
公然わいせつ罪の公訴時効は3年です。
「酔っ払って路上で全裸になってしまった。」
「性行為をネットでライブ配信してしまった。」
「局部の写真をネット上にアップしてしまった。」
このような露出行為をした場合、少なくともその後3年間は、公然わいせつ罪、わいせつ物頒布等罪で捕まる可能性があります。
本記事では、公然わいせつ事件、わいせつ物頒布等事件をおこしてしまい、逮捕や起訴の不安がある方に向けて、時効年数、時効が止まる場合、刑罰を避ける方法(例:目撃者との示談、贖罪寄付)などを解説します。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
公然わいせつ罪の時効は何年?
公然わいせつ罪とは
公然わいせつ罪は、公然とわいせつな行為をした場合に成立します(刑法174条)。
(公然わいせつ)
刑法174条
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
公然
公然わいせつ罪の「公然」とは、不特定または多数の者が認識できる状況ということです。
わいせつ
公然わいせつ罪の「わいせつ」とは、「徒(いたずら)に性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義に反するもの」を指します(判例)。
公然わいせつになる行為
公然わいせつ罪が成立する典型的な行為は、路上や公園など公共の場所で、衣服を脱ぎ局部をさらす行為でしょう。
インターネット上のライブ配信で性行為をさらしたことに対して、公然わいせつ罪が成立した例もあります。
関連記事
・公然わいせつ罪とは?逮捕の流れや逮捕されない方法・罰金相場がわかる
公然わいせつ罪の法定刑
公然わいせつ罪の法定刑は、「1ヶ月以上6月以下の懲役」、「1万円以上30万円以下の罰金」、「1日以上30日未満の拘留」、「1,000円以上1万円未満の科料」のいずれかです。
公然わいせつ罪の刑罰
- 1ヶ月以上6月以下の懲役
- 1万円以上30万円以下の罰金
- 拘留(1日以上30日未満の拘束)
- 科料(1,000円以上9,999円以下の納付)
後述するわいせつ物頒布等罪と比べても、公然わいせつ罪の刑罰は軽いです。
この理由は、わいせつ物頒布等罪は繰り返し法益侵害を引き起こす危険性があるのに対して、公然わいせつ罪は通常「1回限り」の法益侵害だからです。
公然わいせつ罪の公訴時効は3年
公訴時効(こうそじこう)とは、犯罪が終わった時から一定期間経過した場合、起訴(きそ)できなくなる制度のことをいいます。
起訴とは、起訴状を裁判官に提出して、刑事事件を裁判にかける手続きのことです。

公然わいせつ罪の公訴時効は、3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。つまり、公然とわいせつな行為をし終わってから3年が経過すると、その行為について公然わいせつ罪で起訴できなくなります。
結果、裁判で有罪判決がくだされたり、刑罰を科されたりする可能性はなくなります。
万一、起訴されてしまった場合でも、裁判官から免訴判決(めんそはんけつ)が出され、刑罰を受けることはありません。
時効年数のカウントが止まる場合
公然わいせつ罪の時効は3年ですが、3年経過しても時効にかからないことがあります。
それは、公訴時効の停止事由がある場合です。
公訴時効の停止事由がある場合、公訴時効の進行がとまります。
公訴時効の停止事由
- 自分が起訴されたこと
- 共犯者が起訴されたこと
- 犯人が国外にいること
- 犯人が逃げ隠れしているために、有効に起訴状の謄本送達・略式命令の告知ができなかったこと
時効前に検挙された割合は約65%
令和4年 公然わいせつ罪の検挙率
認知件数 | 検挙件数 | 検挙率 | |
---|---|---|---|
公然わいせつ | 2,387件 | 1,587件 | 66.5% |
令和5年版 犯罪白書「第1編/第1章/第1節/1 認知件数と発生率」1-1-1-2表 刑法犯 認知件数・発生率・検挙件数・検挙人員・検挙率(罪名別)より抜粋のうえ、整理しました。
令和4年、公然わいせつ罪の検挙率は66.5%でした。
認知件数とは、警察が犯罪の発生を認知した件数のことです。検挙件数とは、認知した事件のうち、警察が特定した犯人について、一通り捜査を終えた件数のことです。
検挙率とは、検挙件数を認知件数で割ったもので、警察が認知した事件のうち、検挙されたものの割合を表しています。
公然わいせつ罪の検挙率は50%を上回っているので、比較的検挙されやすい犯罪といえそうです。
公然わいせつ罪は現行犯逮捕だけでなく、後日呼び出しや、後日逮捕の可能性も十分に考えられます。
公然わいせつ事件をおこしてしまい、ご不安がある方は、時効を待つのではなく、早期に弁護士までご相談ください。
公然わいせつで後日呼び出しがあった事例(不起訴)
路上で、被害者を追い抜き、待ち構えて陰部を露出した公然わいせつ事案。余罪多数。うち2件について、警察から事情聴取を受けたため、ご本人が相談にいらした。
弁護活動の成果
被害者の方への謝罪と賠償を尽くし、示談が1件成立した。
性的嗜好を治すためのカウンセリングを専門機関でおこない、弁護士が意見書を提出して、不起訴処分となった。
示談の有無
1件のみ。示談金40万円
最終処分
不起訴
わいせつ物頒布等罪の時効は何年?
