「恐喝をしてしまったが逮捕されないか不安。時効は何年なんだろう」
このような不安を抱えた方のために、この記事では、まず恐喝罪の時効について解説しました。
また、恐喝罪の構成要件や、脅迫罪・強要罪・強盗罪との違いも触れています。
恐喝行為をした場合に、逮捕や起訴を回避する方法についても詳しく掘り下げておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
恐喝罪の時効とは?刑事・民事の時効を解説
恐喝罪の時効は刑事と民事の2種類
恐喝罪の時効には刑事と民事の2種類があります。
刑事事件に関する時効は「公訴時効」といいます。公訴時効が成立すると起訴されなくなります。時効完成後に犯人がわかっても、その犯罪について罪に問うことはできません。
民事事件に関する時効は「消滅時効」といいます。消滅時効が成立すると損害賠償を請求されなくなります。
恐喝罪・脅迫罪・強要罪・強盗罪の公訴時効期間は?
ここでは、恐喝罪、脅迫罪、強要罪、強盗罪の公訴時効期間を一覧表で解説します。これらの犯罪の公訴時効期間は、刑事訴訟法250条2項に規定されています。
公訴時効期間はそれぞれ恐喝罪で7年、脅迫罪で3年、強要罪で3年、強盗罪で10年です。
罪名 | 公訴時効期間 | 法定刑 | 刑事訴訟法250条2項各号該当性 |
---|---|---|---|
恐喝罪 | 7年 | 10年以下の懲役 | 4号(長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪) |
脅迫罪 | 3年 | 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 | 6号(長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪) |
強要罪 | 3年 | 3年以下の懲役 | 6号(長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪) |
強盗罪 | 10年 | 5年以上の有期懲役 | 3号(長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪) |
公訴時効期間は「犯罪行為が終わった時」から進行します(刑事訴訟法253条1項)。
恐喝罪の消滅時効期間は何年?
恐喝行為をした場合、被害者から損害賠償を請求される可能性があります。損害賠償には、恐喝されたお金に加え、精神的苦痛に対する慰謝料も含まれます。しかし、民法の規定する消滅時効期間を経過すると、損害賠償請求権は消滅するのです。
以下の表に消滅時効期間をまとめました。生命・身体に対する損害の有無で期間が異なるので注意してください。
①不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効(民法724条)
起算点 | 消滅時効期間 |
損害及び加害者を知った時 | 3年 |
不法行為の時 | 20年 |
②生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効(民法724条の2)
起算点 | 消滅時効期間 |
損害および加害者を知った時 | 5年 |
不法行為の時 | 20年 |
恐喝罪とは?脅迫罪・強要罪・強盗罪との違い
恐喝罪とは
①条文(刑法249条)
1 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
刑法249条
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
②構成要件
「恐喝」とは、相手方の反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫又は暴行を加え、財物交付を要求することをいいます。
恐喝罪の「脅迫」は、相手方の反抗を抑圧しない程度の害悪の告知を意味します。
対象者は本人又は親族の他、第三者も含まれます。
害悪の内容に制限はありません。判例は、犯罪事実を捜査機関に通報すると告知した事例(最判昭和29年4月6日)、私人の秘密に関する記事を掲載すると告知した事例(大判大3年6月24日)で恐喝罪の成立を認めました。
告知の手段・方法に制限はありません。言葉や文書による告知だけでなく、動作による告知も含まれます(最決昭和33年3月6日)。したがって、メールでの告知や立ちはだかるなどの行為でも恐喝罪が成立する可能性があります。
財物を「交付させた」とは、畏怖した相手方の処分行為に基づいて行為者側が財物の占有を取得することをいいます。被害者が怖がって黙認している間に財物を奪い取った場合も含まれます(最判昭和24年1月11日)。
③未遂
恐喝罪は、恐喝行為を開始した時点で実行の着手ありと判断されます。したがって、恐喝の結果、金銭等を得られなかったケースも未遂罪として処罰される可能性があります。
④非親告罪
恐喝罪は、告訴がなくても起訴できる非親告罪です。したがって、被害者が告訴したかどうかにかかわらず、起訴されるおそれがあります。
⑤親族間の特例
親族間における恐喝罪は、刑が免除されたり、告訴がなければ起訴できないと規定されています(刑法251条、244条)。具体的には以下のとおりです。
- 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で恐喝罪(未遂を含む)を犯した者は、その刑が免除される。
- 上記以外の親族との間で犯した恐喝罪(未遂含む)は、告訴がなければ起訴することができない。
ここでいう「配偶者」は内縁関係を含みません。「直系血族」とは、父母や祖父母、子どもや孫のことです。「親族」とは、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族を意味します(民法725条)。
