
在宅事件の流れと逮捕事件の流れは異なります。逮捕されると一瞬にして生活が変わり、家族の不安も大きくなります。それに比べると、在宅事件は仕事や学校を休む必要がなく、すぐに弁護士に相談する必要を感じない人が多いのが実情です。しかし、在宅事件はいつ逮捕事件に切り替わるかわかりません。起訴される可能性もあり、早い段階で対策をしておく必要があります。
警察から呼び出しを受けたときには、在宅事件であってもすぐに弁護士までご相談ください。この記事は、在宅事件の実際について詳説しています。ぜひ参考にしてみてください。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
在宅事件の流れ|逮捕・勾留の流れとは全く違う
在宅事件の流れ|在宅事件とは?
在宅事件とは、身柄拘束(逮捕・勾留)されずに日常生活を送りながら捜査や裁判を受ける刑事事件です。
刑事事件では、検挙(被疑者が特定)されたすべての犯罪が逮捕されるわけではありません。犯罪の嫌疑があったとしても、逃亡や罪証隠滅のおそれがなければ、身柄拘束されずに在宅事件になります。

在宅事件には、①そもそも逮捕されずに最初から在宅で捜査が進められるケースと、②一度逮捕・勾留された後に釈放されて在宅事件に切り替わるケースがあります。
在宅事件になると、警察は被疑者を何度か呼び出して取り調べを行い、十分な捜査が終わると捜査書類を検察に送って事件を検察に引き継ぎます(いわゆる書類送検)。日常生活を送りながら捜査が進むため、手続きの進捗はなかなか把握できませんが、警察から「次からは検察の呼び出しがあります」などと伝えてもらえるケースもあります。
事件を引き継いだ検察官は、自らも直接被疑者を呼び出して取り調べるなど追加の捜査等をした上で事件を起訴するか不起訴にするか判断します。在宅のまま起訴されれば、刑事裁判にも自宅から出廷することになります。
在宅事件と身柄事件の違い
在宅事件 | 身柄事件 | |
---|---|---|
逮捕 | なし | あり |
取調べ方法 | 呼び出し | 留置施設で拘束 |
学校や会社 | 行ける | 行けない |
起訴 | 可能性あり | 可能性あり |
在宅事件の捜査期間
逮捕事件と違って、在宅事件の捜査期間には決まりがありません。そのため、在宅事件の捜査は長引くケースがあり、場合によっては1年以上も捜査が行われることがあります。
もっとも、警察の捜査段階で1~2か月程度、事件が検察に送られてから1~2か月程度で終わる事件が多いイメージです。事件の内容によっては、在宅事件でも1ヶ月程で刑事処分が決まり事件が終了することもあります。
在宅捜査は、軽微な犯罪で行われることが多いです。しかし中には不同意わいせつ罪などの重い刑罰が予定されている犯罪でも在宅捜査になることもあります。逮捕の必要がないケースでは身体拘束は行われず、捜査を受けながらも日常生活を維持できるのです。仕事や学校を休むことなく、呼び出しのあったときに呼び出しに応じるだけでよいので、生活への支障は最小限となります。逮捕されるか在宅事件として扱われるかは、当事者にとって大きな違いがあるでしょう。
在宅事件で警察から呼び出しを受ける回数は?
在宅事件では、警察から何度か呼び出しをうけて警察に行くことになります。事件当時のことを何度も確認され、同じ質問を繰り返し受けることもあるでしょう。
単純な事件で犯行を認めているのであれば1~2回の取り調べで、検察に引き継がれることが多いです。
しかし、警察から呼び出しを受ける回数は、事件の内容や捜査の進展具合によります。警察が証拠を収集して検察官に送致をしたとしても、補充捜査として必要があれば、警察に呼び出しを受けることもあります。
警察に呼び出しを受けたときは、基本的には素直に応じることをおすすめします。理由があり日程変更を希望するときには、担当警察官に事情を説明し、話を通しておくことが必要です。何も言わずに呼び出しの日に行かなければ、逃亡したと思われることもあり、逮捕の可能性が高まってしまいます。
警察による事情聴取(取調べ)を受ける前には事前準備が欠かせません。関連記事『警察の事情聴取(取調べ)をどう乗り切る?不利にならない対応と今後の流れ』も参考にして、どういった対応や返答をすると不利になりづらいのかを知っておきましょう。
在宅事件の検察官の取り調べの回数は?
