ある日突然子どもが逮捕されてしまったら、どうしたらよいのでしょうか?
自分たちだけで対応すると、少年審判で不利益な決定が出てしまうリスクも高くなってしまいます。できるだけ早めに弁護士に相談して「少年付添人」を選任しましょう。
そうはいっても「高額な弁護士費用が発生するのでは?」と心配になるもの。
今回は少年事件にかかる弁護士費用の相場や国選付添人制度について、また少年事件を弁護士に依頼するメリットを解説していきます。
少年事件や少年事件での弁護士の役割について詳しく知りたい方は『少年事件を弁護士に依頼する|わが子が犯罪を犯したら親がすべきこと』をご覧ください。
なお、当記事で記載の未成年(少年)とは20歳未満の少年のことであり、民法上の成人(民法第4条)とは異なります。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
少年事件にかかる弁護士費用はケースによって大きく異なる
少年事件の概要
少年事件は、犯罪行為をしてしまった未成年や犯罪行為をするおそれの高い少年(虞犯少年・ぐはんしょうねん)を保護し更生させるための手続きです。男子でも女子でも同じように「少年」と表記されます。
通常の刑事事件とは異なり、少年事件では少年に「刑罰」を与えません。更生できるように保護司をつけて観察したり、少年院へ送致して教育を施したりするのが原則です。
未成年が万引きや痴漢、詐欺などの犯罪行為をすると「非行少年」として逮捕される可能性があります。その後は家庭裁判所へ送られて「審判」が行われ、少年には保護観察や少年院送致などの処分を言い渡される流れになります。何の対処もせずに放っておくと少年院送致の処分が下り、数か月~数年間は少年院での生活を余儀なくされる可能性も高くなってしまいます。
少年事件の流れや処分の内容について詳しく知りたい方は『少年事件の流れを弁護士がわかりやすく解説|逮捕されたら弁護士に相談』の記事もご覧ください。
少年を守るのが弁護士の仕事
このとき、できるだけ処分を軽くしてもらうために活動するのが弁護士の仕事。少年事件で少年を守る弁護士を「付添人」といいます。
少年付添人の弁護士費用はケースによって異なる
少年付添人にかかる弁護士費用は、ケースによって大きく異なり一律ではありません。依頼する法律事務所によっても異なりますし、審判の結果によっても変わってくるからです。
国や弁護士会が費用を負担してくれることも
直接保護者が弁護士と契約する場合とは異なり、「国費」で少年事件の弁護士費用を出してくれる「国選付添人制度」もあります。また国選付添人制度を利用できない場合に弁護士会が弁護士費用を支援してくれる「少年保護事件付添援助制度」を利用できるケースも。こういった制度を利用できれば、保護者や少年に費用負担が発生しない可能性もあるのです。
このように、少年事件の弁護士費用は依頼する事務所や制度によって大きく異なるので、パターン別に理解しなければなりません。
以下でそれぞれの少年事件の弁護士費用の相場をご説明していきます。
私選で少年事件を依頼する場合の弁護士費用
私選とは、自分で弁護士を探して直接少年付添人の契約をする選任方法です。
私選で弁護士に少年事件を依頼するときには以下のような費用が発生します。
法律相談料
法律相談料は、当初に弁護士に相談したときにかかる費用。
相場としては30分~1時間ほどで5,500円~11,000円(税込)程度ですが、「初回のみ」や「30分のみ」など条件により無料相談に応じてくれる事務所もあります。また相談時に付添人活動を依頼すると相談料が免除される事務所も。そういった事務所を利用すれば相談料はかかりません。
着手金
着手金とは、弁護士に少年付添人活動を依頼したときに発生する費用で、事務所によって大きく異なります。
相場としては20万円~60万円程度。以下のように「事件内容」によって異なる着手金額を設定している事務所もあるので、参考にしてみてください。
- 自白事件か否認事件か
- 単独犯か共犯者がいるか
- 重大事件か軽微な事件か
- 身柄拘束されているか在宅事件か
一般的に事件が複雑で長期化が予想される場合には着手金が高額になる傾向があります。
また1審で出された審判に対して抗告する場合、追加で着手金が発生するのが一般的。金額は20万円~50万円程度となる事務所が多いでしょう。
成功報酬金
報酬金は事件が解決したときに発生する費用。通常は少年審判の結果が出たときに払わねばなりません。
金額も結果に応じて異なるのが一般的です。報酬金は着手金以上に事務所によって大きく取扱いが異なるケースも多いので、依頼前にしっかり確認しておいてください。
【成功報酬金の一例】
- 軽微な在宅事件で審判不開始や保護観察処分となった場合…10~40万円程度
- 身柄事件で審判不開始や保護観察処分となった場合…30~60万円程度
- 否認事件で審判不開始や不処分となった場合…50~100万円程度
- 検察官へ逆送されて刑事裁判となった場合…100~200万円程度
上記はあくまで目安なので、実際には弁護士に費用体系を確認してみてください。
実費
弁護士に付添人活動を依頼すると「実費」がかかるケースもあります。
