「息子が恐喝容疑で逮捕された」「知人に借金の返済を免除してもらったら恐喝で被害届を出された」など、恐喝事件の容疑がかかるケースは少なくありません。
恐喝事件は、カツアゲやタカリなど、比較的身近な犯罪と思いがちですが、逮捕され有罪になると、懲役刑しかない重大犯罪です。また、逮捕後は勾留されて長期間の身体拘束が続き、会社や学校に支障が生じやすい類型でもあります。
それだけに、恐喝事件を起こした場合は、できるだけ早く弁護士に相談・依頼して、示談をしてもらい、不起訴で前科を避けることを目指して活動することが大切です。
なお、当記事で記載の未成年(少年)とは20歳未満の少年のことであり、成人とは20歳以上の者を指しています。民法上の成人(民法第4条)とは異なるものです。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
恐喝で逮捕されそう?逮捕の条件と恐喝罪の刑罰
第二百四十九条(恐喝) 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
刑法249条
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
恐喝罪とは|暴行や脅迫で財物を交付させる犯罪
恐喝罪は、「人を恐喝して、財物の交付を受け、または財産上不法の利益を得」る犯罪です(刑法249条)。「恐喝」とは、財物等を奪う目的で相手が怖がるような暴行や脅迫をすることです。「財物」とはお金など財産的なものをいい、「財産上不法の利益を得」とは支払を免除させることなどをいいます。
恐喝罪の例としては、暴行してお金を巻き上げる「カツアゲ」や、脅して借金を免除させる「タカリ」などが典型的です。他にも「クレーマー」が店の悪口を拡散すると脅して慰謝料を払わせたり、若者が中年男性に暴行を加えて財布や時計などを奪う「オヤジ狩り」も、程度が軽ければ恐喝になります。
恐喝罪で逮捕される条件とは?
恐喝罪で逮捕される条件は、以下の4つです。
- 相手から財物を奪うため暴行や脅迫をすること
- 相手が恐怖を感じること
- 相手が恐怖心から財物を処分すること
- 財物が加害者や第三者に渡ること
「財物を処分すること」とは支払いを免除・猶予することなども含み、「財物が加害者や第三者に渡ること」とは加害者や第三者が利益を得ることも含みます。
自分が一切利益を受けていないとしても、第三者に利益を得させれば恐喝になります。
なお、恐喝は未遂罪もあるので、最終的に財物を入手できなくても恐喝未遂で逮捕される可能性があります。
正当な権利行使でも恐喝になる?
恐喝によって不当な利益を得ることが犯罪になることに異論はないでしょう。では、貸したお金を返してもらうといったような正当な権利行使が恐喝になることはあるのでしょうか。
この点、正当な権利行使であっても、「社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度」を逸脱する方法で権利を実行したときは恐喝罪が成立すると判例は判断しています(最判昭和30年10月14日)。
貸したお金を返してもらうケースのほか、示談金の請求などでも請求の方法によっては恐喝罪の加害者となってしまうことがあるので注意が必要です。自分では、「正当な請求だし、支払わない相手が悪い」などと思っていても、相手が恐怖を感じて被害届を出してしまえば恐喝罪の加害者として捜査をされてしまう可能性があります。
【参考】:恐喝の有名判例
恐喝罪の4条件を満たさない場合は、別の犯罪が成立するケースがあります。財物を奪う目的がない場合は「暴行罪」や「脅迫罪」が、暴行や脅迫なく財産を奪う場合は「窃盗罪」が成立する可能性があります。暴行や脅迫を用いて、財物の交付ではなく義務のない行為をさせる場合は「強要罪」が成立する可能性があります。また、暴行・脅迫の程度が相手が抵抗できないほどであれば「強盗罪」が成立する可能性があります。
恐喝罪と他の犯罪の区別
暴行罪・脅迫罪 | 単なる暴行・脅迫のみ |
窃盗罪 | 暴行・脅迫なく財物を窃取 |
強要罪 | 暴行・脅迫+義務のない行為をさせること |
強盗罪 | 相手の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫+財物の交付(利益の取得) |
恐喝罪 | 相手が恐怖する程度の暴行・脅迫+財物の交付(利益の取得) |
恐喝罪で通常逮捕される場合とで現行犯逮捕される場合
恐喝罪で現行犯逮捕される場合としては、暴行・脅迫等の恐喝行為の現場を目撃した第三者に通報され、駆けつけた警察官に逮捕されるケースが考えられます。この場合、お金などを奪う前の段階でも恐喝未遂として逮捕されたり、もっと早い段階では暴行罪や脅迫罪で逮捕されることもあります。
とはいえ、恐喝罪では、被害者からの被害届によって捜査が進み、通常逮捕されるケースが大半です。通常逮捕は、逮捕の理由と必要性がなければできませんが、被害金が高額な場合や、手段が悪質な場合、複数人が関与した共犯事件の場合、定職がない場合等は逮捕される可能性が高いといえます。
検察統計(法務省)によれば、2019年に捜査機関が取り扱った恐喝事件2,156件のうち逮捕された事件の数は1,668件でした。逮捕率は約75%となっており、逮捕される割合がかなり高い犯罪類型となっています。
恐喝罪で逮捕されたあとの流れは?
