2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
「刑事事件の罰金刑が一括で支払えない……」
「すぐに労役場に入れられてしまう?」
刑事事件で起訴され、突然の罰金通告に、どうすればいいか分からず不安な日々を過ごしているかもしれません。結論から言うと、罰金は原則「一括払い」ですが、正当な理由があれば検察庁で「分割(一部納付)」が認められる可能性があります。
しかし、手持ちの現金がないなどの理由で、催促を続けられた後も罰金を支払わなかった場合には、罰金を支払う代わりに労役に服することが命じられる場合があります。
この記事では、刑事事件の罰金刑とはどのようなものか、分割払いについて弁護士が分かりやすく解説します。この記事を読めば、「労役場留置」を回避するための具体的な一歩が踏み出せるはずです。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
刑事事件の罰金刑とはどのような刑罰か
刑事裁判で「罰金刑」が確定すると、国からお金を支払うよう命じられます。
罰金刑とは、刑罰の一種です。刑事事件の裁判で有罪となり、罰金刑が科せられた場合、1万円以上の金銭を支払うことを命じられます。

同じく金銭を支払う刑罰として科料があります。罰金刑と科料との違いは、支払いを命じられる金額です。
罰金刑であれば1万円以上の金銭を支払うことを命じられるのに対して、科料の場合には1000円以上1万円未満の金銭を支払うことを命じられます。科料は、比較的軽い犯罪についてのみ定められている刑罰です。
刑事罰の77%が罰金刑
令和7年版犯罪白書によると、令和6年に裁判で判決が確定した20万3801人のうち、罰金刑を受けたのは15万6550人でした。割合に直すと約77%です。
この割合は、日本の裁判において罰金刑が最も一般的な刑罰として用いられている実態を示しています。
罰金刑で前科はつく?
前科とは、刑事事件の裁判手続きで有罪となり刑を宣告された履歴のことを指します。拘禁刑と同様に罰金刑も有罪となって刑を宣告された結果として科される刑であるため、前科はつきます。
前科がついた履歴は、警察や検察の内部で管理・保管されており、その後の捜査の際に参考とされます。
また、前科があれば、次に同様に犯罪を行って刑事裁判にかけられた際には、刑の重さを決めるための参考資料とされます。前科があれば刑が重くなるのが通常です。このように前科がつくことには様々な不利益があります。罰金刑であっても前科の不利益があることは拘禁刑とは変わりません。
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罰金は分割払いできる?
罰金刑を科せられて罰金を支払う場合、支払先は検察庁です。検察庁の中に、罰金の徴収を担当している係があり、そこに罰金を支払うのです。
具体的には、検察庁の徴収担当から罰金を納付するよう通知があります。罰金として検察庁が指定する金融機関に金銭を納付するか、または、検察庁の徴収担当に直接金銭を納付するかのいずれかの方法によって納付します。
罰金は期限内に一括納付することが原則
刑事事件の罰金は、納付告知書で指定された期限(10日程度)までに一括納付するのが原則です。また、原則として現金で納付する必要があります。
罰金刑の支払いの注意点
- クレジットカード払いは不可
原則として現金納付です。 - ローン不可
国が罰金の支払いのためにローンを組ませてくれることはありません。 - 期限超過
1日でも過ぎると、財産の差し押さえや労役場留置のリスクが発生します。
罰金刑の分割払いは可能?
罰金は原則一括払いであり、分割は制度として保証された権利ではありません。しかし、事情を説明して検察庁が認めれば、例外的に分割納付が可能な場合があります。
納付書の期限内に一括が難しいと予想される場合は、検察庁の徴収事務担当者に相談し、分割や延納を申し出ることが一般的です。
分割にするための主な判断要素
- 一括納付が客観的に困難
低収入・失業・病気・高額な生活費(家賃・学費・医療費など) - 支払う意思が明確であること
自分から早めに検察庁へ連絡し、分割案を提示しているなど - 現実的で継続可能な分割計画
毎月の収支から見て「無理のない金額・回数」で、完済までの見通しが立つ計画になっているなど
もしも罰金が払えないとどうなる?
手持ちの現金がないなどの理由で、納付期限までに罰金を支払うことができないという場合もあります。このような理由で罰金を支払わなかった場合、検察庁の徴収担当者から罰金を支払うように督促がなされます。
罰金の未納が続くと、検察官は刑事訴訟法490条に基づく命令を発し、民事執行法等の規定に従って財産の差押え(強制執行)を行います。
民間の借金では、まず民事訴訟で判決などの債務名義を取得しなければ差押えができません。しかし、罰金については、この検察官の命令が「執行力のある債務名義」と同様の効力を持つため、検察庁は迅速に強制執行手続を進めることができます。
それでも罰金を支払わなかった場合には、罰金を支払う代わりに労役に服することが命じられる場合があります。検察官も刑罰を適正に執行しなければならない立場にあることから、罰金を支払うことができないからといってそのまま見逃してくれることはありません。
労役場留置とは?
