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体液をかける行為は何罪になる?逮捕の可能性は?

体液をかける何罪になる?

電車内や駅のホームなどの公共の場において、面識のない女性に体液をかけたとして逮捕されるというニュースを目にした方もいらっしゃると思います。

もちろん、他人に体液をかける行為が犯罪に該当することは明らかですが、具体的にどのような状況で何罪に該当するかご存じの方は少ないかと思います。

この記事では体液をかける行為で警察の捜査を受けていたり、あるいは警察の介入が見込まれる方に向けて具体的な罪名やその基準、逮捕の可能性や量刑の程度、また不起訴になれるかどうかなどについて解説していきます。

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体液をかける行為で問われる罪とは?

所持品や服に体液をかけたら器物損壊罪

前提として、『体液』について、ニュース報道などでは具体的な説明がなされていないことが多いですが、ほとんどの場合、精液を指していると理解して良いでしょう。

その上で、体液をかける行為は、行為の目的や態様、行為の対象など状況によって成立し得る犯罪が変わってきます。

まず、被害者の身体ではなく、被害者の衣服やバックなどの物品に体液をかけてしまった場合には器物損壊罪(刑法261条)が成立します。

器物損壊罪というと、他人の所有物を物理的に破壊したときに成立する罪というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、他人の物を物理的に破壊した場合だけではなく、当該物の効用を害したといえる場合には、器物損壊罪が成立すると言われています。

例えば、物理的に破壊していないものの物に尿をかけただけで器物損壊罪の成立を認めた例もあります。
被害者の衣服などに体液をかければ、当然、その衣服を着用しようとは思えないでしょうから、衣服の効用を害したとして器物損壊罪が成立する可能性が高いでしょう。

これは、被害者の来ている衣服等のみではなく、置いてあった他人のバッグに体液をかけた場合でも同様といえます。

なお、器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役、又は30万円以下の罰金等と定められています。

前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

刑法261条(器物損壊罪)

体に体液をかけたら暴行罪

また身体に体液をかけた場合には暴行罪(刑法208条)も成立し得ます。

暴行罪というと、殴る蹴るなど人に傷害を負わせる危険性のある行為のみを指すのではないかと思われている方も多いでしょう。

暴行罪というのは、「人の身体に対する不法な有形力」を行使した場合に成立すると解されています。

直接身体に触れる行為だけではなく、また、唾液などの液体を身体にかけたりするなど、他人に不快感や嫌悪の情を感じさせるような行為も広く『不法な有形力の行使』に該当するとして、暴行罪が成立すると考えられています。

他人の身体に向けて体液をかける行為も『不法な有形力の行使』に該当することになります。なお、暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役、又は30万円以下の罰金等と定められています。

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法208条(暴行罪)

不同意わいせつ罪/迷惑防止条例違反になる可能性も!

相手の同意を得ることなく体液をかけた場合には、不同意わいせつ罪(刑法176条)が成立する余地があります。
不同意わいせつ罪は「暴行や脅迫を用いるなど、相手が同意しない意思の形成・表明などが困難な状態でわいせつな行為」をした場合に成立し、法定刑は、6か月以上10年以下の拘禁刑と定められています

次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。

  一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
  二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
  三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
  四~八 (略)

刑法176条(不同意わいせつ罪)

また体液をかける行為は迷惑防止条例違反として検挙される可能性もあります。

迷惑防止条例違反では卑わいな言動を禁じています。卑わいな言動というのは卑わいなことを言ったりしたりすることです。

東京都の規定では6か月以上の懲役または50万円以下の罰金が定められています。

体液をかける行為で逮捕・事件化する流れとは?

体液をかける行為は逮捕される?

体液をかける行為を犯してしまった場合、痴漢行為と同様にその場で現行犯として逮捕される可能性があります。

また、現行犯として逮捕されなかったとしても、被害者が警察に被害届を提出したことで捜査が開始された結果、犯人が特定できたとすれば、後日逮捕されるケースも想定されます。

なお、警察が逮捕するほどの必要性はないと判断した場合、逮捕されない可能性がありますが、その場合でも刑事事件として立件されることに変わりはありません。刑事罰が科されてしまう可能性も依然否定できません。

