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微罪処分の要件と流れ|微罪処分の6つの判断基準と対象事件

微罪処分の要件

事件を大ごとにせず穏便に済ませたい

被疑者本人やそのご家族にとって、今後の事を考えるとなんとか事件の影響を最小限におさめたいものです。

もし微罪処分となれば警察段階で捜査は終了し、原則として今後呼び出されることはありません。また起訴されることもないので裁判や前科がつくかもという不安の中で生活する必要もなくなります。

この記事では、微罪処分とは何か、微罪処分になる要件や基準を説明していきます。

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微罪処分とは?

微罪処分とは、警察段階で刑事手続きを終了させる処分のことで、不送致とも呼ばれます。

被疑者にとって微罪処分になることには多くのメリットがあるので、まず微罪処分とは何かを正しく理解しておきましょう。

微罪処分は検察に送致せずに事件を終了させる処分

全ての刑事事件は、まず警察における捜査から始まります。そして、ある程度警察で捜査されると、次は検察へと捜査主体が移るのです。

逮捕されていれば身柄送致がなされ、逮捕されていない在宅事件であれば捜査関係書類を検察へ送致します。ニュース報道で耳にする「書類送検された」という表現は、在宅事件の捜査主体が警察から検察へ移ったことを意味するのです。

微罪処分とは、あらかじめ検察官から送致の手続きを取る必要がないと指定されたものについて、送致をせずに終了させる処分のことになります。

なお、微罪処分は被疑者が20歳以上の事件を対象とします。少年事件については関連記事『少年事件の流れを弁護士がわかりやすく解説』を参考にしてください。

微罪処分の流れ

微罪処分は、警察署で話を聞かれ、身元引受人に迎えに来てもらい、身元引受書を書いてもらって身柄釈放となる流れです。

微罪処分決定までの大まかな流れを、店舗で万引きをして警察官に取り押さえられたパターンを例に説明します。

微罪処分の流れ

  1. 店舗から警察署へと連行される
  2. 警察官から事情聴取を受ける
  3. 身元引受人を呼ぶ
  4. 身元引受人に身元引受書を書いてもらう
  5. 釈放される

また、現場で警察に連れていかれることなく、警察に後日呼び出しを受けて出頭した在宅事件であっても主な流れは同じです。

ただし微罪処分の決定には、店舗の方に許してもらっていること、今回の万引きを深く反省していること身元引受人が来てくれていること被害弁済をきちんと行うことなど、様々な条件が必要です。

微罪処分の要件

微罪処分の要件は、被疑者が十分に反省していること、犯罪が軽微であること、被害が適切に回復されること、身元引受人がいることといえます。

微罪処分について定める犯罪捜査規範第198条によると、微罪処分の対象事件は、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ検察官から送致の手続きを取る必要がないとあらかじめ指定されています。

さらに、同第200条に規定されている微罪処分の処置は以下の通りです。

微罪処分の際の処置

  1. 被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
  2. 親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
  3. 被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。

つづいて、微罪処分の判断基準を詳しく解説します。

微罪処分の判断基準とは?

どういった事件が微罪処分となるのかは非公開で、都道府県ごとに異なります。ここからは微罪処分と判断されやすい基準を6つみていきましょう。

(1)犯罪が比較的軽微であること

犯罪の内容が比較的軽微であれば、微罪処分となる可能性は高まります。被害額がおおむね2万円以下ともいわれており、高額商品や多額の金銭を盗んだ場合は微罪処分が難しい可能性もあります。

万引き以外にも、その被害が比較的軽微だと判断されれば、微罪処分の見込みは高まります。暴行事件で例をあげるなら、喧嘩をしていてつい胸倉を掴んだもののすぐに手を離した場合などがあげられるでしょう。

(2)犯情が軽微であること

犯情とは、犯罪に至った経緯や動機のことです。処分を検討する際には、犯罪行為に至るまでの事情も考慮されます。

たとえば酔っ払った勢いで相手にぶつかってしまったケースでは、犯罪行為そのものに強い動機があったのではなく偶発的に事件が起こったと判断されやすいでしょう。

しかし、相手が来ることを知っていて待ち伏せして暴行を加えたり、凶器を用意して犯行に及んだりした場合には、犯情が重いものと受け止められる可能性があります。

関連記事

酔っ払いが事件を起こした時の責任能力は?

