
- 「家族が公然わいせつで逮捕されたら何をすべき?」
- 「逮捕された家族を早急に釈放してほしい!」
- 「公然わいせつはどんな刑罰になるのだろうか?」
夫や息子が公然わいせつで逮捕されたという連絡が入った場合、何をすべきかわからず慌ててしまう方も多いでしょう。
家族が公然わいせつで逮捕されてお困りの場合には、勾留が決定される前までに弁護士に相談することで、早期釈放の可能性が高まります。
また、早期に弁護活動を開始することで、不起訴処分や罰金刑で事件が終了する可能性が高まり、社会生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。
この記事では、公然わいせつで逮捕された後の流れや、公然わいせつ罪の刑罰などについて解説していきます。
なお、当記事で記載の未成年(少年)とは20歳未満の少年のことであり、成人とは20歳以上の者を指しています。民法上の成人(民法第4条)とは異なります。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
公然わいせつ罪の要件と刑罰
公然わいせつ罪とは
公然わいせつとは「公然とわいせつな行為」をすることです。簡単に言えば、公共の場で見せるべきではない性的なものを露呈したり性行為をしたりするということです。
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法174条
公然わいせつ罪の要件①公然性
「公然性」とは、不特定または多数の人が認識しうる状態のことです。典型例は、路上や公園、駅など公共の場所での行為です。
実際に目撃者が存在する必要はなく、誰かが目撃・認識する可能性があれば公然性の要件は満たされます。
公然わいせつ罪の要件②わいせつ性
判例(最判昭和26年5月10日)によると、次の3つを満たす場合に「わいせつ」とみなされます。
- いたずらに性欲を興奮または刺激させる
- 普通人の正常な性的羞恥心を害する
- 善良な性的道義観念に反する
簡単に言えば、一般社会の基準で性道徳から外れた性的な行為がわいせつな行為です。
通常は、性行為や性器の露出がわいせつ性を満たすと判断されます。
公然わいせつ罪の刑罰
公然わいせつ罪で起訴され有罪になると「6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」が科せられます。
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公然わいせつの具体的事例
公然わいせつが成立する事例として以下のものが挙げられます。
- 公園、路上で裸になる
- 公共の場に駐車した車内や公園で性行為を行う
- 裸、性行為の様子をネットで生配信する
また、ネットでわいせつな行為を生配信する事案が近年急増しています。
ちなみに、わいせつな行為の生配信ではなく、動画をアップした場合は、わいせつ物頒布等(刑法175条)に該当します。
公然わいせつで逮捕される条件と可能性
公然わいせつで逮捕される条件
逮捕には、通常逮捕と現行犯逮捕の2つのパターンがあります。
通常逮捕は後日逮捕とも呼ばれ、裁判官が発付する逮捕状に基づく逮捕となります。現行犯逮捕は今まさに犯罪を行っている人や犯罪を行った直後の人を逮捕することをいいます。
いずれも「証拠隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」がある場合に逮捕が可能です。
公然わいせつの場合は、防犯カメラの映像などが証拠となって通常逮捕されることもあり得ますが、犯行を目撃した人が通報して、警察に現行犯逮捕されるケースがほとんどです。
公然わいせつで逮捕される可能性
公然わいせつが発覚しても、一般的には逮捕されるケースは少ないです。
警察官から取り調べを受けるのは当然ですが、余罪や同種の前科・前歴がない限り、在宅事件で捜査が進むのが通常です。
アトム法律事務所の公然わいせつ事件の解決実績では、約40%の逮捕率でした。
※公然わいせつの解決実績には、わいせつ文書頒布等の事件も含まれます。
公然わいせつで逮捕を防ぐ方法
公然わいせつをしてしまい今後が不安という方は、自首や出頭により、逮捕される可能性を低くすることができます。
警察が被疑者を逮捕するためには、証拠隠滅のおそれと逃亡のおそれが必要です。この2つの危険性がなければ、逮捕されることはありません。
自分から警察に罪を申告している時点で、証拠隠滅と逃亡のおそれは低いと考えてもらえることが多いので、自首と出頭は逮捕の可能性を低くします。
自首や出頭で不安がある方は、弁護士に同行してもらう方法があります。
弁護士をつけることが反省の姿勢のアピールとなり、逮捕の必要性がないことを弁護士が適切に警察に伝えることができます。
ご自身で警察に出向く前に、一度弁護士と相談することをおすすめします。
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公然わいせつで逮捕された場合の刑事処分
公然わいせつは罰金刑が一般的
公然わいせつで逮捕されて有罪になる場合には、罰金刑が科せられることが一般的です。同種前科や余罪が多数あったり、他の犯罪も成立しているような事案であれば懲役刑もありえます。
アトム法律事務所で取り扱った公然わいせつ・頒布等の事件では、有罪判決を受けた事件は全て罰金刑となっています。
公然わいせつ事件は、逮捕されていたとしても、示談などの対応を正しく行うことで不起訴となる可能性が高い事件です。
なお、逮捕されなかった在宅事件でも起訴される可能性はありますが、公然わいせつの在宅起訴であれば、原則として略式起訴となり罰金を支払うだけで終了となることが多いでしょう。
公然わいせつの罰金刑を避ける方法
公然わいせつの罰金刑を避けるためには、不起訴処分を獲得する必要があります。
不起訴処分となれば、刑罰を科せられることなく刑事事件は終了となります。この場合には、前科がつくことはありません。
不起訴処分のためには、被害者との示談を成立させることが重要なポイントとなりますが、公然わいせつは目撃者との示談が難しい犯罪でもあります。
露出行為に警察官だけが気づいた場合や、誰が目撃したのか明確でない場合、不特定多数の人が目撃している場合などは、示談を成立させるのは簡単ではありません。
しかし示談ができない場合でも、贖罪寄付などを行い反省の意思を示すことで検察が不起訴処分とするケースもありえます。
ご自身の公然わいせつ事案で、今後どう対応すればいいのか、どのような処分となるのかなど不安がある場合には、まずは弁護士に相談してください。
公然わいせつの罰金額相場
公然わいせつの罰金額の相場は10~20万円です。
公然わいせつ事件は、わいせつ物頒布などの他の犯罪も同時に行われることが多く、2つの罪が成立している場合には罰金額の相場は高額になっていきます。
公然わいせつで逮捕された後の流れは?
