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身元引受人とは?役割と求められる条件、身元引受人が必要となるケースを徹底解説

身元引受人

刑事事件における「身元引受人」とは、逮捕・勾留された人(被疑者・被告人)が釈放された後、その人の生活を監督し、捜査や裁判への出頭を確保する役割を担う人のことを指します。

家族、会社の上司、弁護士などが身元引受人になれる可能性があります。

信頼できる人が身元引受人になることで、釈放につながる可能性が高まります。逃亡や証拠隠滅のおそれがない、更生できる可能性が高いと判断されやすくなるからです。

この記事では、身元引受人の定義や役割を分かりやすく解説します。身元引受人に求められる具体的な条件についても紹介しますので、最後までご覧ください。

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身元引受人とは?

身元引受人の定義・役割

刑事事件における「身元引受人」とは、逮捕・勾留された人(被疑者・被告人)が釈放された後、その人の生活を監督し、捜査や裁判への出頭を確保する役割を担う人のことを指します。

法律で厳密に定義された役職ではありませんが、捜査機関や裁判所が「この人がいるなら、逃亡したり証拠を隠したりするおそれは低いだろう」と判断し、早期釈放を認めるための重要な要素となります。

身元引受人の役割

  • 本人が逃亡、証拠隠滅行為を行わないよう注意する
  • 本人が取り調べに応じるよう促す
  • 本人が裁判に出頭するよう促す
  • 本人が更生できるよう手伝う

身元引受人となったからといって、常に被疑者・被告人と行動をともにする必要はありません。

日常生活の中で、可能な範囲で被疑者・被告人の生活状況を把握し、適切に助言・監督を行うことで十分です。

たとえば、被疑者・被告人がどのような環境で生活し、どのような行動を取っているのかを把握していれば、身元引受人としての役割を適切に果たしているといえます。

身元引受人に法的責任はない

身元引受人には、被疑者・被告人の行動に対して法的な責任はありません。身元引受人が果たすべき役割は、あくまで社会的・道義的なサポートにとどまります。

たとえば、身元引受人として監督している被疑者や被告人が証拠を隠滅したり逃亡をしたとしても、身元引受人が刑罰を受けるといった法的責任を負うことはないのです。

法的には、身元引受人がこれらの行為に直接関与していない限り、責任を問われることはないのです。

身元引受人に求められる具体的な条件

身元引受人に求められる条件は、法律上で明確に定められているわけではありません。「身元引受人」という用語自体が法律で定義されていないため、身元引受人に求められる条件も法律で定められていないのです。

もっとも、実務上は「本人をしっかり監督し、逃亡や証拠隠滅を防げるか」という視点で判断され、次のような具体的な条件が求められます。

本人の生活を実際に監督できる人

通常、身元引受人になることができるのは、同居の家族です。同居の家族であれば、被疑者・被告人のすぐそばにいるため、証拠隠滅や逃亡などの不適切な行動に出ないように実際に監視・監督できるからです。

一方、遠方に住んでいる親族などは、基本的に身元引受人になることができません。遠方に住んでいると実際に被疑者・被告人の行動を監視・監督できないからです。

もっとも、同居の家族以外の人が一律に身元引受人になれないわけではありません被疑者・被告人が証拠隠滅や逃亡に及ばないように監視・監督できる人であれば、身元引受人になることができることもあります。

身元引受人として認められやすい人

  • 家族・親族
  • 会社の上司・雇い主
  • 恋人・友人
  • 弁護士

たとえば、会社の上司や雇い主、恋人・友人、弁護士などが状況によっては身元引受人になることができます。

上司や雇い主は、被疑者・被告人の勤務時間が長かったり住み込みで働いていたりして、日常的に本人を監督できる場合に適任とされます。恋人・友人は同居・同棲している、または頻繁に連絡を取り合っている場合に認められることがあります。

弁護士も身元引受人の条件を満たしますが、生活を共にして監督することはできないため、原則他に適任者がいない場合に限られます。

安定した住所・職業があり、長期的な監督が可能な人

身元引受人は、安定した住所・職業があり、長期的な監督が可能な人であることが望ましいとされています。

身元引受人自身の生活が不安定では、本人を監督・支援することは難しいと判断されるためです。

また、本人に対して長期的に関わり続け、必要に応じて助言や支援ができる意思と能力があるかも重要な要素になります。監督義務を果たせるだけの心身の健康状態であることも含まれます。

身元引受人になる方法・手続きは?

