2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
教員が刑事事件を起こして前科がついた場合、拘禁刑以上の刑に処されると教員免許は法律上剥奪されます。また、2026年12月25日には日本版DBS(こども性暴力防止法)が施行され、性犯罪の前科がある教員は最長20年間、子どもと接する業務に就くことが難しくなります。
しかし、逮捕されただけでは前科はつかず、免許剥奪にも至りません。検察に起訴される前に弁護士を通じて示談を成立させ、不起訴処分を獲得できれば、前科を回避し教員免許を守ることができるケースがあります。
この記事では、教員に前科がつく場合の具体的な影響、免許剥奪の条件、懲戒処分の基準、日本版DBSの最新情報、そして前科を回避するための具体的な方法について、弁護士が詳しく解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
教員は前科がついたら免許剥奪?法律上の取り扱いを解説
教員が刑事事件を起こして前科がついてしまった場合、教員免許の剥奪や懲戒処分といった重大な影響を受ける可能性があります。ここでは、免許剥奪の法的根拠と、逮捕・前科・懲戒処分の関係を整理します。
教員免許が剥奪されるのは「拘禁刑以上の刑」を受けた場合
教員が万引きで逮捕されたとしても、逮捕されただけでは教員免許は剥奪されません。
法律上、教員免許が失効するのは拘禁刑以上の刑に処された場合と定められています(教育職員免許法5条1項3号、同法10条1項1号)。
「拘禁刑以上の刑に処された」とは、拘禁刑の実刑判決を受けた場合、あるいは執行猶予付き判決を受けた場合の両方を含みます。
つまり、執行猶予がついた場合であっても、拘禁刑以上の刑であれば教員免許は剥奪されるということです。
不起訴でも懲戒処分になる場合がある
拘禁刑以上の刑に処されず不起訴になった場合でも、本人が罪を認めているケース等では懲戒処分になり、教員の職を失う場合があります。
公立学校の場合
公立学校の場合、懲戒処分とする規定を地方公務員法29条で定めています。具体的には大きく3つあります。
懲戒処分の規定
- 地方公務員法またはこれに基づく条例・規則に違反した場合
- 法令に違反した場合や職務上の義務に違反・職務を怠った場合
- 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合
懲戒処分の種類は「免職」「停職」「減給」「戒告」の4段階があり、どの処分が下されるかは各都道府県の教育委員会が定める「懲戒処分の基準(処分量定)」に基づいて判断されます。
たとえば、東京都教育委員会が公表している「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」では、児童生徒に対するわいせつ行為は同意の有無にかかわらず原則免職とされています。
また、飲酒運転で交通事故を起こした場合も免職、体罰により児童生徒を負傷させた場合は停職または免職など、行為の種類ごとに処分の目安が細かく定められています。
処分にあたっては、以下の要素が総合的に考慮されます。
考慮される要素
- 行為の態様
- 被害の大きさ
- 社会的重大性
- 職責や信用失墜の度合い
- 日頃の勤務態度
- 非違行為後の対応(反省の姿勢や被害者への賠償状況など)
私立学校の場合
私立学校の場合は、各学校法人の就業規則で懲戒処分に関する規定を設けています。
たとえば、「刑法犯に該当する行為があった場合」「刑罰法規の各規定に違反する行為を行い犯罪事実が明らかになったとき」といった文言で、懲戒処分に処すと定めている学校があります。
公立学校の懲戒基準がそのまま適用されるわけではありませんが、実務上は公立学校の基準を参考にして処分が判断されることが多いとされています。
つまり、公立・私立を問わず、不起訴であっても懲戒処分の対象となり、職を失うリスクがあります。
逮捕は前科ではないので免許に影響しない
逮捕されただけでは教員免許は剥奪されません。逮捕とは、一時的に警察署に身柄を拘束されている状態に過ぎません。証拠が不十分だったり、冤罪であったりして不起訴となった場合には前科はつきません。
ただし、逮捕されて不起訴になったとしても、体罰やパワハラ、児童に対する性的行為などがあった場合は、教育委員会から懲戒処分が下される可能性はあります。
逮捕された段階では免許が剥奪されることはありませんので、前科をつけずに迅速に解決するためにも、早期に弁護士へ相談することが重要です。
免許失効後一定期間は教員免許を再取得できない
拘禁刑以上の刑が確定して前科がついた場合、教員免許を再取得できる時期にも制限がかかります。
教員免許取得の制限
- 実刑の場合
刑の執行が終わってから10年間、罰金以上の刑に処せられずに経過するまで(刑法34条の2) - 執行猶予の場合
執行猶予期間が満了するまで(刑法27条) - 前科がなくても免職・解雇された場合
失効から3年間は再取得不可(教育職員免許法5条1項4号・5号)
前科とは?罰金や執行猶予も前科になるのか
前科について正しく理解しておくことは、教員としてのキャリアを守るために不可欠です。ここでは、前科の定義と、意外と知られていない前科の範囲について解説します。
前科とは有罪判決が裁判で確定すること
前科とは、刑事裁判において有罪判決が確定することを言います。日本の刑事裁判では起訴された場合の有罪率は99%以上であり、起訴された時点でほぼ前科がつくことは避けられません。
