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在宅起訴とは?実刑になる可能性や確率、手続きの流れをわかりやすく解説

kj eyecatch717000

「在宅起訴されたけど、これってどういうこと?」
「逮捕されないままで起訴されるって普通なの?」

刑事事件で「在宅起訴」となった場合、自宅で通常通りの生活ができる反面、今後の流れや実刑の可能性に不安を感じる方も少なくありません。

この記事では、在宅起訴の仕組み・判決の見通しや日常生活への影響などを、法律知識がない方にもわかりやすく解説します。

そもそも「在宅起訴」とは?【わかりやすく解説】

在宅起訴とは、逮捕や勾留などの身柄拘束を受けないまま、自宅などで通常の生活を続けながら検察に起訴されることをいいます。

刑事事件で起訴されるときは逮捕・勾留されているケースもありますが、逮捕の要件である「証拠隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」が低いと判断された場合は、身体の拘束を伴わずに捜査が行われます。

ただし、逮捕・勾留されないからといって、起訴されないわけではありません。犯した罪の重さや証拠、被害者の状況などによっては、事件が起訴され、その後の公判で実刑判決となることもあります

逮捕・勾留が起訴の前提ではないことに注意が必要です。

在宅起訴と通常起訴(勾留あり)の違い

在宅起訴通常の起訴(勾留あり)
身柄の拘束なし(自宅での生活が可能)あり(警察署などに勾留)
起訴までの過ごし方自由(外出・仕事も原則可能)勾留中のため制限あり
裁判の可能性あり(公判請求されることも)あり

在宅起訴の流れ|捜査から判決【実刑・執行猶予・罰金】まで

在宅起訴される前後は、以下のようなステップで刑事手続きが進行します。

在宅起訴の流れ(捜査から実刑判決まで)

(1)在宅での捜査(任意の取調べ)

在宅起訴になる場合でも、事件の捜査は当然ながら行われます。逮捕されていないとはいえ、被疑者(容疑者)として警察の捜査を受けることになります。

この段階では、「任意の取調べ」という形で警察署などに呼び出され、事情を聞かれることが一般的です。任意とはいえ、実際には強い要請を受けることも多いため、無視することは難しいのが実情です。

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警察の事情聴取(取調べ)をどう乗り切る?不利にならない対応と今後の流れ

(2)書類送検

警察による捜査が一通り終わると、その結果を取りまとめて「検察」に送る手続きが行われます。

身柄事件は本人の身柄と書類を検察に送りますが、書類送検では、被疑者本人の身柄は検察に送らず、書類だけを送ります。

(3)検察の判断(起訴 or 不起訴)

警察から「書類送検」された事件は、検察官が内容をチェックし、起訴するかどうかの判断を行います。在宅の捜査であっても、この判断次第で刑事裁判にかけられるか、事件終了となるかが決まります。

在宅起訴された場合は、裁判所から自宅に起訴状が届きます。起訴状には、「氏名や年齢」「公訴事実」「罪名」などが記載されています。

不起訴となった場合は、通知なしに事件終了となるケースが多いです。

(4)裁判への進行

検察により「起訴」の判断が下されると、刑事裁判の手続きが正式に始まります。在宅起訴には、公判請求と略式命令請求(略式起訴)があります。

公判請求は、公開の法廷で、裁判官の審理を求めるものです。

略式命令請求は、被疑者の同意がある場合に、簡易裁判所に書面審理を求めるものです。略式手続きに同意する場合は、略式請書にサインします。

(5)判決言い渡し【実刑・執行猶予・罰金】の流れ

公判請求されて刑事裁判になった場合、公開の法廷で裁判を受けることになります。裁判が開かれる日は、自宅から出廷して、参加します。

単純な認め事件であれば、通常2回の期日で裁判が終わり、判決で有罪・無罪が言い渡されます。

刑事裁判の流れ

実刑が言い渡された場合

在宅起訴で実刑判決が言い渡された場合でも、判決当日にそのまま身柄を拘束されるとは限りません。多くの場合は判決に対して控訴の可能性が残されているため、判決の確定までは在宅の状態が続きます。