身元引受人を立てる場合、単に捜査機関などに口頭で申し出るだけではなく、書面による正式な申し出が必要です。

通常は「身元保証書」や「誓約書」と題した書面を作成し、これを提出します。作成する書面には以下のような事項を記載します。

書面の内容

  • 被疑者・被告人が逃亡や罪証隠滅をしないよう監督・指導すること
  • 捜査機関や裁判所からの呼出しに応じて出頭させること
  • 捜査機関や裁判所の指示に従わせること
  • その他、身元引受人として責任を持って被疑者・被告人を管理する旨

作成した書面は、捜査機関(警察・検察)または裁判所に提出します。書面が受理されれば、正式に身元引受人が立てられたことになります。

身元引受人が必要となるケースは?

身元引受人が必要となるケースは以下の通りです。

身元引受人が必要となるケース

  1. 在宅事件の初回取り調べ後
  2. 逮捕直後・勾留請求前
  3. 保釈申請時
  4. 刑事裁判で執行猶予を狙う場合

(1)在宅事件の初回取り調べ後

被疑者が逮捕されていない「在宅事件」の場合、初回の取り調べなどの際に、捜査機関から身元引受人の選任を求められることがあります。この段階では身元引受人は、「迎え役」としての側面が強いです。

在宅事件で身元引受人が必要となるのは、被疑者が証拠隠滅や逃亡などをせず、捜査機関の呼び出しに応じて出頭することを保証するためです。捜査機関としては、事件を在宅のまま進めるか、逮捕して身柄事件として扱うかを判断する際の一つの材料とします。

身元引受人が信用できると判断されれば、逮捕を回避して在宅のまま手続を進めることが認められる場合があるでしょう。

(2)逮捕直後・勾留請求前

身元引受人が必要とされる場面の一つに、逮捕直後から勾留請求前の段階があります

逮捕後、警察や検察は「逃亡や証拠隠滅のおそれ」があるかどうかを基準に、被疑者を引き続き拘束するために勾留請求を行うかどうかを判断します。勾留は最大20日間の身体拘束を可能とする手続であり、一度勾留が認められると長期間の拘束が続くことになるため、被疑者にとっては極めて重要な局面です。

この段階で、身元引受人の存在は大きな意味を持ちます。身元引受人がいて継続的な監督や指導が期待できる場合、捜査機関や裁判所から「自宅に戻しても逃亡や証拠隠滅の危険が低い」と判断されやすくなります。実際、家族や上司などの身元引受人が確保できていることで、勾留請求を見送って釈放とされるケースも少なくありません

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(3)保釈申請時

裁判所が被告人の保釈を認める場合にも、身元引受人が求められることがあります。

保釈とは、被告人が一定の金額(保釈保証金)を納付し、釈放された状態で裁判を受ける制度です。

身元引受人は、被告人が保釈後に逃亡せず、裁判期日に必ず出廷し、関係者への働きかけなどを行わないよう指導・監督する役割を担います。

裁判所は、身元引受人がしっかりと監督できると判断した場合、保釈の許可を出しやすくなる傾向にあります。保釈の許可を得られた場合、警察などから身元引受人に連絡が行き、身元引受人が警察署などに身柄を迎えに行きます。

