刑事事件を起こして警察の捜査を受けることになった時、もっとも不安になるのは「前科がついてしまうのか」「逮捕されてしまうのか」という点ではないでしょうか。
実は、比較的軽い事件で、しっかりとした反省や対応ができている場合、検察官に事件が送られず、警察段階で手続きが終了する「微罪処分」という制度があります。
微罪処分の対象となる犯罪は、窃盗罪(万引き)、詐欺罪、暴行罪、傷害罪などです。
もし微罪処分となれば、原則として今後警察や検察に呼び出されることはありません。何より前科がつかないことが最大のメリットです。
この記事では、どのようなケースが「微罪処分」になるのか、その要件や手続きの流れ、そして処分を獲得するために今ご自身ができることをわかりやすく解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
微罪処分とは?
警察段階で刑事手続きを終了させる処分
微罪処分とは、犯罪の嫌疑はあるものの軽微であるとして、警察段階で刑事手続きを終了させる処分のことをいいます。検察官に事件を送致しないため、「不送致」とも呼ばれます。
通常、刑事事件は警察から検察へ送致されますが、微罪処分となった場合は警察段階で刑事手続きが終了し、起訴・不起訴の判断自体が行われません。被疑者にとっては、「前科がつかない」「早期に事件が終結する」など、多くのメリットがあります。
微罪処分の流れ
微罪処分となる場合、一般的には警察署で事情を聴かれた後、身元引受人に引き取られて釈放される流れになります。
以下では、店舗で万引きをし、警察官に取り押さえられたケースを例に、微罪処分までの大まかな流れを説明します。
微罪処分の流れ(例:店舗での万引き)
- 被害店舗から警察署へと連行される
- 警察官から事情聴取を受ける
- 身元引受人を呼ぶ
- 身元引受人に身元引受書を書いてもらう
- 釈放される
現場でそのまま警察署へ連行されるケースだけでなく、後日警察から呼び出しを受けて出頭する在宅事件であっても、微罪処分となる場合の基本的な流れは同様です。
微罪処分となれば呼び出しは原則なくなる
微罪処分となった後に、同じ事件について再度呼び出されることは原則なくなります。そのため、捜査機関からの電話に怯えて過ごす必要はありません。
ただし、取り調べで嘘をついていたことが発覚した場合や、別の余罪(他の犯罪)が見つかった場合には、再度捜査対象となり呼び出しを受ける可能性があります。
微罪処分の要件・判断基準とは?
微罪処分は、すべての軽微な犯罪に自動的に適用されるものではありません。警察が個別具体的な事情を総合的に考慮したうえで、例外的に認める処分です。
そのため、どういった事件が微罪処分となるのかは非公開です。要件は検察庁と各都道府県警察の協議で定められ、地域の犯罪発生状況などを考慮するため、全国一律ではなく都道府県ごとに若干の差異が生じます。ここでは、実務上重視される要件・判断基準をわかりやすく解説します。
(1)犯罪が軽微であること
最も重要な判断基準は、犯罪の内容が軽微であるかどうかです。犯罪の内容が比較的軽微であれば、微罪処分が選択される可能性があります。窃盗や万引きなどの財産犯では、被害額がおおむね2万円以下といわれており、高額商品や多額の金銭を盗んだ場合は微罪処分は難しいでしょう。
窃盗や万引き以外にも、その被害が比較的軽微だと判断されれば、微罪処分の見込みは高まります。暴行事件で例をあげるなら、喧嘩をしていてつい胸倉を掴んだもののすぐに手を離した場合などがあげられるでしょう。
(2)初犯または前歴が少ないこと
被疑者の前歴・前科の有無は、微罪処分の可否を判断するうえで重要な要素です。原則として初犯であることが、微罪処分の前提とされています。
前科や前歴がある場合には、反省が不十分で再犯のおそれがあると評価されやすく、警察は検察官送致を選択するのが一般的です。特に同種犯罪の前歴がある場合には、微罪処分が認められる可能性は低くなります。
(3)被疑者を監督する人がいること
犯罪捜査規範にも定められている通り、身元引受人の存在は絶対に必要です。
身元引受人には次のような人が当てはまります。
身元引受人として認められやすい人