ただし、実刑が確定すると刑務所での服役が始まります。確定後、裁判所から「収監通知」が送付され、指定された日時に刑務所へ出頭することになります。出頭しなければ逮捕・勾留されることもありますので、注意が必要です。

在宅起訴で実刑になった後の流れ

  1. 判決言い渡し(実刑)
  2. 控訴しない場合、約14日で判決が確定
  3. 裁判所から「収監通知」が届く
  4. 指定された日に刑務所へ出頭
  5. 刑の執行(服役)

執行猶予が言い渡された場合

在宅起訴で執行猶予付き判決が言い渡された場合、刑の言い渡しはされますが、一定期間の猶予期間中に再犯がなければ実際に刑務所に入る必要はありません。

この判決は「前科」にはなりますが、ただちに身柄を拘束されることはなく、日常生活を続けることができます。執行猶予期間中は社会内での更生が求められます。

在宅起訴で執行猶予になった後の流れ

  1. 判決言い渡し(懲役または禁錮+執行猶予)
  2. 判決確定後も在宅での生活が継続
  3. 猶予期間中に問題がなければ刑の執行は免除される

罰金刑が言い渡された場合

在宅起訴で罰金刑が言い渡された場合は、判決確定後に指定された金額を支払えば手続きは終了します。刑務所への収監や執行猶予期間のような制限もありません。

ただし、罰金を期限までに支払わなければ「労役場留置」となり、一定期間刑務所のような施設に収容される可能性があります。

在宅起訴で罰金刑になった後の流れ

  1. 判決言い渡し(罰金刑)
  2. 判決が確定
  3. 裁判所から納付書が送付される
  4. 指定期限までに罰金を納付
  5. 手続き終了(納付しない場合は労役場留置)

在宅起訴されたら外出や仕事はできる?

外出や仕事は基本的に可能

在宅起訴されても、基本的には、外出・出勤・通院などの日常生活は可能です。仕事や学校を休むことなく、呼び出しのあったときに呼び出しに応じるだけでよいので、生活への支障は最小限となります。

在宅起訴されたときの注意点

裁判所や検察の呼び出しには必ず応じる

在宅起訴後は、検察や裁判所から「裁判の日程調整」や、「証拠調べのための呼び出し」で出頭を求められることがあります。

正当な理由なくこれらに応じなかった場合、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されて、身体拘束される(勾留される)リスクもあります。

勝手な引っ越しや連絡先変更は避ける

住民票を移すなどして住所を変更した場合、検察や裁判所からの書類が届かなくなる可能性があります。同様に、電話番号の変更などで連絡が取れなくなると、「逃げた」と判断されかねません。

どうしても引っ越しが必要な場合は、弁護士や関係機関に事前に相談しましょう。

在宅起訴から実刑になることはある?【可能性と目安】

在宅起訴でも実刑の可能性はある

在宅起訴でも、罪の内容や量刑などによっては、実刑(刑務所に行く判決)となる可能性があります。

実刑になるかどうかを左右する要素

  • 犯罪の種類
  • 前科や前歴の有無
  • 被害者との示談の有無
  • 裁判での反省の態度

目安としては、初犯で軽微な罪、かつ示談が成立している場合は執行猶予や罰金で済むケースが多いですが、過去に同様の前科があったり被害が大きい場合、実刑となる可能性もあります。

在宅起訴で実刑になる確率は?

