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大麻の刑罰・捜査の流れ・裁判例

大麻で適用される刑罰

大麻の不正使用や所持、譲受、譲渡は、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)により処罰されます。
また、大麻の不正な栽培は、大麻草の栽培の規制に関する法律(大麻草栽培規制法)で処罰されます。営利目的の場合、その罪はより重くなります。
※令和6年12月12日に、大麻草栽培規制法(旧 大麻取締法)や麻向法が改正されました。ここでは、法改正後の内容に基づいて解説しています。改正前の詳細は「大麻の犯罪」をご覧ください。

麻向法66条の2第1項 使用

7年以下の拘禁刑

第二十七条 麻薬施用者でなければ、麻薬を施用し、若しくは施用のため交付し、又は麻薬を記載した処方箋を交付してはならない。
一 麻薬研究者が、研究のため施用する場合
二 麻薬施用者から施用のため麻薬の交付を受けた者が、その麻薬を施用する場合
三 麻薬小売業者から麻薬処方箋により調剤された麻薬を譲り受けた者が、その麻薬を施用する場合
第六十六条の二 第二十七条第一項又は第三項から第五項までの規定に違反した者は、七年以下の拘禁刑に処する。

大麻とは、大麻草(その種子及び成熟した茎を除く)およびその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く)を指します。大麻草の葉、花、大麻草としての形状を有する製品等は、法律で規制されています。なお、大麻であると明確に認識していなくても、「大麻かもしれない」との認識があれば、処罰される可能性があります。

麻向法66条の2第2項 営利目的の使用

1年以上10年以下の拘禁刑
または情状により1年以上10年以下の拘禁刑
及び300万円以下の罰金

第六十六条の二
2 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該罪を犯した者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処し、又は情状により一年以上十年以下の拘禁刑び三百万円以下の罰金に処する。

営利目的とは、自分で利益を得たり、第三者に利益を得させる動機のことを言います。
営利目的かどうかは、一般的に大麻の量や金銭の授受などから判断されることになります。
営利目的の場合は、非営利目的の場合よりもさらに重い法定刑が規定されています。

麻向法66条1項 所持・譲受・譲渡など

7年以下の拘禁刑

第六十六条 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第六十九条第四号若しくは第五号又は第七十条第五号に規定する違反行為をした者を除く。)は、七年以下の拘禁刑に処する。

正当な理由なく大麻を所持等していた場合、この条文が適用されます。
「所持」とは法律上、事実上の実力支配関係を言い、携帯している場合だけでなく家や車に保管している場合も所持にあたります。

麻向法66条の2第2項 営利目的の所持・譲受・譲渡など

1年以上10年以下の拘禁刑
または情状により1年以上10年以下の拘禁刑
および300万円以下の罰金

第六十六条
2 営利の目的で前項の罪を犯したときは、当該罪を犯した者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処し、又は情状により一年以上十年以下の拘禁刑及び三百万円以下の罰金に処する。

利益を得る目的で大麻の所持等した場合、この罪に問われます。
営利目的の場合は、非営利目的の場合より重い法定刑が規定されています。

麻向法65条1項 輸出入・製造

1年以上10年以下の拘禁刑

第六十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第六十九条第一号から第三号までに規定する違反行為をした者を除く。)

正当な理由なく大麻の輸入や輸出等をした場合、この罪に問われます。

大麻の捜査の流れ

薬物事件は、証拠の隠滅が容易であることから、何の前触れもなく家宅捜索が行われたり、逮捕されたりするケースも多いです。

職務質問される場合

1 職務質問を受ける
2 大麻が見つかる
3 検挙

パトロール中の警察官に、職務質問や所持品検査を受け、大麻の所持が露見するケースがあります。
大麻の所持が判明した場合、多くは現行犯逮捕されるでしょう。
使用についても禁じられている薬物の場合、所持の容疑で逮捕後、使用の容疑で再逮捕されることも考えられます。

家宅捜索を受ける場合

1 警察が疑いを持つ
2 家宅捜索
3 大麻を発見

大麻の所持者や売人が検挙された際、警察は入手経路や販売先の情報などについても収集します。
場合によっては芋づる式に大麻に関与したであろう人物がピックアップされるケースもあります。
大麻所持等の疑いを持った警察は、対象者の家などを捜索し、大麻の発見に努めます。

大麻の有名裁判例

大麻取締法は、大麻の輸出入・所持等を処罰対象としています。
ここでは、大麻輸入罪において故意が問題となった裁判例、大麻取締法違反で現行犯逮捕された事案におけるおとり捜査の適法性について判断された判例をご紹介します。

大麻輸入罪についての故意を認定した裁判例

裁判所名: 東京高等裁判所 事件番号: 平成15年(う)第601号 判決年月日: 平成16年3月5日

判決文抜粋

「依頼された仕事が,その内容及び報酬等からして異常であり,運搬するスーツケースが異様な重量のあるものであり,かつ発覚時に被告人らが不審な態度をとったこと等を総合すると,被告人らが,運搬していた本件スーツケースに,大麻等を含む身体に有害で違法な薬物類が隠匿されていたことの少なくとも未必的認識・認容があったことが優に推認される」

弁護士の解説

運び屋として大麻を輸入した事案につき、犯罪の成立に必要な故意があったとして、有罪とされた裁判例です。
大麻輸入罪の故意については、大麻等を含む違法有害な薬物類に間違いないという確定的なものに限らず、未必的なものでも足りると解されています。
大麻等を含む違法有害な薬物類かもしれないがそれでもやむをえないと考えたのであれば、未必的認識・認容があったとして、本件のように故意が認められ、有罪となり得ます。

おとり捜査の適法性が問題となった判例

裁判所名: 最高裁判所 事件番号: 平成15年(あ)第1815号 判決年月日: 平成16年7月12日決定

判決文抜粋

「おとり捜査は,(略)少なくとも,直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に,機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは,刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容される」

弁護士の解説

被疑者が大麻樹脂の買手を求めていたのを利用し、捜査機関がこれを買い受け、取引現場で被疑者を現行犯逮捕した事案において、本件のおとり捜査は適法であるとされた判例です。
通常の捜査方法では摘発が困難であるということと、被害者がいない犯罪であり、既に犯意を有する者を対象としていることから、おとり捜査の必要性および許容性があるとして適法と判断されました。
密行性の高い犯罪については、このようなおとり捜査が行われることがあります。

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