刑事事件において逮捕されてから刑が確定するまでの基本的な流れは、以下のとおりです。
逮捕されてから刑が確定するまでの流れ
- 逮捕・身柄拘束(留置場や拘置所)
- 捜査機関による取調べ
- 検察官による起訴・不起訴の決定
- 起訴された場合、裁判で有罪・無罪の判決
なお、逮捕されずに起訴される「在宅起訴」という場合もあります。逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合(たとえば軽微な傷害・暴行事件で、家族がいて逃亡の可能性がなく、罪を認めているケースなど)に在宅起訴となることがあります。
起訴されてしまった場合、ほぼ確実に有罪判決が下され、前科がつきます。具体的には、拘禁刑や罰金刑などが前科に該当します。
なお、罰には刑事罰と行政罰の2種類があります。交通違反による反則金は行政罰であり、刑事罰の罰金刑とは異なるため、前科はつきません。
執行猶予や略式罰金も前科になる
執行猶予や略式罰金は、刑務所に入らなくてよいため軽い処分のように思えますが、いずれも前科として扱われます。
起訴されたとしても保釈金を支払うことで釈放される方法がありますが、それは起訴された後の話であり、罪がなくなったわけではありません。
起訴された時点で前科が確定するわけではありませんが、起訴後は有罪判決に至る可能性が高いため、起訴前に不起訴を目指す対応が重要です。
一度ついた前科は消えないが、法的な効力は一定期間で消失する
刑が確定し、罰金の支払い・執行猶予期間の満了・刑期の満了を経ることで、法的には罪を償ったことになります。
しかし、一度前科がついてしまうと、事件記録が検察庁や裁判所に保管され、検察庁から本籍のある市区町村役場にも送付されます。これらの記録は、本人が死亡するまで消えることはありません。
そのため、前科がつく前に迅速に対処し、刑事裁判で起訴されることを回避することが極めて重要です。相談が早ければ早いほど、弁護士が前科回避に向けてできる対応の幅が広がります。
性犯罪の前科は教職に就けない・解雇される可能性がある【日本版DBS】
2026年12月25日に、日本版DBS「こども性暴力防止法」が施行されます。正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。
学校、保育所、学習塾、スポーツクラブなど、国が定める(または認定した)事業者に対し、教職員や従事者の特定性犯罪の前科の有無を国が管理するデータベースを通じて確認することが義務付けられます。
確認の対象となるのは、不同意わいせつ、不同意性交等、児童買春・ポルノ、痴漢、盗撮などの条例違反を含む特定の性犯罪で有罪判決を受けた前科のうち、刑を終えてから一定期間が経過していないものです。
照会可能な期間(DBSに登録される期間)
| 処分の内容 | 刑法上の「刑の消滅」までの期間 | 日本版DBSでの照会可能期間 |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 刑の終了から10年 | 刑の終了から20年 |
| 罰金刑 | 刑の終了から5年 | 刑の終了から10年 |
| 執行猶予 | 猶予期間の経過 | 裁判確定日から10年 |
なお、こども性暴力防止法が適用されるのは前科(有罪判決が確定した経歴)に限られ、前歴(逮捕・取調べを受けたが不起訴となった経歴)は対象外です。
日本版DBSについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
教員が前科で職を失わないための対処法
教員が前科をつけないためには、起訴される前の段階で適切な弁護活動を行うことが不可欠です。
不起訴処分を獲得し前科を回避する
教員が前科をつけないためには、起訴される前に示談を成立させることが非常に重要です。起訴されてしまった後に示談が成立しても原則不起訴処分に変わることはなく、起訴された場合の有罪率は約99%にのぼります。
前科をつけず、教員免許を守るためにも、弁護士に依頼して不起訴処分を得ることが最善の対応です。
示談で不起訴の可能性を高める

示談とは、被害者側と当事者間で事件の解決を図ることです。起訴される前に示談に応じてもらえれば、不起訴処分になる可能性が高くなり、前科がつくおそれも大幅に低くなります。
検察官が事件を起訴するか否かの判断には、加害者と被害者が示談しているか否かが大きく影響するためです。
示談の際には、不起訴の可能性を高めるために以下の事項を確実に盛り込むことが重要です。
- 被害届の取り下げ
- 「加害者の処罰を望まない」旨の嘆願書
被害者と示談するためには弁護士への相談が不可欠

刑事事件の被疑者として扱われている場合、示談交渉において弁護士は非常に大きな役割を果たします。示談交渉では弁護士でなければ話に応じてもらえない、連絡先すら教えてもらえないケースが多々あります。
また、逮捕されている場合、勾留請求されるまでの最長3日間は外部と連絡を取ることができず、面会が可能なのは弁護士のみです。
起訴前の身柄拘束は最大23日間あり、検察官がその間に起訴を急ぐおそれがあるため、逮捕されていない場合よりも早めに示談を成立させる必要があります。
示談して早めに解決しなければ、不起訴で前科がつかなかったとしても、勤務先にバレるリスクが時間の経過とともに高まります。
弁護士が対応して示談できれば、早期釈放の可能性が上がりますので、できるだけ早い段階でのご相談をおすすめします。
教員と前科に関するよくある質問
Q.教員が逮捕されたら、すぐに免許は剥奪されますか?
