自転車が盗まれてしまったという事件は後を絶えません。件数も多く、身近な犯罪でもあるためか、自転車窃盗については犯罪行為であるにもかかわらず甘く考えている人が少なくありません。
しかし、他人の自転車を持ち去った時点であなたは加害者となり、最悪の場合、逮捕や刑事処分に問われるおそれが生じます。
今回は、自転車窃盗を犯してしまった場合、どのような犯罪が成立するのか、前科がついてしまうのか、それらを回避するため何をすべきなのか、弁護士に相談するメリットは何なのかをひとつひとつ解説していきたいと思います。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
自転車窃盗の検挙・逮捕状況
自転車窃盗の検挙率
窃盗罪の中でも、自転車窃盗の検挙率は相当程度低いです。
窃盗罪全体の検挙率が40.9%であるのに対して、自転車窃盗の検挙率は7.9%となっています(警察庁の統計|2021年)。
これは、無施錠の自転車を盗もうとしている人がいても、周りの人からすると自転車の持ち主と区別ができず、警察に通報することがなかなか期待できないため、被害者が盗難届を出した時には既に犯人特定が困難な状態に至っているということが要因の一つであるといえるでしょう。
しかし、自転車窃盗で検挙されている人がいることもまた事実です。甘く考えていると、後日警察から呼び出しを受けるという可能性も十分にあるでしょう。
自転車窃盗も立派な犯罪行為であり、検挙される割合が低いからといって、逮捕や起訴されるおそれもないと判断することは誤りです。
自転車窃盗で検挙されるパターン
自転車窃盗の場合、自転車を持ち去ろうとしている最中や盗んだ自転車で走行している際に警察に職務質問され、防犯登録の照合がされた結果、自転車窃盗が判明するケースが多いです。
また、一般的な窃盗事件と同じように、盗まれた人が盗難届を提出することで、警察の捜査が開始されることもあります。
そして、自転車を盗んでいる場面を目撃したという第三者の証言や、防犯カメラ映像などの直接証拠があれば、比較的容易に犯人が特定され、検挙されることになります。
自転車窃盗で逮捕されることはある?検挙後の流れ
自転車窃盗で警察に検挙された後の流れは主に、①逮捕、②在宅捜査(書類送検)、③微罪処分の3パターンです。
逮捕されると、身柄を拘束され、警察署内の留置場で寝泊まりしながら警察の捜査を受けることになります。もっとも、自転車窃盗では、同種前科があるなどよほどの事情がない限り、警察が逮捕手続に踏み切る可能性は低いものと考えられます。
常習犯ではなく初犯であって、きちんと事実を認めた上で反省しているのであれば、ほとんどは警察署で取調べを受けたあと、その日のうちに解放されます。
このとき、微罪処分であればその時点で処分は終了ですが、そうではなく在宅事件として書類送検され捜査が続くこともあるので注意が必要です。
微罪処分
検察が指定した一定の極めて軽微な事件類型について、警察の判断によって厳重注意で済ますなどの警察限りで処理される処分。微罪処分にした事件は月ごとに一括して検察官に報告される。
ただし、微罪処分の対象となる事件は限られており、いくつかの要件に該当する場合にのみ適用される可能性があります。微罪処分となる要件や判断基準、処分の流れなどを詳しく知りたい方は、関連記事『微罪処分の要件と流れ|微罪処分の6つの判断基準と対象事件』を参考にしてください。
また、以下の記事を読むと逮捕や書類送検といった事柄についてわかります。刑事事件の流れの中でも重要なポイントになるので、参考にしてください。
関連記事
・在宅事件の流れを解説|起訴率は低い?逮捕される刑事事件との違い
・逮捕と書類送検の違い|今後の対応次第で前科がつかない可能性もある
検挙総数 | 5,428人 |
逮捕 | 381人(7.0%) |
書類送検 | 2,287人(42.1%) |
微罪処分、少年簡易送致※ | 2,760人(50.8%) |
※少年簡易送致:一定の軽微な少年事件について、毎月一括での簡易な書類の送致のみで済ます手続き。
簡易送致された事件は、書類上の手続のみで審判不開始の決定がされるため、家庭裁判所に呼び出されたり調査を受けることはなくなる。
自転車窃盗で成立する犯罪と刑罰の重さ
自転車窃盗を犯してしまった場合、状況に応じて成立する犯罪が変わってきます。また、場合によっては窃盗以外の行為について別途犯罪が成立してしまう可能性もあります。
まずは、自転車窃盗に及んでしまったことでどのような犯罪が成立するのかを確認していきましょう。
