「保釈が認められなかったら、刑務所行きは確定?」
「保釈されたら実刑を免れることができる?」
結論からお伝えすると、「保釈の有無」と「実刑判決」は直接的なイコール関係ではありません。
保釈が認められても実刑になることはありますし、逆に保釈が認められなくても執行猶予がつくこともあります。
この記事では、「保釈」と「実刑」の関係性、そして実刑の可能性がある中で保釈が認められるケースについて、分かりやすく解説します。
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目次
そもそも「保釈」と「実刑・執行猶予」は何が違う?
保釈は一時的な解放手続き
まず、混乱しやすい2つの言葉の定義と、どのタイミングの話なのかを整理しましょう。ここを理解することが、ご自身の状況を把握する第一歩です。
「保釈」と「実刑・執行猶予」の違い
| 保釈 | 実刑・執行猶予 | |
|---|---|---|
| 意味 | 一時的に身柄を解放されること | 最終的な処罰の決定 |
| タイミング | 裁判中(判決が出るまで) | 判決後 |
| 目的 | 裁判の準備をしやすくする、身体拘束の負担を減らす | 罪に対する責任を取らせる(刑務所へ行くか、猶予されるか) |
つまり、保釈はあくまで「裁判が終わるまで家に帰れるか」という手続き上の話であり、「罪を許された(刑務所に行かなくていい)」という結果ではありません。
「保釈許可=実刑回避」ではない
よくある誤解ですが、保釈が認められたからといって、裁判官が軽い刑罰(執行猶予など)を考えているとは限りません。
実刑が見込まれるような事件でも、逃亡の恐れがなく、証拠隠滅の懸念もないと判断されれば保釈は認められます。保釈の判断は「身柄拘束が必要かどうか」に過ぎず、処分の重さとは別の基準で決まるのです。
保釈の条件やかかる費用について詳しく知りたい方は『保釈申請の流れ。保釈条件と必要な保釈金は?起訴後の勾留から解放』の記事をご覧ください。
保釈されないと実刑になる可能性は高い?
「保釈が却下された。ということは、実刑判決が待っているのか……」と絶望する必要はありません。しかし、「保釈されない理由」と「実刑になる理由」には重なる部分があるのも事実です。
なぜ保釈と実刑は関連するのか?
裁判官が保釈請求を却下するとき、主に以下のリスクを懸念しています。
- 証拠隠滅の恐れ: 被害者や目撃者を脅したり、証拠を隠したりする可能性がある。
- 事案の重大性: 犯した罪が非常に重い。
これらは、判決で「実刑(刑務所行き)」を選択する際の理由(反省していない、罪が重いなど)と共通しています。そのため、統計的に見れば「保釈されないケースは実刑になる割合が高い」という傾向は見られます。
「保釈なし」でも「執行猶予」になるケース
必ずしも「保釈なし=実刑」ではありません。以下のようなケースでは、保釈されなくても執行猶予がつく可能性があります。
- 共犯者がいて口裏合わせのリスクがある場合
裁判が終わるまで証拠隠滅を防ぐために身柄は拘束されますが、判決自体は執行猶予がつくケース。 - 身元引受人がいない場合
監督する人がいないため保釈は認められませんが、本人の反省深く、初犯であるなどの理由で執行猶予になるケース。
「保釈が通らなかった」という事実だけで、実刑が確定したと思い込む必要はありません。裁判での弁護活動次第で、執行猶予を獲得できる可能性は残されています。
実刑判決の可能性が高くても、保釈が認められるケースは?
「実刑が見込まれるような重い事件だと、保釈は絶対に無理?」
これも気になるところですが、実刑判決の可能性が高くても、保釈が認められるケースはあります。
法律には、大きく分けて2つの保釈のチャンスがあります。
(1)権利保釈(原則としての保釈)
一定の条件(証拠隠滅の恐れがない、重罪すぎない等)をクリアしていれば、原則として保釈を認めなければならないという決まりです。
しかし、実刑が見込まれるケースでは、ここでのハードルが高いことが多いです。
(2)裁量保釈(裁判官の判断による保釈)
たとえ権利保釈の条件を満たせなくても、裁判官が「特別な事情」を考慮して、職権で保釈を認めることができます。
実刑が見込まれても裁量保釈が検討される例
- 健康上の理由: 被告人が重い病気を患っており、拘置所での生活が困難である。
- 家族の事情: 親の介護や子供の世話など、被告人が不在だと家族の生活が崩壊してしまう恐れがある。
- 被害弁償の必要性: 示談交渉を進めるために、本人が社会に出て資金を調達したり謝罪したりする必要がある。
このように、たとえ最終的に実刑になる可能性が高くても、「判決までの間、外に出る必要性がある」と裁判官を説得できれば、保釈が認められる可能性があります。
保釈を通し、少しでも良い判決を得るためにできること
保釈を認めさせ、かつ最終的な判決を少しでも良いもの(執行猶予など)にするためには、以下のポイントが重要になります。これらは「保釈の審査」と「判決の判断」の両方でプラスに働く要素です。
(1)身元引受人を用意する
身元引受人は「逃亡させない」「再犯を防ぐ」という点で最も重要な存在です。家族や雇用主など、被告人の日常を監督できる人物が具体的な誓約を示すことで、裁判所は保釈を認めやすくなります。
また、判決段階でも「支える人がいる」「社会内での監督体制が整っている」と評価され、執行猶予の可能性に影響します。
身元引受人の条件については『身元引受人とは?役割と求められる条件、身元引受人が必要となるケースを徹底解説』の記事をご覧ください。
(2)被害者との示談を進める
示談は、保釈にも量刑判断にも大きな効果を持つ最重要ポイントです。
被害弁償や謝罪が進んでいれば、裁判所は「反省が深く、再犯の可能性が低い」と判断しやすくなり、保釈の許可にもつながります。
さらに、判決段階では示談の成立が執行猶予を選択する決定的な材料となる場合もあります。
関連記事
・刑事事件の示談の流れ|加害者が示談するタイミングや進め方は?