実費とは交通費や裁判所へ払う郵便切手の費用、記録の謄写費用など「実際に発生する費用」。弁護士に依頼せず保護者が対応するときにもかかります。さほど大きな金額にはならないのが一般的ですが、どういった費用負担が生じるのかは依頼時に確認しておきましょう。
日当
日当は、弁護士が出張したり裁判所に出頭したりするときに発生する費用です。
- 現場検証に出掛けた
- 鑑別所に接見に行った
- 調査官と面談をした
- 少年審判に出頭した
このような場合に、日当がかかる可能性があります。相場は半日で1~3万円、1日で3~5万円程度。ただし日当が発生する条件や金額は依頼する事務所によって大きく異なりますし、中には日当がかからない事務所もあるので、契約前にしっかり確認しておくとよいでしょう。
国選付添人制度とは
以上は私選で少年事件の弁護士を選任した場合の費用ですが、国が弁護士費用を負担してくれる「国選付添人制度」があります。
国選付添人制度を利用すると、基本的には利用者に費用負担が発生しません。
適用できるのは「保護者や少年に資力が乏しく」かつ「少年が以下に該当する罪を犯した疑いのあるケース」です。
国選付添人の対象事件
- 死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪
具体的には殺人、傷害、詐欺、窃盗、恐喝などの犯罪行為で逮捕された場合などに国選付添人を選任できる可能性があると考えましょう。
ただし国選付添人をつけるかどうかは最終的に家庭裁判所が判断するので、必ずつけてもらえるとは限りません。選任が認められなかった場合には、自費で私選の付添人を選任しましょう。
少年保護事件付添援助制度とは
国選付添人制度に似た制度として「少年保護事件付添援助制度」もあります。
これは弁護士会が少年事件の弁護士費用を支援してくれる制度。
上記のように、国選付添人を選任できる罪名は限られているので、すべての少年が国費で付添人をつけてもらえるわけではありません。
そこで国選付添人の対象にならない場合、弁護士会が弁護士費用を支援してくれる可能性があるのです。
少年保護事件付添援助制度を適用したい場合には、地元の弁護士会や法テラスへ連絡をしてみてください。
私選か国選付添人(援助制度)どちらがお勧め?
少年事件で付添人をつけるときには、自費で弁護士に依頼するか国選付添人・弁護士会の援助制度を利用するか迷う方も少なくありません。
以下でそれぞれのメリットとデメリットをお知らせします。
私選付添人のメリット
依頼するとすぐに活動を開始してもらえる
私選の付添人を選任すると、すぐに付添活動を開始してもらえます。即時に接見に行って少年と会って安心させ連絡役になれますし、調査官との面談も早期に設定できて被害者との示談交渉もスムーズに進めるなど、可能な限り軽い処分を目指せるでしょう。
少年事件を得意とする弁護士を選べる
私選で付添人を選任すると、少年事件を得意とする弁護士を選べます。日頃から少年事件を多く取り扱っている弁護士に依頼すれば、有利な結果を得られる可能性が高まるでしょう。少年との接見(面会)や被害者との示談交渉もスピーディに進み、保護者や少年にストレスがかかりにくくなります。
私選付添人のデメリット
高額な弁護士費用がかかる
私選付添人のデメリットはやはり弁護士費用です。反対に言うと、費用さえ用意できるなら国選や弁護士会の援助制度より私選の方が良い結果を得られる可能性が高くなるでしょう。特に否認事件、重大事件の場合、依頼者が弁護士を選べない国選や援助制度よりも弁護士を選べる私選付添人を選任すべきと考えます。
国選付添人や援助制度のメリット
費用負担がない、少ない
国選付添人や弁護士会の援助制度の場合、費用負担は発生しません。発生するとしても極めて少額になります。
国選付添人や援助制度のデメリット
すぐに活動を開始してもらえない
国選付添人や弁護士会の支援制度を適用してもらいたい場合には、申請をして許可してもらわねばなりません。その間にタイムラグが発生してしまいます。
また選任された弁護士が即時に動いてくれるとも限りません。時間が命の少年事件では1日の遅れも命取りとなる可能性があります。
積極的に動いてもらえない可能性がある
国選や援助制度で選任された弁護士は少年事件に強いとは限りません。片手間に刑事事件をやっているだけの人も多いですし、公益活動のためにやむなく年1、2件程度引き受けている人もいます。
そんな弁護士に依頼しても、お子さんのために積極的に動いてもらうのは難しいでしょう。
選任してもらえるとは限らない、費用負担が生じるケースも
国選付添人の選任を希望しても、必ず選任してもらえるとは限りません。
また状況によっては後に費用負担が生じるケースもあります。
以上のような事情を考慮すると、子どものために最善の対応を尽くしたいなら弁護士費用を負担してでも私選の付添人を選任すべきといえるでしょう。
当事務所では自白事件、否認事件をとわず少年事件に積極的に取り組んでいます。少年審判だけではなく抗告や逆送事件、刑事裁判にも対応していますので、万一お子様が逮捕されてしまったら、一刻も早くご相談ください。