大麻は、国によっては合法としている国もあることから渡航先で大麻を吸った経験がある方もいるかもしれません。以前は、日本でも大麻を所持していたとしても処罰されることはありませんでした。しかしながら、第二次世界大戦後は、大麻を規制しようとする動きになり、現在は免許を受けた大麻取扱者以外が大麻を所持したり、栽培することなどは法律で禁じられています。
それにも関わらず、大麻による犯罪は減少するどころか、若年層にまで広がりつつあり、未成年が大麻所持で逮捕されるなど、大麻による犯罪は深刻化しています。今回は、大麻事件で弁護士を依頼した場合の弁護士費用や不起訴または執行猶予を目指すうえで弁護士がどのようなサポートをできるかについて解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
大麻事件の弁護士費用はいくら?
大麻事件の弁護士費用の相場は120万円
私選で大麻事件を弁護士に依頼した場合、着手金の相場は40万円~60万円、成功報酬の相場は20万円~80万円です。弁護士費用の料金設定は弁護士事務所によって異なりますので、相談しようとする弁護士事務所のホームページで事前に確認すれば大まかな費用はわかります。
実際の弁護士費用は、再逮捕されると追加の着手金が発生したり、勾留時に接見等禁止がついた場合には家族に限っては面会ができるように裁判官に対して接見等禁止の一部解除を求める活動をして認められた場合には成功報酬が発生するなど、弁護活動の内容や成果によって変動します。
弁護士費用には何が含まれている?
主な弁護士費用は、「着手金」と「成功報酬」になります。「着手金」は、弁護活動に着手するための対価のことで、事件を弁護士に依頼した時に支払いを求められることが多いです。そして、「成功報酬」は、弁護活動の成果に対する対価のことで、事件が終了した時にその活動の成果の程度に応じて支払うことになります。
上記以外に、「日当」と「実費」が発生する場合があります。「日当」は、弁護士が警察署や拘置所で接見を行った際や裁判の際などに弁護士が出張した場合に発生します。「実費」は、切手代や交通費など弁護士が一時的に立て替えた費用がある場合に発生します。「日当」と「実費」は、「成功報酬」とあわせて事件が終了した時に請求されることが多いです。
弁護士に相談だけしたい…相談料はいくら?
相談料は、通常30分~1時間程度で5,500円~11,000円(税込み)という弁護士事務所が多いようです。また、事件の内容によっては初回の30分は無料としている事務所もあります。相談料が気になるのであれば、相談の予約をする際に相談料について尋ねれば、教えてもらえます。
また、最近は、すぐに相談に行くことができない方や早急に弁護士を依頼する必要がない方向けに、メールやLINEなどのSNSで無料相談をしている事務所もあります。メールやLINEであれば、いつでもどこでも気軽に相談できるというメリットもあり、需要が高まりつつあるようです。
大麻で逮捕されていたら弁護士費用は高くなる?
大麻で逮捕されている場合、弁護士費用は高くなる可能性があります。大麻の場合は勾留が長引くことが多く、それに伴い弁護士が接見を行うことで「日当料金」が発生するためです。接見回数や接見場所によっても料金は変わってきますが、逮捕されていると弁護士費用は高くなる傾向にあります。
また、大麻の場合には接見等禁止がつくことが多く、接見等禁止の一部解除を求める活動をして認められた場合には「成功報酬」が発生しますし、共犯がいると起訴後も保釈が認められないことも多いので裁判の打合せや準備などのために接見の「日当料金」がかさんで弁護士費用がさらに高くなる可能性もあります。弁護士費用を支払えるか心配であれば、依頼する前に弁護士に相談してみるとよいでしょう。
大麻の再犯だったら弁護士費用は高くなる?