逮捕されただけでは教員免許は剥奪されません。免許が剥奪されるのは、拘禁刑以上の刑に処された場合です。
逮捕は身柄を一時的に拘束された状態に過ぎず、不起訴処分になれば前科はつかないため、免許への直接的な影響はありません。
ただし、逮捕の事実が判明した場合に、教育委員会や学校法人から懲戒処分を受ける可能性はあります。
Q.罰金刑でも教員免許は剥奪されますか?
教育職員免許法上の欠格事由は「拘禁刑以上の刑に処された者」であるため、罰金刑は該当しません。
ただし、罰金刑も前科としては扱われるため、懲戒処分の対象となり、免職に至る可能性はあります。また、2026年12月施行の日本版DBSでは、性犯罪での罰金刑も確認対象となり、刑の執行後10年間は子どもと接する業務に就けなくなる場合があります。
Q.教員の前科は勤務先の学校にバレますか?
前科の情報が自動的に勤務先に通知されることはありません。しかし、報道、長期欠勤、内部調査などを通じて勤務先に知られる可能性はあります。
また、公立学校の教員は地方公務員であるため、起訴された場合には人事担当部門に報告される場合があります。早期に弁護士に依頼して示談を成立させることで、事件が勤務先に知られるリスクを最小限に抑えることができます。
アトムの解決事例
自転車窃盗|深い反省を示し前科回避
アトムの解決事例(不起訴処分)
飲酒後に終電を逃した都内の中学校勤務者(40代)が、路上の自転車を盗んで帰宅しようとしたところ警察官に発覚し、窃盗罪の在宅事件として捜査された事案。
弁護活動の成果
弁護士が飲酒による偶発的犯行・前科前歴なし・深い反省・家族による監督体制を検察官に主張した結果、被害者との示談不成立にもかかわらず不起訴処分を獲得。依頼者は前科を回避し、職場への復帰を果たした。
勤務先での暴行事件|示談で前科回避
アトムの解決事例(不起訴処分)
30代の学校関係者の男性が、職場の学校で同僚と生徒のいじめ問題をめぐり口論となり、激高して相手を殴る蹴るなどし打撲傷を負わせた事案。事件後に被害者が警察に相談し実況見分が行われたため、依頼者は刑事事件化・失職をおそれ弁護士に相談した。
弁護活動の成果
校長・妻など多くの関係者が独自に連絡を取り合うなど交渉が複雑化する中、弁護士が粘り強く示談交渉を続け、示談金60万円での示談と宥恕(許し)を獲得した。その結果、検察への送致なく微罪処分で終了し、依頼者は前科を回避して職も失わずに済んだ。
まとめ
教員が前科をつけてしまうと、教員免許の剥奪、懲戒処分による失職、一定期間の免許再取得不可など、教員としてのキャリアに致命的な影響が及びます。
さらに、2026年12月には日本版DBS(こども性暴力防止法)が施行され、性犯罪の前科がある場合は最長20年間、子どもと接する教育・保育業務に就くことができなくなります。
しかし、逮捕=前科ではありません。逮捕された段階で早期に弁護士へ相談し、不起訴処分を獲得すれば、前科を回避して教員免許を守ることができるケースがあります。示談交渉を迅速に進め、起訴される前に被害者との和解を成立させることが、前科回避の最も有効な手段です。
アトムは24時間365日相談予約受付中
アトム法律事務所は設立当初から刑事事件を専門に扱う事務所として発足し、刑事事件の豊富な解決実績があります。
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