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逮捕経験・留置場(留置所)生活の経験から学ぶ刑事事件のリアル

逮捕の経験者が語る留置場生活の実態

この記事は、実際に逮捕・勾留され留置場(留置所)に入った経験のある方の体験談をもとに構成しています。刑事事件を数多く取り扱ってきた弁護士が各トピックについて解説しますので、刑事事件の実際を知るためにお役立ていただけるかと思います。

刑事事件の早期解決は、時間との勝負です。いかに早く適切な判断をするか、迅速な弁護活動ができるかが鍵になります。実践経験豊富な弁護士にサポートしてもらうことが、被疑者やその家族にとって最良の結果を得る上で重要です。

なお、留置所という名称も一般的ですが、「留置場」が正式名称であるため、本記事では留置場と記載しています。

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経験者が語る「逮捕・勾留」と「留置場生活」の実態

逮捕直後は弁護士としか面会できない

逮捕され、留置場に入った経験のある方は、その多くがアクリル板越しに行う「面会」も経験しています。家族や恋人、友人との面会のことを「一般面会」「一般接見」などをいい、勾留期間に入ると一般面会ができるようになります。ところが、逮捕直後(勾留が決まるまで)の間は、通常は一般面会が許されず、弁護士との面会しか行うことができません

一方、弁護士との面会(弁護士接見)では、接見の最中は警察職員の立会いを外して、完全に一対一の状態で行うことができます。弁護士接見では、接見時間には制約がなく、夜間であっても、何時間でも必要な限り接見可能です。

なお勾留が決まってからの面会について、勾留決定と同時に「接見禁止処分」を出されることがあります。接見禁止になると、一般面会ができなくなり、家族であっても会うことが許されません。ですが、接見禁止になっても、弁護士であれば、いつでも会って話すことができますので、留置場にいながら法律相談を受けることができます。

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逮捕勾留の期間は?留置場生活はどのくらい続く?

逮捕の流れ

刑事事件の容疑者として警察に逮捕された場合、少なく見積もって72時間(48時間+24時間)は留置場に収容されて生活することになるでしょう。
逮捕された被疑者は、警察逮捕から48時間以内に、検察官へ身柄送致されます(送致)。そしてその後、検察官は、そのまま留置を続けるか(=勾留するか)、釈放するか24時間以内に方針を決定します。

勾留が決定された場合は、(本来ならば拘置所にて生活をするのが基本ですが、定員などの問題もあり、多くの場合)勾留中も警察署内の留置施設にて生活をすることになります。
勾留期間は、原則として10日間と決められており、延長されるとさらに10日を限度として勾留が継続されます。

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勾留中の留置場の生活環境とは

留置場内では複数の被疑者が同じ部屋の中に入れられ共同生活をしなければなりません。勾留期間は最大20日間、逮捕から数えれば留置場での生活は最大23日間にも及びます。決して恵まれた生活環境ではありませんので、持病が悪化しやすいなどの健康障害を懸念される方も多いです。

留置場生活の一日の大まかな流れとしては、基本的には7時には起床し8時に朝食、12時に昼食、18時に夕食をとり、21時に就寝という生活スケジュールになっています。そのため、勾留中は規則正しい生活を送ることになります。

ごはんは3食無料で提供されますが、留置場の食事メニューだけではもの足りない人などもいるため、「自弁」という制度が設けられています。自弁とは現金を支払い、別メニューの弁当を購入できるというものです。

食事は生活をおくる上での活力になるものですが、留置場の食事の栄養面については諸説ありというところでしょう。

留置場の食事が原因で脚気になったなどとして、県に損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、さいたま地裁であった。(略)裁判長(略)は、食事に健康上必要な量のビタミンB1が含まれていなかったことを発病の原因と認め、県に55万円の支払いを命じた。(略)県警は19年11月、同署の留置場で20~30代の男性4人が栄養不足による脚気と診断されたと公表。

