
こちらの記事では、教員がわいせつに関する罪を犯した場合、どのような処分が下されるのか、教員免許を剥奪される可能性について、また性犯罪の類型ごとの刑罰についても解説します。
目次
教員がわいせつ等の性犯罪で逮捕されたら免許剥奪?
性犯罪に限らず、教員が何らかの犯罪を犯して前科がついてしまった場合、教員免許を剝奪されたり、新たに取得できなくなることがあります。
教員による児童に対するわいせつ行為は、近年特に悪質として問題視されるようになっており、厳しい処分が下されることが考えられます。
教員は禁錮以上の前科がつくと免許を剥奪される
教員免許に関する制度を定めた法律である教育職員免許法は、5条1項3号にて、以下に該当する者には教員免許を「授与しない」と定めています。
禁錮以上の刑に処せられた者
教育職員免許法5条
また既に教員免許を保有している者が5条1項3号に該当した場合、その免許は効力を失うことが同法10条1項に定められています。
ただし、罰金以下の刑や不起訴になっても、特に本人が罪を認めている場合などであれば、懲戒処分を受け、免許は失効となる可能性があります。
教員がわいせつ等の性犯罪で逮捕された後の流れ
逮捕にはいくつかの種類があります。ここでは代表的な2つの逮捕の形式における、逮捕された場合の流れをみてみましょう。
まずは通常逮捕があります。後日逮捕とも呼ばれる形式で、刑事訴訟法に基づき、一定階級以上の警察官や検察官などが逮捕状を請求し、裁判官が逮捕の理由と必要性を認めた場合のみ逮捕令状を発行し、それによって逮捕が行われます。
次に現行犯逮捕があります。犯行中や犯行直後の犯人を逮捕することをいい、犯人を間違える可能性は低いため、逮捕状なく一般人でもできる(私人逮捕)ことが特徴ですが、逮捕後はすぐに警察官などに犯人を引き渡す必要があります。その後は最寄りの警察署に連行され、取り調べを受けることになります。
平成31年の警視庁の統計によれば、同年の都内の刑法犯のうち、通常逮捕と現行犯逮捕の割合はおよそ1:1となっています。
教員が逮捕された場合の流れについては、以下の記事もご参照ください。
教員がわいせつ等の性犯罪で逮捕された場合の処分
教員が逮捕された場合の懲戒処分は、公立学校の場合は各都道府県の教育委員会が、私立学校の場合は各学校法人が就業規則にしたがって下します。
一例として、東京都教育委員会がホームページ上で公開している「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」をみてみましょう。
処分量定のうち「性的行為、セクシュアル・ハラスメント等」をみると、学校外での各種の性犯罪のほか、職務上のものは「児童・生徒に対する性的行為等」「保護者に対する性的行為等」「職場におけるセクシュアル・ハラスメント等」「一般の者に対する性的行為等」に分けられ、それぞれ処罰対象となる行為と免職から戒告までの処分が細かく決められているのがわかります。
また、2021年6月には「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が公布されました。今後はわいせつ行為を犯した教員に対しては免許の再交付が行われないなど、より厳正な対処がなされていくものと思われます。
わいせつ・盗撮・児童買春・痴漢・強制性交の刑罰は?
わいせつに関連する性犯罪にはいくつかの種類があり、その刑罰も異なります。それぞれを見てみましょう。
強制わいせつの刑罰
強制わいせつについては、刑法176条にその定義や処罰が規定されています。
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
刑法176条
盗撮の刑罰
盗撮罪という罪はなく、盗撮行為については基本的には各都道府県の迷惑防止条例が適用されます。
迷惑防止条例は各都道府県が制定している粗暴行為などを取り締まるための法律です。
東京都の迷惑防止条例では、以下の通り定められています。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
東京都「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」5条
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
上記に違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されることになります。
迷惑防止条例はこのように「人が通常衣服を身につけないような場所」「公共の場所」などの盗撮行為を禁じています。
ただ都道府県によっては、公共の場所のみの盗撮を禁じ、住居等の盗撮について規制の対象外としているケースもあります。
そのような都道府県における住居等の公共の場所以外での盗撮は、住居侵入罪や軽犯罪違反として処罰されることになります。
児童買春の刑罰
児童買春については、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」4条に以下のように定められています。
児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条
痴漢の刑罰
痴漢行為に対しても、痴漢罪という刑罰はなく、基本的には各都道府県の定める迷惑防止条例が適用されます。東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、痴漢行為については6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金としています。
また、痴漢であっても行為の悪質性によっては強制わいせつ罪が適用されることもあります。この場合は前述の通り6ヶ月以上10年以下の懲役となります。
強制性交の刑罰
刑法177条に定められた強制性交罪は、以前は強姦罪という名称でしたが、2017年に法改正が行われて現在の名称となり、被害者の告訴を必要としない非親告罪となっています。
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法177条
教員のわいせつ等の性犯罪による処分の軽減を目指すには弁護士へ早期相談
教員がわいせつ等の性犯罪を犯した場合、最終的な処分の軽減を図るためには、早期に弁護士に相談することが重要です。
被害者と示談を締結し釈放と不起訴を目指す
処分の軽減のためには、裁判を行わないという判断である不起訴を得ることが重要です。厳罰化の流れもあり、不起訴になったからといって教員免許の取り消しを避けることが必ずできるというわけではありませんが、不起訴は懲戒処分においても重要な意味を持ちます。
不起訴処分を得るためには、弁護士による適切なサポートを受けた上で、示談の締結を目指します。