恐喝で逮捕されると、警察署で取調べを受け、逮捕から48時間以内に検察に送られます(送致)。検察官は送致から24時間以内に勾留する必要があるか判断します。検察官が勾留請求をしてそれを裁判官が認めると、原則10日、延長されると最大20日間は留置場から出られません。恐喝事件では送致されるとほとんどが勾留までされます。
勾留されると、勾留期間中に検察官が証拠を集め、事件を起訴する(刑事裁判にかける)かどうか決定します。起訴されると日本の刑事司法上約99%が有罪になりますが、不起訴になれば前科がつかずに釈放されます。勾留されず在宅で捜査が進む場合は、判断までに何か月もかかる場合もあります。

恐喝罪の刑罰|逮捕後、有罪なら懲役は何年?
恐喝罪の刑罰は、10年以下の懲役刑です。罰金刑がなく、懲役刑も長い、とても重い罪です。そのため、起訴されると必ず正式裁判にかけられ、無罪か、執行猶予付判決か、実刑判決を受けて刑務所に収容されるかのどれかになります。
起訴されてしまうと無罪の確率は極めて低いのが実情ですので懲役刑を避けるためには不起訴を目指す必要があります。
恐喝罪の懲役刑相場をみると、令和2年度の犯罪白書(法務省HP)によれば、2019年に通常第一審により刑が科せられた恐喝罪329件のうち320件とほぼすべての事件が懲役1~3年となっています(執行猶予含む)。また、執行猶予がついた割合は約65%程度(329件中215件)です。
ただし、なかには3年を超える実刑で執行猶予もつかないケースもあるので、注意が必要です。
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- 逮捕回避・早期釈放
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恐喝事件を弁護士へ相談すべき理由とは
恐喝事件を起こした後、弁護士に相談すべきタイミングは?
恐喝事件を起こしてしまった場合には、早急に弁護士に相談し、逮捕・勾留といった身体拘束を回避する弁護活動をしてもらいましょう。
恐喝事件は、逮捕される可能性の高い事件類型であり、逮捕されてしまうとほとんどが勾留までされてしまいます。
逮捕・勾留あわせて最大で23日間の身体拘束をされてしまえば、会社をクビになってしまうなど社会生活への影響は甚大です。
例えば、被害者と示談を行って被害届を出さないように合意をしたり、すでに出されてしまった被害届を取り下げてもらうことで、恐喝の刑事事件化を防いだり、事件を警察限りで終了させ、検察官へ送致されることを回避することが期待できます。
なお、国選弁護士制度を利用できるのは勾留決定後ですので、逮捕・勾留を防ぐための活動を依頼するには、私選弁護士に依頼する必要があります。恐喝事件は重大事件ですので不安がある場合にはまずは相談だけでもしてみることおすすめします。
また、勾留された後でも、弁護士に依頼すれば勾留の要件を満たさないことを主張するなどして、早期釈放を期待することができます。恐喝はその性質上、被害者を脅すことで証拠隠滅を図る懸念が強くありますので、早期釈放のためには被害者と示談を締結して事件について当事者間では解決しているということを適切に検察官に示せるかどうかが重要です。
身体拘束をされている場合、ご自身で示談交渉をすることはできませんので弁護士に活動してもらう必要があります。
弁護士から取り調べへの助言を受けることができる
恐喝事件では、突然警察が自宅にやってきて逮捕されることもあれば、警察から出頭命令を受けるケースもあります。
警察から呼び出しを受けた場合、任意であっても拒否することは逮捕されるリスクを上げてしまいますのでおすすめできません。事情聴取に対しどのように対応すればよいか弁護士に相談し、助言を受けておくことが重要です。
