「逮捕されたが前科がついてしまうのか」「逮捕歴が会社にバレるのではないか」など、逮捕をされたことで心配されている方もいるのではないでしょうか。
混同される方も多いですが、逮捕歴(前歴)と前科は違います。それぞれの不利益は全く異なり、仕事や海外旅行への影響も異なります。そこで今回は、逮捕歴とは何か、前科とどのように異なるのか、どういうルートでバレるのか、逮捕歴を防ぐために弁護士に相談するメリット等をご説明します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
逮捕歴(前歴)と前科は違う!
逮捕歴(前歴)とは|逮捕された時点でつく
逮捕歴とは、刑事事件の被疑者(いわゆる容疑者のことですが、法的には被疑者といいます)として警察に逮捕されたことをいいます。前歴は、刑事手続きに関与したことを言い、逮捕に限らず被疑者として捜査対象になった場合につくので、逮捕歴より広い概念で、逮捕歴は前歴の一部という関係にあります。
逮捕歴(前歴)は、逮捕された時点でつきます。そのため、捜査の結果不起訴処分になり前科がつかなかった場合や、裁判で無罪になっても、逮捕歴(前歴)は残ります。逮捕歴(前歴)は、警察や検察の捜査機関に、資料として残りますが、一般の人は見ることはできません。
前科とは|刑事裁判で有罪になった時点でつく
前科とは、刑事裁判で有罪の確定判決を受けたことをいいます。逮捕されれば前科がつくと誤解している人もいますが、これは間違いです。ただし、日本の刑事司法上、検察官が起訴(刑事裁判にかけること)すれば約99%が有罪になるので、起訴されればほぼ確実に前科がつくと考えてよいでしょう。
前科がつく有罪判決には、死刑、懲役刑、禁錮刑、罰金刑、拘留・科料があります。執行猶予がついた場合や、病気を理由に刑が免除された場合など、刑務所に入らずに済んでも前科はつきます。前科は、捜査機関や裁判所の記録、市区町村の犯罪人名簿に記載されますが、一般人は見ることはできません。
逮捕歴や前科は何年か経ったら消える?
逮捕歴や前科がついた事実自体は消えることはありません。しかし、前科については、一定期間が経つと、「法的な前科」として執行猶予の獲得に影響する、「刑の言い渡しの効力」が消滅します。刑の言い渡しの効力は、禁錮以上の場合は10年、罰金以下の場合は5年で消滅します。
市区町村役場に保管されれている「犯罪人名簿」、いわゆる前科者リストは、執行猶予期間が満了し、刑の言い渡しが消滅すれば利用されないといわれています。また有罪判決を受けた裁判記録は、刑の重さによって1年から100年と保管期間が定められています(刑事確定訴訟記録法2条)。
逮捕歴と前科がつく割合はどれくらい?
逮捕歴や前科がつく割合は、犯罪によって変わります。アトム法律事務所が過去に受任した刑事事件の統計によれば、例えば痴漢事件では、逮捕歴がついた割合は55%、起訴された割合は12%(在宅事件も含む)です。日本では起訴後の有罪率が約99%であることから、起訴されれば前科がつくと考えて構いません。
他の例を挙げると、窃盗事件では、逮捕歴がついたのは50%、起訴された割合は36%(在宅事件も含む)です。また、大麻事件では、逮捕歴がついたのは90%、起訴された割合は68%(在宅事件も含む)です。このように、逮捕歴がつく割合や前科がつく割合(起訴される割合)は、犯罪の性質により大きく変わるので、前科を避けたい場合は早急に弁護士に相談することをおすすめします。
逮捕歴の調べ方|逮捕歴がバレるケースとは?
逮捕歴や前科を調べる公的手段は?
逮捕歴(前歴)は警察や検察の捜査機関に資料として残り、前科は、捜査機関や裁判所の記録に加え、本籍のある市区町村の犯罪人名簿に記載されます。どちらも、個人のプライバシーに関する情報として厳格に管理され、第三者である一般人や企業はもちろん、本人もその情報を知ることはできません。
というのも、前科・逮捕歴(前歴)は、捜査機関等が、犯罪捜査や被疑者がまた犯罪を起こした場合の量刑の資料として利用することが予定されているからです。しかし、一般人が逮捕歴や前科を照会することはできないとはいえ、以下のようなケースでは、逮捕歴がバレる場合があります。
逮捕歴 | 前科 | |
---|---|---|
捜査機関 | 調査できる | 調査できる |
一般人 | 調査できない | 調査できない |
①逮捕時の実名報道で逮捕歴がバレる
逮捕されると、事件が実名報道されるケースがあります。実名報道は、警察・検察がマスコミに実名を含む事件情報を伝えるかを判断し、次にマスコミがそれを報道するかを判断するという2つの段階を経ますが、明確な基準があるわけではなく、警察とマスコミの判断に委ねられています。
実名報道されやすい事件には、事件の重大性・公共性・話題性が高い、被疑者の職業の知名度・社会的地位・信用度が高い等の特徴があります。具体的には、教師のわいせつ行為、公務員の横領、上場企業社員の薬物事件などです。弁護士に警察に交渉してもらうことで実名報道を回避できる可能性があります。
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②地元やネット上の検索結果で逮捕歴がバレる
ニュースや新聞で実名報道がされなくても、地元で逮捕されたことが話題になり、逮捕歴がバレることがあります。特に、警察の請求で裁判官が発行した逮捕状に基づいて、数人の警察官がパトカーで自宅に来て逮捕するようなケースでは、周囲の注目を集めやすく、逮捕がバレやすい類型といえます。
また、実名報道がされなくても、一般のネットユーザーによって、逮捕の時の僅かな情報から被疑者の実名が特定され、ネットの掲示板やまとめサイト等に書かれることが少なくありません。また、逮捕時のニュースが、ニュースサイトが消えてもネット上にキャッシュとして残り、バレることもあります。