送致後は、検察官から呼び出しを受け、取り調べを受けることになるでしょう。在宅事件での検察官の取り調べは、1回で済むことも多いですが、何度も繰り返し行われることもあります。検察官は、事件を起訴するか不起訴にするかの処分を検討しなければなりません。十分な証拠をもとに刑事処分を決めるため、当事者である被疑者の取り調べは慎重に行われます。
検察官は警察から引き継いだ資料をもとに、被疑者を取り調べます。被害者からも話を聞き、事件の真相究明にあたることもありえます。
取り調べの回数が重なると、検察官がどのようなことを知りたがっているか、事件をどのように読んでいるかが分かるものです。被疑者は取り調べの内容を詳しく弁護士に話し、弁護士からアドバイスをもらいながら捜査を受けるようにしましょう。
検察に事件が起訴されてしまえば、有罪率99.9%以上といわれる刑事裁判が始まります。不起訴を目指すのであれば遅くとも検察の呼び出し前には弁護士に相談すべきでしょう。検察の取り調べで処分を告げられてからでは手遅れになってしまうおそれがあります。
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・検察庁から呼び出されたら不起訴は無理?|呼び出しの理由と対応方法
在宅事件での被疑者の起訴率は低い?
刑事事件の起訴率(不起訴率)のカラクリとは
「在宅事件は起訴されにくい事件だ」と考える方がいるかもしれません。しかしその理解は誤りです。
起訴か不起訴かを決するのは事件の内容ですが、逮捕事件と在宅事件の違いは、事件の内容ではなく被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがあるかどうかの違いです。そのため、在宅事件かどうかは起訴・不起訴に直接的に関係しているわけではありません。
もっとも、在宅捜査に時間がかかっていて、その間に被害者対応(謝罪・示談)が完了し、結果的に不起訴処分になるということはあります。つまり、結果的に在宅事件が起訴率を低くすることはあっても、「在宅事件だから起訴されにくい事件だ」とはいえないのです。
同じように、逮捕事件だからといって、ただちに起訴される可能性が高いともいえません。適切な弁護活動を行うことで、起訴の可能性を低くすることが可能です。被害者対応を迅速に行うことで、不起訴獲得を目指すことができます。家族が逮捕されたときには、「起訴されてしまう」「刑事裁判になってしまう」と諦めることなく、すぐに弁護士に相談することが大切です。
在宅事件でも検察官は起訴する
在宅事件でも、検察官が起訴しないとは限りません。逮捕の必要がない場合でも、在宅捜査で証拠を収集したうえで、起訴が相当と考えれば検察官は起訴処分を行います。たしかに同居の家族が存在し、定職についているなどの事情があれば、身体拘束されずに在宅で捜査を受けることがあります。しかし、在宅事件だからといって、起訴されないわけではなく、収集された証拠から刑事処分は決められるのです。
在宅事件で起訴されると、その後の刑事裁判も自宅から出廷することになります。決められた期日に自宅から裁判所に向かわなければなりません。ただし在宅事件では、裁判期日の予定を調整すること以外、仕事や学校に影響することは少ないと考えてよいでしょう。
在宅事件で起訴されると起訴状が届きます。起訴状が届いたら刑事裁判に向けて準備をしなくてはなりません。関連記事では起訴状が届いたら何をすればいいのか、時系列ごとに解説していますので参考にしてください。
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・起訴状が届いたらどうなる?取るべき対応と起訴後の流れを解説
在宅事件での「不起訴」は「連絡こない」が当たり前
在宅事件では、捜査が終了したことや不起訴処分になったことは本人に知らされません。捜査機関の取り調べを受けて、しばらく連絡がこないと思っていたら、知らぬ間に不起訴になっていた、ということがあるのです。
検察官が最後の取り調べで「不起訴の見込みです」「近く不起訴になるでしょう」と言ってくれる場合もありますが、いつ不起訴になったかは、直接検察官に確認しなければわかりません。
刑事事件に詳しい弁護士であれば、不起訴処分のタイミングを正確に把握するため、適宜検察官に確認をとります。そして、不起訴になったことを示す「不起訴処分告知書」を取得し、不起訴で事件が終了したことを確認します。
コラム|在宅事件でも報道される?