【逮捕ありの場合】体液をかける行為での刑事事件の流れ

体液をかける行為は多くの場合、現場で被害者自身や目撃者によって取り押えられます。
その後、駅員によって駅員室に連れていかれ、警察への通報が行われます。現場に到着した警察官は被疑者を警察署に連行し、逮捕する場合には取調べのあと警察署内の留置場に身体拘束します。

後日逮捕の場合、通常は早朝に警察官が家を訪れてそのまま逮捕して警察署に連行します。必要があれば家宅捜索も行われます。

逮捕後には検察官に事件が引き継がれます。また検察官は被疑者の身体拘束を継続する手続き(勾留)が必要かどうか判断し、必要となれば裁判所に勾留の請求を行います。
裁判所が勾留を認めれば、身体拘束は継続されることになります。

逮捕後、身体拘束の期間は起訴されるまで最大23日間に及びます。

警察官は身体拘束を継続しながら適宜取調室に連行して取調べを行います。

原則として勾留期間の満了までに必要な証拠をそろえ、検察官は証拠を元に起訴するか(裁判の開廷を提起するか)、不起訴とするか(事件終了とするか)の判断を行います。

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【逮捕なしの場合】体液をかける行為での刑事事件の流れ

逮捕が行われない場合であっても、まず警察署に連れていかれるという点については逮捕が行われる場合と同じ流れを経ます。
つまり現行犯の場合、駅員室に連行されたあと警察官によって警察署に連れて行かれます。
後日検挙された場合には、通常は早朝に警察官がやってきて、警察署に連れて行かれます。

逮捕が行われない場合、取調べ後に身柄が解放されます。多くは同居の家族などに連絡がいき、迎えに来てもらった上で解放されるという運用となっています。

その後は適宜警察署に呼び出されて取調べを受けることになります。

最終的に検察官が起訴・不起訴の判断をするという点は同じですが、最終的な判断までには検挙後数か月、場合によっては1年以上かかる場合もあります。

体液をかけて逮捕・事件化したら弁護士に相談すべき?

弁護士に相談するメリット①逮捕・勾留回避の可能性が上がる

体液をかける行為について警察の捜査を受けている方はなるべく早く弁護士に依頼した方がよいでしょう。
弁護士へ依頼することによって様々なメリットを受けられます。

まず、弁護士に依頼すれば逮捕・勾留回避の可能性が上がります。

逮捕・勾留が行われるのは『逃亡のおそれ』『証拠隠滅のおそれ』が認められたときです。捜査機関は性犯罪においては特に、加害者による被害者への働きかけによる口封じを懸念します。

この点、弁護士に依頼したという事実自体、『逃亡のおそれはなく刑事手続きをこの先も誠実に受ける予定であること』『弁護士の監督のもと証拠隠滅などの不法行為をしないこと』を証明する証拠となります。

また弁護士は警察官や検察官、裁判官に 『逃亡のおそれ』『証拠隠滅のおそれ』 がないことを効果的に主張できます。

逮捕・勾留の阻止による身体拘束からの解放を目指す場合には、なるべく早く弁護士に依頼すべきと言えます。

弁護士に相談するメリット②不起訴になり前科をつけずに済む可能性が上がる

世間では『警察の捜査を受けた=有罪確定』だと思っている方が多いですが、実務上そんなことはありません。

捜査の流れで検察官は起訴、不起訴の判断をしますが、このとき不起訴になった事件はそのまま事件終了となります。
つまり刑が科されることはなく、前科もつかないわけです。

統計上、刑法犯の不起訴の割合は5割~6割程度です。

弁護士は検察官に対して情状面で有利な証拠を主張し、不起訴処分獲得の可能性を上げることができます。

弁護士に相談するメリット③被害者との示談締結の可能性が高まる

不起訴処分獲得の観点から言っても、被害者の方と示談を締結するのは非常に重要です。

示談というのは被害者に賠償金を支払い民事的な責任を解消する話し合いの手続きですが、示談が認められれば不起訴になる可能性は大きく上がります。

一方で刑事事件において加害者が直接、被害者の方と話し合いをするのは不可能です。捜査機関が被害者の方の情報を教えることはないので、そもそも話し合いのための連絡を入れることすらできないケースが大半です。

この点、弁護士に依頼して加害者が被害者の情報を得ることはないという確約をした上でなら、捜査機関も被害者の情報を教えてくれます。

示談締結による不起訴を目指すためにも、まずは弁護士に相談するのが重要というわけです。

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アトム法律事務所 所属弁護士