
「身に覚えのないことで警察から呼び出された…」
「嘘の被害届を出されたようだけど、どうしていいか分からない…」
突然そんな状況に巻き込まれたとしたら、不安と混乱で頭が真っ白になるのは当然です。虚偽の被害届が出された場合、本当に何もしていなくても、誤解が広がって取り返しのつかない事態に発展するおそれがあります。
適切に対応しなければ、冤罪で刑事事件として立件されたり、前科がついてしまうリスクさえあるのです。
この記事では、嘘の被害届を出された場合に取るべき対応や、虚偽告訴罪・虚偽申告罪のポイント、弁護士相談の重要性、さらには逆に虚偽の届け出を行った相手に対して取り得る法的手段までを、分かりやすく解説します。
目次
嘘の被害届・通報をされた!まず最初に確認すべきことは?
虚偽の被害届とは、実際には起きていない被害や事実を、意図的に警察へ届け出る行為です。
たとえば、金銭トラブルや男女トラブルで相手から逆恨みされ、「暴力を振るわれた」「脅された」などと警察に虚偽の通報をされるようなケースが該当します。
嘘の通報をされたときに起こりうること
虚偽の被害届が警察に出された場合でも、いきなり逮捕されるとは限りません。まずは「事情の確認」が目的となるケースが多いです。
以下のような対応が取られることがあります。
- 警察から「任意での事情聴取」の連絡
- 自宅や職場への訪問
- 出頭の要請(要請を無視し続けると逮捕されるおそれが高まります)
この段階では「逮捕」や「起訴」ではありません。あくまで「話を聞きたい」という段階ですが、ここでの対応が今後の展開に大きく影響する可能性がある点には注意が必要です。
嘘の被害届に巻き込まれたときの対応ポイント
- 感情的にならず冷静に行動する
- できるだけ早く弁護士に相談する
嘘の被害届を出されたとき、警察に確認なしに説明しようとすると、かえって不利に働く場合があります。警察から連絡が来たといった場合は、まずは弁護士に相談し、今後の対応を慎重に進めましょう。
嘘の被害届による前科や冤罪を回避するために重要なこと
被害届が出されたからといって、すぐに前科がつくわけではありません。しかし、誤った対応をすると、不起訴では済まず、最悪の場合は前科がついてしまう可能性もあります。
冤罪・前科を防ぐために大切なこと
- 任意の取り調べにも軽視せずに対応する
- できるだけ早く弁護士のアドバイスを受ける
- 証拠を集めておく
それぞれ詳しく見ていきましょう。
(1)任意の取り調べにも軽視せずに対応する
任意で警察から呼び出しを受けた場合、自分では「事実無根だから放っておいても大丈夫だろう」と思うかもしれません。
しかし、警察は通報や被害届が出された時点で、一定の手続きを進めることになります。その結果、あなたが被疑者として、任意で取り調べを受けることになる場合があります。
任意であるため、取り調べは拒否することができます。ただし、拒否しつづけると逮捕のおそれが高まるため、任意の取り調べにも可能な限り応じるべきです。
取り調べではうっかり話した内容が、記録(供述調書)として残り、あとからあなたに不利な証拠として使われることもあります。
取り調べでは以下の点に注意して、対応しましょう。
警察対応の注意点チェックリスト
- 無理にその場ですべて答えようとしない
- 不利益になることを急いで喋らない
- 嘘は絶対に言わない(後で矛盾が出ると信用を失う)
- 必要なら「弁護士に相談してから答える」と伝える
- 供述調書には納得できなければ署名・押印しない

関連記事
・警察の事情聴取(取調べ)をどう乗り切る?不利にならない対応と今後の流れ
(2)できるだけ早く弁護士のアドバイスを受ける
虚偽の被害届によってあなたが「犯人」と疑われているとき、弁護士の法的なサポートなく状況を好転させるのは非常に難しいといえます。
警察とのやり取りは非常にデリケートです。自分では正しく説明しているつもりでも、誤解を招いたり、後に不利な材料になってしまうこともあります。
理想的には、警察から話がある前の段階で弁護士に相談するのが望ましいでしょう。
弁護士に相談すれば「冤罪・前科を防ぐための対応方法」「警察への受け答えのアドバイス」など、法的な観点からサポートを受けられます。
警察に呼び出されたら、まず弁護士に相談し、慎重に動くことが大切です。刑事事件は手続きが進むほど状況を引き戻すのが難しくなります。まだ逮捕されていない段階でこそ、弁護士の力が特に重要なのです。
(3)証拠を集めておく
自分の無実を証明できる証拠があるか、早めに確認しましょう。たとえば、以下のような証拠が挙げられます。
証拠の例
- その時間帯のアリバイ(防犯カメラの映像・レシート・GPSの記録など)
- LINEやメールなどのやり取り履歴
- あなたの主張を裏付けてくれる証人がいないか
こういった証拠は、後の「不起訴処分」などにも大きく関わってきます。警察に説明する際も必ず弁護士にアドバイスを受け、無駄な発言や誤解を防ぎましょう。
嘘の被害届を出した側は罪に問われる?虚偽告訴罪・虚偽申告の罪とは
虚偽の被害届を出すことは、「虚偽告訴罪」として刑法上の犯罪にあたります。
虚偽告訴罪とは?