2023.6.16朝日新聞デジタル「「留置場の食事で脚気」県に賠償命令 同じ警察署で過去に4人発生」https://www.asahi.com/articles/ASR6J6R5TR6JUTNB00Z.html(2023.11.10現在)

写真はある留置施設で支給された標準的な食事の一例ですが、国民生活の実状等を勘案して十分なものであるように、資格のある栄養士が定期的に栄養のバランスをチェックしており、年々その内容の充実に努めています。

警察庁HP 警察庁の概要「警察の留置業務(2008年10月29日)https://www.npa.go.jp/about/overview/ryuchi/Detention_house-J_080415-3.pdf(2023.11.10現在)

なお留置場内では弁当だけではなく歯ブラシや歯磨き粉、生理用品などのアメニティを自腹で購入することもできます。留置場内では自分のお金を携帯することはできませんが、領置金として警察に預けることができます。物品の購入費用については領置金から差し引いて清算されます。

留置場の居室にはトイレがありますが、お風呂はありません。入浴については、数人が代わり番子に、浴室で入浴することになります。毎日入浴することはできないものの、少なくとも5日に1回以上、原則として週2回以上、入浴ができるとされています。

勾留中の留置場内に差し入れができる

留置場内にいる人に現金や書籍などを差し入れすることもできます。一般の人が差し入れできるのは平日の午前9時半~午前11時半と、午後1時~午後5時までであることが多いです。本人が取り調べ等で留置場内にいないときでも、差し入れのみであれば基本的に可能です。なお、弁護士であれば「差し入れが可能な時間に制限はない」ので早急に差し入れしたいものがある場合には弁護士に依頼するのがおすすめです。

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経験者からの助言|弁護士の「初回接見」の重要性

逮捕され、留置場に入れられてしまうと、完全に身動きが取れなくなります。そのとき、一番大切なことは、家族や友人など、外にいる人の協力です。具体的には、弁護士を派遣して警察の中で本人が法律相談を受けられるように手配をすることです。正式な依頼前に、単発の契約として弁護士を派遣することができます。この弁護士面会のことを「初回接見」といいます。

逮捕されると、すぐに警察の取調べが行われます。どのように受け答えをするかは、今後の刑事手続きに影響しますので、慎重な判断が必要です。できるだけ早めに初回接見を実現し、本人の応急処置をする必要があるのです。外に協力を望める人がいない場合は、当番弁護士を呼びましょう。警察の職員に申し出て、当番弁護士の派遣を要請してください。

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逮捕~勾留・起訴までの流れ|経験者の話を弁護士が解説

経験者の話①「逮捕後、気付いたら勾留されていた」

「逮捕後、気付いたら勾留されていた」という話はよく聞くところです。これは、逮捕から勾留までが極めて短い時間であることから、今どの段階にあるかがよくわからないうちに勾留の段階に入ってしまっているということを意味します。警察に逮捕されると、48時間以内に検察官に引継ぎが行われます。そして、引継ぎを受けた検察官は、24時間以内に勾留請求を行うかを決めなければなりません。裁判官に勾留請求が行われると、裁判官は「勾留質問」といって、被疑者本人と面談をし、それを踏まえて勾留の判断を行います。

勾留請求が行われると、即日勾留質問が行われる場合と、翌日勾留質問が行われる場合があります。前者は「即尋」、後者は「翌尋」と呼ばれ、例えば大阪は即尋で、東京では翌尋です。逮捕されてから勾留に入るまでは、3日~4日しか時間がかからないということになります。

経験者の話②「警察での取調べは怖い」

経験者の話でよくあることとして、「警察署での取調べは怖い」というものがあります。すべてがそうではありませんが、否認をしている事件の場合には、取調べが厳しくなる傾向にあるようです。逮捕されたあと否認をするとなると、警察が一定の嫌疑・証拠をもとに逮捕に踏み切っているため、それを否定することとなります。そのため、本当にそれが合理的な否認であるか確かめるため、取調べが激化する可能性が高いです。

