この記事は、実際に逮捕され留置場に入った経験のある方の体験談をもとに構成しています。刑事事件を数多く取り扱ってきた弁護士が各トピックについて解説しますので、刑事事件の実際を知るためにお役立ていただけるかと思います。
刑事事件の早期解決は、時間との勝負です。いかに早く適切な判断をするか、迅速な弁護活動ができるかが鍵になります。実践経験豊富な弁護士にサポートしてもらうことが、被疑者やその家族にとって最良の結果を得る上で重要です。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
経験者が語る「逮捕」と「留置場生活」の実態
逮捕直後は弁護士としか面会できない
逮捕され、留置場に入った経験のある方は、その多くがアクリル板越しに行う「面会」も経験しています。家族や恋人、友人との面会を「一般面会」といい、勾留期間に入ると一般面会が許されます。ところが、逮捕直後(勾留が決まるまで)の間は、通常は一般面会が許されず、弁護士との面会しか行うことができません。弁護士との面会は「接見」といい、接見は警察職員の立会いを外して、完全に一対一の状態で行うことができます。接見時間には制約がなく、夜間であっても、何時間でも必要な限り接見可能です。
勾留が決まってからの面会について、勾留決定と同時に「接見禁止処分」を出されることがあります。接見禁止になると、一般面会ができなくなり、家族であっても会うことが許されません。接見禁止になっても、弁護士であれば、いつでも会って話すことができますので、留置場にいながら法律相談を受けることができます。
勾留中の留置場生活は被疑者の心身を疲弊させる
勾留中は警察署内の留置施設にて生活をすることになります。勾留期間は、原則として10日間と決められており、延長されるとさらに10日を限度として勾留が継続されます。留置場内には複数の被疑者が同じ部屋の中に入れられ共同生活をしなければなりません。決して恵まれた生活環境ではありませんので、持病が悪化しやすいなどの健康障害を懸念される方も多いです。
身体拘束という非日常的空間での生活は、精神面でも大きなダメージを受けることになります。「自分から話せば早く出られる」などと警察に自供を促されると、一日でも早く出られるなら話してしまいたいという欲求にかられてしまうのも無理はありません。精神面のケアをする意味でも、弁護士との面会は重要な役割を果たします。弁護士接見の中で逐一方針を確認し、正しい取調べの受け方を維持するようにしましょう。
経験者からの助言|弁護士の「初回接見」の重要性
逮捕され、留置場に入れられてしまうと、完全に身動きが取れなくなります。そのとき、一番大切なことは、家族や友人など、外にいる人の協力です。具体的には、弁護士を派遣して警察の中で本人が法律相談を受けられるように手配をすることです。正式な依頼前に、単発の契約として弁護士を派遣することができます。この弁護士面会のことを「初回接見」といいます。
逮捕されると、すぐに警察の取調べが行われます。どのように受け答えをするかは、今後の刑事手続きに影響しますので、慎重な判断が必要です。できるだけ早めに初回接見を実現し、本人の応急処置をする必要があるのです。外に協力を望める人がいない場合は、当番弁護士を呼びましょう。警察の職員に申し出て、当番弁護士の派遣を要請してください。
逮捕~起訴までの流れ|経験者の話を弁護士が解説
経験者の話①「逮捕後、気付いたら勾留されていた」
「逮捕後、気付いたら勾留されていた」という話はよく聞くところです。これは、逮捕から勾留までが極めて短い時間であることから、今どの段階にあるかがよくわからないうちに勾留の段階に入ってしまっているということを意味します。警察に逮捕されると、48時間以内に検察官に引継ぎが行われます。そして、引継ぎを受けた検察官は、24時間以内に勾留請求を行うかを決めなければなりません。裁判官に勾留請求が行われると、裁判官は「勾留質問」といって、被疑者本人と面談をし、それを踏まえて勾留の判断を行います。
勾留請求が行われると、即日勾留質問が行われる場合と、翌日勾留質問が行われる場合があります。前者は「即尋」、後者は「翌尋」と呼ばれ、例えば大阪は即尋で、東京では翌尋です。逮捕されてから勾留に入るまでは、3日~4日しか時間がかからないということになります。
経験者の話②「警察での取調べは怖い」
