
刑事事件に関するニュースなどで、「不起訴になった」「無罪判決が出た」といった言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。どちらも「刑罰を受けない」という結果に見えるため、同じ意味だと思われがちですが、背景や経緯には大きな違いがあります。
簡単に言えば、「不起訴」は検察官がその人を裁判にかけないと判断した場合、「無罪」は裁判で裁判官がその人に罪がないと判断した場合の処分です。
この記事では、「不起訴」と「無罪」はどのような処分か、それぞれの違いについてわかりやすく解説します。

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目次
不起訴処分とは?その意味と背景
不起訴処分とは?
不起訴処分とは、検察官が事件を調査した結果、「この人を裁判にかける必要はない」と判断し、刑事裁判の訴えをおこさないことを指します。
逮捕・勾留されていた人は、不起訴になれば釈放されます。不起訴になれば、刑事事件の前科はつかずに事件が終了します。

不起訴となる理由一覧
不起訴には、いくつかの理由があります。主な不起訴となる理由を一覧としてまとめました。
不起訴処分の種類
- 嫌疑なし
捜査の結果、犯罪の犯人でないことが判明した場合 - 嫌疑不十分
捜査の結果、刑事事件の証拠が不十分で、犯罪事実が認められない場合 - 起訴猶予
犯罪の嫌疑が認められるが、犯人の性格や境遇、犯罪後の情況などを考慮し、あえて不起訴にする場合 - 訴訟条件を欠く場合
被疑者死亡・親告罪の告訴取り消し etc. - 罪とならず
犯罪時に14歳未満である・犯罪時に心神喪失・正当防衛が成立する etc.
不起訴になっても、民事責任(損害賠償など)を問われることはあります。一度不起訴になっても、新たな証拠が見つかれば、時効完成まで再捜査・再起訴される可能性もあります。
不起訴処分となる確率
令和6年版犯罪白書によると、令和5年における検察庁終局処理人員総数の起訴率は、32.0%でした(令和6年版 犯罪白書 第2編/第2章/第4節)。
つまり、検察庁が認知した事件の68%が不起訴となっているということです。
最も多い不起訴理由は「起訴猶予」で、全体の69.1%を占めています。
令和5年不起訴人員(理由別)
不起訴の理由 | 人員 |
---|---|
起訴猶予 | 107,272(69.1%) |
嫌疑不十分(「嫌疑なし」も含む) | 35,042(22.6%) |
告訴の取消し等 | 6,093(3.9%) |
心神喪失 | 353(0.2%) |
総数 | 155,305 |
「無罪」とは?意味と手続き
無罪とは?
「無罪」とは、すでに起訴されて裁判が始まり、その審理の中で「犯罪を行った証拠がない」「法的に罪に問うことができない」として、裁判所が有罪と認めなかった場合に出される判決です。
無罪判決が出ると、それ以降、同じ事件について再び起訴されることはありません(「一事不再理」という法律原則による)。
一事不再理は、日本国憲法39条に定められています。
何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
日本国憲法39条
無罪となる理由
無罪判決の大半は、「犯罪の証明がない」ことを理由としています。証拠が不十分で無罪となった理由としては、以下のものが挙げられます。
- 証拠が不十分で合理的な疑いが残る場合
(例:アリバイの成立、証拠の信用性に疑問がある、自白に補強証拠がない等) - 犯人性が否定された場合
(例:共犯者の供述の信用性が否定された、防犯ビデオ等の客観的証拠で犯人性が否定された等) - 犯行の事実自体が証明されなかった場合
(例:死因や因果関係が証明できない等)
裁判で無罪となる確率
日本では、刑事裁判で起訴されて有罪になる確率は99.9%以上とされており、逆に言えば無罪となる確率は0.1%未満です。
令和6年版犯罪白書によると、令和5年に無罪となった人数は79人でした。裁判確定人員総数は201,990人であるため、割合に直すと0.04%となります(令和6年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節)。一度起訴されてしまうと、無罪を獲得することは非常に難しいことがわかるでしょう。
無罪率が低い理由
日本の刑事裁判で無罪率が低い理由は、日本の検察官は「有罪にできる見込みがない事件は起訴しない」という原則(起訴便宜主義)に基づいて行動しているためです。
「ほぼ有罪にできる」と判断された案件のみが起訴されるため、刑事裁判でも有罪となる可能性が非常に高くなります。
有罪判決で前科がつくことを防ぎたい場合は、起訴される前に不起訴を目指すことが鍵となります。
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不起訴と無罪の違いは?
表現は似ていますが、「不起訴」と「無罪」は意味が異なる法的処分です。どちらも最終的に刑罰は受けないため前科はつきませんが、意味や処分に至るまでの過程が異なることを理解しておくことが大切です。
不起訴と無罪の違い
不起訴 | 無罪 | |
---|---|---|
意味 | 裁判をする必要がないと判断された状態 | 裁判で「犯罪をしたとは言えない」と認定された状態 |
判断する人 | 検察官 | 裁判官 |
起訴 | されない | される |
前科の有無 | つかない | つかない |
(1)意味
不起訴とは検察官が「この事件は裁判にかけなくてもよい」と判断した結果、被疑者(容疑をかけられている人)を起訴しないことを言います。つまり、裁判が始まる前に刑事手続きが終了します。
一方で無罪とは検察官によって起訴されて裁判が行われた結果、裁判官が「この人は犯罪をしたとは言えない」と判断したことを言います。つまり、裁判を経たうえでの無実の確認です。
(2)判断する人
不起訴は、検察官が捜査結果に基づいて判断します。「証拠が不十分」「犯行が軽い」「被害者と示談が成立した」などの理由で不起訴になることがあります。
無罪は、裁判官が法廷での証拠や証言をもとに判断します。「証拠では犯罪を立証できない」など、法律に照らして判断されます。
(3)起訴されるかどうか
不起訴は、そもそも起訴されません。つまり、検察官が「被告人として裁判にかける必要がない」と判断した結果です。無罪は、一度起訴されて裁判が始まりますが、裁判の結果、無罪とされます。