また、逮捕をされた場合は外部と連絡が取れなくなります。突然逮捕され、警察の取り調べを受けることとなれば適切に対応できないことが普通です。しかし、取り調べで作成された供述調書は一度サインをしてしまうと後から覆すことができず、後の裁判や勾留、起訴・不起訴の判断の証拠資料となってしまいます。そのため、取調べ対応について、一刻も早く弁護士の助言を受ける必要があります。
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恐喝事件での不起訴・執行猶予を目指す
恐喝罪の量刑を判断するには、示談の締結の有無、示談金の額、恐喝に至った動機や行為態様等が総合的に考慮されます。そこで、恐喝で不起訴処分の獲得を目指すためには、これらの対応を弁護士に依頼し、起訴か不起訴を決める権限を持つ検察官に結果を十分に伝えてもらうことが重要です。
起訴されてしまったとしても、示談ができれば、執行猶予になる可能性は高まります。裁判では、加害者の反省や再犯しないかといった事情が考慮されるからです。裁判で示談を考慮してもらうためには、示談内容を証拠として提出することが必要ですが、これは弁護士でなければ難しいでしょう。
恐喝罪は懲役刑しかない重大事件のため、示談できたからと言って必ず不起訴や執行猶予が獲得できるとは限りません。同種前科の有無、被害の大きさ、悪質性等の事情によっては厳しい判断になることもあります。それでも、示談が有利な事情になることは変わりません。諦めずに弁護士に示談を依頼してください。
アトム法律事務所が過去に扱った恐喝事件では、ほとんどの事件で被害者と示談が成立し不起訴処分を獲得しています。
恐喝を会社や周囲に知られずに解決できる可能性が高まる
弁護士なら依頼者の希望に応じて恐喝事件について会社や周囲に知られるといった影響を最小限にとどめられる弁護活動ができる可能性があります。
恐喝は逮捕されると報道されやすい事件類型です。実名報道されるとネットに情報が残る場合もあります。逮捕された事件については、報道を必ず防げる方法があるわけではありませんが、弁護士に依頼すれば、警察にメディアに情報を流さないよう要望書を出す等の活動をしてもらえます。できる限りのことをして損はありません。
また、そもそも被害者側と示談して刑事事件化を防いだり、自首により逮捕を回避する可能性を高めることができます。逮捕された場合でも、弁護活動により早期釈放されれば会社への影響が最小限で済みます。事件に関係がない限り、捜査機関が会社に事件を知らせることはまずありません。会社に事件が発覚する最たる理由は、勾留に伴う長期の身体拘束です。
恐喝罪の示談は弁護士へ依頼を
恐喝罪で不起訴になり前科をつけない|示談の重要性
恐喝罪で不起訴処分を獲得し、前科を避けるためには、被害者と示談をすることが大切です。示談とは、当事者間の合意のことをいいます。加害者が恐喝をしたことを反省して賠償を尽くし、被害者が謝罪を受け入れて合意したことは、有利な事情として考慮され、不起訴になる可能性が高まるからです。
示談には、民事上の問題も解決できるメリットがあります。刑事事件で示談をすることで、恐喝によって被害者に与えた精神的・身体的・金銭的損害を一挙に解決できるため、被害者救済にも役立ち、加害者としても、後で別に民事裁判を起こされて損害賠償を請求されるリスクを回避することができます。
恐喝罪で逮捕前・逮捕後に示談すべき理由とは?
恐喝罪の示談は、できるだけ早く行うことが重要です。逮捕される前に示談して、当事者間で今回の恐喝事件を解決できれば、逮捕自体を回避できる可能性が高まります。
恐喝は重大犯罪なので、逮捕されないとは限りませんが、被害者が許している以上、逮捕の必要性が低いと判断されやすいからです。逮捕・勾留後でも、示談によって早期釈放も期待できます。
また、検察官が起訴する前に示談できれば、不起訴になる可能性が高まります。起訴されてしまった後でも、示談できれば執行猶予が付く可能性が高まります。どのタイミングであっても、謝罪と賠償を尽くして示談できたことはプラスに判断してもらえるので、諦めてはいけません。
恐喝罪で示談を弁護士に任せるべき理由とは?