わいせつ物頒布等罪とは
わいせつ物頒布等罪は刑法175条に規定される犯罪です。
わいせつ物頒布等罪になる行為
- わいせつ物を「頒布」する行為
- わいせつ物を「公然と陳列」する行為
- わいせつ物を「有償で頒布する目的で所持」する行為
(わいせつ物頒布等)
刑法175条
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
わいせつ物
わいせつの定義は、公然わいせつ罪の「わいせつ」と同様です。
裸の写真、陰部の写真などはわいせつ物にあたります。
頒布
「頒布」とは不特定または多数人に交付することです。たとえば、無修正DVDを不特定または多数人に配る行為が「頒布」にあたります。この他、電子メール等によって、わいせつな画像や動画のデータを不特定または多数人に送信する行為も「頒布」といえます。
公然と陳列
「公然と陳列」するとは、不特定または多数人が認識しうる状態にすることです。無修正DVDをお店に並べる行為や、インターネットサーバーにわいせつな画像や動画のデータをアップロードする行為があてはまります。
有償で頒布する目的で所持
「有償で頒布する目的で所持」するとは、無修正DVDなどを販売目的で所持することをいいます。なお、販売目的がない単純な所持は罰せられません。
関連記事
・局部の写真を送ると罪になる?罪になる場合ならない場合を解説
わいせつ物頒布等罪の法定刑
わいせつ物頒布等罪の法定刑は「1ヶ月以上2年以下の懲役」、「1万円以上250万円以下の罰金」、「科料」のいずれかです。
場合によっては、「懲役」と「罰金」の両方を科される(併科)こともあります。
わいせつ物頒布等罪の刑罰
- 1ヶ月以上2年以下の懲役
- 1万円以上250万円以下の罰金
- 科料(1,000円以上9,999円以下の納付)
※懲役と罰金が併科されることがある
わいせつ物頒布等罪は、公然わいせつ罪よりも、重い刑罰になっています。
この理由は、わいせつ物やデータが残ることで、継続的に善良な性風俗という社会的法益を侵害するおそれがあるからです。
わいせつ物頒布等罪の公訴時効は3年
わいせつ物頒布等罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。つまり、わいせつ物の「頒布」行為などが終わってから3年が経過すると、そのわいせつ物頒布等罪で起訴されることはなくなります。
なお、わいせつ物頒布等罪も、公然わいせつ罪と同様に、停止事由がある場合、時効年数のカウントが止まります。その場合、わいせつ物頒布等罪も、3年では公訴時効が完成しません。
時効前の検挙された割合は約97%
令和4年 わいせつ物頒布等罪の検挙率
認知件数 | 検挙件数 | 検挙率 | |
---|---|---|---|
わいせつ物頒布等 | 874件 | 849件 | 97.1% |
令和4年、わいせつ物頒布等罪の検挙率は97.1%でした。
令和5年版 犯罪白書「第1編/第1章/第1節/1 認知件数と発生率」1-1-1-2表 刑法犯 認知件数・発生率・検挙件数・検挙人員・検挙率(罪名別)より抜粋のうえ、整理しました。
検挙時点で時効期間がどのくらい経過したのかは不明ですが、かなりの割合が検挙されているため、時効を待って逃げ切ることは非常に難しいかもしれません。
児童ポルノをアップした事例(不起訴)
ファイル共有ソフトで児童ポルノをアップロードした。依頼者は、ダウンロードフォルダが自動で公開されることを知らず、否認。児童買春・児童ポルノ禁止法違反、わいせつ電磁的記録媒体陳列の事案。
弁護活動の成果
故意の頒布・陳列を否認する弁護活動を尽くした結果、不起訴処分となった。
示談の有無
なし