不起訴・無罪獲得に弁護士のサポートが重要な理由
不起訴や無罪を得るためには、早期からの法的対策が重要です。
とくに被害者のいる事件で不起訴に持ち込むには、示談が重要となり、「起訴される前に被害者との示談を成立させて検察官に報告する」といった対策が必要です。
逮捕・勾留された場合、不起訴処分を獲得するタイムリミットは逮捕後23日以内です。
逮捕・勾留された事件では、刑事訴訟法上、原則として逮捕後23日以内に起訴・不起訴の判断が下されることになっています。つまり、示談による不起訴獲得を目指すなら、最長でも逮捕後23日の間に示談を成立させる必要があります。

また、起訴された後に無実を主張して争う場合には、公判での証拠整理や証言の信憑性を徹底的に検証する必要があります。
弁護士は法廷で証言をしてくれる証人を確保したり、証人尋問や被告人質問の練習を行ったりして、被告人の利益を守ることを目指します。
刑事事件では、ほんの些細な対応の違いが、その後の処分に大きく影響を与えることがあります。自分やご家族が事件に関わってしまったときは、すぐに刑事事件に強い弁護士へ相談することをおすすめします。
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まとめ
「不起訴」と「無罪」はどちらも「罰を受けない」という結果になりますが、その意味や手続きは大きく異なります。
- 不起訴:裁判が始まる前に検察が「起訴しない」と判断した結果
- 無罪 :起訴された後、裁判で「犯罪をしたとは言えない」と判断された結果
また、不起訴には複数の理由があり、「犯人ではない」と明言されたわけではありません。そのため、冤罪や誤解を防ぐためにも、しっかりとした法的サポートが必要です。
不安なことがあれば、刑事事件に強い弁護士へ相談し、適切な対策を取りましょう。あなたやご家族の未来を守る一歩になるはずです。
アトムご依頼者様からの感謝のお手紙
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
検察への働きかけや職場対応により職場での立場が回復しました。

(抜粋)この度は、野尻先生には、本当にお世話になりました。勾留請求却下、嫌疑不十分以上での不起訴の獲得のため、色々な事をして頂きました。検察への働きかけはもちろんのこと、私が職場において不利益を被ることがないように意見書の作成もして頂きました。おかげさまで、逮捕され捜査対応となったことにより存在した偏見の目がなくなり、職場での立場も回復しました。今後も大変な案件はたくさんあると思いますが今後とも野尻先生の御活躍を祈念させて頂きます。本当にお世話になりました。ありがとうございました。
予想していたよりも良い結果で感謝しています。

当初は精神的に不安定でパニックな状態で全く眠れませんでした。次の日弁護士の先生のお話を聞いてすごく不安が解消しました。しかも今回自分が予想していた結果よりも良い結果でしたので感謝しかありません。大事なのは今後だと思っています。ずっと罪を背負っていかなければならないと思っています。何か変われるきっかけにしなければと思います。この度は本当にありがとうございました。
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