自動車を運転していて不幸にも死亡事故を起こしてしまった場合、弁護士に相談するかどうかは悩むところかと思われます。
実は、自動車を運転していて死亡事故を起こしてしまった場合、そのことは単なる交通事故というだけでなく犯罪にもあたります。
自動車を運転していて死亡事故を起こしてしまった場合にはどのような犯罪にあたるのでしょうか。また、死亡事故を起こした場合に弁護士に相談すると弁護士はどのような対応を取ってくれるのでしょうか。
この記事では、死亡事故がどのような犯罪にあたるのか、死亡事故で弁護士に相談した場合に弁護士が取る対応などについて解説を加えます。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
死亡事故はどのような犯罪にあたるのか
行為 | 犯罪 | 法定刑 |
---|---|---|
不注意の事故で人を死なせた | 過失運転致死罪 | 7年以下の懲役、7年以下の禁錮、または100万円以下の罰金 |
故意に一定の危険な運転を行い人を死なせた | 危険運転致死罪 | 1年以上20年以下の懲役 |
不注意の死亡事故なら過失運転致死罪が成立する
自動車の交通事故によって被害者を死亡させてしまった場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷処罰法)違反となります。運転中の不注意によって死なせてしまったのか、それとも故意の危険な運転行為によって死なせてしまったのかによって成立する罪は異なります。
運転中の不注意によって交通事故を起こして被害者を死亡させてしまった場合、自動車運転死傷処罰法5条違反の罪(過失運転致死罪)が成立します。過失運転致死罪の法定刑は、7年以下の懲役、7年以下の禁錮、または100万円以下の罰金とされています。
自動車の死亡事故が過失運転致死罪となる典型的な例は、自動車を運転していて交差点を右折する際に横断歩道上を歩いていた被害者を誤って見落として自動車でひいて死亡させてしまった場合などがあります。
過失運転致死罪は、故意ではなく不注意によって交通事故を起こして被害者を死亡させてしまった場合に成立する罪です。これに対して、単なる不注意ではなく故意に一定の危険な運転行為を行なっていた場合には過失運転致死罪ではなく危険運転致死罪が成立することもあります。
飲酒運転やあおり運転などの場合には危険運転致死罪が成立することも
故意に一定の危険な運転行為を行った結果として交通事故を起こして被害者を死なせてしまった場合、自動車運転死傷処罰法2条違反の罪(危険運転致死罪)が成立します。危険運転致死罪の法定刑は、1年以上20年以下の懲役とされています。危険運転致死罪の場合、過失運転致死罪の場合と異なり罰金刑はありません。このように、危険運転致死罪は過失運転致死罪と比べて非常に重い罪とされています。
一定の危険な運転行為とは、飲酒や薬物の影響により正常な運転が困難な状態で運転した場合、制御困難な高速度で運転した場合、自動車を制御する技能がないのに自動車を運転した場合、あおり運転のように無理な幅寄せや割り込みなどの危険な運転行為をした場合、カーチェイスのように赤信号をわざと無視した上で危険な速度で運転した場合などがあります。
危険運転致死罪が成立する典型的な例は、危険なあおり運転をして被害者の車に無理な幅寄せや割り込みなどを行いその結果として交通事故を起こして被害者を死亡させてしまった場合などがあります。
このように、危険運転致死罪が成立する範囲は限定されており、故意に一定の危険な運転行為を行ったことが必要とされているため、単に不注意で交通事故を起こしたという場合には危険運転致死罪が成立することはありません。
危険運転致死罪は社会の注目を集める犯罪
危険運転致死罪は近年マスコミの報道によって社会の注目を集める犯罪となっています。あおり運転などによる悲惨な死亡事故が発生したことで危険な運転行為が問題視されるようになり、マスコミも危険運転致死罪が成立し得るような死亡事故については大々的に報道するようになっています。
このことから、危険運転致死罪が成立する可能性のある死亡事故の場合には単なる交通事故以上に弁護士に相談してマスコミ対応も含めた適切な対応方針を取ることが不可欠であるといえます。
死亡事故で弁護士に相談するべき場合とは?