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(4)刑事裁判で執行猶予を狙う場合

身元引受人は、判決で執行猶予を得るのにも有益であるといえます。

判決において実刑ではなく、猶予期間を設けて社会内で更生する機会を与える執行猶予が認められるためには、本人を監督する身元引受人の存在がいた方がよいでしょう。

社会内で更生できるかどうかについて、身元引受人がいれば、本人の身元を引き受けて監督をして再犯防止の可能性を高めることができると考えられます。

そのため、身元引受人がいれば、判決の際に実刑を科すよりも身元引受人の監督の下、社会内で猶予を与えるという判断がされやすくなります。

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身元引受人に関するよくある質問

Q.身元引受人は拒否・辞退できない?

身元引受人は強制的な制度ではないため、拒否や辞退することが可能です。

たとえ身元引受人の適性があるとしても、自身が身元引受人になりたくない場合や、身元引受人を断りたいと思った場合には自由に拒否や辞退をすることができます。

Q.身元引受人になったら途中でやめられない?

一度、身元引受人になったとしても、途中で身元引受人をやめることができます。

身元引受人は被疑者・被告人の身元を引き受けることが前提であるため、身元を引き受けることができなくなった場合には、身元引受人をやめることができます。

もっとも、急に身元引受人をやめる場合には、本人に不利益が生じる可能性があるので、他に身元引受人がいないかどうか、やめる前に相談はしたほうがいいでしょう。

Q.身元引受人がいないと釈放されない?

身元引受人の有無は、逮捕後の釈放判断に大きく影響します。

法律上「身元引受人がいなければ絶対に釈放されない」という明文の規定があるわけではありません。しかし、実務運用としては、身元引受人がいない場合に釈放が難しくなることがあります。

そのため、たとえば通常であれば家族などの身元引受人がいることで1〜2日程度で釈放が見込まれるような軽微な事件であっても、身元引受人がいない場合には「監督や生活支援が期待できない」と判断され、逮捕に続いて勾留へと進んでしまうケースが少なくありません。

勾留されると最大で10日、必要とされればさらに延長され最大20日間も身体拘束が続く可能性があり、その間、仕事や家庭生活に大きな支障が生じることになります。

Q.身元引受人と保証人・後見人の違いは?

身元引受人は、保証人や後見人とは異なるものです。

保証人とは、本人に代わって債務の支払いをする人のことを指します。借金をした人が返済できなくなったり、施設の賃料などを滞納した際、本人の代わりに支払いをします。

後見人とは、判断能力が不十分な人の代わりに契約や財産の管理などを行う人のことを指します。認知症や精神障害などで判断能力が衰えた人の後見人を成年後見人といい、親権者がいない未成年者の後見人を未成年後見人といいます。

Q.身元引受人の役割を果たせなかった場合はどうなる?

人の証拠の隠滅や逃亡を許してしまった場合、捜査機関や裁判所からの信用を失ってしまうことになるので、その後も身元引受人になることは難しくなるでしょう。

また、身元引受人が被告人に代わって保釈金を出していた場合、保釈中の本人が証拠の隠滅や逃亡を行ってしまうと、保釈金が没取されて返還されないことがあるので注意が必要です。

まとめ:ご家族が刑事事件で逮捕された方へ

この記事のまとめ

  • 身元引受人とは、被疑者・被告人が逃亡や証拠隠滅しないよう防止、監督する人のこと
  • 被疑者・被告人が逃亡・証拠隠滅しても、身元引受人に法的な責任はない
  • 身元引受人は、被疑者・被告人の逃亡や証拠隠滅を防げる人なら基本的に誰でもなれる

もしも、家族や身近な人が逮捕されてしまった場合、できることは身元引受人になって釈放後の生活を監督していくことです。

逮捕された人がすみやかに元の生活に戻れるようにするには、早期の釈放が鍵を握ります。もっとも、ご自身だけで早期釈放に向けた活動をするのは限界があるでしょう。

弁護士に依頼いただければ、早期釈放に向けた迅速な対応が可能です。

刑事事件でお悩みの方は、弁護士への早期相談をおすすめします。

アトム弁護士の解決事例

こちらでは、過去にアトム法律事務所で取り扱った刑事事件のうち、身元引受が問題になった事案について、プライバシーに配慮したかたちで一部ご紹介します。

万引き(家族が身元引受・不起訴)

