犯した場合、刑事罰とは別に会社内での処分が行われることがあります。
取締役は通常、会社との関係が委任と整理されるため就業規則ではなく役員規程が問題となりますが、労働者性の有無は実態に応じて個別に判断されます。
定款、役員規程、取締役会や株主総会の判断等によっては、欠格事由に該当しない場合であっても、解任・解職その他の措置が取られるリスクがある点に注意が必要です。
取締役が逮捕で役職を失わないためには?
取締役が逮捕されたことによって役職を失わないためには、早期に弁護士に相談をすることが重要です。
逮捕後すぐに面会できるのは弁護士だけ
逮捕された被疑者は警察の取り調べを受け、48時間以内に検察官に送られます。検察官はその結果を踏まえ、24時間以内に勾留請求の決定を行います。
この約3日間は、被疑者が家族などと自由に面会・連絡することは通常できず、弁護士のみが接見できるのが原則です。これは被疑者にとってはきわめて不利であり、弁護士による適切な助言がなければさらに不利な状況に追い込まれることも考えられます。
そのため、逮捕されたあとに最初に弁護士と面会する機会である初回の接見は非常に重要となります。
弁護士の接見で可能になることやその流れ、費用などについては、こちらの記事もご参照ください。
関連記事
・弁護士の接見とは|逮捕中の家族のためにできること・やるべきこと
不起訴処分で早期釈放・前科回避を目指す
日本では、起訴後に無罪となる例は多くありません。一方、不起訴となった場合は刑事裁判自体が開かれないため、前科はつきません。したがって、会社法上の欠格事由に至る事態を避ける観点からは、不起訴処分を得て早期釈放を目指すことが重要です。
不起訴処分を得るためには、検察官が判断を下すまでに、示談を締結するなどの活動を行うことが必要となります。
もっとも、不起訴となった場合でも、会社の判断や信用低下によって役職に影響が及ぶ可能性はあります。
示談で不起訴の可能性を高める

不起訴による釈放の可能性を高めるためには、被害者のいる犯罪の場合、早期に被害者対応を行うことが肝要です。
真摯に反省して謝罪を行い、示談を締結することで、検察官が再犯の可能性や加害者家族への影響などといった様々な情状を考慮し、不起訴の可能性が高まります。
被害者と示談するためには弁護士に相談する
被害者との間に示談を締結するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。
起訴が決定された後で示談が成立しても、後から不起訴とすることはできないため、示談交渉はその前に行う必要があります。しかし、逮捕されている場合、加害者本人は示談交渉はできません。
逮捕なしで在宅で捜査が行われる場合などもありますが、いずれの場合であっても加害者と被害者が直接示談交渉を行うことは困難であり、間には弁護士を立てる必要があります。
そのため、示談を締結するには、早期に弁護士に相談することが重要なのです。
取締役の逮捕に関するよくある質問
Q.取締役が逮捕されたら会社はどうなりますか?
取締役が逮捕された場合、会社への影響は逮捕された取締役の役割や会社の規模・体制によって異なります。
まず、逮捕・勾留中は身体拘束により職務の執行が事実上できなくなります。逮捕された取締役が代表取締役である場合、他の取締役や取締役会が業務を代行する対応が必要となります。
さらに状況によっては、金融機関や取引先からの信用低下により、融資姿勢や取引継続の判断に影響が及び、事業運営に支障が生じる可能性があります。
Q.実名報道によって役職を失うリスクはありますか?
実名報道に関する一律の法的基準があるわけではありませんが、事件の内容、公共性、社会的関心の程度、本人の社会的立場などを踏まえて報道機関が判断するのが通常です。
そのため、企業の取締役など社会的影響の大きい立場にある場合には、実名で報道される可能性があります。また、実名報道によって企業の信用や取引先対応に影響が生じ、その結果として役職維持が難しくなる可能性があります。
Q.逮捕後、取締役の家族は面会できますか?
逮捕後の最初の約72時間(逮捕から勾留決定まで)は、弁護士以外との面会は原則としてできません。家族が面会できるのは、勾留決定後に「接見禁止」が付いていない場合に限られます。
逮捕直後に本人とコミュニケーションを取りたい場合は、弁護士を通じた接見で伝言を伝えてもらうのが唯一の方法となります。
アトムの解決事例(取締役・役員の逮捕)
痴漢で逮捕後に早期釈放・不起訴獲得
アトムの解決事例①
40代の会社役員の男性が、電車内で20代女性の臀部を触ったとして神奈川県迷惑行為防止条例違反(痴漢)の容疑で逮捕された事案。逮捕後に送検されたが裁判官が勾留請求を却下したため釈放され、依頼者は穏便な解決を望んで弁護士に相談した。
弁護活動の成果
弁護士が粘り強く示談交渉を行い、示談金50万円で被害者の宥恕を得る示談を成立させた。これが検察官に高く評価され、最終的に不起訴処分となり、依頼者は前科を回避することができた。
横領で逮捕されたが不起訴獲得
アトムの解決事例②
会社役員の男性が、自身が代表取締役を務める会社の口座から合計約760万円を引き出して着服したとして業務上横領の容疑で逮捕された事案。依頼者は引き出した金銭の一部は業務上の用途に使用したものと主張していた。
弁護活動の成果
弁護士は当初の黙秘方針を転換し、会社内の裏金作りの実態を具体的に供述することで横領事実への疑義を提起。被害会社との示談は不成立だったものの、嫌疑不十分で不起訴処分となり、依頼者は前科なく社会復帰を果たした。
まとめ
取締役が逮捕されたとしても、逮捕・勾留の段階では会社法上の欠格事由に該当せず、それだけで当然に役職を失うわけではありません。
ただし、有罪が確定した場合の影響は犯罪の種類によって異なります。会社法・金融商品取引法・破産法などの特定法令違反であれば、刑の種類を問わず、執行を終えた日または執行を受けることがなくなった日から2年を経過するまで欠格事由に該当します。
それ以外の法令違反であれば、拘禁刑以上の実刑判決を受けた場合に、その執行を終えるまで又はその執行を受けることがなくなるまで欠格事由に該当します。
いずれにせよ、起訴後に無罪となる例は多くないことも踏まえると、会社法上の欠格事由に至る事態を避けるためには、不起訴処分の獲得を目指すことが重要です。
不起訴を実現するためには、逮捕直後から弁護士に接見を依頼し、被害者との示談交渉などの弁護活動を迅速に進めることが重要です。
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