罰金を支払えない場合に、罰金を支払う代わりに労役に服することを命じられる処分のことを、労役場留置と言います。労役場留置は、罰金を完納することができない者に対して、1日以上2年以内の期間を定めて言い渡される処分です(刑法18条)。
労役場留置の期間は、罰金刑の宣告の際に言い渡される計算方法によって定まります。罰金刑の宣告の際には、労役場留置となった場合の一日あたりの換算金額が合わせて言い渡されます。一日あたりの換算金額は5,000円とされることが多いのですが、それ以上やそれ以下の額と定められることもあります。
たとえば、罰金50万円の刑が言い渡されるのと同時に5,000円を一日に換算した期間労役場に留置すると言い渡された場合、罰金を支払うことができなければ100日間労役場に留置されるということになります。
労役場留置は途中で終えられる?
労役場留置となった場合には、所定の期間刑務所内の労役場に留置され、労役に服することになります。生活実態としては拘禁刑(刑務所への収容)と似ていますが、法的には罰金の支払いに代えて労働に従事する「換刑処分」と呼ばれるものです。
もっとも、途中で労役場留置を終わらせることも可能です。労役場留置はあくまでも罰金刑の代わりに労役を科せられているので、残りの罰金額を全て支払えばその段階で労役場留置を終わらせることができるのです。
たとえば、親族などに罰金のために支払うお金を工面してもらって納付するなどの方法があります。労役場留置はその間自由が制限されてしまう処分であり、不利益が非常に大きい処分です。可能であれば親族などに罰金のために支払うお金を立て替えてもらうなどして罰金を納付してしまうのが良いでしょう。
罰金刑に関するよくある質問
Q.刑事事件の罰金は分割払いにできますか?
刑事事件の罰金は、納付告知書で指定された期限までに一括納付するのが原則です。実務上、支払い期限は10日程度となることが多いです。
しかし、経済的な事情でどうしても一括払いが困難な場合に限り、検察官の判断で「一部納付(事実上の分割払い)」が認められることがあります。まずは管轄の検察庁の徴収窓口へ早めに相談に行くことが重要です。
Q.罰金が払えないと、すぐに刑務所に入れられますか?
すぐにではありませんが、最終的には「労役場留置」となります。
罰金を未納のまま放置すると、まず督促状が届き、次に財産(給与や預金)の差し押さえが行われます。
それでも納付できない場合に「労役場留置票」が送達され、刑務所などの施設に収容されます。一般的には「1日5,000円」換算で罰金額に達するまでの期間、作業に従事することになります。
Q.罰金の支払いにクレジットカードやローンは使えますか?
刑事罰としての罰金は、原則として現金払いのみです。 行政罰である「過料(かりょう)」や「交通反則金」とは異なり、刑事罰の「罰金」はクレジットカード決済や電子マネーでの支払いに対応していません。
そのため、検察庁の窓口や金融機関にて現金で納める必要があります。現金が用意できない場合は、親族からの借り入れや、検察庁への分納相談を検討してください。
罰金刑でお悩みなら弁護士に相談しよう
罰金刑を回避する
罰金刑であっても前科がついてしまう不利益は無視できません。罰金刑を回避するためには、事件後すぐに弁護士に相談することが大切です。罰金刑が科せられる犯罪は、ほとんどが被害者が存在する犯罪です。被害者が存在する犯罪であれば、被害者と示談交渉することができます。
示談を成立させ、被害者に宥恕(=「許してもらう」という意味です)されることで、起訴されない可能性が高くなるでしょう。

被害者との示談は弁護士にまかせることがおすすめです。捜査機関は被害者の連絡先を加害者には教えてくれないものです。しかし、弁護士であれば「示談交渉したい」旨を伝えて捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらえる可能性があります。
また、経験豊富な弁護士は、被害感情に配慮した示談交渉が可能です。弁護士が加害者に代わり謝罪と示談交渉をすることで、被害者も納得できる結論を導きます。
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罰金額を少なくする
罰金刑が回避できない場合でも、できるだけ罰金額を少なくする活動を行います。罰金の額が大きくなればなるほど、罰金を求められたとおりに一括で納めることは難しくなるものです。
罰金を求められたとおりに一括で納めることができなければ、労役場留置の処分が下されることもあり得ます。このことから、罰金刑として言い渡される罰金の額はできる限り少ない方が良いと言えます。
罰金刑を軽くして罰金額を少なくするためには、刑事事件の裁判手続きの中で、刑を軽くすることにつながる有利な事情を裁判官に伝えることが重要です。刑を軽くするべき事情を多く裁判官に伝えることができれば、罰金刑の中でも軽い刑が科せられることになります。
罰金刑を軽くする有利な事情を適切に裁判官に伝えるためには、刑事事件の経験が豊富な弁護士に弁護活動を依頼することが重要になると言えるでしょう。