在宅起訴の場合、実刑判決になる確率は、比較的低いとされています。ただし、「事件の内容」や「前科の有無」などの個別事情によっては、実刑になるケースもあります。

令和6年度版犯罪白書によると、令和5年において、裁判で判決が確定した201,990人のうち、実刑になったのは14491人でした(令和6年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節)。割合に直すと、裁判で実刑になったのは約7.2%です。

この数値には身柄事件の人数も含んでいるため、在宅起訴で実刑になる確率はさらに下がると考えていいでしょう。

令和5年 裁判で実刑が確定した人数

人数
無期懲役17
懲役14,431
禁錮43
14,491

もっとも、在宅起訴になるケースは、逮捕が必要とされない比較的軽微な事件であることが多いです。ただし、「在宅=軽い刑罰」とは限りません。在宅起訴は一見軽く見られがちですが、事件の内容次第では実刑判決が下される可能性も十分あります。

特に、「前科がある」「複数回の犯行」「反省の態度が見えない」などの事情があると、裁判所は厳しい判断を下す傾向があります。

不安な場合は、一刻も早く弁護士に相談し、今後の対応方針を明確にすることが重要です。

一般的な傾向(あくまで参考)

状況実刑の可能性
初犯・反省あり・被害弁償済み極めて低い
前科あり・重大な被害・反省なし実刑の可能性がある
複数回の犯行・再犯性が非常に高い実刑リスクが高まる

在宅起訴で国選弁護人はつく?【条件と流れ】

在宅起訴でも、裁判(公判)になった場合、条件を満たせば国選弁護人を選任することができます。国選弁護人とは、被疑者や被告人に弁護士費用を払うお金がない場合に、国の費用で選任される弁護人(弁護士)のことです。

在宅起訴された場合でも、以下の条件を満たせば国選弁護人がつきます。

国選弁護人が付くための条件

  • 公判請求される(裁判になる)
  • 自分自身で弁護士を雇う資力がないと裁判所に認められる

地方裁判所での刑事裁判(懲役刑の可能性がある事件)では、被告人に弁護人がいなければ、裁判所が国選弁護士を選任します。

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国選弁護人の利用条件は?費用はかかる?私選弁護人との違いも解説

在宅起訴が不安な時にやるべきこと

逮捕や勾留をされていないからといって、「何もしなくていい」というわけではありません。在宅で捜査が進んでいても、起訴されたり裁判で不利な判決が出たりする可能性は十分にあります

在宅で捜査を受けている段階なら、起訴を避けるための対応が可能です。また、すでに在宅起訴された場合でも、今後の裁判を少しでも有利に進めるためにできることがあります。

ここでは、在宅起訴に不安を感じている方がとるべき2つの具体的な行動をご紹介します。

【起訴前】弁護士を通じて示談交渉する

在宅起訴される前であれば、起訴を回避するために行動することが重要です。

被害者がいる事件の場合、被害者対応を適切に行い示談を締結することが、不起訴獲得の鍵を握ります。

直接被害者とコンタクトを取れる状況でも、示談交渉は弁護士を通じて行いましょう。示談交渉はいわば和解の提案ですので、そのような提案を加害者本人が行うと被害者としては反感を持ったり冷静に対応できなかったりすることも多いです。

話し合いで和解するどころか、かえって被害感情を高めてしまうおそれもあります。

弁護士が示談交渉の窓口となった場合には、被害者は直接加害者自身と話す必要がなくなり、その安心感から交渉に応じてくれやすくなります。

示談交渉の経験が豊富な弁護士であれば、被害者の心情を考慮しながら、適切なタイミングと金額で示談交渉に臨むことができるでしょう。

示談の流れ

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【起訴後】裁判を見据えた準備をしておく

すでに在宅起訴された場合でも、裁判を少しでも有利に進めるためにできることはあります。たとえば以下のような対策が挙げられます。起訴後であっても、被害者との示談交渉は重要です。

対策内容目的・効果
被害者との示談交渉被害の弁済・謝罪を通じて、量刑を軽くする可能性がある
反省文や陳述書の作成裁判官に誠意を伝える材料となる
社会的信頼の回復家族や職場の協力を得て、更生への努力を示す
弁護士の法廷対応刑の減軽や執行猶予獲得を目指して主張を展開する

裁判では、「どれだけ反省しているか」「再犯するおそれがないか」といった点も量刑の判断材料になります。弁護士と二人三脚で、これらの準備を進めることが重要です。

在宅起訴に関するよくある質問

Q.在宅起訴と逮捕の違いは何ですか?

