公共の場において下半身などを露出する行為を行い、逮捕された場合はその後どうなるのでしょうか。
- 下半身の露出で夫が逮捕された・・・
- 過去の露出行為で捕まったらどうしよう・・・
露出行為は、公然わいせつ罪や迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反などで逮捕される可能性がある犯罪です。
さらに起訴されるとほとんどのケースで有罪判決となり、前科がついてしまいます。
この記事では、露出で逮捕された後の流れや刑罰について解説します。
前科をつけないためには不起訴処分を得ることが重要であり、そのためには早期に弁護士に相談することが効果的です。
目次
露出で問われる罪とは?
露出で逮捕、起訴されると、公然わいせつ罪で有罪判決を受ける場合が多いです。
事案によっては、迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反などに該当する可能性もあります。
公然わいせつ罪
露出行為は、主に公然わいせつ罪に問われます。
公然わいせつ罪は、刑法174条に定められています。
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法174条
不特定多数の人に認識される可能性がある場所で、わいせつな行為をすると公然わいせつ罪に該当します。
公園内での性行為や、路上で下半身を露出する行為、駐車した車の中での自慰行為などは、公然わいせつの典型例となります。
また、現在ではインターネット空間において性的な動画の生配信などを行った場合であっても、公然わいせつ罪で逮捕されるケースがあります。
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迷惑防止条例違反
下半身や性器ではなくても、公共の場での露出など卑わいな言動に対して、各都道府県の条例が適用される場合もあります。
なお、各都道府県の条例で禁じている内容はほとんど同じですが、量刑に差がある場合があります。
例えば、東京都の迷惑防止条例には、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」で「公共の場所又は公共の乗物における卑わいな言動」に対し、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。
一方、神奈川県の迷惑防止条例には、同様の行為に対し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と定められています。
軽犯罪法違反
公然わいせつや迷惑防止条例にはあたらないと判断されるような、軽度な露出行為に対しては、軽犯罪法が適用されることもあります。
法定刑は拘留か科料、もしくはその両方です。
二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
軽犯罪法1条
軽犯罪法における身体露出の罪は、尻や太ももなどの身体の一部の露出をした場合に適用されます。
なお「拘留」とは、30日未満の間、刑事施設に身柄を拘置する刑罰で、「科料」とは、1000円以上1万円未満の金銭を国家へ納める刑罰になります。
露出で受ける刑罰
露出で逮捕され、公然わいせつ罪や迷惑防止条例違反で起訴されると、懲役刑か罰金刑が科せられる可能性があります。
ですが、露出行為で懲役刑となるケースは少なく、罰金刑が科せられることが多いです。露出の罰金相場は約30万円です。
アトム法律事務所の解決実績でも、露出行為で起訴された事件の刑事処分は、罰金刑が100%となっています。
ですが、露出行為がかなり悪質な場合や何回も繰り返し行っているような場合には、懲役刑となる可能性もあります。
露出で逮捕された場合の流れ
露出は現行犯逮捕が多い
露出行為の場合、目撃者の通報で駆け付けた警察官により現行犯逮捕されることが多いですが、商業施設などにおける露出行為の場合は犯行の様子が防犯カメラに記録され、後日逮捕に至るケースも考えられます。
逮捕には、まず通常逮捕があります。
これは、後日逮捕とも呼ばれる形式で、刑事訴訟法に基づき、一定階級以上の警察官や検察官などが逮捕状を請求し、裁判官が逮捕の理由と必要性を認めた場合のみ逮捕令状を発行し、それによって逮捕が行われます。
次に現行犯逮捕があります。犯行中や犯行直後の犯人を逮捕することをいい、犯人を間違える可能性は低いため、逮捕状なく一般人でもできることが特徴です(私人逮捕)。
しかし、逮捕後はすぐに警察官などに犯人を引き渡す必要があります。その後は最寄りの警察署に連行され、取り調べを受けることになります。
露出で逮捕された場合の拘束期間