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脅迫罪とは
①条文(刑法222条)
1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
刑法222条
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
②恐喝罪との違い
恐喝罪は財物等の交付を目的として暴行・脅迫を加えることが必要です。一方、脅迫罪は財物等の交付を要求しなくても成立します。
告知する害悪の種類は「生命、身体、自由、名誉又は財産」に関わるものに限定されます。
告知の対象者は、相手方又は親族に限られます。内縁関係にある者や恋人、友人は含まれません。
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強要罪とは
①条文(刑法223条)
1 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
刑法223条
2 親族の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
②恐喝罪との違い
恐喝罪では財物等の交付を要求することが必要です。一方、強要罪は財物等の交付を要求しなくても成立します。
告知する害悪の種類は「生命、身体、自由、名誉又は財産」に関わるものに限定されます。
告知の対象者は、相手方又は親族に限られます。内縁関係にある者や恋人、友人は含まれません。
強盗罪とは
①条文(刑法236条)
1 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
刑法236条
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
②恐喝罪との違い
相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を用いて金銭を交付させると強盗罪が成立します。強盗罪ほど強度の暴行・脅迫に至らなければ恐喝罪になります。
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恐喝の弁護を依頼するメリット
恐喝行為をした場合、弁護士に依頼すれば日常生活への影響を最小限にとどめることが期待できます。
ポイントは「できる限り早期に相談すること」です。
ここでは、恐喝の弁護を依頼するメリットを具体的にご紹介します。
示談による逮捕・勾留の回避
恐喝罪は逮捕されるおそれが高い犯罪です。令和元年における恐喝罪の身柄率は76.5%でした。刑法犯全体の身柄率36.5%と比べると、恐喝罪で身柄を拘束される確率が非常に高いことがわかります(令和2年(2020年)版犯罪白書により)。しかも、恐喝罪で逮捕されるとほとんどの事案で勾留も認容されてしまいます。つまり、恐喝容疑で逮捕されると起訴・不起訴の判断が下るまで最長23日間もの間、身動きできない状態に置かれるおそれがあるのです。
このような事態を避けるため、非常に重要なのが示談の締結です。示談成立によって、逃亡や証拠隠滅のおそれがなくなったと判断され、逮捕・勾留の回避につながりやすくなります。
ただ、被害者は示談を拒否することも少なくありません。そこで欠かせないのが、刑事弁護の経験豊富な弁護士の存在です。弁護士は、謝罪文などを通じ、加害者の謝罪の意思を丁寧にお伝えします。その上で適正な金額で示談が成立するよう交渉を進めます。示談交渉の中で被害届を提出しない合意ができれば、刑事事件化を防ぐことができます。すでに被害届を提出されている場合は、被害届を取り下げていただけるよう尽力します。
なお、少年でも恐喝行為をすれば逮捕されるおそれがあります。少年事件でも逮捕を防ぐために示談が重要です。
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不起訴処分の実現
示談が成立すれば不起訴処分となる可能性も高くなります。不起訴処分になれば前科はつきません。前科の有無は今後の人生を大きく左右します。できる限り早く弁護士に依頼して示談交渉を始めましょう。弁護士は、家族による監督環境の整備や共犯者との関係を断つなどの弁護活動も行います。示談に加え、再犯防止に向けた弁護活動を尽くし検察官に不起訴処分を求めます。
取調べの対応をアドバイス
恐喝罪で逮捕されると取り調べを受けます。
恐喝罪で客観的な証拠がない場合、どのような内容の言葉を言ったか厳しく追及される可能性があります。このようなケースで心が折れて不利な供述をしまうと、後で否定するのは非常に困難です。
取調べで不利な供述をしないためには、弁護士のアドバイスが必須です。弁護士は、ご本人の利益が最大限守られるよう取調べのアドバイスを行います。
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執行猶予付き判決の獲得
起訴されて刑事裁判になった場合でも、示談によって執行猶予になる可能性が高まります。
また、裁判の場で、被告人の反省の気持ちが裁判官に直接伝わるよう弁護に工夫を凝らします。
執行猶予になればすぐに刑務所に行く必要はありません。また、無事に執行猶予期間が経過すれば、刑の言渡しは効力を失うのでその犯罪を理由に服役する必要はなくなります(刑法27条)。
早期解決を目指すなら私選弁護士へ!
恐喝事件の被疑者になった場合、早期解決を目指すなら私選弁護士に依頼するのがおすすめです。私選弁護士に依頼する最大のメリットは「逮捕直後から」「自分や家族が選んだ弁護士」が駆けつけてくれることでしょう。
これに対し、国選弁護士の接見は勾留決定後に限られます。当番弁護士は自分で選べません。
逮捕前から依頼すれば、逮捕を避けられる可能性が高まります。
恐喝罪のお悩みは弁護士が力になります。ぜひ一度アトム法律事務所にご相談ください。