「窃盗をしてしまったけれど、不起訴になるにはどうすればいいんだろう…」
そんな不安を抱えた方のために、この記事では窃盗罪で不起訴を獲得する方法を詳しくお伝えします。
ポイントは早期の段階で被害弁償や示談を成立させること。不起訴になれば前科はつかず、学校や会社にも今までどおり通うことができます。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
窃盗罪で不起訴になるには?
ここでは、まず窃盗罪の内容についてお伝えします。次に不起訴処分のうち主なものを3つご紹介します。さらに、不起訴処分の中で最も多い「起訴猶予」になる基準と窃盗罪で不起訴(起訴猶予)になる方法について詳しく解説します。
窃盗罪の刑罰の重さや検挙率は?
他人の占有する財物を窃取した者には窃盗罪が成立します。窃盗罪で有罪判決を受けると、10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑が科される可能性があります(刑法235条)。
万引き、置き引き、空き巣、侵入盗など様々な手口の窃盗犯が毎年多数検挙されています。検挙とは、警察が犯人を特定することです。
令和2年版犯罪白書によると、令和元年における窃盗犯の認知件数は53万2565件、検挙件数は18万897人、検挙率は34%でした。ここでいう「検挙件数」には、逮捕のみならず、警察限りで処分を終える微罪処分の件数等も含まれています。
なお、窃盗犯が逮捕を免れる目的等で暴行や脅迫を加えると、事後強盗罪という罪名の異なる犯罪が成立する可能性があります(刑法238条)。強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役と規定されています(刑法236条)。
不起訴処分の種類
主な不起訴処分は以下の3つです。
- 嫌疑なし:犯罪の嫌疑がないことを理由とするもの
- 嫌疑不十分:犯罪の嫌疑が不十分であることを理由とするもの
- 起訴猶予:犯罪の嫌疑が認められる場合でも、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況を考慮して、刑事裁判を開くよう求める必要がないことを理由とするもの
このうち、最も注目していただきたいのが「起訴猶予」です。令和元年の不起訴処分の理由で最も多かったのが起訴猶予です。その割合は不起訴処分の70.4%に上ります(令和2年版犯罪白書)。
したがって、窃盗事件を起こした場合、前科をつけたくなければ起訴猶予を目指すことが非常に重要です。
前科がつかずに済むと、懲戒解雇のおそれが低下する、資格制限のおそれがないなど様々なメリットがあります。逮捕されてもなるべく早く社会復帰を目指したい場合は『逮捕後の社会復帰が不安な方へ|不起訴処分の獲得方法を解説』の記事もぜひご覧ください。
不起訴(起訴猶予)になる基準は?
では、不起訴(起訴猶予)になるにはどうすれば良いのでしょうか?その答えは法律に書いてあります。起訴猶予とする場合に考慮すべき事項について定めた刑事訴訟法248条を見てみましょう。
刑事訴訟法248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
この条文を3つに分けて、不起訴(起訴猶予)になるために大切な事情をご説明します。
- 犯人の性格、年齢及び境遇
具体的には、犯人の性質、素行、経歴、前科前歴、常習性等が考慮されます。 - 犯罪の軽重及び情状
具体的には、刑罰の軽重、被害の程度、犯罪の動機や方法、犯行態様等が考慮されます。 - 犯罪後の情況
具体的には、反省の有無、謝罪や被害回復の努力、被害弁償の有無、示談の成否、被害感情、監督者の有無等が考慮されます。
窃盗罪で不起訴になるには被害弁償・示談が重要!
窃盗罪の場合、不起訴(起訴猶予)になるには、刑訴法248条の「犯罪後の情況」のうち被害弁償の有無と示談の成否が非常に重要です。
なぜなら、窃盗罪のような財産犯の場合、被害弁償・示談が成立すれば被害が発生しなかったのと同視できるからです。また、事後的な対応によって刑事責任が減少するという面もあります。
窃盗罪で被害弁償・示談が成立すると、不起訴の他にも、早期釈放や執行猶予など様々なメリットが期待できます。
初犯で被害弁償・示談が成立すれば不起訴になる?
窃盗罪の場合、初犯で、被害額が軽微であり、かつ、被害弁償・示談が成立すれば、不起訴(起訴猶予)の可能性は高いでしょう。
参考に2019年に窃盗罪で不起訴(起訴猶予)となった者のうち初犯者の人数をお伝えします(2019年検察統計年報)。
窃盗罪で起訴猶予になった者の総数:3万1787人
そのうち初犯者の人数:2万2537人
この数字から、窃盗罪で起訴猶予になった者のうち約7割が初犯者であることが分かります。
初犯の方こそ早期に被害弁償・示談を成立させることで起訴猶予につながることが期待できます。初犯の方は不安ばかりの日々を過ごされていると思いますが、どうか不安を抱え込まず、お気軽に弁護士にご相談ください。
「被害弁償」と「示談」の違いは?
ここで、「被害弁償」と「示談」の違いをご説明します。
被害弁償とは、被害者に対して金銭的な賠償を行うことを意味します。
これに対し、示談は、民事上の紛争について、当事者間で話し合いによって解決することをいいます。示談の中で被害弁償や慰謝料を含めた金銭を弁済し、これ以上の民事上の請求をしないと合意することが多いです。
支払い方法としては、弁護士が依頼者から現金を預かり、被害者に直接お渡しすることが一般的です。弁済額が多額な場合などは、振込みにより支払うこともあります。
窃盗罪の示談金相場は?余罪がある場合は?
ここでは、アトム法律事務所の解決実績をもとに、窃盗罪と万引きの示談金相場をご紹介します。余罪がある場合の対応もご説明します。
窃盗罪の示談金相場は?
