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クレプトマニアの弁護士相談|治療と弁護活動のポイントは?

クレプトマニア

「何度捕まっても万引きをやめられない」

「自分の意思に反して盗んでしまう」

「必要ないものなのについ盗ってしまう」

このようなお困りごとには、「クレプトマニア(窃盗症・窃盗癖)」という病気が隠れている可能性があります。

クレプトマニアで悩む方にとって、弁護士の存在は非常に重要です。クレプトマニアの克服には、病気への理解法的な対処の両方が必要だからです。

この記事では、窃盗で繰り返し逮捕されてしまっている方や、本気で窃盗をやめたい方に向けて、クレプトマニアの治療方法や、弁護士ができることについて解説します。

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クレプトマニア(窃盗症・窃盗癖)とは?

クレプトマニアの定義と特徴

クレプトマニア(窃盗症・窃盗癖)とは、盗みたいという衝動を抑えられない精神疾患です。

  • 盗みをやめたいと思っていても、商品を目の前にすると盗みたい衝動が抑えられない
  • 過去に何度も逮捕されているにもかかわらず、万引きをやめられない
  • 万引きが成功すると、スカッとしてストレスがなくなる

こういった症状がある方は、クレプトマニアの可能性があります。

クレプトマニアは、「お金がないから盗む」「欲しいけど買えないから盗む」といった動機で窃盗を行うのではなく、盗む必要がないもの・欲しくないものでもつい盗んでしまうという点が特徴的です。

クレプトマニアを抱える方の多くが、盗みをやめられず何度も逮捕されてしまいます。逮捕されるたびに処分が重くなっていき、最終的には実刑判決が下されてしまいます。

しかし、クレプトマニアは、刑務所に入ったからといって治るものではありません。専門的な治療を要するれっきとした疾患なのです。

クレプトマニアの診断基準

ここでは、アメリカにおける精神疾患の診断基準「DSM-5」の中から、クレプトマニアの診断基準をご紹介します。

DSM-5によるクレプトマニアの診断基準

  • A 個人的に用いるものでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される
  • B 窃盗に及ぶ直前の緊張の高まり
  • C 窃盗に及ぶときの快感、満足、または解放感
  • D 盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない
  • E 盗みは、素行障害、躁病エピソード、または反社会的人格障害ではうまく説明できない

こういった症状に心当たりがある方は、専門の医療機関を受診してクレプトマニアの診断を受けることをおすすめします。

クレプトマニアの治療方法

クレプトマニアのような依存症では、処罰がさらなるストレスを生み、依存行動を繰り返す原因になります。そのため、本人に必要なのは処罰ではなく適切な治療です。

ここでは、一般的に行われているクレプトマニアの治療法をご紹介します。

認知行動療法

多くのクレプトマニア患者は、一定の状況下・行動パターンのもとに窃盗行為を行っています。

そこで、「どんなときに盗みたくなるのか」に着目して、窃盗を行わないための行動パターンを身に着けます。これを認知行動療法といいます。

専門の外来に通院して認知行動療法を受けるのが一般的です。

薬物療法

今のところ、クレプトマニアそのものに効く薬というものはありませんが、合併するほかの精神疾患の症状や、抑うつ状態、不眠などに対して投薬治療を行うことで、窃盗の原因を取り除きます。

自助グループへの参加

自助グループとは、同じクレプトマニア患者が集まって悩みや経験を共有しあう団体で、全国に複数存在します。

患者が抱える孤独感をやわらげるのに役立つほか、他のメンバーが行っている対処法などを学ぶことで、クレプトマニア克服の一助となるでしょう。

クレプトマニア回復のために家族ができること

クレプトマニアの回復にはご家族の協力が欠かせません。

「協力」とは「監視」のことではありません。監視され続けると、ご本人はストレスを抱える一方で逆効果です。

大切なのは、ご家族にも勉強会などに参加してもらい、クレプトマニアに対する理解を深めてもらうことです。その上で、本人が買い物に行くときは必ず家族に同伴してもらうルールを徹底しましょう。それが当たり前になると、ご本人がストレスを抱えるおそれはなくなります。

ご家族との関係が悪化しており、改善が難しいという方も多いと思います。

そんな方は、ぜひ弁護士を頼ってください。弁護士は、クレプトマニアで悩むご本人とご家族の橋渡し役になります。

ご家族との協力関係がしっかりと築けると、再犯のおそれがなくなったと評価され刑の減軽にもつながります。

「個人的に用いるため」はクレプトマニアではない?

DSM-5の診断基準Aは、「個人的に用いるものではない」窃盗をクレプトマニアの一つの基準として定めています。

では、窃盗の被害品を自分で食べたり使ったりすると、クレプトマニアには該当しないのでしょうか?