「在宅事件は報道されない」というのは間違いです。例えば、「〇〇が書類送検された」というニュースなどは在宅事件の報道です。
確かに、社会的にインパクトがある逮捕事件のほうが報道されやすい傾向にあるでしょう。しかし、事件の内容が社会の関心を集めるものであれば、在宅事件でも報道されることはあります。
報道はあくまで、マスコミの判断で行われますので、報道されるされないの明確な基準が決まっているものではありません。もっとも、在宅事件では報道されたとしても、実名報道はされにくい傾向にあります。
また、逮捕事件で報道されるときには、送致の際に警察署から出たところをマスコミに撮影され、顔の映った画像や動画が出回ってしまうリスクが高いですが、在宅事件では警察に連れられているところを撮影されることがないため、悪い印象を与える画像や動画がネットに流れる危険はないといえます。
在宅事件で不起訴を獲得するためには?
被害者対応を適切に行い示談を締結することが、在宅事件で不起訴処分を獲得するための重要なポイントです。
在宅事件では、逮捕事件と異なり、被疑者は自由に身動きをとることが可能です。弁護士との打合せもしやすくなるため、在宅捜査の間は被害者対応を迅速に行うことができます。
その結果、不起訴獲得の可能性が高くなるのです。
なお示談には示談金が必要な場合がほとんどです。お金の用意をするにも、身動きがとれる、とれないとでは大きな違いがあります。
在宅事件で示談する方法

示談は、基本的には弁護士が被疑者に代わって行います。弁護士が代わって行うのは、被害者への配慮という点と、被疑者に証拠隠滅の機会を与えないという点からです。しかし、場合によっては、被疑者本人を連れて示談に行き、被疑者とともに謝罪を行うこともあります。これは在宅事件でなければ行うことができません。
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在宅事件で警察・検察からの呼び出しにどう対応するか
在宅事件では、警察や検察官から呼び出しを受け、取り調べを受けるために出頭します。このとき、取り調べでは何を聞かれ、どう回答するのがよいか、不安に思うことでしょう。取り調べで回答したことは記録に残り、裁判で不利な証拠として使われる可能性もあります。一回一回の取り調べで、どう回答するかを事前に弁護士と打合せをしておくことで、不利な立場になることを少しでも回避することができます。場合によっては黙秘をすべきシーンもあるかもしれません。
警察・検察対応を慎重に行うためには、弁護士のサポートを受けつつ捜査を受けていくことをおすすめします。捜査は起訴に向けて行われるものです。不起訴の可能性を少しでも高めるためにも、弁護士への相談は重要です。
取り調べの正しい応じ方|弁護士からのアドバイス
取り調べでは、捜査機関は少しでも多くの情報を被疑者から聞き出そうとします。取り調べ担当者はあの手この手で聞き方を変えて被疑者に供述を迫ってくるでしょう。
しかし、黙秘をすべき質問かどうかという判断は被疑者本人では難しいケースが多いです。回答に苦慮したとき、回答をしても問題ないか不安になったときには、弁護士に相談した上で対応するようにしてください。
なお、取り調べの部屋に弁護士が入室することはできません。そのため、必要があるときには、弁護士は取調室の外で待機し、休憩時間に打合せを行うことがあります。一度誤った受け答えをしてしまうと、あとで取り返しがつかないことになる場合もあります。取り調べを「今さえ乗り越えられたら」と思って対応するのではなく、後の刑事処分、刑事裁判を見越して対応することが大切です。
在宅事件の無料相談はアトム法律事務所まで
在宅事件は逮捕事件と比べると、緊迫感に欠けます。通常の日常生活に大きな変更が生じないため、「特に弁護士のサポートは必要ない」と思われるかもしれません。また、在宅事件では国選弁護士を利用することができないので、ご自身で弁護士を探さなければならないことも、弁護士への相談が遅れてしまう理由かもしれません。
しかし、在宅事件でも、いつどの段階で逮捕されるかわかりませんし、起訴される可能性も十分あります。検察官から起訴すると告げられた後に慌てて弁護士へ相談しても、もはや手遅れになってしまっているということもあります。そのため、捜査を受けているのであれば、すぐに弁護士に相談することを強くおすすめします。
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