アトム法律事務所の解決実績によると、窃盗罪の示談金相場は30万円です(解決実績198件)。
具体的な示談金額は、窃盗被害額によって大きく異なります。「自分の場合、適正な示談金相場はいくら?」と少しでも疑問に思った方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
万引きの示談金相場は?
「万引きなら被害品は戻ってくるのだから被害弁償や示談は必要ないのでは?」と思う方がいるかもしれません。
たしかに、万引き事件では警察が被害品を店舗側に返却することが一般的です。しかし、万引きされた商品は再び販売できないことが多いです。被害店舗の損害をできる限り早期に回復するため、必ず被害弁償・示談を申し出ましょう。
アトム法律事務所の解決実績によると、万引きの示談金相場は30万円です(解決実績42件)。
余罪がある場合の示談金は?
万引き事件などのケースでは、同じ店舗で多数の余罪があることも少なくありません。防犯カメラなどの証拠で後になって余罪が明らかになると、起訴の可能性が高まるおそれがあります。
このような事案では、被疑事実に加え余罪についても被害弁償・示談を申し出るのが適切でしょう。余罪も含めた被害弁償・示談が成立すれば、不起訴の可能性が高くなります。
もっとも、どのような弁護方針をとることがご本人の利益になるかは事案の内容により異なります。ご自身に合った弁護方針をお知りになりたい方は、弁護士に直接相談することをおすすめします。
窃盗事件の弁護を弁護士に依頼するメリット
窃盗事件で不起訴(起訴猶予)を目指すなら、刑事弁護の経験豊富な弁護士に依頼するのが最善策です。弁護士に依頼すれば、不起訴の他にも早期釈放や執行猶予など様々なメリットが期待できます。
「弁護士に依頼したいけれど、費用があいまいで不安」という方もいらっしゃると思います。ご安心ください。アトム法律事務所では、費用を明確化し安心してご依頼いただける環境を整えております。弁護士費用について詳しく知りたい方は、ぜひ『刑事事件の弁護士費用』をご覧ください。
早期の示談成立が期待できる
窃盗事件で不起訴になるには、早期に示談を成立させることが最重要。そのためには、できる限り早く弁護士に依頼して丁寧な被害者対応を行うことが大切です。
おすすめの方法は、私選弁護士に依頼すること。私選弁護士であれば、逮捕直後に接見して事情をお聴きし、早期に示談交渉を開始できます。さらに、取調べに対する法的アドバイスもいち早く行うことができます。
これに対し、国選弁護士は勾留後にしか依頼できません。早期に弁護活動を開始できるのは私選弁護士の大きなメリットです。
弁護士が関与すれば、被害者の連絡先が不明なケースでも捜査機関に問い合わせることが可能です。
さらに、弁護士は、被害者が加害者を許すという宥恕条項付きの示談が成立するよう最善を尽くします。宥恕条項付きの示談が成立すると不起訴の判断や刑罰の重さを決める際、有利な結果につながることが期待できます。
刑事事件化の防止が期待できる
通常、盗難被害に遭った被害者は警察に被害届を提出します。これをきっかけに捜査が始まり、被疑者が検挙されることになります。
早期の段階で弁護士が関与すれば、被害届を提出しないと被害者に同意していただける可能性が高まります。刑事事件化を防止できると、学校や会社に窃盗の事実を知られることを回避できます。
ご本人に寄り添い内省を深めるサポートを行う
窃盗罪で不起訴になるには被害弁償・示談が大切ですが、「お金を払えばすべて解決する」と考えるのは間違いです。
検察官や裁判官は、被疑者・被告人がいかに反省しているかに注目しています。反省していると分かってもらうためには、具体的な行動で示すことが大切です。
例えば、取調べで一貫して自白していること、共犯者について知っていることをすべて供述することなどは、反省の気持ちを具体的に表す態度といえます。裁判になった場合は、被告人質問で反省の気持ちをしっかりと裁判官に伝えることが重要です。
弁護士は接見を重ね、ご本人が内省を深めるサポートをします。なぜ犯行に及んだのか、犯行により誰にどのような影響を与えたか、再犯防止のためにどうすればよいか…こうした問題にたった一人で向き合うことは困難を伴います。弁護士は、ご本人に寄り添ってこれらの問題に共に向き合い、ご本人が自分自身で答えを見つけられるよう全力で支えます。
社会内で更生できる環境を整える
窃盗事件で不起訴や刑の軽減を実現するには、社会内で更生できる環境を整えることも重要です。
具体的には、同居家族など親族による監督が期待できること、就業先が継続して雇用する予定であること等を書面にまとめ検察官に提出します。
裁判になった場合は、実際に裁判所で親族等に証言してもらうよう働きかけます。
弁護士は、証言を踏まえ、被告人を刑務所に行かせず社会内で立ち直りのチャンスを与えるべきだと主張します。
窃盗症(クレプトマニア)の方を支援につなげる
窃盗を繰り返してしまう「窃盗症(クレプトマニア)」という病気があります。
クレプトマニアの方は、最初は不起訴や執行猶予でも、犯行を重ねるうちに実刑になってしまうことが少なくありません。懲役刑の長さも最初は1年以下であることが多いですが、前科が多くなればその分長期化してしまいます。
クレプトマニアの方にとって最も必要なのは適切な医療的支援です。弁護士は、クレプトマニア専門の医療機関による支援が受けられるようサポートします。
そして、具体的な治療計画を検察官や裁判官に説明し、再犯可能性が低下したことを主張します。
このような弁護活動により、窃盗の前科が多数ある方でも刑事処分が軽くなることが期待できます。さらに詳しくは『クレプトマニアこそ相談先に弁護士を選ぶ!弁護士だからできる活動内容』の記事もあわせてご確認ください。