再犯だと依頼者が望む成果を出すことが難しい場合が多いことから弁護士費用も高くなる傾向があります。例えば、執行猶予付きの判決を希望していたとしても前回の大麻事件からの期間や状況などから執行猶予が非常に厳しいような場合には、結果を出すために弁護士が弁護活動に費やす時間も増えるため、「着手金」を高く設定されることがあります。
そして、「成功報酬」についても初犯の場合より高く設定されるケースが多く、再犯のほうがどうしても弁護士費用は高くなります。ただし、成功報酬については、成果がなければ発生しないことから、再犯だからといって一概に高くなるとは言い切れず、弁護活動の成果次第ということになります。
弁護士費用が払えない時の手段|分割は可能?
弁護士費用は、一括払いが基本です。ただし、弁護士へ依頼した後に特段の事情が発生してどうしても一括で支払えなくなったという場合には、依頼している弁護士に相談してみてください。また、これから依頼を考えているがまとまったお金をすぐに準備することは難しいという場合には、分割払や後払いで対応してもらえるか相談の際に確認するようにしてください。
資産がなくて、分割でも支払うことが難しいような場合は、逮捕後であれば当番弁護士制度を利用して1回だけ無料で弁護士に接見してもらうことができますし、勾留後であれば弁護士費用を負担することなく(費用を請求されるケースもあります。)国選弁護人をつけてもらえます。また、勾留されていない場合であっても、大麻事件の場合は起訴された段階で国選弁護人の選任を請求することができます。
弁護士費用以外は何を比べればいい?
弁護士を依頼しようとする場合、弁護士費用を比較することも大事ですが、それ以外にも大切なことがあります。それは、依頼しようとする弁護士の知識や実績、そして、大麻事件を取り扱った経験の豊富さです。それ以外にも、弁護士の人柄なども依頼を検討するうえで重要な比較事項になります。
大麻事件をほとんど扱ったことのない弁護士へ依頼する場合と、大麻事件の依頼が多くて経験豊富な弁護士へ依頼する場合では、当然弁護活動の内容にも差が出てきます。経験豊富な弁護士に依頼する場合には、多少弁護士費用が高くなることがあるかもしれませんが、弁護活動においては経験の豊富さに勝るものはありません。
大麻で逮捕された…家族ができることは?
本人の社会復帰のために弁護士に相談を
大麻では事件の関係者との接触や証拠隠滅を疑われて逮捕や勾留されるケースが多く、逮捕から最長で23日間は留置施設で生活することになります。さらに起訴された場合には、その後も身柄の拘束は続くことになりますので、そうなると仕事や学校にも長期間行くことができなくなります。
身柄の拘束が続けば会社や学校にもばれる可能性も高まりますし、最悪の場合退職や退学を強いられることにもなりかねません。そのような事態を避けるためにも身柄が解放され、社会復帰できるかどうかはとても重要なことです。不起訴や保釈、実刑回避で一日も早い社会復帰を望むのであれば、まずは弁護士に相談をして、早急に身柄解放に向けた活動をしてもらうことが大切です。
弁護士に依頼できない大麻事件はある?
例えば、裁判で判決が確定した事件など、弁護士に依頼することができない大麻事件はあります。判決の言い渡しから14日を経過すると判決は確定しますが、判決が確定すると、もうその事件に関して審理することはできなくなるため、弁護士に事件を依頼することはできません。もし、判決に不服があり控訴を申立てたいのであれば、判決が確定する前に弁護士に依頼してください。
また、大麻事件の場合は共犯がいるケースが多く、共犯の一人に弁護人としてついている場合、別の共犯からの依頼は受けることができない可能性が高いです。同じ弁護士がつくほうが効率的なようにもみえますが、大麻事件の場合には共犯同士の主張が食い違うなど利害の対立が起きやすいという性質があります。弁護士は、依頼者のためにベストを尽くして、依頼者に不利益が生じないように弁護活動を進める義務があります。
大麻事件は当番弁護士・国選弁護人に任せられる?