(3)被疑者を監督する人がいること

犯罪捜査規範にも定められている通り、身元引受人の存在は絶対に必要です。

身元引受人には次のような人が当てはまります。

  • 親権者
  • 雇主
  • その他被疑者を監督する地位にある者
  • これらの者に代わるべき者

身元引受人に警察署まで来てもらい、身元引受書を記入してもらう必要があります。身元引受人が担う具体的な役割や、身元引受人になれる人の条件については『身元引受人の条件や必要な場面とは?逮捕されたら家族ができること』の記事をご覧ください。

ポイント

弁護士が身元引受人になることも可能です。家族や会社の人に事件のことを知られたくないという事情がある方は、弁護士への依頼も有効でしょう。

(4)被害者の許しを得ていること

微罪処分にするということは、以後刑事事件としての捜査はなされません。被害者の感情がおさまっていないにもかかわらず、事件を早期に終了させることは考えづらいでしょう。

被害者本人や被害店舗が「警察できちんと叱ってくれればそれでいい」「被疑者の刑事処罰を望まない」という気持ちを持ってくれることが、微罪処分の獲得に大きな意味を持ちます。

ポイント

被害者から許しを得る際には金銭の交渉が必要になるだけでなく、今後事件の事を第三者に口外しない(守秘義務条項)、被害者には近づかない(接触禁止条項)、この件については被害届を出さない(清算条項)などを取りまとめた示談書を取り交わすべきです。

当事者同士の話し合いでは解決が難しい場合があります。被害者との示談交渉においても弁護士はお役に立てることが多数あるので、法律事務所への早期相談がおすすめです。

関連記事

示談の決裂を避ける方法|弁護士が解説する「被害者対応」のポイント

(5)被害弁済が適切に行われること

適切な被害弁済が行われていることは微罪処分を目指すにあたって極めて重要です。そして被害弁済の内容は多岐に渡ることも考えられます。

例えばマンガを万引きした場合でも、被害額はマンガの代金だけとは限りません。

万引き事件への対応で店の営業が止まったならその営業損益を補てんしたり、被疑者を確保しようとした際に店員がケガをした場合には治療費や通院交通費も被害弁済にあたる可能性があります。

適切に被害回復がなされていることと、被害者から許しを得られることは別ものになりますが、どちらも微罪処分で済ませてもらうためには大事な要素です。

(6)被疑者が素行不良者ではないこと

何らかの前科前歴があることは微罪処分に影響する可能性があります。なぜなら、前回から反省がなされていない、次も何か犯罪行為をするかもしれないと再犯の可能性を疑われるからです。

また、日ごろの素行についても調べられる可能性があります。

たとえば、普段はおとなしく温厚な性格なのに、ついカッとなって相手を突き飛ばしてしまったという人物と、普段からすぐに手が出るタイプで以前にも同じような暴力沙汰を起こしている人物とでは、処分のあり方が変わってくる可能性があるのです。

ポイント

前科とは過去の刑事事件で有罪判決が確定して初めてつきます。過去に略式起訴されて罰金刑を言い渡されている方も前科がある状態です。また、以前に不起訴処分になっている方も前科がなくても前歴は残っている状態といえます。

微罪処分で得られる3つのメリット

微罪処分は被疑者側にメリットの大きい処分といえます。

それは、微罪処分になると前科がつかない早期に事件が終了となり釈放される刑罰を受けなくてもよいといった3つのメリットがあるからです。

3つのメリットを詳しく説明します。

(1)前科がつかない

前科とは、事件が検察へと送致され、検察に起訴されて有罪判決が確定したことをいいます。

微罪処分では検察に送られることがないので、もちろん起訴されることもなく、前科はつきません

前科がついていると、就職や転職で不利になる可能性があったり、海外渡航に制限がかかったり、インターネット上でニュース記事が出回るリスクが高くなるなど、様々なデメリットが考えられます。

微罪処分にならないとどうなる?