虚偽告訴罪とは、他人に刑事罰や懲戒処分を受けさせる目的で、実際には存在しない犯罪を、警察や検察などの捜査機関に訴えた場合に成立する犯罪です。
人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
刑法172条
虚偽告訴罪の刑罰は「3か月以上10年以下の懲役」です。罰金刑が規定されておらず、有罪になれば刑務所に入る可能性のある、比較的重い犯罪です。
虚偽告訴罪が成立するための3つの要件
単に「思い込みだった」というだけでは虚偽告訴罪は成立しません。虚偽告訴罪が成立するためには、以下の3つが揃っている必要があります。
虚偽告訴罪の成立要件
- 虚偽の内容であること
- 捜査機関などへの申し立てであること
- 他人を処罰させる意図(故意)があること
(1)虚偽の内容であること
実際には犯罪がなかったのに、あったかのように申告することが必要です。
「犯人と勘違いして告訴した」「犯人だと思い込んでいた」ケースであれば虚偽告訴罪は成立しません。
(2)捜査機関などへの申し立てであること
警察・検察など、「公的な機関」に対して申し立てた場合に限ります。SNSや知人へのウソの告白は、虚偽告訴罪とはなりません(ただし、別の名誉毀損や業務妨害になる可能性はあります)。
(3)他人を処罰させる意図(故意)があること
単なる間違いや勘違いではなく、「本来罪のない人」をあえて罪に陥れようとする意図(故意)が必要です。故意がなければ、虚偽告訴罪は成立しません。
虚偽申告の罪とは?
虚偽告訴罪と類似する犯罪として、軽犯罪法違反の「虚偽申告の罪」があります。
虚偽申告の罪とは、実際には発生していない犯罪や事故などについて、警察や消防に嘘の通報をする行為を指します。
たとえば、「空き巣に入られた」「暴行を受けた」「火事が起きている」などと、事実ではない内容を110番や119番で申告した場合がこれにあたります。
このような虚偽の通報は、警察や消防の業務を妨げるだけでなく、本当に助けを必要としている人への対応を遅らせるおそれがあるため、処罰の対象となります。
虚偽申告の刑罰は、「拘留(1日以上30日未満)」または「科料(1,000円以上10,000円未満)」です。
虚偽申告の罪は、人を特定せずに虚偽の通報をする行為であるのに対し、虚偽告訴罪は特定の人物に刑事処罰を受けさせる目的で虚偽の申告をする行為といった違いがあります。
虚偽告訴罪と虚偽申告罪の違い
虚偽告訴罪 | 虚偽申告罪 | |
---|---|---|
根拠法 | 刑法第172条 | 軽犯罪法1条16号 |
内容 | 特定の人物に刑事処罰を受けさせる目的で、虚偽の申告を行う | 公務員に対し、人を特定せず、単に虚偽の通報を行う |
罰則 | 3か月以上10年以下の懲役 | 1日以上30日未満の拘留 または1,000円以上1万円未満の科料 |
虚偽告訴された場合、慰謝料は請求できる?相場は?
誰かに事実と異なる内容で被害届や告訴をされ、それによって精神的な苦痛を受けたり、逮捕・報道などで社会的な信用を失った場合、「虚偽告訴」に基づく慰謝料を請求することが可能です。
これは民事上の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求となります。
虚偽告訴された場合の慰謝料の金額は、ケースによって異なります。おおよその慰謝料の相場は以下の通りです。
状況 | 慰謝料の相場(参考) |
---|---|
軽度な名誉毀損・誤解など | 数十万円程度 |
逮捕や報道による信用毀損 | 100万〜300万円以上に及ぶことも |
※実際の金額は、虚偽告訴の内容や影響の程度(逮捕歴、報道されたか等)、社会的地位への影響、精神的損害の有無などにより大きく異なります。
【判例】実際にあった虚偽告訴事件(女性が男性を訴えた事例)
裁判例(大阪地裁令和6年5月14日判決)
2024年、大阪市内で、マッチングアプリを通じて知り合った男性に対して虚偽の性被害を申告した19歳の女性が、虚偽告訴罪で有罪判決を受けました。共犯者と共謀し、示談金を得る目的で、実際には合意の上で行われた性行為を「無理やりだった」と偽って警察に被害届を提出した事件です。
■裁判所の判断
大阪地裁は、犯行を「計画的かつ悪質」と判断し、被告人に対して懲役1年6月の判決を言い渡しました。ただし、以下の事情を考慮し、執行猶予付きの判決となりました。
- 共犯者の指示に従う従属的な立場だったこと
- 事実を認め、反省していること
- 若年(当時19歳)かつ前科がなかったこと
- 母親の監督が約束されていること
その上で、再犯防止のため、3年間の保護観察付き執行猶予とされました。
虚偽告訴罪に関するよくある質問
Q. 思い込みでも虚偽告訴罪になりますか?
思い込みでの被害届の提出・告訴は、原則として虚偽告訴罪にはなりません。
虚偽告訴罪(刑法第172条)が成立するには、「虚偽の事実」を「故意に」捜査機関などに申告し、他人に刑事処分を受けさせようとする意思が必要です。
つまり、「本当は犯罪がなかったと知っていながら、それをあったかのように通報する」という意図的な行為でなければ、罪に問われることは基本的にありません。
もっとも、実務上は虚偽告訴罪の故意があったかどうかを立証することは難しいとされています。
Q.虚偽告訴罪は親告罪ですか?
