少年事件で警察に逮捕されたとき、警察から学校に連絡が入ることはあるのでしょうか。家庭裁判所から学校に連絡が入るとき、それはどのような内容なのでしょうか。自分の子供が退学になってしまうのではないか、ご不安は尽きないと思います。この記事では、少年事件に詳しい弁護士が、学校に連絡が入るタイミングや、その趣旨について解説しました。また、退学を回避するためのポイントについても触れています。
少年の一日も早い釈放や、事件解決に向けて何をするべきかをまとめた記事ですので、未成年の子供が逮捕されてお困りのご家族の方はぜひご覧ください。
なお、当記事で記載の未成年(少年)とは20歳未満の少年のことであり、成人とは20歳以上の者を指しています。民法上の成人(民法第4条)とは異なるものです。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
家庭裁判所から学校に連絡が入るタイミングとは
少年は逮捕されると警察から学校に連絡が入る?
少年法上、未成年者は「少年」といわれ、未成年者の犯罪は「少年事件」と呼ばれます。14歳未満は刑事責任が問われないため、ここでは14歳以上の少年を対象として話を進めることにしましょう。少年が犯罪を犯した場合、補導や注意にとどまらず、警察に逮捕されることもあるのです。警察に身体拘束され自宅に帰ることができなくなるということです。
少年が犯罪を犯した場合、警察から学校に連絡が入るかが気になる方も多いです。基本的には、警察から学校に連絡が入ると考えておきましょう。「児童生徒の健全育成に関する学校と警察との相互連絡制度」があり、ほとんどの学校がこれを活用しているからです。少年が逮捕された場合は、原則として警察から学校へ連絡が入ることになります。
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家庭裁判所調査官が学校に連絡を入れ調査を行う
少年事件で少年が警察に逮捕されると、手続きの中で家庭裁判所に送致されるという流れが予定されています。警察や検察官が取調べをしたあと、事件を家庭裁判所が引き継ぐという手続です。家庭裁判所では、事件の背景を調査し、少年の更生には何が必要かが検討されます。それをもとに、審判をすべきか判断が行われるのです。
家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所調査官が登場します。家庭裁判所調査官は、社会学、心理学、教育学などの専門的な知識を持ち、心身の未成熟な少年がかかえる問題を分析したり、事件の根本的な原因を究明する役割を担います。家庭裁判所調査官は、少年の普段の生活状況を知るために、学校にも連絡をいれ、通学状況や成績、学校生活の様子をヒアリングするのです。
少年事件は全件家庭裁判所に送致される
少年事件と20歳以上の成人の刑事事件を比べると、逮捕後の流れの中に家庭裁判所が登場するという点に大きな違いがあります。成人の事件では、警察、検察官、裁判所が刑事事件に登場し家庭裁判所に事件が送致されるという流れはありません。一方、少年事件では、警察や検察官の取調べが終わると、必ずすべての事件が家庭裁判所に送致されます。そこからまた検察官に引き継ぎ捜査が進められることもありますが(これを「逆送」といいます。)、少年事件では家庭裁判所の役割が大きく、弁護士もこの流れを意識して付添人活動を行わなければなりません。
少年はまだ精神的にも未成熟な存在ですが、これからの成長過程で分別ある行動ができるようになり、規範を守った行動が期待できる存在だと考えられています(これを「可塑性がある」といいます。)。少年法の根本にはこの考え方があるため、単に刑罰の有無を決めるだけではなく、家庭裁判所において事件の原因を見極め、少年が更生するための道筋を考えるような手続きが取られるのです。そのため、家庭裁判所には法律だけでなく、心理学や教育分野に精通した調査官が常駐し、少年の社会環境の調査にあたっています。
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家庭裁判所から学校に連絡が入ると退学処分になる?