最終処分
不起訴
公然わいせつ罪・頒布等事件の民事の時効
民事の時効とは
消滅時効(民事の時効)は、権利が発生してから、一定期間が経過することで、権利が消滅する制度です。
損害賠償請求権の消滅時効が成立した場合、被害者は、加害者に対して、民事裁判をおこしても、賠償請求は認められません。
公然わいせつ罪の消滅時効
公然わいせつ罪の保護法益は善良な性秩序等の社会的法益であり、通常、被害者は存在しないといえます。
しかし、実質的には公然わいせつ行為を見せられた人を被害者と扱う運用がなされることも少なくありません。たとえば、路上などで女性に対し、いきなり男性が性器を見せつけた場合、見せつけられた女性は被害者といえるでしょう。
実質的な被害者がいる場合、公然わいせつ行為をすることは不法行為(民法709条)です。そのため、被害者は加害者に不法行為に基づく損害賠償請求権を獲得することになります。この損害賠償請求は被害者が「損害および加害者を知ってから3年」「不法行為のときから20年」で消滅します(民法724条1号2号)。
わいせつ物頒布等罪の消滅時効
わいせつ物頒布等罪も、公然わいせつ罪と同じく善良な性秩序等の社会的法益を保護するものです。
もっとも、わいせつ物頒布等罪に関しても特定の被害者が存在する場合があります。たとえば、被撮影者の同意なく、不特定または多数人が見ることができるインターネット上で、わいせつ画像等をさらした場合が挙げられます。さらされた人は被害者と言えるでしょう。
この場合、被害者には同意なくわいせつ画像等をさらされたことによる精神的損害が生じます。つまり、加害者に対し不法行為に基づく損害賠償請求権を獲得するのです。損害賠償請求は、被害者が「損害および加害者を知ってから3年」「不法行為のときから20年」で消滅します。
民事の時効と刑事事件の関係
早期に賠償をおこなうことで、不起訴や刑罰の軽減につながるケースが多いです。
民事の消滅時効が経過すれば、被害者に対して、賠償金を支払わなくてよくなりますが、時効を待つのではなく、早期に賠償をおこなうほうがよいでしょう。
なお、加害者側から自発的に賠償をおこなう方法としては、示談(じだん)が考えられます。
示談とは、裁判で決着をつけるのではなく、当事者間の話し合いによって和解の合意をすることです。
刑事事件の弁護士は、被害者との示談交渉も代行してくれます。

弁護士による示談について詳しくは『弁護士なしの示談交渉はリスク大!示談交渉に強い弁護士への依頼が必要な理由』の記事をご覧ください。
公然わいせつ事件の流れ
身柄事件の場合

逮捕・勾留されている事件のことを身柄事件(みがらじけん)といいます。
公然わいせつ事件でも、逮捕されて、身柄事件になることはあります。
警察に逮捕された後は、48時間以内に検察官に送致され、その後、勾留が決定すれば最長20日間、身柄拘束が続きます。
勾留期間の満期までに、起訴されなければ釈放されます。
起訴された場合は、刑事裁判になり、審理がおこなわれ、判決がくだされます。
なお、逮捕後、釈放されて、在宅事件(ざいたくじけん)に切り替わるケースも多いです。
逮捕後の流れについて詳しく知りたい方は『公然わいせつ罪で逮捕されたら?3P・乱交パーティも公然わいせつ?』もあわせてご覧ください。
在宅事件の場合

在宅事件とは、身柄拘束を受けないで捜査が進められる事件のことです。
在宅事件の場合、警察が捜査を終えたら、検察官に書類送検されます。検察官が、送られてきた証拠、書類を吟味し、起訴(在宅起訴)した場合、刑事裁判になります。
刑事裁判では、裁判官が審理をおこない、有罪、無罪を決め、判決がでます。