- 家族・親族
- 会社の上司・雇い主
- その他、被疑者を監督できる立場の者
微罪処分となるには、身元引受人に警察署まで来てもらい、身元引受書を記入してもらう必要があります。身元引受人が担う具体的な役割や、身元引受人になれる人の条件については『身元引受人の条件や必要な場面とは?逮捕されたら家族ができること』の記事をご覧ください。
なお、弁護士が身元引受人になることも可能です。家族や会社の人に事件のことを知られたくないという事情がある方は、弁護士への依頼も有効でしょう。
(4)被疑者が深く反省していること
警察は、被疑者の反省の態度を非常に重視します。「素直に事実を認めている」再犯防止の意思が明確であるといった点が、事情聴取の中で確認されます。
形式的な謝罪ではなく、真摯な反省があるかどうかが判断されます。
(5)示談・被害弁済が適切に行われること
微罪処分を目指すうえでは、示談や被害弁済が適切に行われていることが極めて重要です。被害弁済の内容は、被害品の代金に限られず、事案によっては営業損失やケガをさせた場合の治療費、通院交通費などが含まれることもあります。
示談・被害弁済は、いずれも被疑者の反省や責任の取り方を示す重要な事情であり、微罪処分として事件を終結させるための大きな判断材料となります。
(6)社会的影響・再犯のおそれが低いこと
最後に、再犯のおそれが低いことや、社会的影響の大きさも重要な判断要素となります。具体的には、今後同様の行為を繰り返す可能性が低く、社会生活全体を考慮しても刑事処分を科すことが相当でないと判断される場合には、微罪処分が選択されやすくなります。
たとえば、学生や会社員など、刑事処分によって学業や職業に重大な支障が生じるおそれがある場合には、その影響の大きさも考慮要素となります。
事件の性質が軽微であり、かつ再犯防止が十分に見込まれるのであれば、社会内での更生を優先すべきと判断され、微罪処分が相当とされることがあります。
微罪処分で得られる3つのメリット
微罪処分は被疑者側にメリットの大きい処分といえます。
それは、(1)微罪処分になると前科がつかない、(2)早期に事件が終了となる、(3)刑罰を受けなくてもよいという3つのメリットがあるからです。
(1)前科がつかない
前科とは、事件が検察官に送致され、起訴された結果、有罪判決が確定した経歴をいいます。
微罪処分は、警察段階で事件が終了し、検察に送致されることがありません。そのため、起訴されることもなく、有罪判決を受けることもないため、前科がつくことはありません。
前科がついていると、「就職や転職で不利になる可能性」「海外渡航に制限がかかる」など、将来にわたってさまざまな不利益を受けるおそれがあります。
微罪処分は、こうしたリスクを根本的に回避できる点で、大きなメリットがあるといえるでしょう。
(2)早期に事件が終了となる
微罪処分となった場合、その時点で事件は終了します。以後、警察や検察から呼び出されて取り調べを受けることは、原則としてありません。
また、身柄事件であっても、身元引受人に迎えに来てもらうことで、速やかに警察署から釈放されます。
長期間にわたる捜査や不安定な立場に置かれることを避けられる点も、微罪処分の大きな利点です。
(3)刑罰を受けなくてもよい
微罪処分のメリットとして、刑罰を受けることなく事件が終了する点も挙げられます。
微罪処分は、警察段階で事件を終結させる処分であり、検察官に送致されることがありません。そのため、正式な刑事裁判が開かれることもなく、罰金刑や拘禁刑などの刑罰が科されることはありません。
微罪処分は前科がつかないだけでなく、刑罰そのものを回避できる点でも、被疑者にとって極めて有利な処分であるといえるでしょう。
微罪処分でも注意すべき3つの重要事項
被疑者にとってメリットの大きい微罪処分ですが、(1)前歴はつくこと、(2)身元引受人には事件の内容を隠せないこと、(3)民事責任は残っていることの3つの注意事項があげられます。
(1)前歴を消すことはできない
前歴とは、被疑者として警察の捜査対象となったことをさします。したがって、微罪処分を受けても前歴は残るのです。