経験者の話でよくあることとして、「警察署での取調べは怖い」というものがあります。すべてがそうではありませんが、否認をしている事件の場合には、取調べが厳しくなる傾向にあるようです。逮捕されたあと否認をするとなると、警察が一定の嫌疑・証拠をもとに逮捕に踏み切っているため、それを否定することとなります。そのため、本当にそれが合理的な否認であるか確かめるため、取調べが激化する可能性が高いです。
認めの事件であっても、反省の色が見られないなどの理由で、警察が「お灸を据える」ということもあります。取調べを担当する人の性格や手法にもよるため、すべての取調べが厳しいというわけではありませんが、「怖かった」と語る人が多いのが現実です。不当に恐怖を感じさせたり威圧的な態度であれば、その是正を求める必要があります。弁護士は警察署長や担当検察官に抗議を行うこともあります。
経験者の話③「身体拘束中、誰とも面会できないことがある」
勾留中は、家族や友人と面会をできますが、そうした一般面会ができないケースもあります。勾留決定と同時に「接見禁止」の処分が出されると、弁護士以外の者と面会をすることができなくなるのです。接見禁止は、例えば、共犯者が複数名いる場合に付けられます。関係者が面会にきて口裏合わせをすることがないよう、弁護士を除くすべての者との面会を遮断するのです。
また、共犯者がいる場合には、留置施設に入れられる時もそれぞれが別の警察署の留置施設に入れられます。共犯者が10人逮捕されたとすれば、10か所の留置施設が使われることになります。このとき、捜査を行う警察署と留置を行う警察署が別々になるため、弁護士が接見に行く際には留置場所の特定から行わなければなりません。基本的には、担当刑事か捜査警察の留置管理課に問い合わせて情報を得ます。
逮捕されたら実務経験豊富な弁護士にすぐ相談を
弁護士をつけて早期釈放を目指す|勾留を回避する
刑事事件で逮捕されると、できるだけ早い段階で弁護士をつけるか検討しましょう。逮捕後、早期釈放を求めるには専門家の手助けが必要です。逮捕後はすぐに勾留の段階へと手続が進められます。勾留されると少なくとも10日間は自宅に帰ることができなくなります。そのため、勾留を回避するための弁護活動を弁護士に依頼しなければいけません。
逮捕から送致される流れは手続上とめることができません。勝負は送致されてからです。弁護士は、検察官に勾留請求しないよう求める意見を提出し、在宅捜査を促します。それでも勾留請求が行われた場合は、裁判官に対して勾留をすべきでないという意見を提出します。場合によっては裁判官と面談をして、事情を説明することも必要です。勾留まではとにかく時間がないため、スピーディな弁護活動が求められます。
弁護士をつけて不起訴処分の獲得を目指す
警察・検察官の捜査と並行して、弁護士は不起訴処分を得るための活動を行います。痴漢や盗撮などの被害者がいる事件では、被害者と示談をすることで、被害感情がおさまる活動を行います。検察官が起訴・不起訴を決めるまでに示談をする必要がありますので、ここでの活動も時間勝負です。
また、再犯防止策を講じることも、不起訴獲得には重要なアクションになります。窃盗癖や性癖が病的レベルにある場合には、医療機関などの協力を得て、根本的な治療が必要です。その環境調整をすることも弁護士の重要な役割といえます。
実務経験豊富な弁護士を選ぶ理由
刑事事件で弁護士のサポートを受ける際、実務経験の豊富な弁護士を選ぶことがおすすめです。刑事事件はスピード勝負になる場面が多々あります。刑事訴訟法という法律にしたがって、手続は行われますが、その中には「日」だけでなく「時間」単位の制約があり、常に時間を意識した活動が必要です。
弁護士である以上、法的知識や判断の正しさはその資格に裏付けられています。しかし、それだけでは不十分です。刑事事件を早期解決するためには、判断のスピードや弁護活動のスピードが求められます。これは実務経験を重ねることで身につけられる能力ですので、弁護士選びの際には、「経験値」に注目したいところです。
まとめ
逮捕されたらどうなってしまうのか。それは誰もが不安に思うことです。この記事では、実際に逮捕された経験のある方の経験談をベースに、刑事事件のリアルな情報を整理しました。早期釈放や不起訴獲得に向けて、経験豊富な弁護士に依頼するべきということも、解説してきました。自分が逮捕されるかもしれない、家族が逮捕されてしまったという方は、少しでも早く事件を解決できるよう、この記事をお役立てください。