他人が盗んだ物を盗品と知って譲り受けると「盗品等関与罪」が成立する可能性があります。
盗品等関与罪を軽い犯罪だと思っている方が多いかもしれません。しかし、それは大きな間違いです。場合によっては、窃盗罪や詐欺罪より重い処罰が科されるおそれがあります。
この記事では、盗品等関与罪がどのような場合に成立するか詳しく解説します。不起訴になるための弁護活動についてもわかりやすくお伝えします。
目次
盗品等関与罪とは?
盗品等関与罪に当たる5つの犯罪
盗品等関与罪とは、具体的に以下の5つの犯罪をいいます。
- 盗品等無償譲受け罪
- 盗品等運搬罪
- 盗品等保管罪
- 盗品等有償譲受け罪
- 盗品等有償処分あっせん罪
盗品等関与罪が処罰される理由とは?
盗品等関与罪が処罰される理由について、大別すると2つの考え方があります。
①追求権説
財産犯の被害者が被害品に対して有する追求権の実現を困難にする点に本罪の処罰根拠があるとする説。
②違法状態維持説
本犯から生じた違法な財産状態を維持・助長し、将来の本犯の発生も一般的に助長する点に本罪の処罰根拠があるとする説。
以前は追求権説が多数説とされていました。しかし、盗品等運搬罪などの場合、懲役刑と罰金刑の併科とされ、窃盗罪や詐欺罪より重い法定刑が規定されています。この点は、追求権説だけでは説明が困難です。
そこで、現在では①被害者の追求権を侵害する点、②本犯を助長する点の両方の観点から盗品等関与罪の処罰根拠を考える立場が多数となっています。
なお、追求権とは所有権に限らず、被害者が法律上有する追求可能性を意味します。
盗品等関与罪の客体は?
盗品等関与罪の客体は「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」(以下「盗品等」)です。
盗品等は、具体的には以下の要件に該当する財物をいいます。
①財産罪によって領得された財物
盗品等は、窃盗罪、強盗罪、横領罪、詐欺罪、恐喝罪により不正に領得された財物です。
②本犯が構成要件に該当し、かつ、違法であること
盗品等関与罪の前提となる財産犯を「本犯」といいます。本犯は、構成要件に該当し違法であれば足り、有責性は不要です。
具体例として、窃盗犯人が14歳未満の刑事未成年者である場合を挙げます。刑事未成年者は責任能力がないと扱われ処罰されません(刑法41条)。
しかし、窃盗犯人が刑事未成年者であっても、その者から盗品を譲り受けた者は、盗品等譲受け罪で処罰されます。
③被害者が法律上追求することのできる財物
第三者が盗品等を即時取得(※)すると、本罪の客体ではなくなります。
ただし、最高裁判例は盗品について、民法193条により盗難の時から2年間返還請求権が認められるので、その間は盗品等関与罪の客体に当たると判断しています(最決昭和34年2月9日)。
例えば、Aが盗んだ商品を、その翌日Bが即時取得によって譲り受けたとします。さらにその翌日、Cが盗品であることを知りながらその商品を購入した場合、Cには盗品等有償譲受け罪が成立します。
※即時取得(民法192条)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
④動産だけでなく、不動産も含む
盗品等には動産・不動産の両方が含まれます。
不動産については、登記名義の移転によって盗品等関与罪が成立する場合が考えられます。
具体的には、不動産が詐欺罪や恐喝罪の対象になった場合、登記名義の移転による譲受けや処分のあっせんによって、盗品等関与罪が成立する可能性があります。
⑤盗品との同一性がある財物
盗品等関与罪の客体といえるには、盗品との同一性が必要です。
例えば、盗んだ金銭を両替しても同一性は失われません。したがって、両替後の金銭を情を知って譲り受けると盗品等無償譲受け罪が成立します。
これに対し、盗んだ金銭で買った商品は盗品との同一性がありません。したがって、情を知ってこの商品を譲り受けても盗品等無償譲受け罪は成立しません。
盗品等関与罪の主体とは?
盗品等関与罪の主体は本犯以外の者です。
例えば、窃盗犯が自分で盗んだ物を運搬したり保管しても盗品等関与罪は成立しません。
窃盗の事後行為の違法性は、当初の窃盗罪の中で評価され尽くしていると解釈するからです。
これに対し、本犯の教唆犯や従犯(幇助犯)は盗品等関与罪の主体になります。盗品等関与罪の違法性は教唆、幇助行為によって評価され尽くしているとはいえず処罰の必要があるからです。
例えば、Aが、Bをそそのかして万引きをさせた上、被害品を購入して譲り受けたとします。この場合、Aには窃盗教唆と盗品等有償譲受け罪が成立し、両罪は併合罪となります。
教唆犯や幇助犯とはどんな犯罪か、量刑はどうなるのか、成立要件はどんなものがあるかなど詳しい解説は下記の関連記事を参考にしてください。
関連記事
・教唆や幇助とはどんな犯罪?共犯の成立要件や事例、逮捕への対応を解説
盗品等関与罪の故意とは?