今後また警察の取り調べ対象となった場合は、前歴があることはマイナスに働く場合があります。しかし、すでに被疑者として取り調べを受けている時点で前歴はついているので、大きなデメリットではないでしょう。

(2)身元引受人には事件の内容を隠せない
微罪処分にしてもらうには、身元引受人の存在が必須です。
警察署に来てもらうことになるため、家族や職場の上司などが身元引受人になったときには、事件の経緯や内容を知られることになります。
(3)民事責任は残る
微罪処分はあくまで刑事事件としての「刑事罰」を受けなくても良いというだけです。被害者への謝罪や損害賠償は、微罪処分によって免れるものではありません。
被害者が負った損害によっては、果たすべき民事責任は小さいものとはいえない恐れがあります。
微罪処分の対象事件にはどんなものがある?
微罪処分の対象となる犯罪とは?
微罪処分の対象となるのは、都道府県ごとの検察庁が指定する犯罪です。
具体的な罪名は公開されていませんが、一般的に窃盗罪・遺失物横領罪・詐欺罪・暴行罪・傷害罪・賭博罪・横領罪などは微罪処分の対象になるとされています。
ここではアトム法律事務所で微罪処分を獲得した万引きおよび傷害事件の一部を例示します。アトム法律事務所のデータベースには多くの解決事例が掲載されていますので、併せて活用してください。
【事例】窃盗(万引き)・遺失物横領罪が微罪処分になるケース
量刑
- 窃盗罪:10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
- 遺失物横領罪:1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料
窃盗とは、万引きや空き巣、スリなど一般的に泥棒と呼ばれるような行為です。遺失物横領とは、拾った財布からお金を抜いたり、落とし物を拾って自分のものにするなどといった行為をいいます。
窃盗・万引きや遺失物横領で微罪処分を得るには、被害額が少ないこと、初犯であること、真摯に反省していること、被害弁済をすること、相手が許してくれていることなどが必要といえるでしょう。
アトム法律事務所では、万引き事件の弁護活動により微罪処分を獲得した実績があります。被害店舗への謝罪と賠償を適切に行い、許しを得られたことがポイントです。
【アトムの解決事例】万引き(微罪処分・不送致)
同一の店舗において繰り返し万引きをしていたとされるケース。防犯カメラの映像から身柄を特定され警察の事情聴取を受けることになった。窃盗の事案。
弁護活動の成果
被害店舗に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。送致されることなく事件終了となった。
示談の有無
あり
最終処分
微罪処分(不送致)
【事例】暴行・傷害が微罪処分になるケース
量刑
- 暴行罪:2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
- 傷害罪:15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
暴行罪と傷害罪では、傷害罪の方がより重い刑罰が科されます。
事件が起こった経緯や犯情、被疑者の真摯な反省、相手方の怪我の程度や被疑者への処罰感情の有無などが微罪処分を目指すうえでのポイントといえるでしょう。
アトム法律事務所では、傷害事件での微罪処分(不送致)を獲得できた事例があります。
【アトムの解決事例】傷害(微罪処分・不送致)
駅において駅員と揉めていた際、仲裁に入った被害者男性を突き飛ばしたとされるケース。依頼者は当時、飲酒酩酊していた。傷害の事案。
弁護活動の成果
被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。検察に送致されることなく事件終了となった。
示談の有無
なし
最終処分
微罪処分(不送致)
微罪処分にならない要件と犯罪の類型
微罪処分の対象となる犯罪・ならない犯罪は公開されていません。検察庁から各都道府県へと指定されており、地域によっても様々です。