裁判例の中には「自分が用いるために万引きしているのでクレプトマニアでに該当しない」と判断しているものもあります。

しかし、クレプトマニアかどうかは行動全体から判断すべきであり、盗品の扱いのみで結論を出すのは間違いだという意見もあります。

クレプトマニアの診断には、医師など専門家による診断が不可欠です。少しでも心当たりのある方は、専門家の診断を直接受けることを強くおすすめします。

クレプトマニアを弁護士に相談すべき理由

専門の医療機関と連携をとって弁護活動を行う

刑事弁護に力を入れている弁護士の中には、クレプトマニア専門の医療機関と提携を結んでいる弁護士もおり、弁護士から信頼できる医療機関を紹介してもらえる可能性があります。

適切な治療を行うことは、ご本人の更生のためだけでなく、刑事処分の軽減のためにも有用です。

クレプトマニアの治療を行っており、再犯のおそれがないことを裁判官に対して主張することで、ご本人が受ける処分を軽減できる可能性があります。

裁判において、クレプトマニアの診断書や医師の意見書などを提出することもあるため、弁護士と医師の連携は欠かせません。

アトム法律事務所では、必要がある場合、クレプトマニアの治療ができる専門機関をご紹介することもできます。

刑罰の軽減に向けた弁護活動を行う

弁護士は、クレプトマニアで捕まってしまった方のために、刑の軽減を目指した弁護活動を行います。また、逮捕されて身柄を拘束されてしまった場合には、早期の釈放に向けて活動します。

具体的には、精神障害により非難の程度が低下することや、社会の中で治療を継続する必要性が高いということを検察官や裁判官に対して主張することで、早期の釈放や執行猶予の獲得を目指します。

また、被害者と示談を結ぶことは、裁判において有利な情状となります。

万引きの被害店舗との示談は、会社の本部の方針にもよるので難しい場合もありますが、弁護士は全力を尽くして示談交渉にのぞみます。

加害者が自力で示談交渉をすることも不可能ではありませんが、示談によって不起訴や執行猶予獲得の可能性を高めるためには、取り決めの内容や書き方にも気をつけなければなりません。

やはり弁護士が示談交渉を行った方が効果的です。

クレプトマニアに強い弁護士の選び方

全ての弁護士がクレプトマニアに精通しているわけではありませんので、クレプトマニアの弁護の経験が豊富な弁護士を選びましょう

一部の法律事務所は、ホームページなどでクレプトマニアの弁護に注力していることを宣伝しているため、クレプトマニアを積極的に扱っているかどうか知ることができます。また、ホームページ上でクレプトマニアの弁護実績を閲覧できる場合もあります。

ただし、インターネットの情報だけを参考にするのではなく、実際に相談してみて弁護士を選ぶことをおすすめします。

多くの事務所では初回相談を無料で行っていますので、初回相談を利用して、その弁護士の経験や実績、クレプトマニアに対する具体的な支援内容について詳しく聞いてみましょう。

クレプトマニアの弁護実績が豊富な弁護士は、医療機関との連携体制も整っていますので、相談時に確認しておくのがよいでしょう。

クレプトマニアの刑事処分はどうなる?

クレプトマニアで起訴される可能性は?

窃盗・万引きで逮捕されてしまっても、初犯で被害も軽微であれば、「微罪処分」や「不起訴処分」といって起訴されずに事件が終了する場合があります。

しかし、クレプトマニアの場合、同種の前科・前歴が多数あるケースが少なくありません。

クレプトマニアで再犯の場合、たとえ示談を結んだり被害額を弁償したとしても、起訴される可能性は初犯より高くなります

逮捕から起訴までの流れについて知りたい方は『万引きで捕まった!逮捕後の流れやとるべき対応を解説』も合わせてお読みください。

クレプトマニアに執行猶予がつく可能性は?

クレプトマニアの方が起訴された場合、累犯(るいはん)に当たるがどうかが執行猶予の可能性を左右します。

累犯とは、一定期間内に犯罪を繰り返し、再犯(刑法56条)や三犯以上(刑法59条)に当たる者をいいます。

再犯(刑法56条1項)に当たる典型例は、「懲役に処せられた者がその執行を終えた日から5年以内にさらに罪を犯し、有期懲役に処せられる」ケースです。

累犯に当たる場合、執行猶予がつく可能性は原則としてありません(刑法25条1項)。

累犯の具体例

前刑の執行終了日が2016年12月1日、今回万引きしたのが2021年8月1日、刑の言渡し日が2021年11月1日で有期懲役に処せられる場合、執行猶予はつきません。

なお、例外的に、累犯であっても、判決言渡し日までに5年経過している場合は、執行猶予がつく可能性はあります。

関連記事

常習累犯窃盗とは?窃盗罪との違いや執行猶予の条件を解説

クレプトマニアが執行猶予中に窃盗したらどうなる?