窃盗罪が成立することが一般的
他人の自転車を無断で持ち去った場合、原則としては窃盗罪(刑法235条)が成立します。窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
なお、一時的に使用するつもりであった(すぐに返すつもりであった)としても、その後の使用態様などによっては犯罪の成立は否定されないと判断される可能性があり、そのため、少しだけ使うつもりで返す予定だったという言い訳は通用しないと考えていた方が無難でしょう。
放置自転車なら占有離脱物横領罪が成立する場合も
盗んだ自転車がたまたま盗難車両であった場合、あるいは、所有者の下を離れ長い間放置されていたと評価できるような自転車を盗んだ場合などでも犯罪は成立してしまいます。
このような場合、窃盗罪よりも罪の軽い占有離脱物横領罪という犯罪が成立することになります。占有離脱物横領罪の法定刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」です。
器物損壊罪・住居侵入罪に問われる可能性
また、自転車を盗む行為自体だけではなく、自転車を盗むための準備的行為ないし前提的行為が別途犯罪を構成する可能性があります。
例えば、自転車を盗むため、車輪をロックするための鍵やチェーンを破壊する行為が挙げられます。このような行為は「器物損壊罪」に該当し、窃盗罪とは別に刑事責任を問われる可能性があります。
また、マンション内の駐輪場にある自転車を盗もうとマンションの敷地内に立ち入る行為は、「住居侵入罪」という犯罪が別途成立するおそれがあります。
このように他の犯罪が成立してしまうと、罪が重くなってしまうだけではなく、自転車窃盗で逮捕された後、別の犯罪を理由に再逮捕されて身柄の拘束期間が長期化してしまうという不利益が生じる可能性があります。
自転車窃盗の前科・刑罰を回避するには示談が重要
自転車窃盗をしてしまい逮捕が不安な方や、刑事事件化してしまった場合の対応について説明します。
不起訴になれば前科はつかない
自転車窃盗で逮捕されてしまった場合はもちろん、逮捕されなかったものの刑事事件として立件されてしまい、このままでは刑事処分を受けることになってしまうと不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。
逮捕されたり刑事事件として立件されたからといって必ず刑事処分を受ける必要があるという訳ではありません。刑事処分を下すべきかどうかの最終的な決定権は検察官にありますが、検察官は問題となった犯罪の軽重や情状面などにおける様々な事情を総合的に斟酌した上で、刑事処分を下すべきか否かについて慎重に判断しています。
仮に自転車窃盗で立件されてしまったとしても、諸般の事情に鑑みて検察官は不起訴処分が妥当であると判断する場合もあり、不起訴処分となれば当然前科が付くことも回避できることになります。
示談で自転車窃盗の盗難届を取り下げてもらい不起訴を獲得
自転車窃盗といえど、逮捕されて身柄拘束が長引いてしまったり前科がついてしまえば、ご自身の社会生活に甚大な悪影響が生じるおそれがあります。
そのような事態を回避するため、かつ、より確実に不起訴処分を獲得するための最も有効な手段としては、被害者との示談を成立させることです。
被害者と示談をして盗難届を取下げてもらうことができれば、刑事処分が下ることを被害者が望んでいない(宥恕すると表現することもあります。)ことになるため、検察官も不起訴処分という結論を下しやすくなるからです。
自転車窃盗の被害者との示談交渉は弁護士に相談
示談を成立させるためには、被害者の方と直接連絡を取って交渉をする必要がありますが、ほとんどの被害者は、被疑者(加害者)と直接連絡を取りたくないと考えています。
そのため、ご自身で直接被害者との間で示談交渉をすることはあまり現実的ではなく、多くの場合、被害者との示談交渉を弁護士に依頼して行われているのが実情です。
刑事弁護士に精通した弁護士に示談交渉を任せることで、円滑な示談の成立はもちろん、不当に高額な示談金を払わなければならないという事態も防ぐことができます。
自転車窃盗の解決事例
路上において、無施錠の自転車を盗んだところ、遭遇したパトカーから声を掛けられて犯行を自白し、後日警察署に出頭して書類送検された窃盗の事案。
弁護活動の成果
被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分となった。