示談は、当事者でもすることができます。しかし、恐喝罪の示談は、特に弁護士に任せるべきです。
なぜなら、加害者が被害者に直接示談交渉をしようとすると、恐喝という犯罪の性質からも、被害者をさらに脅す等の証拠隠滅が疑われ、かえってマイナスに判断される恐れが高いからです。
また、示談といっても、単に被害弁償をするもの、事実を認めて謝罪するもの、被害者が事件を許す意向を示すもの(宥恕)など様々な程度があり、示談の効果が異なります。
恐喝では、被害者の恐怖や怒りから示談が難しいこともありますが、弁護士に任せれば、被害者に応じたベストな示談が期待できます。
アトムに寄せられたお手紙
恐喝罪の示談金相場
示談金は当事者の合意で決まるものですので、決まった金額があるわけではありませんが、ある程度の相場というものはあります。恐喝の場合、恐喝で得た金額(得たものが物品であればその時価)に、精神的苦痛に対する慰謝料を加味した金額がおおむね支払うべき額になります。
被害者の精神的苦痛は、恐喝行為の態様によっても大きく変わります。慰謝料額は、民事裁判で慰謝料請求をした際に認められる金額が目安にはなりますが、数万円~場合によっては数十万円になります。
恐喝で得た額も様々ですので、恐喝の示談金は数万円で済むケースもあれば、数百万円になることもあります。アトム法律事務所が過去に解決した恐喝事件の示談金についても参考にしてみてください。
恐喝罪で逮捕された時のために知っておきたい疑問
「恐喝罪」と「脅迫罪」の違いは?
恐喝罪は、暴行や脅迫によって財物などを脅し取る犯罪です。一方、脅迫罪は、人を怖がらせる程度の害悪を告げる、つまり脅す犯罪です。恐喝罪と脅迫罪の違いは、目的が「財物等を奪う」かどうかです。脅すことが目的なら脅迫罪、財物を脅し取ることが目的なら恐喝罪にあたります。
また、恐喝罪と脅迫罪は刑罰の重さでも異なります。恐喝罪は、10年以下の懲役刑しかない重大犯罪ですが、脅迫罪の刑罰は2年以下の懲役または30万円以下の罰金となっています。罰金刑でも前科はつきますが、罰金を払えば終了する略式裁判という簡易な手続きで終了することもあります。
恐喝事件での逮捕が会社や家族にバレる可能性はある?
恐喝事件での逮捕が、会社や家族にバレる可能性はあります。カツアゲや美人局などの恐喝事件は若者が起こすケースも多いですが、学生や未成年で特に親と同居している場合は、同居の親や保護者に連絡されるのが通常です。また、学校にも警察と教育委員会の相互連絡制度に基づいて連絡が行くこともあります。
なお、20歳未満の場合は通常の刑事手続きと異なり、通常は少年審判にかけられることになります。詳しくは『少年事件を弁護士に依頼する|わが子が犯罪を犯したらすべきこと』もあわせてご覧ください。
成人の場合も、逮捕されると長期間帰宅できないので、警察から同居の家族に連絡が入ります。一方、会社に対しては、社内の恐喝事件でない限り、警察から連絡することは少ないです。ただ、恐喝事件では、勾留され長期間留置場に入れられるケースが多いので、欠勤が長引いてバレる可能性が高いです。
恐喝罪での逮捕がニュースになることはある?
恐喝罪の逮捕がニュースになることはあります。実際、過去にも、コンビニの店員に因縁をつけて土下座をさせ、タバコを脅し取った女性が逮捕されたニュースや、子供が通う学校の校長に因縁をつけ、恫喝・暴行を加えて現金を脅し取った両親が逮捕され、有罪判決を受けたニュースが上がっています。
恐喝は重大事件で、昨今いじめによる恐喝事件が問題になっていることからも、成人・未成年を問わずニュースになりやすい類型といえます。しかし、弁護士に依頼して警察に要請してもらうことで、逮捕がニュースになることを防げる場合があります。事案により異なりますが、まずは相談してみましょう。