刑事事件の保釈金の相場はどのくらいなのか、保釈金は返ってくるのか、お金を用意できない場合は釈放されないのかなど、保釈について気になる方も多いのではないでしょうか。
保釈金の相場は150万円から300万円になる傾向にあります。ただし、犯罪の重さや収入などの事情によっても保釈金の金額は変わります。
また、そもそも保釈を認めるかどうかは最終的に裁判所が決めるため、相場とされる金額を用意するだけでは不十分になる場合もあるでしょう。
ご自身のケースで保釈金がいくら必要なのか、保釈が認められる可能性はあるのか知りたい方は、まずは弁護士に相談してみてください。記事の中では、アトム法律事務所の弁護士が獲得した保釈実績も紹介しています。
保釈金の相場はどのくらい?
一般的な保釈金の相場は150万~300万円
保釈金の一般的な相場は、150万~300万円程度です。
保釈金の金額は「犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない」と定められており(刑事訴訟法93条2項)、犯罪の性質や被告人の財産状況等に応じて裁判所が決定します。
犯罪の量刑が重い場合や、高収入の場合は保釈金の相場が高額になる一方、仕事で不可欠な立場にあったり身元引受人の下で生活できる場合は、逃亡の恐れが低いと考えられるので相場はさほど高くなりません。
保釈金の金額は、経済情勢を反映して昔より相場が高くなっています。
罪名ごとの保釈金相場|窃盗や薬物事件等の保釈金例
罪名ごとの保釈金相場は、窃盗なら150万円前後、大麻なら200万円前後、詐欺なら250万円前後、強制わいせつなら200万円前後、強制性交等なら300万円前後となります。
アトム法律事務所には、これまでに600件超の保釈実績(2022年末時点)があります。
ここでは、保釈が認容された実際の事件を紹介します。
窃盗(万引き)事件での保釈
スーパーにおいて、刺身等十数点の食品(販売価格合計数千円相当)を万引きしたとされる窃盗の事案。なお依頼者は窃盗の罪で執行猶予中の身だった。
弁護活動の成果
保釈が認容され早期釈放が叶った。裁判の場においては窃盗症治療の通院記録などを証拠として提出。その他情状弁護を尽くし執行猶予付き判決を獲得。
保釈金
150万円
大麻事件での保釈
弟と共にアパート内で大麻を栽培し、またその大麻を使用していたとされたケース。大麻取締法違反の事案。
弁護活動の成果
保釈請求却下決定に対する準抗告が認容され、早期釈放がかなった。裁判の場で情状弁護を尽くし、執行猶予付き判決を獲得した。
保釈金
200万円
上記はあくまで一例であり、加害者の立場や収入、前科前歴、余罪の有無などで保釈金は大きく変わります。
百貨店で食品等数点を万引きした窃盗で200万円のケース、無職の人が大麻所持をして100万円のケース等、犯罪の態様や資産の状況等によって、実際の保釈金の事例は様々です。
ご自身やご家族のケースについて保釈金の相場が心配な方は、弁護士に相談してみてください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
有名人・芸能人の保釈金例
有名人や芸能人の保釈金は高額になることがほとんどです。
- カルロス・ゴーン氏(金融商品取引法違反・会社法違反、15億円)
- 堀江貴文氏(証券法取締法違反、5億円)
- 小室哲哉氏(詐欺、3000万)
- ASKA氏(薬物、700万円)
- 清原和博氏(薬物、500万円)
- 沢尻エリカ氏(薬物、500万円)
- 新井浩文氏(強制性交等、500万円)
過去最高金額の保釈金は、日産のカルロス・ゴーン氏が納付した15億円です。彼は国外逃亡を図り、保釈金が没収(法律では没取(ぼっしゅ)という)され、さらに話題となりました。
保釈金は、起訴された被告人の出頭を確保する担保となるお金なので、資産を多く持つ有名人だと高額な保釈金が必要になります。
保釈金の金額はどうやって決まる?
