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医師・歯科医師に前科がついたら免許剥奪・取消?特有のリスクと逮捕の関係

医師の前科

医師や歯科医師の方が犯罪行為によって前科がついたら、医師免許や歯科医師免許を剥奪されてしまうのでしょうか?

必ずではありませんが、一定の場合には医業を停止されたり免許を取り消されたりする可能性があるので注意が必要です。

今回は医師や歯科医師が注意すべき「前科による不利益」の内容リスクを回避する方法を弁護士が解説します。

医療資格を持っているけれども交通違反などの犯罪被疑者となってしまった方は、ぜひ参考にしてみてください。

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前科による医師免許や歯科医師免許への影響

もしも医師や歯科医師の方に前科がつくと、医師免許や歯科医師免許にどういった影響が及ぶのでしょうか?

医療の有資格者に前科がついた場合の取り扱いは、医師法や歯科医師法に定められています。

罰金以上の刑に処せられると医師免許に影響する

医師や歯科医師は「罰金以上の刑罰」に処せられると、医師免許・歯科医師免許を制限される可能性があります。この場合の処分は、刑罰ではなく「行政処分」です。

罰金以上の刑には以下のものが含まれます。

医師免許・歯科医師免許に影響する刑罰

内容
罰金1万円以上の金銭支払の刑罰
禁錮30日以上、刑務所等の施設に収監される刑罰で、強制労働はなし
懲役30日以上、刑務所等の施設に収監されて強制労働させられる刑罰
死刑死をもって罪を償わされる刑罰

具体的な行政処分の内容は、「医道審議会」によって審査が行われたうえで決定されます。医道審議会とは、医師や歯科医師に対する行政処分を決定するための専門機関です。

前科のついた医師や歯科医師には「戒告」「3年以内の医業の停止」「免許の取消し」のいずれかの処分が下される可能性があります。行政処分の種類については、後ほど解説するので引き続きご覧ください。

科料、拘留の場合には医師免許に影響しない

刑事事件になっても「拘留」や「科料」であれば、医師免許・歯科医師免許に影響しません。拘留や科料は罰金よりも軽い刑だからです。

医師免許・歯科医師免許に影響しない刑罰

内容
拘留30日未満の期間、刑務所や拘置所などの施設に収監される刑罰
科料1万円未満の金銭支払の刑罰

医師免許や歯科医師免許に影響するのは、「罰金以上の前科がついたとき」です。

注意

医師が患者に対してわいせつ行為を行ったような場合では、たとえ不起訴で事件が終了し、罰金以上の刑罰を受けることがなかったとしても処分を受ける可能性がある流れに見直されつつあります。

関連記事『医師・歯科医師がわいせつの罪を犯したらどうなる?』では、医師によるわいせつ事例やわいせつ等の性犯罪に対する刑罰も紹介していますので、あわせてご覧ください。

コラム|医師や歯科医師に前科がつく典型例

痴漢や盗撮、暴行や傷害などの犯罪行為をすると、逮捕・起訴され、罰金以上の刑罰を受ける可能性があります。比較的軽めの交通違反によっても罰金などの前科がついてしまうケースもあるため、注意しなければなりません。

医師や歯科医師に前科がついて免許に影響がでる典型例は、以下のようなケースです。

  • 痴漢
  • 盗撮
  • 児童買春(援助交際など)、児童ポルノ
  • 万引き
  • 交通違反
  • 暴行
  • 傷害
  • 名誉毀損

自分では気をつけて生活しているつもりでも、スピード違反や飲酒運転などの交通違反で罰金刑となれば医師免許や歯科医師免許に影響が及ぶ危険が発生します。

医業に携わる方は、くれぐれも犯罪行為をしてしまわないよう注意してください。

医師・歯科医師の前科による行政処分の種類

医師・歯科医師に前科が付いて受けることになる行政処分の種類は、「戒告」「3年以内の医業の停止」「免許の取消し」の3つです。

(1)戒告

戒告は「注意すること」です。単に注意されるだけなので、免許に対する直接の影響はありません。そのまま医業を継続できます。

(2)3年以内の医業の停止

3年の範囲内で医業の停止を命じられる可能性があります。医業を停止されている間は医師や歯科医師としての診療行為やクリニック開業などができません。

ただし、免許自身が取り消されるわけではないので、医業停止の期間が経過したらまた医業を再開できる可能性があります。その場合には、停止期間後に再教育研修を受けなければなりません。

