- 教員という立場で逮捕されてしまった
- 教員免許はどうなってしまうのか
- 逮捕後の流れは?前科はつくのか?
教員である自分自身が、または家族が万引きで逮捕された場合かなり不安だと思います。この記事では上記の疑問について解説し、どのような場合に教員免許剥奪となるのか、免許剥奪とならないためにはどうすればよいかなどについても解説していきます。
目次
教員が万引きで逮捕されたら免許剥奪?
教員が万引きをしてしまった場合、解雇になる可能性があります。
教員は禁錮以上の前科がつくと免許を剥奪される
教員は逮捕されたというだけでは免許剥奪に至りませんが、禁錮(刑務作業が課されずに刑務所に一定期間服役すること)以上の刑に処された者は、教員免許を剥奪されると法律上定められています(教育職員免許法5条1号3項、同法10条1項1号)。
また、禁錮以上の刑に処されたものは、教職につくことができないと法律上定められています(学校教育法9条1号)。
禁錮以上の刑に処されたというのは、懲役又は禁錮の実刑判決になってしまった場合やそれらの執行猶予判決を受けてしまった場合のことを指します。
ただ、禁錮以上の刑に処されず不起訴になった場合でも、懲戒処分になり、教員の仕事を失う場合があります。公立学校の場合、懲戒処分とする規定を地方公務員法29条で定めています。具体的には大きく3つあります。
- 地方公務員法若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体に規則若しくは地方公共団体の機関の定める規定に違反した場合
- 法令に違反した場合や職務上の義務に違反または職務を怠った場合
- 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合
この3つが懲戒処分の事由として挙げられています。
また、私立学校の場合、その学校法人の就業規則で懲戒処分に処す規定を定めている場合があります。例として下記の2つを挙げます。
- 「窃盗、横領、傷害等の刑法犯に該当する行為があった場合」と定める実践女子学園中学校・高等学校
- 「刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかになったとき」と定める学校法人盛岡大学
公立私立どちらの就業規則も刑法に触れるような犯罪事実があった場合、懲戒処分に処すと解釈することができます。
前科が付くと一定期間を経過するまで教員免許を取得できない
禁錮以上の前科が付いた場合、教員免許の欠格事由である「禁錮以上の刑に処せられた者」(教育教員免許法5条1項3号)に該当するため、刑の言い渡しの効力が失われるまでは、教員免許を取得できません。
具体的には、禁錮以上の実刑の前科が付いた場合は、刑の執行が終了してから罰金以上の刑に処せられないで10年を経過するまで、教員免許を取得できません。(刑法34条の2)執行猶予が付いた場合は執行猶予期間を満了するまで教員免許を取得できません。(刑法27条)
また、前科が付かなくても免職・解雇になった場合は、失効から3年間は教員免許を取得できません。(教育職員免許法5条1項4号または5号)。
教員が万引きで逮捕された後の流れ
万引きなどの刑事事件において逮捕されてから起訴されるまでは、一度留置場や拘置所で身柄を拘束され、捜査機関の取調べを受けたうえで検察が起訴するか否かを決定する、という流れになります。
留置所や拘置所に身柄拘束される期間は最大23日間となる恐れがあります。そして検察官が起訴と決定した場合、さらに判決が出るまでの期間(1か月~)拘束が続いてしまう可能性があります。
在宅捜査に切り替えられた場合や不起訴となった場合、身柄は速やかに釈放されます。また、被害額が少額である場合や犯行が悪質でない場合、和解が成立している場合は微罪処分として被疑者を釈放し、事件が終了することがあります。
しかし、逮捕されて不起訴となっても懲戒処分を下される場合ももちろんあります。例を挙げると、2020年10月、神奈川県の小学校に勤務していた元教員の男性が、スーパーマーケットで弁当1個、おにぎり2個を万引き、窃盗の疑いで逮捕され、停職6か月の懲戒処分を受けたというケースです。
教員が万引きで免許を失わないための正しい対処法
教員が万引きで免許失効となる場合、それは主に前科がついてしまった場合です。逮捕された時点では教員資格を失うということにはなりません。しかし、身柄拘束の期間が長くなると職場をその分休むことに繋がります。
逮捕中は自ら欠勤の連絡をすることができません。従って、逮捕されていると身柄的拘束が長期化し、精神的負担の増加や勤務先に万引きで逮捕されていることがばれてしまう可能性が高くなります。そのため早期釈放を目指すことをおすすめします。
また、釈放されたとしても、検察官に起訴されてしまうと有罪になる可能性が極めて高いです。被害者と示談し不起訴を目指すことが賢明です。
どちらの場合にしても、迅速に対応可能な弁護士によるサポートが欠かせません。
万引きの刑罰は?初犯より再犯の方が罪は重くなる?