年収が高いと保釈金相場も高くなりがち
年収の高さは保釈金の相場に影響します。法律でも「被告人の性格及び資産を考慮して」とされていますが、年収が高く保有資産が多いほど、保釈金の相場は高くなります。
保釈金は出頭させるための担保なので「逃亡して保釈金が没収されると困る」というプレッシャーになるような金額であることが必要だからです。
学生やアルバイト等で年収が少ない場合は保釈金100万円のケースもありますが、会社員や公務員だと150万~300万円、年収が高い会社員や医師等では300万を超える場合も多くみられます。
また、政治家や有名人等で高収入の場合、500万円超から数千万円、場合によっては億を超えることもあるでしょう。
犯罪の性質によっては保釈金相場も高くなる
犯罪の性質も、保釈金の相場に影響を与えます。保釈金は「釈放後に逃げて没収されるわけにはいかない」と思わせる金額である必要があるため、犯罪の量刑が重いほど刑罰から逃げたくなるのが心情なので、保釈金の相場が高くなるのです。
たとえば、重い犯罪で保釈金100万円程度であれば、保釈後に加害者が逃げてしまう可能性が高くなります。「100万円くらいなら痛くないから没収されても逃げてしまおう」と考えられては困るので、罪が重ければ重いほど、保釈金が高くなるのです。
アトム法律事務所が実際に扱った窃盗罪の事例では、店舗侵入を伴う窃盗で150万円の保釈金というケースもありましたが、同じ窃盗でもひったくりをして被害者に危害を加えたような場合には250万円以上の保釈金が必要になることもあるでしょう。
保釈金(保釈保証金)とはどんなもの?
保釈金とは保釈の際に預けるお金
そもそも保釈金とは、起訴された後も身柄拘束が続いている被告人を釈放するために、裁判所に一時的に預ける金銭のことです。正式には保釈保証金といいます。
保釈はただ保釈金を預ければ成立するものではなく、弁護人等が保釈請求を行い、裁判官の許可を得る必要があります。つまり、保釈で釈放されるためには、裁判官による保釈の許可と保釈金の納付が条件になります。
保釈金は、被告人の出頭を保証するためのもので、「保釈金が没収されないように出頭しよう」と被告人に心理的圧力をかける効果があります。
そこで、被告人が支払える範囲内でありながら、没収されると困る金額が保釈金として決められるのです。
保釈の制度や具体的な申請手続きについて詳しくは『保釈申請の流れ。保釈条件と必要な保釈金は?起訴後の勾留から解放』の記事が参考になりますので、あわせてご覧ください。
保釈金を支払うメリットとは?
保釈金を払うメリットは、決められた金額を納付すればすぐ釈放されることでしょう。
保釈は、起訴されないと利用できない手続きですが、対象になる被告人は逮捕以降ずっと身柄拘束が続いていることが大半になります。保釈が許可され、保釈金を支払えば外に出られるので、被告人の精神的メリットは大きいです。
また、保釈金を払って釈放されれば、裁判所の出頭要請に応じることを条件に、日常生活を送ることができるので、仕事や学校にも復帰できます。
さらに、起訴されている状況なので、来るべき裁判に向けて弁護人と十分に打ち合わせができることも保釈金を払う大きなメリットになります。
保釈金はいつ支払う?
保釈金は、保釈申請を受けた裁判官が、保釈を認める決定を行った後に支払います。検察官や弁護人の意見を聞いた裁判官によって、保釈金の金額や釈放後の住居等の条件も含めた保釈の許可が出されるでしょう。
通常は弁護人が起訴直後に保釈申請を行いますが、その日に保釈されることは少なく、翌日や2~3日後に保釈決定されから保釈金を払うケースが多いです。
早期の釈放を実現するために、保釈金は保釈許可決定の当日に払うのが一般的です。裁判官が保釈許可決定を出す時間は13時以降になりやすいので、午後の支払になることが多いでしょう。
保釈金を納付し、領収印が押された書類を担当部署に提出すると、裁判所から検察庁に連絡が行き、当日中に被告人が釈放されます。
保釈金は誰が・誰に支払う?
被告人やご家族が用意した保釈金を弁護人が預かり、代わりに裁判所に納付して支払うのが通常です。保釈金は、原則として現金で納付しますが、ご家族が裁判所に出向く必要はありません。弁護人がご家族から預った保釈金を裁判所の出納課に持参して支払うのが一般的な運用となっています。
最近では、保釈金を銀行やネットバンクで電子納付できるようになりました。遠方の裁判所で事件が扱われている場合、出向いて納付することで釈放されるまでにタイムラグが生じることもあったためです。電子納付により、早期対応が可能になりました。利用には事前登録が必要なので、遠方で心配な場合は弁護人にお尋ね下さい。
保釈金は返ってくる!没収されるケースとは?