盗品等関与罪は故意犯です。したがって、「故意=盗品であることの認識」の有無が本罪の成否を左右します。
故意があるというために、本犯や被害者が誰かを認識している必要はありません。基本的に行為時点で盗品であることの認識が必要です。
盗品であることの認識は未必的なもので足ります(最判昭和23年3月16日)。
例えば、売渡人から盗品であると明確に説明されなくても、買受物品の性質、数量、売渡人の態度等から「盗品ではないか」と疑いを持ちながら買受けた場合、盗品等有償譲受け罪が成立する可能性があります。
さらに、盗品等関与罪の行為者と本犯者の従来の関係、本犯者の人物や素行についての行為者の認識、物品の性状とその対価の額、同種の物の売買や収受に関する行為者の従前の行動等も故意の判断基準とされます(最判昭和58年2月24日参照)。
親族間の盗品等関与罪は処罰されない?
一定の親族間における盗品等関与罪は、刑が免除されます(刑法257条)。身内のために盗品等を処分するのは仕方がない面があり、責任が減少するという理由に基づくものです。
具体的な条文の内容は以下のとおりです。
親族等の犯罪に関する特例(刑法257条)
①配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で盗品等関与罪を犯した者は、その刑を免除する。
刑法257条
②前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
上記①の「配偶者」に内縁関係は含まれません。「直系血族」は、父母や子どものことです。「親族」は、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族を意味します(民法725条)。
親族関係は、本犯と盗品等関与罪の行為者との間に必要です。
例えば、夫が盗んだ商品を妻が盗品と認識しつつ保管した場合、妻には盗品等保管罪が成立しますが刑は免除されます(刑法257条1項)。
なお、窃盗犯人Aの夫Bとその知人Cが盗品を運搬した場合、Bは刑が免除されますがCは盗品等運搬罪で処罰されます(同条2項)。
【各論】盗品等関与罪の具体的内容を解説
盗品等無償譲受け罪
無償譲受けとは、無償で交付を受け取得することです。贈与も含まれます。約束だけでは足りず、盗品等の引渡しを受けることが必要です。
盗品等運搬罪
運搬とは、盗品等を場所的に移動させることです。有償、無償は問いません。
最高裁判例は、盗品を被害者のもとへ運ぶ行為について、本犯の利益のために、盗品の返還を条件に被害者から多額の金員を得るため行った場合は盗品等運搬罪が成立すると判断しています(最決昭和27年7月10日)。
盗品等保管罪
保管とは、委託を受けて盗品等の管理をすることです。有償、無償は問いません。約束だけでは足りず、盗品等の引渡しを受けることが必要です。
盗品だと知らずに委託を受けて保管していた物が、その後盗品だと知った後も預かりを継続した場合、事情を知った以後は盗品等保管罪が成立します(最決昭和50年6月12日)。
盗品等有償譲受け罪
有償譲受けとは、有償で取得することです。本犯者との直接の売買だけでなく、転売によって取得した場合も本罪が成立します(大判昭和8年12月11日)。契約が成立しただけでは足りず、盗品等の移転が必要です。
盗品等有償処分あっせん罪
有償処分あっせんとは、売買や質入れなど有償の法律上の処分を仲介することです。あっせん行為自体は有償・無償を問いません(最判昭和25年8月9日)。
あっせん行為が行われれば,現に売買等が成立しなくても盗品等有償処分あっせん罪は成立します(最判昭26年1月30日)。
盗品等関与罪の弁護活動を解説
「盗品等関与罪に関わったかもしれない」と少しでも不安があれば、早期に弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は以下のような弁護活動を行い、ご本人を守ります。
弁護士費用について不安な方もご安心ください。アトム法律事務所では料金体系を明確化しております。詳しくは『弁護士費用』をご覧ください。
早期の示談で不起訴処分を目指す
盗品等関与罪で不起訴となるには示談が重要です。不起訴になれば前科はつきません。
示談成立の可能性を上げるには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に依頼するのが最善策です。
弁護士であれば、被害者の連絡先を検察官に問い合わせることが可能です。
また、被害者の宥恕(許し)を得られるよう尽力します。宥恕付き示談が成立すれば、不起訴処分の可能性はより高くなります。
警察に事件が発覚する前に示談すれば、逮捕の回避も期待できます。
適切な取り調べアドバイスで不起訴処分を目指す
盗品等関与罪では、盗品性の認識があったかどうかがよく問題になります。警察や検察の取り調べで盗品性の認識について細かく聴取されます。
ここで適切な対応をとれば、盗品性の認識を欠くとして不起訴となる可能性が高まります。
適切な取調べ対応の内容は、事案によって様々です。黙秘した方が良いケースもあれば、進んで供述した方が良いケースもあります。ご自身の判断で供述内容を変えると、盗品性の認識があったことを隠そうとしていると判断されるおそれがあります。
大切なのは一貫した供述態度をとること。そのためには、できる限り早期に弁護士に依頼して弁護方針を決めることが重要です。
少年事件にも迅速丁寧に対応
盗品等関与罪は未成年者が当事者となることも少なくありません。典型例として、友人が万引きした物を盗品と知りつつ譲り受ける場合があります。
少年事件は通常の刑事事件とは異なる流れで進みます。最終的な処分結果は、再非行のおそれがどれだけあるかに注目して決められます。
盗品等関与罪の場合、交友関係など少年の周辺環境をいかに改善できるかがポイントになるでしょう。
アトム法律事務所は少年事件にも迅速丁寧に対応いたします。お子さんが盗品等関与罪に関わってしまいどうしていいか分からないという保護者の方、まずは当事務所までご相談ください。
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