もし微罪処分にしてもらえなかったときには、前科が付かないように不起訴処分を目指すことになるでしょう。不起訴処分を判断するのは検察です。弁護士ならば、状況に合わせた最適な弁護方針を立てて活動できます。微罪処分を目指し、それでも検察へ送致されてしまったなら不起訴処分獲得へと粘り強く活動してくれる弁護士を探しましょう。

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(2)早期の事件終了と釈放

微罪処分となると、今後はその事件について呼び出しされて取り調べを受けるということはないでしょう。

また、身元引受人に迎えに来てもらうことで警察署からも出られます。

微罪処分にならないとどうなる?

在宅事件の場合には書類が検察に送致され、以後は検察からの呼び出しに応じる必要があります。事件の取り調べが続く不利益はもちろん、捜査の結果、起訴されてしまうこともあるでしょう。

逮捕されている場合には、身柄は警察から検察の管理下へと移されます。そして、検察によって引き続き身柄拘束が必要と判断されたときには、裁判所に対して勾留請求が行われる流れです。

裁判所は検察からの勾留請求を検討し、勾留が相当だと判断すると、10日間身柄拘束が続いてしまうのです。さらに追加で10日の身柄拘束が続く場合もあり、プライベートへの影響は避けられません。

被疑者勾留の流れ

(3)刑罰を受けなくてもよい

微罪処分ということは、検察に送致されることがないため、起訴もしくは略式起訴をされる心配がありません。つまり刑事罰を受けることなく、事件終了としてもらえます。

微罪処分にならないとどうなる?

検察へ送致されても、不起訴処分を獲得できれば刑罰を受ける必要はありません。ただし、被害者との示談が成立していなかったり、被害者の処罰感情が苛烈であったり、事件の内容次第では起訴される可能性はあります。

起訴もしくは略式起訴がなされると、ほとんどのケースが有罪となり、罰金刑や禁錮刑、懲役刑などが科せられることになるでしょう。

微罪処分でも注意すべき3つの重要事項

被疑者にとってメリットの大きい微罪処分ですが、前歴は消えないこと身元引受人には事件の内容を隠せないこと民事責任は残っていることの3つの注意事項があげられます。

(1)前歴を消すことはできない

前歴とは、被疑者として警察の捜査対象となったことをさします。したがって、微罪処分を受けても前歴は残るのです。

今後また警察の取り調べ対象となった場合は、前歴があることはマイナスに働く場合があります。しかし、すでに被疑者として取り調べを受けている時点で前歴はついているので、大きなデメリットではないでしょう。

前科・前歴・逮捕歴の違い(流れ)

(2)身元引受人には事件の内容を隠せない

微罪処分にしてもらうには、身元引受人の存在が必須です。

警察署に来てもらうことになるため、家族や職場の上司などが身元引受人になったときには、事件の経緯や内容を知られることになります。

(3)民事責任は残っている

微罪処分はあくまで刑事事件としての「刑事罰」を受けなくても良いというだけです。被害者への謝罪や損害賠償は、微罪処分によって免れるものではありません。

被害者が負った損害によっては、果たすべき民事責任は小さいものとは言えない恐れがあります。

微罪処分の対象事件にはどんなものがある?