基本的に預けた保釈金は返ってくる
保釈金は、保釈中に裁判所の出頭要請に応じるなどし、無事に裁判を終えれば、判決が言い渡された日から数日~1週間で全額返ってきます。弁護人が保釈を請求するケースでは、弁護人が保釈金を納付する際に自身の預り金口座を保釈金の返金先に指定する書面も提出し、その口座に振り込まれるでしょう。
しかし、保釈中に逃亡したり、出頭要請に応じなかったりして裁判に出席しなかった場合や、共犯者に連絡を取って証拠隠滅を図った場合など、保釈の許可時に決められた条件に違反した場合、保釈金は没収されます。
保釈金が没収されるケース
保釈後に保釈取消にあたる事態を起こすと、検察官の請求や裁判所の職権で保釈が取り消され、裁判所に保釈金の全部または一部が没収されることになります。
保釈が取り消されると、判決前に保釈金を没収されるだけではありません。保釈金の没収とともに、身柄拘束もされることになります。
保釈取消と保釈金没収を記した書面が保釈中に被告人の住む住所に送られ、警察官等が被告人に勾留状等を示して身柄を拘束しに来るという最悪の事態になりかねないので、保釈後の行動にはくれぐれも注意するようにしましょう。
保釈が取り消される場合とは?
刑事訴訟法96条において、保釈が取り消される場合は次の5つを定めています。
保釈が取り消される場合
- 正当な理由なく裁判に出頭しないとき
- 逃亡したり、そのおそれがあるとき
- 証拠隠滅したり、そのおそれがあるとき
- 被害者等の関係者に危害を加えたり怖がらせたとき
- 住居制限など保釈の条件に違反したとき
上記の事態が発生して保釈が取り消されると、保釈金も没収され、再び勾留されることになります。
保釈されたものの同居の親がうるさいとか、判決前に海外旅行に行きたい等という場合もあるかもしれませんが、勝手な行動を起こすと保釈が取り消されます。事情がある場合は必ず弁護士に相談しましょう。
保釈金が用意できないときはどうする?
日本保釈支援協会の立替え制度を利用する
保釈金が用意できない場合、残念ながら分割払いはできません。しかし、保釈金が用意できない場合でも釈放を諦めてはいけません。
裁判が無事終われば返金されるので親戚等から借りる方法もありますが、それも難しい場合は、「日本保釈支援協会」の立替え制度を利用することができます。
日本保釈支援協会は、保釈金の支援を目的とする団体です。家族等からの立替えの申請を受けると、今回の容疑や前科等について審査が行われ、問題がなければ500万円までの保釈金の立替えを受けられます。
裁判が終わり保釈金が還付されれば、協会に返金します。審査も早いので、困った場合は検討する価値があるでしょう。
保釈支援協会のHPはこちら
立替え制度を使うときの注意点は?
保釈金の立替制度を利用する際の注意点は2つあります。
一つは、無料で立替を受けられるわけではない点です。保釈支援協会の場合も、いわゆる利息に該当する手数料がかかります。手数料は150万円で3万円程度ですが、手数料分に相当する金額はご自身で用意する必要があります。
もう一つは、保釈金立替制度を扱っている業者の中には、悪質な会社もある点です。保釈支援協会は実績も豊富で安心できる団体ですが、中には高額な利息を要求するヤミ金のような業者もあります。保釈金が用意できず、保釈金立替制度を利用したい場合は、まずは弁護士に相談してください。
まとめ
保釈金の相場は150万円~300万円程度です。もっとも、保釈金の金額は被告人の年収や犯罪の性質などに応じて決まります。
保釈による釈放は、身柄拘束から一時的に解放されるにすぎません。今後、待ちかまえている刑事裁判の対応には相当な覚悟が必要ですが、身柄拘束から解放されることは刑事裁判を乗り越えていくためにも重要です。
保釈金がどのくらいになるのか、そもそも保釈が認められる可能性があるのかなど、刑事事件に関するお悩みをお持ちの場合は、アトム法律事務所の弁護士に相談してください。
警察が介入した刑事事件では、弁護士による無料相談が受けられます。無料相談の予約受付は24時間いつでも対応中ですので、まずは気軽にお問い合わせください。