③探偵事務所や興信所で逮捕歴がバレる
交際や結婚に際して、本人だけではなく、家族や親族が交際相手に前科や逮捕歴(前歴)がないか、探偵事務所や興信所に依頼して調べるケースがあります。逮捕歴等は、戸籍や住民票、マイナンバーなどに載ることはありません。そのため、探偵事務所や興信所も前科や前歴自体を照会することはできません。
ただし、探偵事務所や興信所は独自の調査網を持ち、リサーチ力にも長けています。聞き込みや昔の新聞記事などから、過去の逮捕歴等がバレることもあります。前科を隠して結婚する人もいると思いますが、性犯罪や殺人など重大犯罪を隠していた場合は、離婚原因として考慮される可能性があります。
逮捕歴や前科の情報をネット上から削除するために
実名報道などのネット上の逮捕歴や前科の情報は、適切な対応をとることで削除できる可能性があります。
一つは、逮捕歴や前科を掲載しているサイトの運営者と交渉して、情報の削除を依頼する方法です。前科や逮捕歴などは重大なプライバシー情報ですから、削除依頼をすることで記事を消してもらえる場合があります。
ただし、ニュースが個人ブログや掲示板、SNSなどに拡散されてしまうとすべて削除することは事実上不可能です。そのため、ネット上の報道対応は迅速にしなければなりません。弁護士などの専門家に相談し、影響力の強い記事から対処をしていくことで、早期解決への道が開けます。
もう一つは、逮捕歴や前科の情報が載るサイトを、人の目に触れさせないようにする方法があります。具体的には、被疑者の名前をインターネットで検索した場合にニュース記事などが上位に表示されないようにします。
このような対応はプロの力を借りないと難しいでしょう。ウェブの知識と刑事事件に強い弁護士に相談することをおすすめします。
逮捕歴があるとどんな不利益がある?
逮捕歴のデメリットは再び刑事手続にかけられたときに処分が重くなる可能性があること
逮捕歴があると、刑罰が重くなる可能性があります。前科、逮捕歴(前歴)があることは、再犯の恐れがあるということで、刑罰の重さ(量刑)を決める際に不利な事情として考慮されることになっているからです。特に、同種の前科・逮捕歴(前歴)の場合は重く考慮されます。
ただし、前科と異なり、逮捕歴(前歴)の場合は、考慮される割合は低くなります。また、10年以上前の古い前科・逮捕歴(前歴)はあまり重く考慮されないことが多いです。もし、何らかの犯罪を犯して前科・逮捕歴(前歴)がある場合は、それが古い事件であっても早急に弁護士に相談しましょう。
逮捕歴が発覚し解雇・退学になることがある?
逮捕歴は、不起訴や無罪になった場合でもつくので、発覚したからといって必ず解雇や退学になるとは限りません。前科と異なり、公務員の懲戒事由や、教員、弁護士、医師など一定の資格職の欠格事由にもなりません。ただし、就業規則に逮捕されたことが解雇事由に規定されている場合は注意が必要です。
逮捕歴が発覚して解雇や退学を避けたい場合は、不起訴になった場合は「不起訴処分告知書」という書面を取り寄せ、有罪になったわけではないこと、前科がないことを会社や学校に理解してもらうことが必要です。本人が言っても理解されないことが多いので、弁護士に依頼することをお勧めします。
逮捕歴が就職に不利になる?履歴書に書く?
逮捕歴を会社が照会することはできません。そのため、企業が逮捕歴を知ることはなく、就職への影響は少ないといえます。また、自主的に申告する義務はなく、特に前科と異なり逮捕歴は「賞罰」にあたらないため、履歴書に書かなくとも経歴詐称になりません。
ただし、ネットの情報から逮捕歴が会社にバレることもあります。その場合は選考に不利に働く恐れも否定できません。正直に話すことがかえってプラスに働くかどうかは、業種や社風により変わります。企業研究をしっかりしたうえで、心配な場合は弁護士に相談してアドバイスを受けても良いでしょう。
逮捕歴があっても海外旅行できる?
逮捕歴があっても海外旅行をすることができます。逮捕歴があってもパスポートは無効になりませんし、パスポートを取得する際の制限も受けません。ただし、アメリカについては、逮捕歴(前歴)も申告を要するとされ、容疑によってはビザの発給が拒否されることもあるので、事前に大使館に確認しましょう。
逮捕歴にとどまらず前科がつくと、一定の犯罪ではパスポートの発給制限を受けたり、渡航先のビザ発給制度によってはビザの発給が受けられない場合もあります。特に仕事で海外に行く場合は、逮捕されても前科がつかないよう、刑事事件に強い弁護士に依頼し充実した弁護活動を依頼することが重要です。
逮捕歴 | 前科 | |
---|---|---|
量刑 | 軽く考慮される | 重く考慮される |
就職 | 影響小 | 影響大 |
海外旅行 | 制約なし | 一部制約あり |
逮捕や前科を避けたいという相談は弁護士へ
逮捕や前科を避けたい場合は、少しでも早く弁護士に依頼することがポイントです。犯罪をしてしまっても、弁護士に依頼し、被害届を出される前に相手方と示談して解決することで、刑事事件化を防いで逮捕を回避できる可能性が高まります。また犯罪の類型によっては自首することで逮捕を防げることもあります。
また、逮捕されても、弁護士に依頼することで不起訴処分を獲得し、前科を避けられる可能性があります。具体的には、相手方と示談をし、その結果を検察官に伝えて交渉をしてもらいます。こうした交渉は弁護士でないとできません。逮捕や前科を避けるには、まずはお気軽に弁護士に相談して下さい。
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