死亡事故を起こした場合には必ず弁護士に相談するべき
死亡事故を起こした場合、弁護士に相談するべきかどうか悩むかもしれません。しかし、死亡事故を起こした場合には必ず弁護士に相談するべきです。なぜなら、死亡事故はそれ自体が過失運転致死罪や危険運転致死罪といった犯罪にあたるものであり、弁護士による適切な弁護活動が欠かせないからです。弁護士による適切な弁護活動により、不起訴処分を目指したり起訴されたとしてもできるだけ軽い刑となる判決を獲得したりすることが可能となります。
死亡事故を起こした場合の相談先として他に保険会社などが思い浮かぶかもしれません。たしかに、事故に関連して保険会社と連絡を取る必要が生じることはあるでしょう。しかし、保険会社は事故に関する保険金の支払手続きを行ってくれるに過ぎません。保険会社に相談するだけで終わらせるのでなく必ず弁護士にも相談するようにしましょう。
死亡事故を起こしたらできるだけ早く相談を
死亡事故を起こした場合には、できるだけ早く弁護士に相談するべきです。死亡事故を起こした場合、通常は警察による捜査がすぐに始まります。捜査に適切に対応するためには、弁護士に相談してアドバイスを受けることが欠かせません。
弁護士への相談が遅れてしまうと、弁護士のアドバイスを受けることができなかったために自首という選択肢を取ることができなかったり警察の取調べにおいて適切に話すことができなかったりするなど不利益が生じる可能性もあります。また、マスコミが大々的に報道するような社会の注目を集める死亡事故の場合には、自分だけでは適切なマスコミ対応を取ることができないということもあり得ます。
死亡事故への対応に慣れた弁護士に相談を
死亡事故について弁護士に相談する場合、どの弁護士に相談してもいいというわけではありません。弁護士ごとに得意分野が異なるため弁護士によっては死亡事故への対応に慣れていない場合もあり、そのような弁護士では適切な対応を取ることができないということもあります。
死亡事故で弁護士に相談する場合には、必ず死亡事故への対応に慣れた弁護士に相談するようにしましょう。死亡事故への対応に慣れた弁護士であれば、捜査対応や刑事裁判対応だけでなく、被害者遺族への対応やマスコミへの対応も適切にこなしてくれます。
死亡事故で弁護士に相談した場合の対応方針
慰謝料や示談金の支払など被害者遺族への対応
死亡事故を起こした場合、多くの場合には死亡した被害者の遺族がいるはずです。このような場合には、被害者の遺族に対して死亡事故の慰謝料や示談金の支払などを行わなければなりません。
死亡事故で弁護士に相談した場合には、弁護士は依頼者を代理して示談交渉を行い慰謝料や示談金の支払いを行います。示談交渉を通じて慰謝料や示談金を受け取ってもらうことができ、被害者の遺族から加害者を許し厳罰を望まないという内容の示談書を書いてもらうことができれば、このような示談書は不起訴処分につながったり刑事裁判となった場合に刑を軽くする材料となります。
なお、死亡事故の場合に被害者の遺族に対して支払わなければならない慰謝料の相場は通常2000万円~2500万円程度であり、被害者が一家の支柱である場合には3000万円程度にまで達することもあります。このように慰謝料の額が非常に高額になることから、具体的にどの程度の額を支払うべきなのか、どのように示談を進めていくべきなのかなどについても、弁護士に相談することが欠かせません。
捜査や刑事裁判への対応
死亡事故を起こしてしまった場合、警察による捜査などの刑事手続きが始まります。警察による捜査では、死亡事故の原因などを明らかにするため、取調べや実況見分などが行われます。
弁護士が行う捜査への対応としては、まず依頼者に対して取調べでどのように話せばいいのかアドバイスをするということがあります。また、弁護士が捜査を担当する検察官と面会したり意見書を作成したりして不起訴処分とするように働きかける活動を行うこともあります。
残念ながら捜査の結果として起訴すべきと判断されれば、刑事裁判にかけられることになります。この場合には、弁護士は法廷の場で裁判官に対して依頼者にとって有利な事情を伝えて刑を軽くするように活動するということもあります。
社会の注目を集める死亡事故の場合にはマスコミ対応も
死亡事故で弁護士に相談した場合、弁護士が行うのは示談交渉や捜査対応だけとは限りません。危険運転致死罪が成立するような死亡事故を起こしてしまった場合や死亡した被害者が複数だったりまだ幼かったりするなど結果が重大な場合のように、社会の注目を集める死亡事故を起こしてしまった場合にはマスコミによる大々的な報道がなされることも想定されます。
このような場合、すぐに弁護士に相談して依頼をすることで、弁護士が依頼者に代わってマスコミ対応の窓口となり誤った情報に基づいた報道がされないように対応を取ることが可能となります。死亡事故の内容によってはマスコミの追及が厳しくなることも予想されることから、弁護士に依頼してマスコミ対応の窓口となってもらい自己の言い分を適切に発信することも重要となるでしょう。