「万引き」という罪名はなく、刑法235条の窃盗罪に当たります。当然、前科がつく可能性があります。
万引きの刑罰は窃盗罪と同じ
万引きは刑法235条の「窃盗罪」にあたります。万引きというと軽い罪で済んでしまいそうな印象を受けますが、実際には「10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と定められています。
懲役刑というのは先に述べた禁錮以上の刑に当たります。従って、懲役刑が科された場合、教員免許失効となってしまいます。万引きが軽い罪だと思っているのなら認識を改めた方が良いでしょう。
万引きの初犯と再犯の刑罰の相場
初犯である場合、懲役となり刑務所に入るような犯罪ではありません。被害金額が少額で事実を認め、弁償や示談が済んでいるケースでは微罪処分(警察が刑事事件の被疑者を逮捕しても軽微であることを理由に事件処理を終わらせること)となったり、示談に応じてもらえれば不起訴になったりします。起訴されたとしても最大30万円程度の罰金となることが多いです。また、執行猶予が付く可能性も高いです。
しかし再犯であったり、被害額が高額であったりすると懲役刑になる事が多く、執行猶予期間中に万引きで起訴されると原則実刑となったりします。刑務所から出所後5年以内に再犯で捕まる場合は、示談をしていてもまず懲役刑となります。さらに、服役後に万引きを繰り返すと3年以上の懲役刑に処せられます(常習累犯窃盗罪、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3条、刑法12条)。
万引きで有罪になると前科がつき教員免許を失ってしまうことも
万引きで逮捕された後、起訴され有罪判決が確定し、禁錮刑以上の前科が付くと教員免許の失効事由に該当し教員免許を失ってしまいます。日本の刑事事件の場合、検察官に起訴されてしまうと有罪率は約99.9%であり、無罪判決を勝ち取ることは非常に困難です。そのため、被害者に示談に応じてもらい、不起訴処分で前科を回避することを目指しましょう。
教員が万引きで免許を失わないために弁護士へ早期相談
教員免許を失うにせよ失わないにせよ前科はつけたくないですよね。前科をつけたくない方、早期釈放されたい方は早めに弁護士に相談することをおすすめします。
万引き被害者と示談をして釈放と不起訴を目指す
前科をつけないために、逮捕後は早期釈放を目指し、起訴される前に示談を成立させることが非常に重要です。なぜなら、起訴されてしまったらその後に示談が成立しても不起訴処分に変えてはもらえず、起訴されたら前科がつく可能性はかなり高いからです。
示談の際、不起訴の可能性をなるべく高めるために、被害届の取り下げ、「加害者の処罰を望まない」旨の嘆願書などを確実に盛り込むことが重要です。示談は弁護士を立てることでスムーズに被害者側と話が進みます。
前科をつけないためにも早期釈放されるためにも、弁護士に依頼して不起訴処分を得ることが加害者にとって最善の流れです。
万引きがやめられない窃盗症(クレプトマニア)は治療が必要
万引き(窃盗)をやめたくても自分の意思でやめられない症状のことをクレプトマニア(窃盗症)と言います。精神医学的には国際疾病分類であり、依存症で病気です。
通常の窃盗は行為者が利益獲得を目的として盗みを行うものですが、窃盗症は直前のスリルや快感、満足、解放感を得たいというのが特徴としてあり、繰り返さないために治療が必要となります。窃盗症の方の依頼を数多く受けてきたアトム法律事務所の弁護士は適切な病院を紹介することができます。
また、再犯防止の取り組みとして治療していることを弁護士が検察官に伝えることで、刑事責任が軽減される可能性があります。
示談で早期釈放・不起訴で前科回避を目指すために弁護士に相談する
刑事事件の被疑者として扱われている場合、示談交渉で弁護士は非常に役立ちます。示談交渉では弁護士でなければ話に応じてもらえない、連絡先すら教えてもらえないといったケースが多々あります。
また、逮捕されている場合、勾留請求されるまでの最長3日間、被疑者は外部と連絡を取ることができず、面会が可能なのは弁護士のみです。そして、起訴前の身柄拘束が最大23日間あり、検察官がその間に起訴を急ぐおそれがあるため、逮捕されていない場合よりも示談を早めに成立させる必要があります。
また、示談して早めに解決しなければ、不起訴で前科がつかなかったとしても、勤務している学校にバレる恐れが時間の経過とともに高くなります。弁護士が対応して示談できれば、早期釈放の可能性が上がりますので、気軽に相談してみることをおススメします。