微罪処分の対象事件には、窃盗罪・遺失物横領罪・詐欺罪・暴行罪・傷害罪・賭博罪・横領罪などがあげられます。ただし、厳密には都道府県によって異なる点に留意してください。

ここではアトム法律事務所で微罪処分を獲得した万引きおよび傷害事件の一部を例示します。アトム法律事務所のデータベースにはもっと多くの解決事例が掲載されていますので、併せて活用してください。

窃盗・遺失物横領罪(万引き)の微罪処分事例

量刑

  • 窃盗罪は10年以下の懲役または50万円以下の罰金
  • 遺失物横領罪は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料

窃盗や遺失物横領横領については、被害額が少ないこと、初犯であること、真摯に反省していること、被害弁済をすること、相手が許してくれていることなどが、微罪処分となるためには必要と言えるでしょう。

なお、万引きやネコババというと軽微な犯罪に捉える人もいますが、窃盗罪や遺失物横領罪に問われるれっきとした犯罪です。

アトム法律事務所では、万引き事件の弁護活動により微罪処分を獲得した実績があります。被害店舗への謝罪と賠償を適切に行い、許しを得られたことがポイントです。

万引き(微罪処分・不送致)

同一の店舗において繰り返し万引きをしていたとされるケース。防犯カメラの映像から身柄を特定され警察の事情聴取を受けることになった。窃盗の事案。


弁護活動の成果

被害店舗に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。送致されることなく事件終了となった。

示談の有無

あり

最終処分

微罪処分(不送致)

暴行・傷害の微罪処分事例

量刑

  • 暴行罪は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
  • 傷害罪は15年以下の懲役または50万円以下の罰金

暴行罪と傷害罪では、傷害罪の方がより重い刑罰が科されます。

事件が起こった経緯や犯情、被疑者の真摯な反省、相手方の怪我の程度や被疑者への処罰感情の有無などが微罪処分を目指すうえでのポイントといえるでしょう。

アトム法律事務所では、傷害事件での微罪処分(不送致)を獲得できた事例があります。

傷害(微罪処分・不送致)

駅において駅員と揉めていた際、仲裁に入った被害者男性を突き飛ばしたとされるケース。依頼者は当時、飲酒酩酊していた。傷害の事案。


弁護活動の成果

被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。検察に送致されることなく事件終了となった。

示談の有無

なし

最終処分

微罪処分(不送致)

微罪処分にならない要件と犯罪の類型

微罪処分の対象となる犯罪名は公開されていません。検察庁から各都道府県へと指定されており、地域によっても様々です。

しかし、厳格な刑事手続きのもとに進められた事件であったり、痴漢やわいせつなどの性犯罪は微罪処分の対象外になっています。具体的に説明します。

逮捕状(令状)を元に逮捕されると微罪処分にならない

一人の身柄を拘束するということは、その人の身体の自由を大幅に奪うことになります。そこで逮捕状(令状)をとるには厳格な刑事手続きが取られているのです。

厳格な刑事手続きに則って裁判所が認めた逮捕状(令状)をもとに捜査された事件については、微罪処分の対象とはなりません。

告訴・告発・自首による事件は微罪処分にならない

告訴や告発によって発覚した事件については、微罪処分の対象にはなりません。つまり、器物毀損罪のような親告罪のケースも微罪処分の対象外です。

また、被疑者自らが警察に出頭して自首をした場合でも、微罪処分の対象とはされていません。反省を示すことはできても、微罪処分で済まされることはないのです。

自首のデメリット

痴漢・わいせつなど性犯罪は微罪処分にならない

痴漢行為(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反等)やわいせつ罪などの性犯罪は、微罪処分とはされていません。

検察官送致されることがほぼ確定していますので、微罪処分を狙うのではなく、不起訴処分や略式起訴、あるいは刑罰を軽くすることを目指すべきでしょう。

微罪処分を獲得するために弁護士に相談しよう

微罪処分を獲得できると、被疑者にとっては、前科がつかない、刑事罰を受けない、早期に釈放されるといったメリットがあります。しかし微罪処分を獲得するためには、警察段階での迅速かつ的確な活動が必要不可欠です。相手方への示談交渉や適正な被害金額の把握も、本人やご家族・関係者ではなかなか進まないことも多いのが現実です。より早く更生へ向けるように弁護士に相談してみませんか。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了