在宅起訴は「逮捕されずに起訴される」ことを指し、逮捕は「身柄を拘束される」ことを意味します。

在宅起訴と逮捕には、「被疑者の身柄拘束の有無」「適用される事件の内容」などに明確な違いがあります。

在宅起訴と逮捕の違い

項目在宅起訴逮捕(身柄事件)
身柄拘束なし(自宅で生活)あり(留置場等で拘束)
捜査期間期間制限なし原則最大23日間(逮捕72時間+勾留20日)
適用されやすい事件軽微な事件、逃亡・証拠隠滅の恐れがない場合重大事件、逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合
裁判出席呼び出しに応じて出席拘束されたまま出席

Q.捜査から在宅起訴されるまでの期間は決まっていますか?

在宅起訴されるまでの期間には、法律上の明確な制限はありません。在宅事件の場合、身柄事件のような「○日以内に起訴・不起訴を決定しなければならない」といった期間制限が設けられていないためです。

もっとも、一般的には事件発覚から数か月以内に起訴・不起訴の判断がされるケースが多いですが、極端な場合は半年以上、まれに1年以上かかることもあります。

Q.すでに在宅起訴されていますが、まだ弁護士がついていません。大丈夫ですか?

裁判所の指示に従って申請すれば、裁判が始まる前に国選弁護人がつくことが多いため、安心してください。

在宅起訴から国選弁護人を選任するまでの一般的な流れは以下の通りです。

在宅起訴で国選弁護人を選任する流れ

  • 起訴(公判請求)
  • 裁判所から「国選弁護人選任の申出書」が送られてくる
  • 必要事項を記入して返送
  • 裁判所が審査し、条件に合うと判断すれば国選弁護人が選任される
  • 弁護人から連絡があり、打ち合わせ・弁護活動へ

書類の記入は難しくない内容ですが、不安な方は法テラスなどに相談することもできます。

まとめ|在宅起訴の不安はひとりで抱えず、弁護士に相談を

在宅起訴は、決して軽く見てはいけません。たとえ自宅で生活できていても、事件が起訴されている状態であり、今後裁判を受けます。

特に、実刑や前科がついてしまう可能性もあるため、「在宅だから軽いはず」と油断せず、慎重に行動しましょう。

不安を感じたら、できる限り早く刑事事件に強い弁護士に相談することが、今後の状況を少しでも良い方向へ導く第一歩です。

アトムご依頼者様からの感謝のお手紙

刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。

示談成立で不起訴になった上、その後のケアも非常に丁寧でした。

ご依頼者からのお手紙(示談成立で不起訴になった上、その後のケアも非常に丁寧でした。)

(抜粋)自分でしでかした事とは言え、何もかもが初めてのことばかりで右も左も分からず、ただ警察の指示に従うしかなかった日々。そんな中で、先生の存在は非常に心強かったです。先生のおかげで被害者様との示談も成立し、結果的に不起訴になったことは感謝しても感謝しつくせません。またカウンセラーさんを紹介して下さったり、毎週面会の時間を設けてくださったりと私へのケアも非常に丁寧にしてくださったことは、本当にありがたかったですし、前を向いて生活する力をもらいました。

どんな小さなことでも親切にアドバイスしてくれました。

ご依頼者からのお手紙(どんな小さなことでも親切にアドバイスしてくれました。)

(抜粋)この度は、私の事件で最後まで色々ありがとうございました。事件の着手から最後まで細かいことまで親切に細かくアドバイス頂き本当に助かりました。どのように対処してよいかわからない事、困ったことはどんなに小さなことでもよくアドバイスしてくれた所はアトムさんに依頼して本当によかったと思っている所です。さらに有難かったのは、事件が終了した最後の時点でもまだ、何かこまった事、分からない事あれば、いつでも連絡下さいとのアドバイスまでしてくれた事です。後は特に御話させていただく事は無いです。本当にありがとうございました。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了