虚偽告訴罪は「非親告罪」です。つまり、被害者(告訴された側)が「処罰を求める告訴」をしなくても、警察や検察が独自に判断して捜査・起訴することができます。
Q.虚偽告訴罪と名誉毀損罪の違いは何ですか?
虚偽告訴罪が「捜査機関に対して事実でない犯罪の申告をする行為」であるのに対し、名誉毀損罪は「他人の社会的評価(名誉)を傷つけるような事実を、第三者に伝える行為」です。両方が成立することもあります。
虚偽告訴罪と名誉毀損罪の違い
比較項目 | 虚偽告訴罪 | 名誉毀損罪 |
---|---|---|
保護法益 | 司法の適正な運用 | 他人の名誉 |
対象 | 捜査機関・公的機関 | 不特定多数または第三者 |
成立に必要な要素 | 偽りの通報・申告、故意 | 事実の摘示、名誉を毀損する内容 |
冤罪・起訴リスクを防ぐためにも嘘の被害届を出されたらすぐ弁護士へ相談を
虚偽告訴の場合でも、警察は「被害があった」と疑っています。放置すると、逮捕や起訴のリスクが高まります。
早期に弁護士に依頼することで、「逮捕の回避」「不起訴・無罪の獲得」など、あなたの人生への悪影響を最小限にとどめられます。
嘘の被害届や虚偽の通報は、あなたの人生を一変させる深刻な問題です。しかし、早めに正しい対応を取ることで、冤罪を回避し、名誉を守ることができます。
まずは冷静に行動し、証拠を集め、すぐに弁護士に相談することが何より重要です。
ひとりで悩まず、刑事事件に強い弁護士のサポートを受けましょう。
ここでは、刑事事件に強いアトム法律事務所の弁護士が過去に解決した冤罪事件をご紹介します。
アトムの解決事例(冤罪で逮捕されたが不起訴処分)
温泉施設のリクライニングチェアが並ぶ休憩室で、隣に座っていた女性の胸を触ったとされる。迷惑防止条例違反として逮捕された。
弁護活動の成果
取り調べにおいて脅迫があったため、抗議文を送付。痴漢の事実はないこと、虚偽の自白を強要されたことを主張した結果、不起訴処分となった。
アトムの解決事例(詐欺を疑われたが不送致で事件終了)
会社経営者である依頼者が虚偽申請により補助金を詐取したとの疑いがかけられたケース。顧問税理士がした補助金詐取に関与したことが疑われ、会社が捜索差押を受け、複数回取り調べされた。補助金適正化法違反の事案。
弁護活動の成果
警察から聴取を受ける際の出頭付添いおよび取調べに対するアドバイスを行った。結果、検察に送致されず事件終了となった。
ご依頼者様からのお手紙・口コミ評判
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
丁寧な対応と都度の報告で不安な気持ちも落ち着き過ごせました。

アトム法律事務所様を選んだのはネットで見た情報から親切にお話を聞いていただけそうだと感じたからです。自分自身、非常に不安な心境でしたが、お会いいただいた際には丁寧に今後の事をお話しいただきました。以後のご連絡についても都度いただけたので不安な気持ちも少し落ち着きながら過ごすことができました。
他所では示談しか扱ってくれない中、「最後まで戦いましょう」と励まし勇気づけて下さいました。

(抜粋)突然被疑者扱いされ、本当につらい日々でした。そんな中、いつも先生には励まし、勇気づけて頂きました。法律事務所の中には実際やっていなくても示談するのがよいとすすめる所や示談しか扱わないという所ばかりでしたが、貴社だけが、示談する必要はない、もし起訴するようなら最後まで戦いましょうとおっしゃって下さいました。警察でも検察でも一方的に被疑者扱いされ被害者(という人の)ことだけが信用されこの先どうなってしまうのか、心が押しつぶされる日々でしたが、先生に色々ご対応頂いたおかげで、不起訴となることができました。何度も心が折れそうになりましたが、先生が精神的に支えて下さり、ここまで来ることができました。感謝の気持ちでいっぱいです、本当にありがとうございました。
ご依頼者様からのお手紙のほかにも、口コミ評判も公開しています。
アトム法律事務所では現在、弁護士相談のご予約を24時間365日受付中です。
冤罪事件に巻き込まれてしまった方、ご家族、ご友人の方は、ぜひ、アトム法律事務所にご相談にお越し下さい。
また、警察沙汰になった事件では、初回30分無料で弁護士相談が可能です。
- 警察に逮捕された
- 警察から呼び出しがあった
- 検察に起訴すると言われている など
くわしくはお電話でオペレーターにおたずねください。お電話お待ちしております。