窃盗や詐欺、横領、暴行、痴漢やわいせつ行為。
犯罪行為をすると、被害者から刑事告訴されてしまう可能性があります。刑事告訴されたらどのような流れで手続きが進んでいくのでしょうか?
なるべく起訴されずに済ませる方法、刑罰を軽くしてもらう方法を押さえておきましょう。
今回は刑事告訴後の流れや告訴されたときの対処方法を解説します。犯罪行為をしてしまって前科をつけたくない方、処罰を軽くしたい方はぜひ参考にしてみてください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
刑事告訴とは
刑事告訴とは、犯罪の被害者が捜査機関に対し、犯罪事実を申告し、加害者への処罰意思を示すための意思表示です。
刑事告訴をすると、被害者が加害者への厳しい処罰を望んでいる事実が明らかになります。告訴を受理したら、警察は速やかに捜査を進めて検察官へ記録や証拠物を送付しなければなりません。また被害者が強い怒りを感じていることにより、加害者の情状が悪くなって重い処分が下される可能性も高くなります。
親告罪の場合、被害者による刑事告訴がないと加害者へ処罰を与えられません。
親告罪
加害者を処罰する要件として被害者による刑事告訴を必要とする犯罪。名誉毀損罪、器物損壊罪、リベンジポルノ禁止法違反などが該当します。
このように被害者による刑事告訴は加害者の刑事処分に対し、重大な影響を及ぼすといえるでしょう。
関連記事
・名誉毀損に強い弁護士に相談したい!誹謗中傷の被害者と示談する方法とは?
・器物損壊罪で逮捕されることはある?逃げるのは本当にNGなのか
・リベンジポルノの逮捕事例と逮捕後の流れ。罪に問われる行為とは?
刑事告訴と被害届の違い
刑事告訴と被害届について混同してしまう方も多いのですが、大きな違いがあります。
被害届は、単に犯罪被害を捜査機関へ報告するものです。刑事告訴のように「加害者を厳しく処罰してほしい」という強い意思は含まれません。また親告罪の場合、被害届が出ているだけでは加害者を処罰できません。必ず刑事告訴が行われる必要があります。
このように加害者の刑事手続きに与える影響は、被害届より刑事告訴の方が甚大です。刑事告訴されてしまったら、起訴されやすくなったり刑事裁判で重い刑罰を科されたりする可能性が高くなるため、注意しなければなりません。
被害届 | 告訴 | |
---|---|---|
内容 | 被害事実の申告 | 被害事実の申告+処罰を求める意思表示 |
受理 | 通常してもらえる | 事実上かなり難しい |
効果 | 捜査等の義務なし(法の規定なし) | 捜査等の義務あり(刑事訴訟法) |
親告罪 | 被害届のみでは起訴不可 | 起訴するために必要 |
刑事告訴と刑事告発との違い
刑事告発とは、被害者以外の第三者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し加害者への処罰を求める意思表示をいいます。
つまり告訴は「被害者が行うもの」、告発は「第三者が行うもの」という点が一番の違いといえます。
親告罪の場合、刑事告発があっても犯人を処罰できません。
刑事告訴の期間
刑事告訴には期間制限があります。
親告罪の場合には、犯人を知った日から6ヶ月以内に告訴しなければなりません(刑事訴訟法235条)。たとえば名誉毀損罪、器物損壊罪などは親告罪なので、犯罪行為時から6ヶ月も経てば告訴される可能性は低くなると考えられるでしょう。
非親告罪の場合、こういった制限はありません。ただし通常の刑事時効(公訴時効)によって期間が制限されます。
なお不同意わいせつ罪や痴漢などの性犯罪の多くは親告罪ではありません。事件から半年経っても告訴される可能性は充分にあるので、注意してください。
刑事告訴後の流れ
まずは被害者から刑事告訴されたらどのような流れになるのか、みていきましょう。
刑事告訴後の流れ
- 警察が告訴を受理する
- 捜査が開始される
- 必要に応じて加害者を逮捕する
- 検察官へ被疑者の身柄を送致する
- 勾留されて取り調べを受ける
- 起訴か不起訴か決定される
- 不起訴になれば釈放される
- 起訴されたら刑事裁判になる
- 判決が下される
刑事告訴後の流れ1 警察が告訴を受理する
まずは警察が刑事告訴を受理するところから手続きが始まります。
実は被害者が告訴状を提出しても、警察は必ず受理するとは限りません。事実上、告訴が受理されるハードルはかなり高く、警察は告訴を受理したがらないことも多いです。
受理するのは適法な告訴のみです。たとえば既に時効が成立している場合や犯罪事実が特定されていない場合、趣旨が判然としない場合などは告訴が受理されない可能性が高くなります。
刑事告訴後の流れ2 捜査が開始される
告訴が受理されたら、警察は捜査を開始します。いったん告訴が受理されると警察は必ず事件記録や証拠物を検察官へ速やかに送付しなければなりません(刑事訴訟法242条)。
単なる被害届とは異なり積極的な捜査が行われる可能性が高いといえます。
刑事告訴後の流れ3 必要に応じて加害者を逮捕する
捜査の過程において、「加害者に逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断されれば加害者が逮捕されるケースが多数です。
警察は裁判所へ逮捕状の発付を申請、裁判所が必要性を認めれば逮捕状が発付され、警察が加害者を逮捕しに来ます。
被害者から刑事告訴されると、ある日突然警察が加害者の自宅へやってきて逮捕されてしまう可能性があるので、注意しましょう。
刑事告訴後の流れ4 検察官へ被疑者の身柄を送致する
