この記事では、万引きをしてしまった加害者の方向けに、被害者と示談できない場合の3つの対応策を解説していきます。
万引きをした場合、刑事処分を避けて前科がつくのを防ぐためには示談の有無が重要な要素となります。
ですが、万引き額が数百円から数千円程度の金額であっても、被害者側の事情によっては示談ができないケースも多々あります。
このような場合でも弁護士に相談し、被害弁償や供託など正しく対応することで前科がつくことを回避する可能性を上げることができます。
万引きをしてしまい、被害者と示談できないことにお悩みの方は、ぜひこの記事をご参考にしてください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
万引きの示談ができない主なケース
万引きをしてしまった場合でも、被害者との間で示談を結ぶと、刑事処分を軽減する可能性を上げることができます。
万引きの示談についての詳細は『万引きは軽い犯罪ではない?懲役刑・罰金刑を避ける示談の方法とは』もご覧ください。
しかし示談の交渉をしても、一切被害者に応じてもらえないケースもあります。
警察による微罪処分や、送検された後の不起訴処分や刑の減軽を目指すためにも示談の有無は極めて重要です。
微罪処分とは
被害が軽微な犯罪のうち、一定の基準に合致する事件を検察へ送ることなく、警察の取り調べで完結させることを微罪処分といいます。
全ての犯罪事件が検察に送致されると、検察官の負担があまりにも大きいので、負担を軽減するために設けられています。
警察限りで事件が処理されるため、起訴されることもなく前科もつきません。
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りではない。
刑事訴訟法246条
まずここでは、示談ができない主なケースをご紹介します。
会社の方針で一切応じてもらえない
大規模チェーン店や大手ショップなどで万引きをすると、会社の方針で示談を一切拒否されてしまう場合があります。
この場合、万引きをした店舗と交渉しようとしても、示談できる可能性はほとんどありません。
被害額がいくらであろうと、万引き事件に対するマニュアルのようなものが用意されており、会社として一律で同じ対応をとらなければならないためです。
ですが、弁護士であれば示談できない場合でも、刑事処分を軽くする対処法をアドバイスすることができます。
処罰感情が強すぎて応じてもらえない
被害者の処罰感情が強いと、示談に応じてもらえない場合もあります。
万引き事件は、店員が声を掛けたり身柄を押さえたりして、通報で駆け付けた警察官に現行犯逮捕されるケースが多いです。
そのため、その時の行動や態度が悪いと、被害者の処罰感情が強くなってしまい、示談に応じてもらえなくなる可能性があります。
また、頻繁に万引き被害に遭い経営に苦しんでいるなど、罪を償わせたいという感情がそもそも強い被害者である場合も考えられるでしょう。
このように示談を拒否されている場合でも、改めて反省している態度を示すことで刑事処分を軽くできる可能性が高まります。
どのような謝罪の方法が適切なのかでお困りの方は、万引き事件の解決実績が豊富なアトム法律事務所の弁護士までご相談ください。
示談金が法外で、加害者側が払えない
万引きの示談金相場は30万円前後となっています。ですが、この金額を遥かに超える金額でなければ示談を締結しないという態度の被害者もいるでしょう。
交渉が難航している時点で弁護士まで連絡するのをオススメしますが、自身で交渉していた場合には交渉の経過が分かる報告書を作成しておきましょう。
最終的に示談が締結できず、起訴されてしまった場合でも、報告書があれば加害者側が被害弁償に向けて努力を尽くしたことを主張することができます。
これにより、加害者の刑事処分が軽くなる可能性が高まります。
万引きで示談できないときの対処法3選
示談ができず万引きで起訴され前科がついてしまうことを防ぐために、加害者は示談以外の方法で刑事処分の軽減を試みることが可能です。
ここでは、示談の代わりに加害者側のとれるアクションを説明していきます。
①被害弁償
被害弁償とは、万引きをした商品の返品や、使用していた場合にはその金額相当額の返金などを含めた、被害全額の弁償を指します。
被害弁償は金銭的な賠償のみとなり、被害者の許しや被害届の取り下げなど、刑事処分に大きく影響を与える内容を含む示談とは異なります。
ですが、示談ができないとしても最低限の被害回復は行わなければなりません。この姿勢が見られないと、警察や検察の印象がかなり悪くなり、微罪処分や不起訴処分の獲得が難しくなるからです。
被害者から示談自体を断られているとしても、被害弁償はしっかりと行いましょう。
また、被害者が受領した場合には、受取証書(領収書)を発行してもらうようにしてください。直接受領してもらえず、現金書留で送付した場合には、控えを取っておく必要があります。
②供託
示談に応じないほど被害感情の強い被害者であるため、粘り強く交渉を試みても被害弁償を受け取ってもらえない場合もあるでしょう。
そこで、供託という手段を使うことが可能です。
供託とは、被害者が被害弁償額をいつでも受け取れるよう、国の機関である供託所に金銭を預ける賠償方法です。これにより、相手に直接金銭を渡せなかった場合でも、賠償を行ったものと同じ効果を生じさせることが可能です。
また供託は、被害弁償額だけではなく遅延損害金(年利3%)と合わせた金額でなければ受け付けてもらえないので注意が必要です。