クレプトマニアの方が執行猶予中に再び窃盗を行った場合、実刑になる可能性が非常に高いです。実刑になると、前刑と今回の刑期を合わせた期間、刑務所に行かなければなりません。

しかし、以下の条件を満たせば「再度の執行猶予」(刑法25条2項)がつく可能性もゼロではありません。

再度の執行猶予がつく条件

  • 前の刑について執行猶予期間中の者で、保護観察に付せられていない者
  • 今回、言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」である
  • 情状に特に酌量することがある

執行猶予中の再犯で捕まってしまった場合は、上記の条件を満たしていることを裁判官に対して主張することで、再度の執行猶予の獲得を目指すことになります。

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万引きの再犯は懲役実刑?執行猶予中の再犯で再度の執行猶予はつく?

【解決事例】クレプトマニア治療により執行猶予となったケース

アトム法律事務所が過去に扱った事件の中から、クレプトマニアの治療が執行猶予獲得に繋がった事例を2つ紹介します。

執行猶予期間中に万引きをして、再び執行猶予が付いた事例

スーパーで刺身など、十数点の食品(数千円相当)を万引きした。なお、依頼者は窃盗で執行猶予中の身であった。


弁護活動の成果

保釈が認容されて、早期釈放が叶った。裁判の場では、窃盗症治療の通院記録などを証拠として提出。そのほか情状弁護を尽くした結果、執行猶予付き判決となった。

最終処分

懲役1年,執行猶予4年

万引きをして同様の前科や余罪もあったが、執行猶予が付いた事例

スーパーや薬局などで、食料品などを万引きした。同種の前科のほか余罪もあり


弁護活動の成果

検察官に意見書を提出し、勾留請求を回避。早期釈放を実現した。また、カウンセリングの実施報告書、診断書などを提出。その結果、執行猶予付き判決となった。

最終処分

懲役1年4か月,執行猶予3年

いずれも、窃盗の前科がある方の事例です。

このように、万引きの再犯で捕まってしまっても、クレプトマニアの治療および弁護士の全力の弁護活動によって、執行猶予獲得や刑罰の軽減を目指すことができます。

クレプトマニアの弁護活動のポイント

示談を結んで刑の軽減を目指す

被害者との示談が成立したということは、不起訴や量刑の判断において考慮されます。

すなわち、示談によって被害者の受けた被害は回復されたから、重い処罰を科す必要はないと判断され、不起訴処分や再度の執行猶予を得やすくなります。

そのため、たとえ起訴されてしまった後でも、被害者と示談交渉を行うことは非常に重要です。

しかし、クレプトマニアのケースでは、同一店舗で犯行を繰り返している場合も多く、示談を拒否される可能性も大きいです。

その場合でも、被害弁償を申し出たり、謝罪文だけでも受け取っていただけるよう、弁護士が粘り強く弁護活動を続けます。

たとえ示談が成立しなくても、真摯に反省し示談成立に向けて努力をしたという事情は量刑上有利に考慮されます。

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クレプトマニアという精神障害であることを主張する

刑事裁判においては、精神障害により責任能力が減退した「心神耗弱」の状態だったと認められれば刑が減軽されます(刑法39条2項)。

もっとも、クレプトマニアであることを理由に心神耗弱が認められる可能性は実務上低いです。

しかし、クレプトマニアであることが刑を軽くする一事情として考慮される可能性はあります。なぜなら、精神障害を理由に本人を非難できる程度が低くなるからです。

したがって、クレプトマニアの方の裁判で、弁護士は医師の意見書や精神鑑定書を裁判所に提出します。場合によっては、診断した医師本人に裁判で証言してもらう可能性もあります。

関連記事『なぜ責任能力がないと無罪?精神障害による犯罪と精神鑑定の関係』では刑事責任能力と精神障害の関連を詳しく解説中です。刑事責任能力がないと判断されると、無罪だったり、不起訴処分になったりする可能性があります。刑事責任能力とは何か、なぜ無罪になるのかは関連記事を参考にしてください。

クレプトマニアの治療を継続する意思があることを主張する

クレプトマニアの裁判で特に重要なのが、再犯のおそれがないと説得的に示すことです。

そのために、弁護士は、ご本人が現在適切な治療を受けており、今後も治療を継続する強い意思があると主張します。早期に治療を開始するため、治療を目的として保釈を申請するのも一つの方法です。

さらに、家族も治療を支援していると裁判で証言してもらうケースもあります。弁護士は、家族のサポートによって再犯防止の生活環境が整ったと主張します。

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保釈を弁護士に依頼する|刑事事件に強いアトム法律事務所

クレプトマニアのお悩みはアトムにご相談ください

「自分では原因が分からないけれど窃盗を繰り返してしまう」

このような悩みをお持ちのご本人・ご家族は、出口の見えないトンネルをさまよっているようなお気持ちだと思います。でも決して諦めないでください。その苦しみの原因は病気の可能性があります。そして、その病気は治療可能なものです。

アトム法律事務所は専門の医療機関と連携し、クレプトマニアの方を適切な治療へつなげることができます。

これから長く続く人生を穏やかに過ごせるよう弁護士が全力でご本人とご家族をサポートします。一人で悩まず、ぜひ一度アトムの弁護士にご相談ください。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了