退学処分になる場合・退学処分にはならない場合
家庭裁判所から学校に連絡が入った場合、学校から退学処分を受けるのではないかと不安に思われる方も多いです。学校は事件の詳細を把握したうえで、校則に照らし、退学処分をするかを判断をします。ただし、公立中学校の生徒であれば、義務教育の範囲にあるため、退学になることはないとされています。
私立高校の生徒の場合は、退学処分になることも否定できません。事件の内容によっては、ただちに退学とはならず、停学などの他の処分がとられることもあります。いずれにせよ、退学になるかどうかは、義務教育の期間内かどうか、公立学校か私立学校か、事件の内容により学校の判断はわかれるでしょう。
学校に少年事件が知られてしまった場合の対応
家庭裁判所が学校に連絡をいれると、保護者がまだ事件のことを伝えていなかったとしても、事件のことが学校に伝わってしまいます。大切なことは、家庭裁判所に送致された段階から、担当の家庭裁判所調査官と密に連絡をとり、学校へ連絡が入る時にはどのような情報が共有されるか見通しをたてておくことです。同時に、学校対応も進めておくことが必要です。
逮捕直後から弁護士に付添人活動をはじめてもらい、家庭裁判所や学校対応も並行して行ってもらう必要があります。学校へはどのように事件のことを説明すればよいのか、家庭裁判所調査官のヒアリングにはどう応じたらよいのか、不安な点も多いと思います。弁護士は、当事者である少年はもちろん、保護者のサポートにも力を入れていくことになりますので、ご心配ごとは何でも弁護士にお問合せください。
退学処分を免れるためにすべきことは
退学処分を免れるためには、学校側に正しく状況を把握してもらうことが大切です。単に「窃盗で逮捕された」「人を殴って怪我をさせ逮捕された」という情報だけでは事件の真相は伝わりません。なぜ、このような事件が起こったのか、少年の反省状況や更生可能性について、弁護者は多角的に分析し、学校に対して退学処分が重すぎるということを説明します。
少年事件は、少年自身が反省していたり更生意欲が強いだけでは解決にいたりません。ご家族の協力や学校の協力は不可欠です。少年を取り巻く環境によって、事件の原因となった事情が改善されることもあります。少年にとって退学処分は精神的にも大きな衝撃となります。本当に退学が相当であるか、事件の詳細を知る弁護士から学校に意見を述べることには意義があるでしょう。
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少年事件で逮捕されたらすぐ弁護士までご連絡を
弁護士相談①釈放に向けた動きをとる
少年が逮捕されたとき、まずは一日も早く釈放してもらえるよう弁護士に相談することが大切です。逮捕によって、少年は家族との連絡も断たれ、周りに味方がいない状態で捜査機関と向き合うこととなります。大人であってもそれは心細いことであり、精神的に不安定になることも十分ありえます。
まずは、釈放のための付添人活動を弁護士に依頼してください。弁護士はすぐに面会に行き、少年の置かれた状況や健康状態を把握してきます。その上で、少しでも早く釈放が叶うよう検察官や裁判所に働きかけます。少年にとって、弁護士は心強い味方といえるでしょう。
弁護士相談②被害者対応(謝罪・示談)を行う
少年事件に被害者がいる犯罪では、被害者に対して謝罪や被害弁償を行うことも大切になります。窃盗、傷害、性犯罪などの場合、被害者との示談はまず行うべきことです。ただし、成人の刑事事件ではこの示談が刑事処分に大きな影響を与えるのに対して、少年事件では、示談がただちに不処分や審判不開始につながるわけではありません。
少年事件では、その根本原因が取り除かれない限り、事件の解決は望めません。とはいえ、事件のことをどう考えているか、反省や更生意欲を示す行動の一つとして、被害者対応は重視されます。被害者との示談は、少年の家族であっても直接被害者との接触は控えた方がよく、弁護士にお任せいただくことをお勧めします。
弁護士相談③不処分・審判不開始を目指す
少年事件の解決にもっとも重要なことは、少年の環境調整(改善)です。事件の背後には、学校でなじめないこと、親との意思疎通がうまくいかないこと、将来への不安、経済的困窮など、様々なことが考えられます。家庭裁判所が少年の周辺関係者からヒアリングをして調査をするのは、それらを明らかにするためです。
弁護士は、家庭裁判所と連携し、少年がこれからの生活で同じことをしてしまわないよう人間関係を含めた環境調整を行います。監督環境に適した人は誰か、相談役になる人はいないかなど、少年のこれからを見据えた活動が必要です。そして、その上で少年事件の不処分や審判不開始という結果を目指していきます。少年が逮捕された場合には、とにかく早めに弁護士にご相談いただき、早期釈放や審判不開始への活動を始めることが大切です。
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