(3)免許の取消し

前科がついたときの最も重い処分は、医師免許や歯科医師免許の取消です。一旦取り消されると、再取得しない限り医業を再開できません。

また、免許を取り消されると「欠格期間」が発生し、その間は医師免許や歯科医師免許の再取得ができなくなります。欠格期間は、以下の通り前科の内容によって異なります。

前科の内容別の欠格期間

欠格期間
罰金刑となった罰金を支払った後、罰金以上の刑に処せられないまま5年が経過するまで
懲役刑や禁固刑で執行猶予がついた執行猶予期間の満了時まで
懲役刑や禁固刑で実刑となった刑の執行が終了した後、罰金以上の刑に処せられないまま10年が経過するまで

医師免許の再交付は必ず認められるとは限らない

いったん医師免許や歯科医師免許が取り消されると、欠格期間終了後も必ず免許を再取得できるとは限りません。

まずは再教育研修を受けなければなりませんし、申請しても再交付が認められるとは限らないためです。過去に悪質な前科がある場合、再交付を拒否される可能性も高くなるでしょう。

医師や歯科医師の方に前科がついてしまったら、最悪の場合、一生医業を再開できない可能性があります。くれぐれも注意してください。

医師・歯科医師の逮捕で免許剥奪以外にも不利益あり

医師や歯科医師の方が逮捕されたり前科がついたりすると、免許以外の点でも大きな不利益を受ける可能性があります。

病院に出勤できない、解雇リスク

逮捕や勾留によって身柄拘束されるとその間は病院に出勤できません。

勤務医の場合、勤務先の病院に不審に思われたり場合によっては解雇されたりする可能性もあるでしょう。

クリニックを営業されている方の場合には、身柄拘束中病院を休業にしなければなりません。長期に渡って休業していると、患者さんに迷惑をかけますし不審に思われる可能性も高まります。

信用の低下

医師や歯科医師に前科がついたら、信用が大きく低下します。

同業の他の医師や歯科医師からも色眼鏡でみられるでしょうし、医師会や歯科医師会の中で肩身が狭くなるでしょう。

大学病院などで前科がつくと、昇進が難しくなる可能性が高まります。クリニックを開業している場合でも、前科を知られたら患者さんが来なくなってしまうかもしれません。

マスコミ報道される

医師や歯科医師が犯罪行為をすると、話題性があるためマスコミ報道されるケースも多々あります。そうなったら全国に名前が知られて再起が難しくなる可能性も懸念されるでしょう。

医師や歯科医師は信用を重視する職業ですから、前科を避ける必要性が特に高いといえます。

医師や歯科医師が犯罪行為をした場合の刑事事件の流れ

もしも医師や歯科医師の方が何らかの犯罪行為をして刑事事件になってしまったら、どのような流れになるのでしょうか?

(1-1)逮捕・勾留される場合

犯罪行為が発覚すると、逮捕される可能性があります。

ただし、逮捕は逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合のみに行われるものです。たとえば、医師や歯科医師の方で、仕事も家庭もしっかりしていて逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、逮捕されない可能性も十分にあるでしょう。

逮捕の流れ

逮捕されると、48時間以内に検察官のもとへ身柄を送られます。

身柄が検察官のもとへ送られると24時間以内に、逮捕に引き続いて勾留という身柄拘束を要するかどうかが検察官によって検討されます。勾留が必要だと判断されると裁判所へ勾留請求され、請求が認められると勾留による身柄拘束が継続することになるのです。

勾留期間は原則10日間ですが、場合によっては追加で10日間以内の勾留延長もあり得るので、逮捕から数えると最大23日間も留置場や拘置所で過ごすことになります。身柄拘束されている間は警察官などによる取り調べが行われ、病院への出勤も当然できません。

