突然家族が逮捕されたとき、残された家族はどうすればいいのでしょうか。
逮捕された場合、個人で捜査機関の取り調べを受けなければなりません。
しかし、弁護士がついていれば適切なアドバイスを聞ける上に、今後の刑事手続において様々な面で被疑者・被告人の味方となってくれます。そのため、逮捕された人やその家族が弁護士に相談する方法を知っておくことは有益です。
この記事では、逮捕された場合に相談できる弁護士を3つ紹介しています。それぞれの長所短所を見極めて、できるだけ早く弁護士に依頼しましょう。
目次
逮捕後に相談できる弁護士3選と連絡方法
逮捕後、当番弁護士に相談する
当番弁護士制度とは、弁護士が1回だけ無料で逮捕された人と接見してくれる制度です。成人だけでなく、少年事件の対象となる20歳未満であっても利用することができます。また、事件の種類にも限定がありません。ただし、当番弁護士制度を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 逮捕されていること
- まだ起訴されていないこと
- その事件でまだ当番弁護士を呼んでいないこと
当番弁護士は、逮捕された本人だけでなく、逮捕された人の家族や知人であっても利用可能です。当番弁護士への連絡方法を確認しておきましょう。
本人が呼ぶ場合は、警察官、検察官、裁判官に「当番弁護士を呼んでほしい。」と伝えましょう。これだけで、弁護士会に連絡がいき、当番弁護士がきてくれます。
家族・知人が呼ぶ場合は、本人が逮捕されている地域を管轄している弁護士会に電話して依頼します。そこで、当番弁護士を頼みたいこと、申込者の名前、連絡先、逮捕されている人の氏名、性別、生年月日、逮捕されている警察署を伝えましょう。そうすると、弁護士会が当番弁護士の手配をしてくれます。
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逮捕後、勾留されたら国選弁護人に相談できる
国選弁護人制度とは、資力が乏しく、自ら弁護士に依頼できない人を救済するために設けられた制度です。国が定めた資力要件(現金や預金をあわせて50万円未満)などの審査を通過すれば、国が弁護士をつけてくれます。弁護士費用は国の負担となっており、無料で利用できます。ただし、被疑者国選では勾留後、被告人国選では起訴後でなければ利用できません。
被疑者国選を利用するには、勾留後、資力申告書を裁判所に提出しなければなりません。検察官が被疑者について勾留請求したら、警察にいる職員に資力申告書と、国選弁護人の選任請求書を要求し、必要事項を書き込んで提出しましょう。
留置場で請求できなくても慌てる必要はありません。検察官が被疑者について勾留請求すると、被疑者は裁判所に呼ばれて「勾留質問」を受けます。そして、裁判官が勾留決定する場合には、「国選弁護人制度を利用しますか?」と聞いてくれます。ここで利用の意思を示し、必要な書類を提出しましょう。
逮捕後、私選弁護士に相談する
私選弁護士は、自ら選任し、委任契約を締結する弁護士です。当番弁護士や国選弁護人のように、逮捕後や勾留後といったタイミングの制限がなく、いつでも依頼できます。もっとも、弁護士費用がかかるため、資力に乏しい場合は利用することができません。
逮捕後、勾留請求されるまでは原則として外部との連絡が一切とれません。そのため、逮捕直後に私選弁護人へ連絡する方法として現実的なものは2つです。まず、逮捕前から私選弁護士がいる場合、警察署の職員に連絡してもらう方法が考えられます。もうひとつは、逮捕された人の家族が私選弁護士に「逮捕されたこと」「留置場の場所」を伝えて接見に行ってもらう方法があります。
弁護士相談のまとめ
- 当番弁護士制度は逮捕後に1回だけ呼ぶことができる
- 国選弁護人制度は資力が一定以下かつ勾留後に利用できる
- 私選弁護士はどのタイミングでも利用できるが、弁護士費用を支払える資力が必要
逮捕後の弁護士相談は迅速に
逮捕後、72時間は弁護士しか面会できない
刑事事件で逮捕された場合、警察の取り調べを経て48時間以内に検察へ事件と被疑者の身柄が送検されます。これらを受け取った検察官は24時間以内に被疑者を勾留請求するか決めなければなりません。検察官の勾留請求が裁判所で認められれば、被疑者は勾留されます。
このように、逮捕から検察官が勾留請求するか決めるまでは72時間以内と決まっています。この72時間は、たとえ家族であっても被疑者と面会することができません。接見(面会)できるのは、弁護士だけです。弁護士だけが、立会人や時間などの制限なく被疑者と接見できるのです。
逮捕後、勾留されたら長期間拘束される