(3)生活環境を整える
裁判後の生活基盤がしっかりしているかは、保釈と量刑の両方に影響します。
就労先の確保、家族の支援、支援団体の利用、治療が必要な場合は医療機関との連携など、再犯防止につながる環境を整えることで、裁判所は「社会内で更生を進められる」と判断しやすくなります。
この準備は、保釈の成功率だけでなく、執行猶予の可能性を高める上でも不可欠です。
【Q&A】保釈と実刑に関するよくある質問
Q.実刑判決(刑務所行き)になったら、預けた保釈金は没収されますか?
いいえ、没収されません(法律上は「没取」といいます)。 保釈金(保釈保証金)はあくまで「裁判中に逃げたり、証拠を隠したりしないこと」を約束するための人質のようなお金です。
無事に裁判を終えた場合は、所定の手続きを経て、全額返還されます。
一方、保釈金が没収されるケースは、保釈中に逃亡した、証拠を隠滅した、裁判所が定めたルール(住居の制限など)を破った場合です。
Q.保釈中に「実刑判決」が出たら、その場ですぐに刑務所に連れて行かれるのですか?
基本的には、その場で身柄を拘束されます。 実刑判決が言い渡された瞬間、保釈の効力は失われるため、原則としてそのまま収容されます。
ただし、判決内容に不服があり、高等裁判所へ「控訴(こうそ)」する場合は、再度保釈を申請すること(再保釈)が可能です。
再保釈が認められれば、控訴審が続く間、再び自宅に戻ることができます。
Q.罪を認めたほうが、保釈もされやすく、実刑も回避しやすいですか?
一般的には、罪を認めたほうが、保釈もされやすく、実刑も回避しやすい傾向にあります。
しかし、やっていないことまで認める必要は絶対にありません。否認事件(無罪を主張する事件)でも、弁護士の活動次第で保釈が認められるケースはあります。
アトムの解決事例
強盗致傷事件(保釈後、無罪で実刑回避)
アトムの解決事例(強盗致傷:保釈金300万円)
路上で被害者女性を倒す等の暴行を加えて頭部打撲等の傷害を負わせ、現金約数千円とカバン等を強盗したとされたケース。依頼者は犯人性を否認。強盗致傷の事案。
弁護活動の成果
一貫して犯人性を否認。犯人でないことを示す証拠の収集のため証拠開示請求を行うなどして主張・立証を尽くした結果、裁判員裁判で無罪判決を獲得した。
強姦事件(保釈後、執行猶予で実刑回避)
アトムの解決事例(強姦:保釈金300万円)
風俗店に勤務する被害者の個人情報を取得し、自身との性交渉を迫ってホテルで性交等をしたとされたケース。旧刑法の強姦の事案。
弁護活動の成果
保釈が認容され早期釈放が叶った。被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。裁判で情状弁護を尽くし執行猶予付き判決を獲得。
刑事処分に不安がある方は弁護士に相談
この記事では、保釈と実刑の関係について解説してきました。保釈が認められたかどうかだけで実刑・執行猶予が決まるわけではありません。
また、保釈が通らなくても執行猶予となることはありますし、実刑が見込まれていても保釈が許可される場合があります。
ご自身やご家族のケースで「保釈が通る見込みはあるか」「実刑の可能性はどのくらいか」を正確に知るためには、個別の事情を踏まえた専門的な判断が必要です。
実刑判決を心配されている方は、アトム法律事務所の弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所では、警察が介入している事件では無料相談を実施しています。刑事事件を起こしたら、気軽に弁護士にご相談ください。
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