在宅事件の流れについて詳しく知りたい方は『在宅事件の流れを解説│起訴率は低い?逮捕される刑事事件との違い』の記事をご覧ください。
アトムご依頼者様の声(公然わいせつ等)
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
・迅速な対応ですぐに不安が解消された。

この度は、お世話になりました。突然警察から電話があり主人がこのような事件にかかわるとは思っていませんでした。すぐに自宅に帰って来れましたが不安になり、アトム法律事務所さんに相談させていただきました。迅速に対応していただいたおかげで不安はすぐに解消されました。担当の濱手先生には、色々お世話になりました。本当にありがとうございました。
・罰金で済んだので仕事も辞めず、元の生活に戻れそうです。

この度は、本当にありがとうございました。前科ついてしまいましたが、罰金で済んだので仕事も辞めずに済み、何とか元の生活に戻れそうです。それも加藤先生のおかげです。本当にありがとうございました。
弁護士へのご相談が早ければ早いほど、多くの時間を弁護活動にあてることが可能です。
公然わいせつ事件でお悩みの方は、時効を待たずに、お早目にアトム法律事務所までご相談ください。
公然わいせつ罪の不安は弁護士に相談しよう
最後にひとこと
公然わいせつの時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。そのため、最長3年間は逮捕・起訴される可能性が続きます。
公然わいせつ罪やわいせつ物頒布等罪は、初犯の場合で悪質性も高く無いと判断されれば略式起訴による罰金刑になる可能性もあるでしょう。ただし、略式起訴による罰金刑であっても前科はついてしまいます。前科を回避するためにもできるだけ早く弁護士に相談しましょう。
警察に呼び出されたような段階で弁護士をつければ、逮捕が回避できるケースも少なくありません。
また、逮捕された場合でも勾留を防ぐような活動をすることで、早期の釈放が目指せます。弁護士に相談するメリットは大きいといえます。公然わいせつ事件を弁護士に相談するメリットについてより詳しくは『公然わいせつ事件は弁護士に相談!弁護士の見分け方と弁護士費用は?』の記事もあわせてご覧ください。
アトムの解決実績(公然わいせつ等)
こちらでは、過去にアトム法律事務所で取り扱った公然わいせつ等の刑事事件について、プライバシーに配慮したかたちで一部ご紹介します。
陰部を露出(公然わいせつ・不起訴)
電車内で陰部をカバンで隠しながら露出した。手で触っていたところを女性に見つかり、通報された。公然わいせつの事案。
弁護活動の成果
示談は不成立であったが、検察官に粘り強く交渉し、不起訴処分となった。また、報道機関へ申入れなどをすることで、報道を回避した。
示談の有無
なし
最終処分
不起訴
乱交パーティーへの参加(公然わいせつ・不起訴)
いわゆる乱交パーティーに参加し、ホテル内で参加者女性と参加者ら不特定多数の者の前で性行したとされるケース。性交中に警察に踏み込まれ現行犯逮捕された公然わいせつの事案。同種前科あり。
弁護活動の成果
性的嗜好障害のカウンセリングを開始。検察官に不起訴を求める意見書とカウンセリング実施報告書を提出し不起訴処分を獲得。
示談の有無
なし
最終処分
不起訴
より多くの事案をご確認されたい方は『刑事事件データベース』をご覧ください。
24時間相談ご予約受付中
アトム法律事務所では、24時間365日刑事事件加害者の相談予約を受け付けています。
警察の捜査を受けている事件では無料相談も可能です。各支部には基本的に複数の弁護士が在籍しており、当日の来所相談予約であっても対応できる場合が多いです。
詳しくは電話オペレーターまでお気軽にご相談ください。