公然わいせつで逮捕されると、以下のように手続きが進みます。

逮捕後の刑事手続きには厳格な時間制限があります。
逮捕によって被疑者を拘束できる期間は3日間(72時間)です。
それ以上の拘束が必要な場合は「勾留」という手続きを採らなければなりません。勾留が決まると、さらに最大20日間身体拘束が続きます。勾留期間が満了するまでに、検察官は事件を起訴するかどうかの判断をします。
起訴された場合は裁判が行われることになります。
具体的に見ていきましょう。
(1)警察の取り調べ
公然わいせつで逮捕された被疑者が、まず受けるのは警察の取り調べです。警察による被疑者の取り調べは逮捕から最長48時間と定められており、その期間内に事件を検察官に送致するのが原則です。
送致を受けた検察官は身柄拘束を続ける必要があると判断した場合、24時間以内に勾留請求をします。
逮捕されてから勾留請求されるまでの最長72時間は、親族であっても被疑者と面会することはできません。
夫や息子が公然わいせつで逮捕されても、すぐには本人に面会できません。逮捕後は、被疑者の携帯電話・スマートフォン等の電子機器も没収されるため、電話やメールでの連絡も困難です。
取り調べ中は、弁護士のみが被害者と面会することを許されます。弁護士の被疑者との面会は「接見」と呼ばれ、弁護士は逮捕された本人に公然わいせつの事実の確認、取り調べを受ける上でのアドバイスを行うのです。
また、事実上の被害者がいる場合には、早期釈放を目指して被害者との示談交渉を進めます。
(2)勾留
検察官が勾留請求をした場合、裁判所が請求を認めるかどうか判断します。裁判所が勾留を認めた場合、被疑者は10日間以内の身柄拘束が続くことになります。さらに、10日間の勾留延長が認められる場合もあります。
つまり、起訴・不起訴の判断が下るまでの勾留期間は最長で20日間に及ぶ可能性があります。
最長20日間の勾留期間中に事件が起訴されなかった場合、被疑者は釈放されます。ただし、釈放されたから事件が終了ということではなく、在宅のまま捜査が続けられ、後で起訴される場合もあります。
勾留決定後の弁護士の主な仕事は、被疑者に有利な証拠の収集と被害者との示談交渉です。証拠収集や示談がうまくいった場合、不起訴処分の獲得、早期釈放の可能性も高まります。
(3)起訴・裁判
捜査の結果、検察官が容疑に関して裁判所の審判を求める必要があると判断した場合、被疑者は起訴され裁判が開かれます。一般的に、起訴されると公判が始まり、被告人の罪状が争われます。
しかし、公然わいせつ事件の場合、起訴されたとしても、公判ではなく「略式命令」が請求される可能性が高いです。
略式命令とは?