しかし、厳格な刑事手続きのもとに進められた事件であったり、痴漢やわいせつなどの性犯罪は微罪処分の対象外になっています。具体的に説明します。
微罪処分にならない事件
- 逮捕状を基に逮捕された事件
- 告訴・告発・自首のある事件
- 痴漢・わいせつなどの性犯罪事件
逮捕状(令状)を基に逮捕されると微罪処分にならない
一人の身柄を拘束するということは、その人の身体の自由を大幅に奪うことになります。そこで逮捕状(令状)をとるには厳格な刑事手続きが取られているのです。
厳格な刑事手続きに則って裁判所が認めた逮捕状(令状)をもとに捜査された事件については、微罪処分の対象とはなりません。
告訴・告発・自首による事件は微罪処分にならない
告訴や告発によって発覚した事件については、微罪処分の対象にはなりません。つまり、器物損壊罪のような親告罪のケースも微罪処分の対象外です。
また、被疑者自らが警察に出頭して自首をした場合でも、微罪処分の対象とはされていません。反省を示すことはできても、微罪処分で済まされることはないのです。

痴漢・わいせつなど性犯罪は微罪処分にならない
痴漢行為(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反等)やわいせつ罪などの性犯罪は、微罪処分になりません。
検察官送致されることがほぼ確定していますので、微罪処分を狙うのではなく、不起訴処分や略式起訴、あるいは刑罰を軽くすることを目指すべきでしょう。
微罪処分に関するよくある質問
Q.万引きで微罪処分を得るにはどうすればいい?
万引き事件で微罪処分を得るためには、(1)被害店舗に謝罪して被害弁済をすること、(2)取り調べにおいて反省の態度を示すことが重要です。
また前提として、盗んだものの金額が高くないことや、前科・前歴がないことも求められます。
被疑者本人が逮捕されてしまっている状況では、被害店舗に謝罪の気持ちを伝えたり、被害弁済をして示談することができません。そのため、外にいるご家族が弁護士に依頼して、示談交渉を進めることになります。
これらの対応を行っても微罪処分にならないことはありますが、その場合でも不起訴処分を獲得できる可能性が高まるため、なるべく早く行動を起こすことをおすすめします。
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Q.2回目の万引きでも微罪処分になる?
2回目以降の犯行で微罪処分を獲得するのは非常に厳しいです。原則として初犯であることが、微罪処分の前提とされています。
ただし、前回の犯行から長期間(例えば10年以上など)経過している場合や、示談成立などの事情によっては考慮される可能性もゼロではありません。個別の判断については弁護士へご相談ください。
関連記事
・万引きの再犯は懲役実刑?執行猶予中の再犯で再度の執行猶予はつく?
Q.微罪処分が会社に連絡されてバレることはありますか?
原則として、警察から会社へ連絡が行くことはありません。
しかし、公務員の場合は法律上の報告義務があるため職場へ連絡される可能性が高いです。
また、民間企業でも就業規則等の規定や、身元引受人が確保できない場合に職場の上司を呼ばざるを得ないケースでは知られることになります。
微罪処分を獲得するために弁護士に相談しよう
微罪処分を獲得できると、被疑者にとっては、前科がつかない、刑事罰を受けない、早期に事件が終結するといったメリットがあります。
しかし、微罪処分を獲得するためには、警察段階での迅速かつ的確な活動が必要不可欠です。
相手方への示談交渉や適正な被害金額の把握も、本人やご家族・関係者ではなかなか進まないことも多いのが現実です。微罪処分の獲得、前科を防ぐためには弁護士を通じて被害者との示談や被害弁償を尽くすことが大切です。お悩みの方は弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所の弁護士相談のご予約窓口は、24時間365日つながります。
アトム法律事務所では現在、一部の刑事事件で初回30分無料の弁護士相談を実施中です。
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