当番弁護士や国選弁護人の場合、弁護士費用がかからないというメリットがある反面、弁護士を自分で選ぶことができません。当番や国選に登録している弁護士の名簿の中から順番に対応しているため、必ずしも大麻事件の経験が豊富な弁護士が対応するとは限りません。経験豊富な弁護士にあたるかは運ということになります。
また、国選弁護人との相性があわなかった場合でも、弁護活動が出来なくなるなどの特段の事情がない限り、国選弁護人を変更することはできません。ただし、国選弁護人から私選弁護人への変更はいつでも可能です。そして、私選弁護人の場合には、大麻事件の経験は豊富か、相性はいいかなど吟味したうえで信頼できる弁護士へ依頼することができるという最大のメリットがあります。
大麻事件で不起訴・執行猶予を目指す弁護活動とは
冤罪の場合は弁護士が否認をサポート
冤罪は絶対にあってはならないことですが、いったん容疑がかかってしまうと自己で冤罪だと立証することは非常に厳しいというのが現実です。逮捕・勾留されている状況であれば尚更ですから、冤罪の場合にはすぐに弁護士に依頼してください。また、冤罪の場合は認めているケースと比べるとより一層弁護士としての力量が問われますので、否認をサポートしてくれる弁護士に依頼をすることも重要です。
例えば、駐車場で職務質問を受け、車内の捜索により大麻が見つかった場合、その大麻は友人を乗せた時に友人が落としていったものだといくら主張しても自己の車の中から発見された以上、捜査機関は信用してくれず、大麻の所持を何とかして認めさせようとしてきます。冤罪なのであれば、しっかりと否認をして、自己に不利な調書が作成されないためのアドバイスやサポートを弁護士から受けて、弁護士と二人三脚で不起訴を目指しましょう。
警察の取り調べへの対応がわかる
初めての逮捕で弁護士もついていない場合には、取り調べでどう対応していいかわからず、警察官の誘導に従って言われるがままに供述調書に署名をしてしまうケースは非常に多いです。署名のある供述調書は、裁判の際に強力な証拠となるだけでなく、後から覆すことも難しくなります。自己に不利な調書を作成されないためにも弁護士に取り調べでの対応についてアドバイスを受けておくことは非常に大切です。
その他にも、被疑者には黙秘権や供述拒否権がありますが、権利を行使しようとしたら警察官が圧力をかけてきたとか、なかには警察官から暴言を吐かれたというケースも耳にします。弁護士がついていれば、法的権利の行使や取り調べの対応の仕方について適切なアドバイスを受けることができるだけでなく、圧力や暴言があった場合には弁護士より苦情の申し入れを行うなどの対応もします。そして、なにより事実と違う内容で起訴されることを防ぐことができます。
大麻で被疑者に有利な情状を主張
例えば、初犯で所持が微量だった場合には、被疑者の日記など反省していることがわかる書面や家族の監督により再犯防止に期待ができることがかわるような書面、その他にも大麻から脱却するための治療計画書などを証拠化し、「再犯の可能性がないこと」や「再犯防止に向けた取り組みを行っていくこと」など、被疑者にとって有利な情状を検察官に対して主張していくことで不起訴を目指します。
また、共犯がいる場合には、従属的な立場にあったことや共犯に逆らえない立場にあったこと、被疑者自身が利益を得ていないことなど有利な情状があれば積極的に主張していきます。その他にも、捜査への積極的な協力や交友関係の改善を誓約するなど処分を考慮してもらえる事情を伝えながら最善の弁護を尽くします。
大麻からの更生プログラムに弁護士も協力
大麻などの薬物犯罪は、再犯率が高い犯罪です。更生のためには本人の反省や本人が薬物を断ち切るという強い意識も必要ですが、薬物事件の関係者との縁を一切断ち切ることも必要です。そのためには家族など周囲の支援だけでなく、場合によっては医療機関での治療や更正プログラムなどへの参加も必要になります。そして、そういった取組みを検察官や裁判官に伝えることが弁護士の最大の役割でもあります。
特に常習化が疑われる場合には薬物専門の医療機関での治療や薬物防止プログラムへ参加することにより、社会の中で生活しながらでも薬物から脱却できることをアピールして、検察官や裁判官の理解を得る必要があります。そのためには、弁護士が医療機関等と連携して診断書や診療内容、更生プログラムでの取組み内容を証拠として提出するなど、更生を示すためには、弁護士の協力も必要不可欠です。