裁判所が公判手続きを経ずに、非公開で罰金・科料を科す刑事手続き
令和2年の統計では、起訴された公然わいせつ事件965件のうち748件、つまり8割近くが略式命令請求がされています。
参考:令和2年版 犯罪白書
公然わいせつで逮捕されたらどうすべきか
夫や息子が公然わいせつで逮捕された場合、早急に弁護士に相談することが重要です。
逮捕された方のご家族が弁護士に相談するメリットと、早期釈放に向けて弁護士ができることについて解説します。
弁護士に相談するメリット
公然わいせつで逮捕された場合に弁護士に相談することで得られるメリットは以下の通りです。
弁護士に相談するメリット
- 家族と意思疎通が図れる
- 助言が受けられる
- 早期釈放のための弁護活動を期待できる
公然わいせつで逮捕された場合、逮捕後数日は被疑者は家族との面会が許されません。しかし、弁護士ならば逮捕直後から被疑者との面会が認められます。家族は弁護士を介して、被疑者との意思疎通が可能になります。
また、被疑者は弁護士から取り調べに対してどのように対応すればよいのかアドバイスを受けることができます。
弁護士は被疑者の早期釈放、不起訴に向けた弁護活動も担います。
弁護士は、被疑者に有利な証拠収集や被害者との示談交渉、捜査機関への対応などを行います。弁護士の尽力により、被疑者の早期釈放の可能性を高めることが出来るのです。
公然わいせつの早期釈放4パターン
公然わいせつで逮捕されても、弁護士に依頼することで早期釈放の可能性が高まることは上で解説しました。では、弁護士へ依頼することによる釈放は具体的にはどのように行われるのでしょうか。
釈放のパターンとしては以下の4つが考えられます。
釈放の4パターン
- 勾留前の釈放
- 不起訴
- 略式罰金
- 保釈金の納付
勾留前の釈放
被疑者が逮捕されている間に、弁護士が捜査機関や裁判所に対して働きかけることで、勾留前に被疑者が釈放される場合があります。
また、一度勾留が許可された場合でも、準抗告という異議申し立てを行うことで、勾留が終了し釈放される可能性があります。
不起訴
公然わいせつ事件が不起訴で終了した場合、被疑者は直ちに釈放されます。不起訴になれば前科はつかず、そこで刑事手続きは終了します。
弁護士は依頼者の反省態度などを検察官に報告し、不起訴処分を目指します。また、犯行時の状況などを精査し、公然わいせつ罪の要件が満たされていないことなどを検察官に訴える場合もあります。
略式罰金
公然わいせつ事件が略式起訴された場合、略式罰金を納付することで被疑者は直ちに釈放されます。同種の余罪や前科・前歴がある場合には、略式起訴となるケースが多いです。
罰金を納付した場合、前科はついてしまいますが、収監されることなく、社会生活に復帰できます。
保釈金の納付
起訴された場合、被告人の釈放のために保釈金を納付するという手段もあります。保釈金の納付後、数時間のうちに被告人は保釈されます。保釈金による釈放には、被告人に逃亡のおそれがないなどの条件があることに注意が必要です。
保釈申請は手続きが複雑なので、弁護士に代行を依頼する方が多いです。
未成年が公然わいせつで逮捕された場合
未成年も公然わいせつ罪に問われることがあります。被疑者が14歳以上の場合、公然わいせつ罪で逮捕され、勾留されることになります。
未成年の場合、裁判は成人とは手続きが異なり、家庭裁判所で少年審判として審理が進められます。
未成年の刑事手続きの流れは「未成年の子供が逮捕されたら弁護士に相談を|少年事件の要点を解説」をご覧ください。
公然わいせつ事件のアトムの解決実績
ホテルでの公然わいせつで不起訴
いわゆる乱交パーティーに参加し、ホテル内で参加者女性と参加者ら不特定多数の者の前で性行したとされるケース。性交中に警察に踏み込まれ現行犯逮捕された公然わいせつの事案。
弁護活動の成果
性的嗜好障害のカウンセリングを開始。検察官に不起訴を求める意見書とカウンセリング実施報告書を提出し不起訴処分を獲得。
最終処分
不起訴
路上での公然わいせつで罰金刑
通勤の最寄駅から家に帰る途中に自身の陰部を露出する等し目撃者によって通報されたとされるケース。なお依頼者には同種の前科があった。公然わいせつの事案。
弁護活動の成果
裁判官に意見書を提出したところ勾留請求が却下され早期釈放が叶った。
最終処分
罰金30万円
公然わいせつで逮捕されることの悪影響
公然わいせつで逮捕された場合、社会生活に大きな影響が出てしまいます。
逮捕されることによる主な悪影響は具体的には以下の通りです。
逮捕の悪影響
- 事件が周りにバレる
- 仕事や通学ができない
- 起訴され前科がつくおそれがある
事件が周りにバレる
公然わいせつで逮捕された場合、事件がネットに載ったり、テレビで報道されてしまう可能性があります。その場合、自分の職場や学校で周りの人が事件について知ることになります。
もし、公然わいせつで逮捕されたことが周りの人々にバレた場合、社会生活での精神的負担が大きくなり、社会復帰も困難になってしまいます。
仕事や通学ができない
公然わいせつで逮捕されると、職場や学校に通勤・通学が出来なくなります。また、会社・学校に連絡をとることもできません。
職場に連絡をとらずに休んでしまうと、長期間の無断欠勤となり、減給、解雇の処分を受ける可能性があります。
起訴され前科がつくおそれがある
公然わいせつで逮捕された被疑者には前科がつくおそれがあります。前科が付くのは裁判で有罪が確定してからです。逮捕されたからといって必ず前科がつくというわけではありません。
しかし、逮捕されていると被疑者本人は被害者との示談、有利な証拠集めができません。その結果、被疑者は起訴され前科がつく可能性が高まるのです。
ご自身・親族が逮捕された場合は早急に弁護士へ
公然わいせつで逮捕された場合、適切な対応を取らなければ、逮捕が長期化し社会復帰が困難となる恐れがあります。逮捕後は、すみやかに弁護士に相談することで、早期釈放の可能性が高まります。
親族の方が公然わいせつで逮捕された際には、アトム法律事務所までお気軽にお電話ください。