コンビニで栄養ドリンクなどを万引き。店員に見つかり警察に通報され、現行犯逮捕された。窃盗の事案。


弁護活動の成果

家族に身元引受人になってもらい、事件担当の検察官に意見書を提出した。結果、勾留請求されずに早期釈放された。

示談の有無

なし

最終処分

罰金20万円

暴行(弁護人が身元引受・不起訴)

路上において、酩酊状態に陥った被害者たちとトラブルとなり、被害者を手で押すなどしたとされるケース。暴行として立件された。


弁護活動の成果

ご家族がすぐに駆け付けられない事情があったため、弁護士が身元引受人となり、早期釈放を実現
被害者と宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分を獲得した。

より多くの事案をご確認されたい方は『刑事事件データベース』をご覧ください。

アトムご依頼者様からのお手紙

刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。

24時間受付・全国対応が有難く、おかげで不起訴になりました。

ご依頼者様からのお手紙(24時間受付・全国対応が有難く、おかげで不起訴になりました。)

(抜粋)家族の突然の出来事で、どうすればよいのかわからない不安な夜でした。PCで法律事務所を探し、24時間体制で受けつけてくださっているアトム法律事務所様に思いきって電話を致しました。早速、動きはじめてくださった庄司先生を信じ、頼りました。遠方のことでありましたので、全国での対応が可能なことは、ありがたいことでした。丁寧に誠実に私の話しを聴いてくださり、着実に実行し、その都度、報告をしてくださいました。庄司先生の的確なご支援のおかげで不起訴処分をいただけました。心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

アトムが引き受けてくれたおかげで、やり直す機会を得られました。

ご依頼者様からのお手紙(アトムが引き受けてくれたおかげで、やり直す機会を得られました。)

この度は依頼を引き受けていただき、真にありがとうございました。最初、事件を起こしてしまったあと近所の弁護士事務所に相談したときはただ起訴されて刑が執行されるまでを説明されただけで、もうこのまま起訴されるのを待つしかないのかと諦めかけていたところ、インターネットでアトム法律事務所様を見つけ、駄目元で相談したところ、即被害者様との示談交渉の道を提示していただき、大変安堵いたしました。結果、無事被害者様との示談も成立し、また社会でやり直す機会を与えていただいたこと、感謝の言葉もございません。重ねて御礼申し上げます。

引き受けてくれた弁護士との相性も良く、不起訴になりました。

ご依頼者様からのお手紙(引き受けてくれた弁護士との相性も良く、不起訴になりました。)

このたびは、無事不起訴になり、ありがとうございました。成瀬先生と被疑者との相性も良く、何かと多忙な私からの無理なお願いも受けて頂き、感謝しております。今回は、ご尽力ありがとうございました。

アトムの弁護士相談:24時間受付中

身元引受人がいると、逮捕後、釈放の可能性を高められます。

身元引受人になる条件は、法律では決められていませんが、家族、上司、弁護人などの身近で信頼できる人物であることが必要です。

万引き、傷害などは、ご家族が身元引受人になるケースが多いです。

一方、性犯罪などで逮捕された場合、ご家族や上司に相談しにくいと感じられる方も多く、弁護人が身元引受人になるケースも少なくありません。

この場合、あらかじめご依頼いただく必要があるため、逮捕(身柄拘束)が予想されるときは、お早めに相談ください。

アトム法律事務所の弁護士は、無料相談の予約受付を24時間365日いつでも対応しています。深夜や早朝でもお問い合わせ可能なので、お気軽にご連絡ください。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了