この方法でも被害者との示談にはなりませんが、相手が金銭をすぐに受け取れる状態を作っているという点で、被害者に対して謝罪と被害弁償の意思を示すことができます。
また被害弁償を受け取ってもらえないから放置したというわけではなく、賠償すべく努力していることを警察や検察に対してアピールできるのです。
供託は個人だけで行う必要はなく、弁護士側で申請・手続きなどを代行可能です。また、供託が有効なケースか否かについても、万引き事件のトラブル解決に長けた弁護士であれば的確なアドバイスが可能です。
少しでも不安がある場合には、アトム法律事務所までご連絡ください。
③贖罪寄付
万引きで示談ができない場合のもう一つの代替措置として、贖罪寄付という手段があります。
都道府県の弁護士会や法テラスなどの団体に対して寄付を行うことで反省の意思を示すことができる制度です。
そして寄付先の団体から発行される証明書を、検察や裁判所に提出することで処分の軽減を図るのです。
供託が被害者個人に対して、いつでも受け取り可能な金銭を国に預けるという制度であるのに対し、贖罪寄付は団体に対しての寄付となります。そのため、寄付した金銭は被害者の元には届きません。
この点で、加害者の有利になるのは供託ですが、被害者の氏名や住所が捜査機関から教えてもらえない場合には供託はできません。
そこで、反省を示す最後の手段として贖罪寄付を行うこととなります。
また、贖罪寄付は弁護士を通じて行うのが一般的です。贖罪寄付の事実を警察が考慮することは滅多にないので、寄付のタイミングは検察に送致されてからとなります。
しかし、どの団体に寄付すべきなのか、寄付額はいくらが妥当なのか、そもそも効果がある事件なのか・・・など判断が非常に難しいため、弁護士への相談がオススメです。
供託 | 贖罪寄付 | |
---|---|---|
納付先 | 供託所(法務局管轄) | 法的な団体 |
効果 | 被害者が受け取れば被害弁償となる | 反省の意思を公に示すことができる |
納付額 | 被害弁償額と遅延損害金の合計 | 示談相場額(20~30万円)と同等かそれ以下 |
万引きで示談できないと起訴されるのか?
万引き後に示談ができない場合には被害弁償、供託、贖罪寄付をすることで反省の態度を示すことができます。また、何度も被害者のところに足を運んで謝罪することや謝罪文を用意しておくことも、処分を軽くする可能性があります。
しかし、どれだけ反省し謝罪の意思を示しても、最終的に刑罰が科されてしまう可能性ももちろんあります。
万引きで有罪になるのはどのような場合が多いのか、有罪になればどのような刑罰が科されるのかについて、ここでは解説していきます。
万引きはどのような罪に問われるのか
「万引き罪」という罪は法律上存在していないため、万引き行為は「窃盗罪」として扱われます。
窃盗罪は起訴されて有罪が確定すると、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(刑法235条)。
アトム法律事務所の解決実績の中では、懲役刑・罰金刑の割合はほぼ同じです。
万引きの裁判の懲役・禁固56% 罰金・科料44%|刑事事件弁護士アトム
一度万引きしただけで処罰されるというわけではなく、常習性がある場合や同種の前科・前歴がある場合に有罪となるケースがほとんどです。
初犯で起訴される可能性は低い
初犯の万引きは、微罪処分で刑事手続きが終わるのが大半であるため、起訴される可能性は低いです。
もちろん、計画的な犯行や、被害状況が深刻だったり、全く反省の態度がなかったりする場合には起訴される場合もあります。
とはいえ、いくらまでの万引き額で微罪処分となるかどうかを判断するのは、プロでなければ難しいです。
初犯で微罪処分だから大丈夫だと安心することなく、まずは弁護士までご相談ください。
前科がある場合には起訴されやすい
初犯と比べると不起訴処分を得るハードルが高いのが、前科がある場合です。
前科があると必ずしも有罪確定という訳ではありませんが、起訴され有罪となる可能性が極めて高くなります。
前科がある場合には、より一層最適な謝罪活動を行い不起訴処分獲得に向けて動く必要があります。
アトム法律事務所の所属弁護士は、万引きの前科がある加害者の方の弁護実績が豊富です。前科がある方で、再び万引きをしてしまった場合には、早急にご連絡ください。
前科がある方の不起訴獲得実績については次の事例もご覧ください。
万引き(不起訴処分)
ドラッグストア店において、日用品を万引きした窃盗の事案。数か月後に自宅に警察官が訪問し、後日出頭するよう言われる。同種前科あり。
弁護活動の成果
被害店舗と宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴
万引きで示談できないときは、アトム弁護士まで相談を!
万引きをして示談ができない場合には被害弁償、供託、贖罪寄付の3つの代替措置があることをご紹介してきました。
ですが、加害者自身で最適な代替措置を選び、申請や手続きを完了させるのは非常に困難です。
それぞれの事案に応じた必要な対応や用意すべき金額など、トラブル解決のプロでなければ判断が難しいからです。
万引きのトラブル解決実績が豊富なアトム弁護士であれば、加害者の置かれている状況を的確に捉え、最適なサポートをすることが可能です。
示談できていないが、どのような手段をとるのが最適なのか。またそもそも示談の代替措置が必要な状況なのかどうか・・・などでお困りの方は、アトム法律事務所までご連絡ください。