捜査の結果、検察官は起訴・不起訴を判断します。不起訴となった場合は釈放されますが、起訴されると略式裁判もしくは正式裁判が開かれ、罰金刑や懲役刑などの刑罰が決定されます。
露出で逮捕されると、最長で23日間の身体拘束が続く可能性があります。仕事や日常生活に大きな影響が出てしまいますので、逮捕された場合には、いち早く弁護士に相談することをおすすめします。
刑事事件では、事件を検察官に引き継ぐ検察官送致(送検)という手続きが逮捕後48時間以内に行われます。検察官の判断により送検から24時間以内に勾留請求が行われ、勾留質問などのあと、原則として10日間身柄が拘束されます。必要に応じ、さらに最長で10日間の勾留延長が行われます。
弁護士であれば勾留阻止に向けて検察官に働きかけるほか、もし勾留された場合には準抗告という勾留取り消しの申し立てを行います。
露出で逮捕され、勾留の最長期間である23日間の身体拘束を受けるかどうかは各ケースによって変わります。
弁護士に相談して今後の対応や処分の見通しなどを聞いてください。
露出で逮捕されたらどうすればいいのか
ご自身が露出で逮捕された場合
弁護士に相談して、ご自身の刑事処分がどうなる見込みか確認してください。
逮捕されてから勾留されずに釈放されたとしても、検察に送致されていれば事件は終了していません。
何も対応を取らないでいると、気づいた時には起訴されてしまう恐れがあります。
初犯で余罪もなければ、起訴されても多くの場合で罰金刑になりますが、事件を放置していて不起訴処分になるケースはほとんどありません。
罰金刑でも前科がついてしまいますので、不起訴の可能性を高くしたい場合には、いち早く弁護士に相談してください。
ご家族が露出で逮捕された場合
いきなり警察から、露出行為で家族を逮捕したと連絡があった方は、面会もできずに今後どうなるのかご不安かと思います。
ご家族の逮捕後は、まず初回接見を依頼し弁護士を警察署に派遣して、事件の経緯やご本人の状況などを確認してください。
また露出事件は、悪質性によっては勾留が決まってしまう恐れがあり、身体拘束が長引くと元の生活に戻るのが難しくなってしまいます。
仕事や学校に早い段階で復帰するには、勾留を回避するための弁護活動が重要です。
勾留の回避は、刑事事件に特化した弁護士に依頼した方が確率が上がります。
刑事事件に精通した弁護士であれば、警察や検察などの捜査機関とのやり取りや交渉に長けています。
また、勾留を回避させやすい意見書や上申書の書き方が分かるといったメリットもあります。
露出で逮捕される可能性
露出事件の検挙率と起訴率
2020年の警視庁のデータによれば、公然わいせつ罪の検挙率は約72%となっています(認知件数2,463件、検挙件数1,784件)。
また、2020年の法務省のデータによれば、公然わいせつ罪の起訴率は約56%です(起訴850人、不起訴659人)。
起訴率からもわかる通り、露出行為は決して軽い犯罪ではありません。被疑者のうち半数以上は起訴されています。
日本の刑事裁判では起訴されてから無罪になる可能性は限りなく低いため、露出行為で起訴されると、ほとんどの場合で有罪となり前科がついてしまいます。
なお、アトム法律事務所の統計によると、公然わいせつ及びわいせつ物頒布等の事例59件のうち、逮捕率は41%、起訴率は46%となっています。
露出で逮捕を防ぐためには
自首・出頭
露出行為により今後逮捕されるかどうか不安な場合には、自首や出頭により逮捕の可能性を低くすることができます。
警察が被疑者を逮捕するためには、証拠隠滅のおそれと逃亡のおそれが必要です。この2つの危険性がなければ、逮捕されることはありません。
自分から警察に罪を申告している時点で、証拠隠滅と逃亡のおそれは低いと考えてもらえることが多いので、自首と出頭は逮捕の可能性を低くします。
なお、自首や出頭で不安がある場合には、弁護士に同行してもらう方法があります。
弁護士をつけることが反省の姿勢のアピールとなり、逮捕の必要性がないことを弁護士が適切に警察に伝えることができます。
ご自身で警察に出向く前に、一度弁護士と相談することをおすすめします。
被害者との示談
被害者が特定できている場合に限られますが、示談の締結も露出で逮捕される可能性を低くします。
露出行為で主に問われるのは、公然わいせつ罪や迷惑防止条例違反です。これらの罪は、性秩序や善良な性風俗を守るために取り締まりを受けています。
そのため、公然わいせつには被害者が存在しないともいわれますが、実務的には目撃者が被害者として扱われます。
実質的な被害者である目撃者と示談を結ぶことで、身柄拘束や処罰の必要性がないと判断されるケースが多くなるのです。
しかし、露出は不特定多数の目撃者がいたり、警察以外に目撃者がいなかったりするケースも多いため、必ず示談できるというわけではありません。
露出の時効は?