逮捕後の流れについて詳しくは『逮捕されたら|逮捕の種類と手続の流れ、釈放のタイミングを解説』の記事もあわせてお読みいただければ、より理解が深まります。

なお、逮捕されても極めて軽い犯罪で被害者も許しているような場合には勾留請求までされず、「微罪処分」として釈放してもらえるケースもあるでしょう。詳しくは『微罪処分の要件と流れ|微罪処分の6つの判断基準と対象事件』の記事が参考になります。

(1-2)逮捕・勾留されない場合

逮捕されなかった場合や勾留されなかった場合には、被疑者在宅のまま捜査が進められます。この場合、被疑者の立場であっても、そのまま病院で医業を続けることができます。

ただし、逮捕や勾留が行われないだけで、事件の捜査が進められている状況に変わりありません。警察や検察から呼び出しを受け、取り調べを受けることになります。正当な理由もなく呼び出しを無視し続けたり、拒否したりすると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとみなされて逮捕されてしまう可能性が出てくるので注意してください。

なお、逮捕されない場合も、捜査資料が警察から検察官のもとへ送られて「書類送検」が行われます。

逮捕・勾留されない在宅事件については『在宅事件の流れを解説|起訴率は低い?逮捕される刑事事件との違い』の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

(2)起訴か不起訴か決定される

逮捕・勾留されている場合は身体拘束の期間制限があるので、満了したら検察官によって処分決定されることになります。このとき「起訴」か「不起訴」かが決まります。

起訴されると刑事裁判になり、不起訴になったら裁判にはなりません。

逮捕・勾留されなかった場合も検察官による取り調べが行われ、その結果により起訴か不起訴かの処分決定が行われると考えましょう。

(3)刑事裁判が行われる

起訴されたら刑事裁判が開かれます。ただし、略式起訴になった場合には、実際の法廷での裁判は行われません。書類上の審理により罰金刑や科料の刑が下されます。

通常起訴されると公開法廷で審理されます。

刑事裁判は公開されるので、一般の方が傍聴に来て犯罪行為の詳細を知られる可能性もあります。医師や歯科医師の信用が傷つく可能性があるので注意しなければなりません。

(4)判決が下されて前科がつく

刑事裁判が終わると、判決が下されます。

有罪判決になったら前科がつき、医師免許や歯科医師免許に対して影響が及ぶ可能性が高くなると考えましょう。

一方、無罪になれば前科はつかず、医師免許や歯科医師免許に影響は及びません。

医師や歯科医師が免許剥奪や前科の不利益を防ぐには?

医師や歯科医師の方が何らかの犯罪で刑事事件の被疑者となったら、不利益を避けるためにどのように対処すればよいのでしょうか?

早めに被害者と示談する

痴漢や暴行などの被害者のいる犯罪では、とにかく早めに被害者と示談することが重要です。逮捕前に示談が成立したら、逮捕されずに済む可能性が高くなります。

逮捕後でも示談ができれば不起訴処分となり、前科をつけずに済むケースが多いのが現状です。

被害者と示談交渉する際、医師や歯科医師ご本人が対応するのではなく弁護士に依頼しましょう。その方が被害者としても受け入れやすく、スムーズに進めやすいためです。

刑事事件における示談の重要性を解説した関連記事『刑事事件で示談をすべき5つの理由|示談金の相場も紹介』もあわせてご確認ください。

刑事弁護人を選任する

交通違反などの被害者のいない事件であっても、刑事弁護人に依頼するメリットは大きいといえます。

刑事弁護人が良い情状を集めて検察官に申し入れをすれば、身柄拘束を避けられたり不起訴になったりする可能性が高くなるためです。

自分一人で対応していると状況が悪化して前科がついてしまうリスクも高くなるので、早めに刑事弁護人を選任しましょう。

刑事事件において、どのような弁護士を選べばいいのか迷われている場合は、『刑事事件の弁護士の選び方|弁護士は必要?』の記事もあわせてご確認ください。何を基準にして弁護士を選ぶべきかがわかります。

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アトム法律事務所では、刑事弁護を多数取り扱ってきた実績があります。医師・歯科医師の方で前科が付いてしまうかもしれないとお悩みの場合は、不利益を避けるためにも一刻も早くご相談ください。

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