勾留とは、逮捕に引き続き行われる身体拘束のことをいいます。勾留期間は原則10日ですが、最大で10日間の延長が許されます。つまり、検察官が起訴・不起訴の判断を下すまで、被疑者は最大で20日間(逮捕から数えると23日間)も身体拘束されてしまうのです。
さらに、検察官が起訴する判断をすれば、被疑者勾留はそのまま被告人勾留に変わります。被告人勾留は保釈が認められない限り、原則として刑事裁判が終わるまで続きます。このように長期の拘束につながるおそれがあることから、逮捕の段階でできるだけ早く弁護士に相談する必要があります。
逮捕後の拘束期間
逮捕から勾留まで最大72時間、勾留されると最大で20日間(合わせて23日間)身柄を拘束される
逮捕後、職場や学校に連絡されるのか
職場や学校が関係していない事件であれば、職場や学校に警察から連絡がいくことはありません。
しかし、逮捕・勾留されている間は欠勤することになってしまうため、職場や学校にはしばらく通うことができない旨を連絡する必要があります。本人が連絡できないような状況であれば、家族や友人が代わりに連絡をすることになります。
2~3日程度で身柄拘束が解かれる可能性が高い場合は、欠勤理由は体調不良で通せるでしょう。
長期拘束が見込まれる場合は、体調不良や私事を理由に欠勤するのは難しいと思うので、途中で正直に理由を伝えることになるかもしれません。
もしも職場や学校にどう伝えたらいいのかわからないのであれば、弁護士に今後の対応について相談することをおすすめします。多くの刑事事件を取り扱ってきた弁護士であれば、職場や学校への適切な連絡方法についてアドバイスできる場合があります。
逮捕に対し弁護士ができること
当番弁護士は、初回の接見のみ行ってもらうことができます。そのとき、取調べへのアドバイスや、今後の事件の見通しについて説明してもらえます。家族が依頼した場合、逮捕されている人に伝言を頼むこともできるでしょう。
国選弁護人は、勾留後にしか依頼できないため、逮捕に対してはできることがありません。
私選弁護士は、当番弁護士や国選弁護人のように活動に縛りがありません。そのため、逮捕に対しても様々な活動ができます。具体的には以下の活動が期待できるでしょう。
・逮捕前なら逮捕されないような活動
・逮捕後、職場や学校、家族など外部への連絡
・逮捕が報道されないような活動
・逮捕後に勾留されないように働きかけ
・被害者がいる場合、被害者との示談交渉
私選弁護士は、逮捕後に勾留されたり起訴された場合にも、引き続き弁護活動を依頼できます。
逮捕後に弁護士相談する方法とは
逮捕後、まずは当番弁護士を呼ぶ
逮捕から約72時間は、外部との連絡がとれません。逮捕前から知っている弁護士や、委任契約を結んでいる弁護士がいない場合、留置場で弁護士を新たに探すことは不可能です。
そこで、まずは当番弁護士を呼びましょう。弁護士は被疑者の味方です。捜査機関からのプレッシャーに負けないように励ましてくれ、次の展望について具体的なアドバイスをもらえるでしょう。できるだけ早く当番弁護士を呼ぶことで、今後なにをすべきかという方針が明らかになってきます。
逮捕後、私選弁護士選任申出制度を利用する
個人的に依頼できる弁護士がいない場合、私選弁護士選任申出制度(刑事訴訟法31条の2)を利用します。弁護人を選任しようとする被疑者・被告人は、弁護士会に対して弁護人の選任を申し出ることができます。この申し出を受けた弁護士会は、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければなりません。
もっとも、紹介された弁護士には依頼を受任する義務はありません。報酬条件などで折り合いがつかない場合は、弁護士の方から依頼を断られることもあります。また、私選弁護士選任申出制度は、当番弁護士制度と重ねて運用されることが少なくありません。つまり、当番弁護士とされた者が、私選弁護士選任申出のときにも紹介されることがあるのです。
なお、一定の資力(50万円以上)を有する場合でも、当番弁護士や私選弁護士選任申出制度を使って弁護士会から紹介された弁護士に依頼を断られた場合は、国選弁護人制度を利用できます。
家族が逮捕された場合に私選弁護士を探す方法
家族が逮捕された場合、まずはインターネットで弁護士を探しましょう。「刑事事件 弁護士」や「刑事弁護 事務所」などといった検索ワードで調べてHPを見てみるのがおすすめです。刑事事件を専門に扱っている弁護士事務所は、経験豊かな弁護士が所属しているので安心して依頼できます。
アトム法律事務所では、24時間365日刑事事件加害者の相談予約を受け付けています。警察の捜査を受けている事件では無料相談も可能です。各支部には基本的に複数の弁護士が在籍しており、当日の来所相談予約であっても対応できる場合が多いです。お気軽にご相談ください。