公然わいせつ罪、条例違反の場合の公訴時効は3年です。軽犯罪法違反の場合の公訴時効は1年となります。
公訴時効は犯罪行為が終わった段階から開始します。
時効期間が経過すると、時効の効果として、問題となっている犯罪について起訴されることがなくなります。捜査機関により逮捕されたり捜査をされたりすることもありません。また、起訴されない以上、前科がつくということもありません。
露出事件のアトムの解決実績
アトム法律事務所が取り扱った露出事件は、半数が不起訴になり、起訴された事件では100%が罰金刑で終了しています。
ここでは、過去に取り扱った事例の一部を抜粋してご紹介します。
公園で下半身を露出して罰金刑
公園内で被害女性に話しかけ、自身の陰茎を露出した公然わいせつの事案。依頼者は現場から去った後に警察に自首した。
弁護活動の成果
弁護活動を尽くし、略式罰金で終了。依頼者は資格保有者であったが、資格への影響を回避した。
最終処分
罰金10万円
路上で尻やももを露出して不起訴
路上で露出行為をしたとされるケース。依頼者は女装の上、露出していたところ、目撃者によって通報された。軽犯罪法違反として立件された。
弁護活動の成果
検察官に意見書を提出したところ不起訴処分を獲得した。
最終処分
不起訴
露出で前科をつけないためにすべきこと
露出行為は起訴された場合であっても罰金刑となる場合が多く、比較的軽微な罪であるとはいえますが、罰金刑の場合であっても刑罰を受けた公的な記録である前科はつくことになります。
露出行為により前科をつけないためには、早期に弁護士に相談し、不起訴処分を得ることが重要です。
不起訴処分を獲得し前科を回避する
検察官により起訴が行われた場合、裁判で無罪になるのは非常に難しくなります。しかし、検察官が不起訴処分の判断を下した場合は、裁判を受けること自体がなくなるため、前科がつく可能性はゼロになります。
すなわち、前科がつくことを回避するためには、不起訴処分を目指すことが最も現実的な手段となります。
示談により不起訴の可能性を高める
不起訴処分を得るためには、被害者との間に示談を締結することが重要です。
示談を締結することで、検察官が再犯の可能性や加害者家族への影響などといった様々な情状を考慮し、最終的に「起訴するほどではない」と判断する「起訴猶予」の可能性が高まります。
なお、公然わいせつ罪は社会全体の「性秩序」を守るための法律であり、被害者個人の法益保護を目的するものではありません。ただし、だからといって露出事件の被害者(目撃者)との間に示談を締結することが無意味というわけではありません。
特に、酔って誰もいない場所で裸になってしまったなどではなく、被害者に対して意図的に下半身を露出させるなど、加害の意図が明確と考えられる場合においては、示談の有無はより重要といえるでしょう。
露出行為は痴漢や強制わいせつのような相手の身体に直接的な危害を加える犯罪ではないものの、性犯罪の一つであり、当然被害者は加害者に対して強い恐怖心や嫌悪感を持っていることが多いため、単独で示談交渉を行うのは極めて困難と考えられます。
このようなケースにおいても、経験豊富な弁護士であれば、被害者の心情に最大限配慮した対応を行い、適切に示談を締結することを目指すことが可能です。
示談をするためには弁護士に相談する
示談を適切に締結するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。
逮捕されてから起訴される前の身柄拘束が続く期間は最大で23日間ですが、起訴が決定された後で示談が成立しても、後から不起訴とすることはできないため、示談交渉はその間に行う必要があります。
そのため、露出事件においてはできる限り早い段階で弁護士に相談することが大切であるといえます。