認めの事件であっても、反省の色が見られないなどの理由で、警察が「お灸を据える」ということもあります。取調べを担当する人の性格や手法にもよるため、すべての取調べが厳しいというわけではありませんが、「怖かった」と語る人が多いのが現実です。不当に恐怖を感じさせたり威圧的な態度であれば、その是正を求める必要があります。弁護士は警察署長や担当検察官に抗議を行うこともあります。

経験者の話③「身体拘束中、誰とも面会できないことがある」

勾留中は、家族や友人と面会をできますが、そうした一般面会ができないケースもあります。勾留決定と同時に「接見禁止」の処分が出されると、弁護士以外の者と面会をすることができなくなるのです。接見禁止は、例えば、共犯者が複数名いる場合に付けられます。関係者が面会にきて口裏合わせをすることがないよう、弁護士を除くすべての者との面会を遮断するのです。

また、共犯者がいる場合には、留置施設に入れられる時もそれぞれが別の警察署の留置施設に入れられます。共犯者が10人逮捕されたとすれば、10か所の留置施設が使われることになります。このとき、捜査を行う警察署と留置を行う警察署が別々になるため、弁護士が接見に行く際には留置場所の特定から行わなければなりません。基本的には、担当刑事か捜査警察の留置管理課に問い合わせて情報を得ます。

逮捕されたら実務経験豊富な弁護士にすぐ相談を

弁護士をつけて早期釈放を目指す|勾留を回避する

刑事事件で逮捕されたら、できるだけ早い段階で弁護士をつけるか検討しましょう。逮捕後、早期釈放を求めるには専門家の手助けが必要です。逮捕後はすぐに勾留の段階へと手続が進められます。勾留されると少なくとも10日間は自宅に帰ることができなくなります。そのため、勾留を回避するための弁護活動を弁護士に依頼しなければいけません。

逮捕から送致される流れは手続上とめることができません。勝負は送致されてからです。弁護士は、検察官に勾留請求しないよう求める意見を提出し、在宅捜査を促します。それでも勾留請求が行われた場合は、裁判官に対して勾留をすべきでないという意見を提出します。場合によっては裁判官と面談をして、事情を説明することも必要です。勾留まではとにかく時間がないため、スピーディな弁護活動が求められます。

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弁護士をつけて不起訴処分の獲得を目指す

警察・検察官の捜査と並行して、弁護士は不起訴処分を得るための活動を行います。痴漢や盗撮などの被害者がいる事件では、被害者と示談をすることで、被害感情がおさまる活動を行います。検察官が起訴・不起訴を決めるまでに示談をする必要がありますので、ここでの活動も時間勝負です。

また、再犯防止策を講じることも、不起訴獲得には重要なアクションになります。窃盗癖や性癖が病的レベルにある場合には、医療機関などの協力を得て、根本的な治療が必要です。その環境調整をすることも弁護士の重要な役割といえます。

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実務経験豊富な弁護士を選ぶ理由

刑事事件で弁護士のサポートを受ける際、実務経験の豊富な弁護士を選ぶことがおすすめです。刑事事件はスピード勝負になる場面が多々あります。刑事訴訟法という法律にしたがって、手続は行われますが、その中には「日」だけでなく「時間」単位の制約があり、常に時間を意識した活動が必要です。

弁護士である以上、法的知識や判断の正しさはその資格に裏付けられています。しかし、それだけでは不十分です。刑事事件を早期解決するためには、判断のスピードや弁護活動のスピードが求められます。これは実務経験を重ねることで身につけられる能力ですので、弁護士選びの際には、「経験値」に注目したいところです。

まとめ

逮捕されたらどうなってしまうのか。それは誰もが不安に思うことです。この記事では、実際に逮捕された経験のある方の経験談をベースに、刑事事件のリアルな情報を整理しました。勾留中の生活についてイメージを持つことができたでしょうか。

早期釈放や不起訴獲得に向けて、経験豊富な弁護士に依頼するべきということも、解説してきました。自分が逮捕されるかもしれない、家族が逮捕されてしまったという方は、少しでも早く事件を解決できるよう、この記事をお役立てください。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了