警察は加害者を逮捕すると、48時間以内に検察官へ被疑者(加害者)の身柄を送致します。
検察官が引き続き身柄拘束を続ける必要があると判断すれば、裁判所へ勾留請求をします。裁判所が認めると、勾留されます。勾留場所は通常、警察の留置場です。
刑事告訴後の流れ5 勾留中は取り調べを受ける
被疑者が身柄拘束を受けている間、捜査官から取り調べが行われて供述調書の作成などが行われます。
このときに話した内容が、後の起訴不起訴の決定や刑事裁判における量刑に大きな影響を及ぼす可能性もあるので、取り調べには慎重に対応しなければなりません。
刑事告訴後の流れ6 起訴か不起訴か決定される
勾留期間は最長で20日間です。満期になったら検察官は起訴するか不起訴にするかを判断します。
このとき被害者と示談できているかどうか、告訴を取り消してもらえたかどうかが非常に重要です。親告罪であれば、被害者が刑事告訴を取り消すと起訴できません。必ず不起訴処分となります。
非親告罪の場合、被害者が刑事告訴を取り消しても不起訴になるとは限りません。ただし被害者が加害者を許して示談も成立していたら、加害者の情状がよくなります。不起訴になる可能性が大きく高まるでしょう。
刑事告訴されたとき、検察官による処分決定前に被害者と示談を成立させることが非常に重要となってきます。
刑事告訴後の流れ7 不起訴になった場合
不起訴になれば刑事手続は終了します。勾留されていたケースでも釈放されて、同じ罪で再度追及されることはほぼありません。
またいったん告訴を取り消すと再度同じ事件で告訴できないので、被害者の気が変わっても改めて告訴される危険はなくなります。
刑事告訴後の流れ8 起訴された場合
検察官の判断により起訴されたら刑事裁判が始まります。
公判請求されて刑事裁判の被告人となれば、被告人も毎回裁判所へ出廷しなければなりません。検察官から犯罪行為を追及され厳しい処罰を求められるので、刑事弁護人に防御してもらうことが必須となります。
また起訴されると「保釈」が可能となるので、勾留が続く場合には早期に保釈保証金を用意して保釈申請しましょう。保釈保証金は、基本的に刑事手続が終了すれば全額返してもらえます。
一方で、起訴された場合でも「略式起訴(略式請求)」であればこういった大げさな手続きにはなりません。罰金を払うだけで終了し身柄も釈放されます。
刑事告訴後の流れ9 刑事裁判になった場合
刑事裁判が進むと、最終的に裁判官によって判決が下されます。
被害者からの刑事告訴が出ていると情状が悪くなるため、処罰が重くなる可能性が高くなるでしょう。刑罰を軽くするためには、被害者との示談交渉を進めて刑事告訴を取り消してもらうべきです。
刑事告訴されたときに重要なこと
刑事告訴されたとき、不利益を小さくするには以下の2つの対応が重要なポイントとなります。
不起訴にしてもらう
まずは「不起訴処分」を勝ち取ること。
不起訴処分とは、検察官が「起訴しない(刑事裁判にしない)」と決定することです。
不起訴処分になれば刑事裁判にならず刑事手続が終了し、前科もつきません。
加害者が受ける不利益をもっとも小さくする方法といえるでしょう。
刑罰を軽くしてもらう
起訴されてしまった場合には、なるべく刑罰を軽くしてもらう必要があります。
たとえば実刑になるかならないか微妙な案件では執行猶予を狙う、実刑を避けられないなら刑期の短縮を目指すなどです。
刑罰を軽くしてもらうには、被害者との示談が極めて重要となってきます。
無罪判決を狙う
以下のように「犯罪行為を行っていない場合」無罪判決を獲得するために争わねばなりません。
- 犯罪が成立しないケース
- 人違いのケース
ただし日本の刑事裁判は有罪率が99.9%であり、いったん起訴されると無罪を勝ち取るのは至難の業です。刑事事件に強い弁護士に刑事弁護人を依頼して、逮捕当初から適切な対応を重ねていく必要があります。
刑事告訴されたら被害者との示談を成立させる
被害者から刑事告訴されたら、被害者と示談することが極めて重要です。
被害者と示談する
まずは被害者との示談交渉が必須。刑事手続では被害者との示談が成立すると加害者の情状がよくなり、処分が軽くなる可能性が大きく高まります。
たとえば起訴前に示談が成立すれば、不起訴処分となるケースが多数です。特に親告罪の場合、起訴前に告訴を取り消してもらえれば100%不起訴になります。告訴の取り消しは非常に重要なポイントといえるでしょう。
被害者と示談を進める方法
被害者との示談交渉を進めるには、どうすればよいのでしょうか?
まずは被害者へ謝罪をして、示談の申し入れを行わねばなりません。その後被害者との間で示談金についての交渉を行い、合意する必要があります。
刑事告訴の取り消しも打診し、納得してもらわねばなりません。
ただ被害者は加害者へ厳しい処罰感情を持っているものです。被疑者自身が被害者へ示談を申し入れても受け付けてもらうのは困難でしょう。そもそも被害者の連絡先がわからないケースも多く、被疑者が身柄拘束されていて身動きがとれない場合も考えられます。
被害者との示談交渉は刑事弁護人に依頼しましょう。刑事弁護人であれば、被害者へ丁重に連絡を入れて被疑者の代理人として話し合いを進められます。被害者としても被疑者が直接連絡してくるより感情を抑えやすく、冷静に対応しやすいでしょう。
刑事告訴された加害者が早期に身柄釈放や不起訴処分、刑罰の軽減を目指すなら刑事弁護人への依頼が必須です。
当事務所では刑事事件の弁護活動に非常に力を入れており、刑事告訴されたときの対応ノウハウも蓄積しています。お困りの方がおられましたらすぐにでもご相談ください。